雲雀
白川ゆう
吉丈月子
岡田きなこ
家藤正人選
初級コースの金曜日掲載は中級への昇級の目安。中でも特に目を惹く句についてピックアップコメントをお届けします。
「雲雀鳴く清きを守る桃瓦 吉丈月子」
桃は古くから邪気を払い、不老長寿を願うシンボルとされてきました。その桃を象った瓦が「桃瓦」。日本各地の城の屋根にその姿が残されています。飛び上がった雲雀の声を追う目線の先には、城の威容も映るでしょう。空はいかにも清らかな青を広げ、雲雀は楽しげな鳴き声を瓦の上へと降り注がせます。城の守護した土地には今も、人も鳥も木々も健やかにあることを想像させてくれました。
「稜線はトランポリンだ揚雲雀 岡田きなこ」
鳴きながら空高く舞い上がってゆく揚雲雀。どこまで飛ぶのかとみていると、今度は急降下してきます。次はまた高く飛び上がって……と、一連を繰返す背後には山々がそびえています。あ、今ちょうど雲雀が上下折り返したのって山と山の間の稜線だ! トランポリンみたい! と気づいた心の弾みを捉えるのに口語の軽やかさはぴったり。雲雀の鳴き声は愉快な見立てを喜ぶように耳をくすぐって。
「雲雀ゐて飛鳥に巨石残りをり 白川ゆう」
現在の奈良県高市郡周辺である「飛鳥」。万葉集にも歌われる古い歴史を持った土地です。「巨石」は現在の飛鳥にも残る石造物のこと。由来や用途のわかる物もあれば、不明な物もあります。数百年、あるいは千年以上に及ぶ時間の重みを持たせながら、現在の「飛鳥」に存在する「雲雀」の実感と釣り合いをとるバランス感覚が秀逸です。接続の「ゐて」に始まり「をり」の言い切りで終わる語順の勝利。
いずれもお見事でした。自信がついたら中級にもぜひ挑戦してみましょう!
喜祝音
は・な・み・ず・き
青井季節
比企野朋詠
甲斐杓子
矢作 点
とうくろう
只野黙念
河島はるちゃん
おんぷ(7さい)
平田暮路伊
永田すずらん
松山まどけい
森野モコ
柊
野江門美
いもがらぼくと
近津朱鳥
香山リカ
大矢香津
門のり子
糺 森子
山川十日
かときち
いまいやすのり
蟻馬次朗
足立とんび
選者コメント
家藤正人選
初級コースの金曜日掲載は中級への昇級の目安。中でも特に目を惹く句についてピックアップコメントをお届けします。
「雲雀鳴く清きを守る桃瓦 吉丈月子」
桃は古くから邪気を払い、不老長寿を願うシンボルとされてきました。その桃を象った瓦が「桃瓦」。日本各地の城の屋根にその姿が残されています。飛び上がった雲雀の声を追う目線の先には、城の威容も映るでしょう。空はいかにも清らかな青を広げ、雲雀は楽しげな鳴き声を瓦の上へと降り注がせます。城の守護した土地には今も、人も鳥も木々も健やかにあることを想像させてくれました。
「稜線はトランポリンだ揚雲雀 岡田きなこ」
鳴きながら空高く舞い上がってゆく揚雲雀。どこまで飛ぶのかとみていると、今度は急降下してきます。次はまた高く飛び上がって……と、一連を繰返す背後には山々がそびえています。あ、今ちょうど雲雀が上下折り返したのって山と山の間の稜線だ! トランポリンみたい! と気づいた心の弾みを捉えるのに口語の軽やかさはぴったり。雲雀の鳴き声は愉快な見立てを喜ぶように耳をくすぐって。
「雲雀ゐて飛鳥に巨石残りをり 白川ゆう」
現在の奈良県高市郡周辺である「飛鳥」。万葉集にも歌われる古い歴史を持った土地です。「巨石」は現在の飛鳥にも残る石造物のこと。由来や用途のわかる物もあれば、不明な物もあります。数百年、あるいは千年以上に及ぶ時間の重みを持たせながら、現在の「飛鳥」に存在する「雲雀」の実感と釣り合いをとるバランス感覚が秀逸です。接続の「ゐて」に始まり「をり」の言い切りで終わる語順の勝利。
いずれもお見事でした。自信がついたら中級にもぜひ挑戦してみましょう!