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初級者結果発表

2025年6月20日週の兼題

夜の秋

【曜日ごとに結果を公開中】

【優秀句】

  • 夜の秋とつ国のをんなあひあひと嗤う

    はま魔女

  • 夜の秋自傷のごとき一人旅

    磯峰百十三

  • 横糸に銀を差したり夜の秋

    青嵐

選者コメント

家藤正人

初級コースの金曜日掲載は中級への昇級の目安。中でも特に目を惹く句についてピックアップコメントをお届けします。



「横糸に銀を差したり夜の秋   青嵐」

手編みでしょうか、それとも機織り機を使っているのでしょうか。個人的には後者を想像しました。秋めいてきた夜の涼気のなかで、何度も糸を通し、少しずつ織物が仕上がっていく豊かな時間。意匠のために一本差し込む銀糸の色味も美しいですし、それを自ら選び取り行う意志力を感じさせる「差したり」も動詞の斡旋が見事。機織り機のとんからり、という音が聞こえてきそうな読後感のよさも魅力的でした。



「夜の秋とつ国のをんなあひあひと嗤う   はま魔女」

字余りの大胆さもさることながら、取り合わせのフレーズとしても異彩を放っています。以前読んだ、第二次世界大戦中のポーランドを舞台にしたらしき小説に出てくる老婆を思い起こしてしまったなあ。笑い声から推察される「とつ国のをんな」の姿形や年齢、その口元までが妙にリアルに感じられるのはやはり「夜の秋」という季語の力。夜と共に訪れる涼を得て、人は生きるために食べ、笑い、営みを続けるのです。「嗤う」の仮名遣いは「嗤ふ」である点だけは惜しいポイント。



「夜の秋自傷のごとき一人旅   磯峰百十三」

直喩が「一人旅」に力強いだけではない、繊細さや願いも滲ませてくれました。いてもたってもいられず、ここではないどこかへと出掛けたくなる気持ち。歩みを進めてるうちは紛れていた孤独が、ほとぼりを冷ますような夜の秋によってひそやかに目覚めさせられてきます。自己愛と自己嫌悪、相反する心を抱えるのもまた自分自身であります。夜の静けさはそんな自己探求をする時間にそっと寄り添ってくれるのでしょう。



いずれもお見事でした。自信がついたら中級にもぜひ挑戦してみましょう!


  • 夜の秋にんぎやうの眼のがらんどう

    草深みずほ

  • やはらかき話持ち寄る夜の秋

    金子加行

  • 失禁の始末を終えて夜の秋

    乃戸 野辺音

  • 廃業の小さな記事や夜の秋

    松山まどけい

  • よるのあきママのグラタンまっている

    のぶと7才

  • 夜の秋吾子の寝息は植物のかほり

    奥山 言成

  • クラリネットを箱に眠らせ夜の秋

    小田緑萌

  • 階下より魚煮る香や夜の秋

    青井晴空

  • 懐かれて今や飼ひ猫夜の秋

    加藤遊鹿

  • 下ろしたる墨の青みや夜の秋

    十四志

  • フルートの奏者に喪章夜の秋

    喜祝音

  • 夜の秋や星の香のひそやかにふり

    山内彩月

  • 夜の秋や白狐の面と目の合ひぬ

    慈夢りん

  • 終演のピエロ一服夜の秋

    朱那

  • 法事終ふつと風に酔う夜の秋

    ゆめの月舟

  • ウキの灯の波の音譜や夜の秋

    吉田白山

  • 夜の秋人工弁の鼓動かな

    西野和香

  • 絵日記の半分は嘘夜の秋

    岡 萬美

  • 夜の秋母の遺しし利休下駄

    しなもりいふ

  • 我が心右より痛む夜の秋

    しゃりしゃり

  • よるのあきせんしゃは百円もらえます

    ゆうじ7才

  • 命さえ星の滓とは夜の秋

    松本マンボウ

  • 昭和の夜の秋令和の夜の秋

    鈴木青翠

  • 夜の秋星のかけらを身に浴びる

    横浜順風

  • 留守電の亡母の声や夜の秋

    横井あらか

  • 夜の秋かたまりとして母は座し

    鈴木ふよう

  • 夜の秋蓋の歪なニベア缶

    タツキ ヨシコ

  • 夜の秋ニーチェに明日を訊いてみる

    御簾紫音

  • 夜の秋笑う口には闇がある

    神津歩地

  • ほろ酔ひのピアニカ濁る夜の秋

    早霧ふう

  • 年齢を父に聞かれる夜の秋

    そら野なずな

  • 古本の愛の書込み夜の秋

    なにわの花子

  • 腎に石秘めてゐたつけ夜の秋

    月待 小石

  • 焼き上がる碗の歪みや夜の秋

    佐藤恒治

  • 夜の秋どこの天狗の風だろか

    咲咲こるつ

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