夜の秋
青嵐
磯峰百十三
はま魔女
家藤正人選
初級コースの金曜日掲載は中級への昇級の目安。中でも特に目を惹く句についてピックアップコメントをお届けします。
「横糸に銀を差したり夜の秋 青嵐」
手編みでしょうか、それとも機織り機を使っているのでしょうか。個人的には後者を想像しました。秋めいてきた夜の涼気のなかで、何度も糸を通し、少しずつ織物が仕上がっていく豊かな時間。意匠のために一本差し込む銀糸の色味も美しいですし、それを自ら選び取り行う意志力を感じさせる「差したり」も動詞の斡旋が見事。機織り機のとんからり、という音が聞こえてきそうな読後感のよさも魅力的でした。
「夜の秋とつ国のをんなあひあひと嗤う はま魔女」
字余りの大胆さもさることながら、取り合わせのフレーズとしても異彩を放っています。以前読んだ、第二次世界大戦中のポーランドを舞台にしたらしき小説に出てくる老婆を思い起こしてしまったなあ。笑い声から推察される「とつ国のをんな」の姿形や年齢、その口元までが妙にリアルに感じられるのはやはり「夜の秋」という季語の力。夜と共に訪れる涼を得て、人は生きるために食べ、笑い、営みを続けるのです。「嗤う」の仮名遣いは「嗤ふ」である点だけは惜しいポイント。
「夜の秋自傷のごとき一人旅 磯峰百十三」
直喩が「一人旅」に力強いだけではない、繊細さや願いも滲ませてくれました。いてもたってもいられず、ここではないどこかへと出掛けたくなる気持ち。歩みを進めてるうちは紛れていた孤独が、ほとぼりを冷ますような夜の秋によってひそやかに目覚めさせられてきます。自己愛と自己嫌悪、相反する心を抱えるのもまた自分自身であります。夜の静けさはそんな自己探求をする時間にそっと寄り添ってくれるのでしょう。
いずれもお見事でした。自信がついたら中級にもぜひ挑戦してみましょう!
そら野なずな
なにわの花子
しゃりしゃり
草深みずほ
金子加行
乃戸 野辺音
松山まどけい
ゆうじ7才
のぶと7才
奥山 言成
小田緑萌
青井晴空
松本マンボウ
加藤遊鹿
鈴木青翠
横浜順風
十四志
横井あらか
喜祝音
月待 小石
山内彩月
鈴木ふよう
慈夢りん
朱那
ゆめの月舟
吉田白山
西野和香
しなもりいふ
佐藤恒治
タツキ ヨシコ
神津歩地
御簾紫音
咲咲こるつ
早霧ふう
岡 萬美
選者コメント
家藤正人選
初級コースの金曜日掲載は中級への昇級の目安。中でも特に目を惹く句についてピックアップコメントをお届けします。
「横糸に銀を差したり夜の秋 青嵐」
手編みでしょうか、それとも機織り機を使っているのでしょうか。個人的には後者を想像しました。秋めいてきた夜の涼気のなかで、何度も糸を通し、少しずつ織物が仕上がっていく豊かな時間。意匠のために一本差し込む銀糸の色味も美しいですし、それを自ら選び取り行う意志力を感じさせる「差したり」も動詞の斡旋が見事。機織り機のとんからり、という音が聞こえてきそうな読後感のよさも魅力的でした。
「夜の秋とつ国のをんなあひあひと嗤う はま魔女」
字余りの大胆さもさることながら、取り合わせのフレーズとしても異彩を放っています。以前読んだ、第二次世界大戦中のポーランドを舞台にしたらしき小説に出てくる老婆を思い起こしてしまったなあ。笑い声から推察される「とつ国のをんな」の姿形や年齢、その口元までが妙にリアルに感じられるのはやはり「夜の秋」という季語の力。夜と共に訪れる涼を得て、人は生きるために食べ、笑い、営みを続けるのです。「嗤う」の仮名遣いは「嗤ふ」である点だけは惜しいポイント。
「夜の秋自傷のごとき一人旅 磯峰百十三」
直喩が「一人旅」に力強いだけではない、繊細さや願いも滲ませてくれました。いてもたってもいられず、ここではないどこかへと出掛けたくなる気持ち。歩みを進めてるうちは紛れていた孤独が、ほとぼりを冷ますような夜の秋によってひそやかに目覚めさせられてきます。自己愛と自己嫌悪、相反する心を抱えるのもまた自分自身であります。夜の静けさはそんな自己探求をする時間にそっと寄り添ってくれるのでしょう。
いずれもお見事でした。自信がついたら中級にもぜひ挑戦してみましょう!