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初級者結果発表

2025年1月20日週の兼題

雲雀

【曜日ごとに結果を公開中】

【優秀句】

  • 雲雀ゐて飛鳥に巨石残りをり

    白川ゆう

  • 雲雀鳴く清きを守る桃瓦

    吉丈月子

  • 稜線はトランポリンだ揚雲雀

    岡田きなこ

選者コメント

家藤正人

初級コースの金曜日掲載は中級への昇級の目安。中でも特に目を惹く句についてピックアップコメントをお届けします。



「雲雀鳴く清きを守る桃瓦   吉丈月子」

桃は古くから邪気を払い、不老長寿を願うシンボルとされてきました。その桃を象った瓦が「桃瓦」。日本各地の城の屋根にその姿が残されています。飛び上がった雲雀の声を追う目線の先には、城の威容も映るでしょう。空はいかにも清らかな青を広げ、雲雀は楽しげな鳴き声を瓦の上へと降り注がせます。城の守護した土地には今も、人も鳥も木々も健やかにあることを想像させてくれました。


「稜線はトランポリンだ揚雲雀   岡田きなこ」

鳴きながら空高く舞い上がってゆく揚雲雀。どこまで飛ぶのかとみていると、今度は急降下してきます。次はまた高く飛び上がって……と、一連を繰返す背後には山々がそびえています。あ、今ちょうど雲雀が上下折り返したのって山と山の間の稜線だ! トランポリンみたい! と気づいた心の弾みを捉えるのに口語の軽やかさはぴったり。雲雀の鳴き声は愉快な見立てを喜ぶように耳をくすぐって。


「雲雀ゐて飛鳥に巨石残りをり   白川ゆう」

現在の奈良県高市郡周辺である「飛鳥」。万葉集にも歌われる古い歴史を持った土地です。「巨石」は現在の飛鳥にも残る石造物のこと。由来や用途のわかる物もあれば、不明な物もあります。数百年、あるいは千年以上に及ぶ時間の重みを持たせながら、現在の「飛鳥」に存在する「雲雀」の実感と釣り合いをとるバランス感覚が秀逸です。接続の「ゐて」に始まり「をり」の言い切りで終わる語順の勝利。



いずれもお見事でした。自信がついたら中級にもぜひ挑戦してみましょう!


  • きらきらと色を失いけり雲雀

    喜祝音

  • もの言ひて後の虚ろに雲雀囀る

    は・な・み・ず・き

  • 痛哭を高きに葬れ揚雲雀

    青井季節

  • 揚雲雀土手の支へる空淡し

    比企野朋詠

  • 決まりたる遺影写真や揚雲雀

    甲斐杓子

  • 雲雀鳴く人間だけが死にかけだ

    矢作 点

  • 初ひばり濃尾平野は平らかなり

    とうくろう

  • 高みから底抜けのあおを曳く雲雀

    只野黙念

  • 揚雲雀ここに学校建つを知らず

    河島はるちゃん

  • おねだりをがんばっているひばりかな

    おんぷ(7さい)

  • 青春の痒みを残し初雲雀

    平田暮路伊

  • 雲雀鳴く新墓に妣の壺一つ

    永田すずらん

  • 雲雀の子水の豊かな村に棲む

    松山まどけい

  • 妹にコブラツイスト揚雲雀

    森野モコ

  • ビー玉に青き空あり雲雀鳴く

  • 太陽に雲雀の声は届くのか

    野江門美

  • 富士山を賜る国に雲雀かな

    いもがらぼくと

  • 雲雀語の通訳誰ぞいてないか

    近津朱鳥

  • 雲雀鳴き空の輪郭押し広ぐ

    香山リカ

  • 雲雀鳴く大豆静かに吹きこぼる

    大矢香津

  • 雲雀の音ヘリの音を聞く子ども病院

    門のり子

  • 天人の水笛吹くや揚雲雀

    糺 森子

  • 雲雀鳴く明日にも抜ける乳歯かな

    山川十日

  • 揚雲雀ぼくは明るい引きこもり

    かときち

  • 夕ひばり利根はゆたかに野を分くる

    いまいやすのり

  • そこにいる雲雀ヒエログリフにいない

    蟻馬次朗

  • 揚雲雀雲と風とを食んだ声

    足立とんび

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