青田
モモザウルス
太田怒忘
狩野聖月
家藤正人選
初級コースの金曜日掲載は中級への昇級の目安。中でも特に目を惹く句についてピックアップコメントをお届けします。
「山の水引きてか弱き青田かな 狩野聖月」
昔のドラマですが『北の国から』でも水を引くシーンがあったよなあ、と朧気な記憶が刺激されました。「山の水」の持つ清冽さ、それでいて山中を迸る流れそのものではなく、田までを引かれてくる間に弱まり温んでいく少しの「間」が魅力です。人の手で導かれた山の水が流れを落とすのは、か弱い小規模な「青田」。小さくも健やかであれと慈しむ心が「かな」の詠嘆に滲みます。
「はやぶさは宇宙青田に通り雨 太田怒忘」
小惑星探査機「はやぶさ」および「はやぶさ2」と「青田」との意外な取り合わせです。既に地球へ帰還したはやぶさがまだ宇宙にいた頃の時間に引き戻すかのような前半の言い切り。続く後半では青田へと降りかかっていく雨を描写しています。一見関係なさそうな両者が対句表現に同居することで、宇宙から地上へと、巨大な立体的空間が立ち上がります。奇跡のような水の惑星の地表で、青田は命なるものをわさわさとそよがせているのです。
「青田しか赦すとこ無い町でした モモザウルス」
日常目にする「許す」ではなく「赦す」の文字を選ぶことに作者の表現したい詩の核があるのでしょう。「赦す」は特に「罪を許すこと」を意味します。つまり作者にとって「町」はなんらかの罪を伴う存在であったのです。いったいこの「町」と作者とはどんな記憶で紐付いているのか。ただ一つ赦せるのは広々と風の渡る「青田」だけ。口語の軽さが逆に突き放すような厳しさを生んでいます。青田のささめきを背後に、二度とこの地には戻らないのでありましょう。
いずれもお見事でした。自信がついたら中級にもぜひ挑戦してみましょう!
朱久瑠
足立とんび
喜祝音
三角山子
飯野 山茶花
青野すみれ
三日余子・いつき組広ブロ俳句部
佐々木棗
加田紗智
加藤遊鹿
松元春苑
鯨之
りっしんべん
かく たまき
六甲桜
竹林長彦
あすか風
咲葉
ラズリー
阿蘇の乙姫
淡海 なおあき
選者コメント
家藤正人選
初級コースの金曜日掲載は中級への昇級の目安。中でも特に目を惹く句についてピックアップコメントをお届けします。
「山の水引きてか弱き青田かな 狩野聖月」
昔のドラマですが『北の国から』でも水を引くシーンがあったよなあ、と朧気な記憶が刺激されました。「山の水」の持つ清冽さ、それでいて山中を迸る流れそのものではなく、田までを引かれてくる間に弱まり温んでいく少しの「間」が魅力です。人の手で導かれた山の水が流れを落とすのは、か弱い小規模な「青田」。小さくも健やかであれと慈しむ心が「かな」の詠嘆に滲みます。
「はやぶさは宇宙青田に通り雨 太田怒忘」
小惑星探査機「はやぶさ」および「はやぶさ2」と「青田」との意外な取り合わせです。既に地球へ帰還したはやぶさがまだ宇宙にいた頃の時間に引き戻すかのような前半の言い切り。続く後半では青田へと降りかかっていく雨を描写しています。一見関係なさそうな両者が対句表現に同居することで、宇宙から地上へと、巨大な立体的空間が立ち上がります。奇跡のような水の惑星の地表で、青田は命なるものをわさわさとそよがせているのです。
「青田しか赦すとこ無い町でした モモザウルス」
日常目にする「許す」ではなく「赦す」の文字を選ぶことに作者の表現したい詩の核があるのでしょう。「赦す」は特に「罪を許すこと」を意味します。つまり作者にとって「町」はなんらかの罪を伴う存在であったのです。いったいこの「町」と作者とはどんな記憶で紐付いているのか。ただ一つ赦せるのは広々と風の渡る「青田」だけ。口語の軽さが逆に突き放すような厳しさを生んでいます。青田のささめきを背後に、二度とこの地には戻らないのでありましょう。
いずれもお見事でした。自信がついたら中級にもぜひ挑戦してみましょう!