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初級者結果発表

2025年10月20日週の兼題

牡蠣

【曜日ごとに結果を公開中】

【優秀句】

  • 掌に牡蠣みるざらりざらり夕

    一ノ瀬慧

  • 「阿保」の「ほ」に吸い込まれゆく大き牡蠣

    星屑今日子

  • 牡蠣香り島の民家を店と知る

    茂里憲之

選者コメント

家藤正人

初級コースの金曜日掲載は中級への昇級の目安。中でも特に目を惹く句についてピックアップコメントをお届けします。



「「阿保」の「ほ」に吸い込まれゆく大き牡蠣   星屑今日子」

カギ括弧を使った形に賛否はあるかもしれませんが、表現したい内容に対して必然性を持っているなら許容して良いと個人的には考えています。この句の場合は、会話であること、そして「ほ」の音を発した口の形を描写するために必要な手段です。共に牡蠣を食べる仲です。罵倒、といっても気心の知れた仲での軽口の範囲でありましょう。「ほ」と発した楕円形の口へと、屈託なく吸い込まれていく牡蠣の美味しそうなこと。牡蠣の滋味が二人の人間関係の質を暗に示しているようでもあります。


「牡蠣香り島の民家を店と知る   茂里憲之」

お商売をやってる風だが、看板もあるわけでなし、なにをやってる家なのかわからない。そんな家が潮の匂いのする島にあるのです。一度通りがかった時にはわからなかったが、ある瞬間に、その民家から牡蠣の香りがしてくる。ああ、ここは店であったか、と合点がいくわけです。まるで夏目漱石か志賀直哉の小説の一節のようなさりげなさの中に「牡蠣」の季感が活きています。乾燥した冬の大気が一層牡蠣の香り高さを際立たせてくれました。


「掌に牡蠣みるざらりざらり夕   一ノ瀬慧」

牡蠣に触れる触覚と心理とをうまく融和させています。その上で重要な役割を果たしているのが「ざらりざらり」の配置場所です。「掌に牡蠣みる」から連なる触覚のオノマトペであると同時に、切れの読み取り方によっては「ざらりざらり夕」と読むこともできます。一日が終わっていこうとする夕方という時間の持つ、心理的なざらつき。疲労や不安、そんな負の感情のざらつきと、牡蠣殻の手を傷つけんばかりのざらつきとがシンクロします。



いずれもお見事でした。自信がついたら中級にもぜひ挑戦してみましょう!

  • 青空を食べさせる牡蠣小屋の牡蠣

    鈴野冬遊

  • をんなの喉仏なま牡蠣のみほせり

    二城ひかる

  • 妬心燃ゆそれはそれとて牡蠣フライ

    野村酔狐

  • かなしみはさざ波模様牡蠣を剥く

    林 うんべらーた

  • つぎの世も男がよろし牡蠣すする

    かまど猫

  • 牡蠣啜り殻から重さなくしたる

    一人男

  • ぬるき酒牡蠣の滴る塗の箸

    飯田蛙子

  • 父座してやうやく酢牡蠣並びけり

    茂田野マイ子

  • 生牡蠣や浪速をのこの艶ばなし

    鬼石 祥子

  • 牡蠣美味き地は酒旨き地でありし

    金子加行

  • 逢ひ見ての閨から眺む牡蠣筏

    鬼石 祥瑞

  • 牡蠣柔しそうやすやすとうちとけぬ

    鈴川晴海

  • 牡蠣の殻硬くて此処は淋しくて

    のなめ

  • 隣席の別れ話に牡蠣爆ぜる

    太陽魚

  • 牡蠣殻にすすり尽くせぬ恋を吐く

    明月詩悠

  • 牡蠣殻は割り算のあまりの匂い

    喜祝音

  • 発掘の如く牡蠣こじ開けにけり

    桂佐ん吉

  • 良い人の時は良い人牡蠣を割る

    吉成小骨

  • 牡蠣を剥く増えるばかりの月命日

    三角山子

  • かきくけこ小岩のような牡蠣を食う

    アガニョーク

  • 牡蠣飯や古傷いたむ今日の宵

    流鏑馬

  • 牡蠣缶熱し気の済むまで暴れよ

    松山 風

  • 水揚げの牡蠣千羽鶴のやうな影

    るりゆるり

  • 今生の悪事酢牡蠣は喉つるり

    城 幸女

  • 牡蠣殻や腹を割るはずだった夜

    月下檸檬

  • 牡蠣煮ゆるサロマに星は滴るや

    竹石猫またぎ

  • 対岸の灯り脈うつごと牡蠣田

    白川ゆう

  • 牡蠣殻や伸びたテープの子守唄

    ハンファスター

  • 罪科を言はぬくちびる牡蠣を喰ふ

    ちくばやしうたこ

  • 恋愛の手順のやうに牡蠣を剥く

    夏野夏湖

  • 大連に牡蠣のたゆたう火鍋かな

    和田宏泉

  • 蛎殻に逸る唇持ってゆき

    痴陶人

  • 活牡蠣の寡黙の闇に刃を刺しぬ

    季與子

  • かき鍋や妻の笑顔のすこし老い

    山下健太朗

  • この牡蠣はあの亡者らを見ただらう

    鈴木青翠

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