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初級者結果発表

2021年4月20日週の兼題

【曜日ごとに結果を公開中】

【入選までもう一歩】

選者コメント

家藤正人


みなさまこんにちは。初級の選者、家藤正人です。

月曜日は、入選にもう一歩という句をご紹介します。
月曜日の選者コメントに掲載されている俳句についてはアーカイブへの掲載はありません。作品検索での検索はできません。
火曜日以降の入選句についてはアーカイブにご自身のデータが保管されます。
入選へのヒントを参考に、目指せアーカイブ掲載への道!!
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▼季語なしpick up

野蕗摘む手先は気配に一憂し
大塚鴨鷺

草むらに潜む蛇の如夫待つ
片桐ねこ

蛇の目傘走る幻想庭園かな
さとうくにお

くねくねと優柔不断蛇のごと
越後縮緬

大蛇町大きな蛇と綴ります
あきみ

赤き実は誰が食むやら蛇苺
典子

カイラスへ五体投地や蛇のやう
南の島の王子さま

蛇皮の財布潤う給料日
西村もえP

成る程と言われて久し干支は蛇
yoko

嫌われる覚悟はあるか蛇のごと
恵泉

恋占い蛇使い座でもう一度
ななと

蛇に似しロープひき逃げバックして
ケセラ幸子

街角の話術楽し蛇使い
キク丸

蛇蛇蛇蛇ーんこれが運命蛇蛇蛇蛇ーん
金目銀目猫中西

夏の月蛇皮線の調べ沁みりゐる
渡辺 あつし

青の夜そは少将か大将か
あの よろし

蛇のよに生きていけたら素晴らしい
吉井郁恵

三輪山の供へし卵謂れ有り
三枝子

天敵と死闘のはずぞ園の蛇
とちおとこ

憧れの師同じ嬉し干支は蛇
紫香菫

突き刺さる蛇の牙のような言葉
愛田のる

河川敷走る道続く蛇のごと
黙々笛

我が病治しておくれ杖の蛇よ
香村

悠久のメソポタミアに蛇神あり

シバ神の蛇が突き抜けるクンダリニ
久美子ガナパティ

ハイヒール我娘の姿蛇になり
アビー

雨打たれ洗う愛犬次を待つ
雨打たれ洗う愛犬次を待つ

幸運か白く冷たき蛇の夢
四季 憩

生業にならず大食い蛇のごと
新多ハルタ

蛇如くパトカー潜む河川敷
水戸定家

水口の開門嬉しカマグチや
アダチ安都市

丸顔にせめてもの蛇眉を引く
優木ごまヲ

蛇崩の近道行けばプロになる
友 新

蛇園の生態てんじ子等歓声
おぐらゆうた

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●選者コメント:
一見「蛇」という言葉が入っているけど、夏の生き物の季語「蛇」とは少し違う……という句をピックアップしました。
人物やモノへの喩えだったり、職業や場所の説明だったり、神話などのモチーフだったり。なかには「じゃ」の音としてだけ使うツワモノもいらっしゃいました。
発想は面白いものもありましたが、あくまでも今回挑むのは生き物としての「蛇」。比喩などに使った場合、季語としての力は弱い、あるいは発揮されないことが多いのです。

次回は季語を季語として使った一句! お待ちしております!
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▼違う季語&季重なりpick up

庭木下に白く光りぬ蛇の皮
部江十兵衛

たわむれて漆黒の花火蛇のごと
藍菜々

蛇住まう百年椿残されし
伊藤 柚良

蛇嫌いでも鰻は大好きよ
亀れおん

蛇の衣光るしずくに傘を干す
おおはし もぐ

祖母の家土間に残りし蛇の殻
焼饅頭

見つけたぞ蛇の抜け殻札入れに
街の小太郎

草刈歯蛇逃げる田の水面揺れ
裾野51

蛇穴を出でて田畑に日向ぼこ
放浪者

今夏こそ落ち着け給え蛇の杖
中央林間久喜

啓蟄のとぐろをまいて日干かな
華生示威亭

蛇皮や財布にしまい福願う
いわつよ8

病院に蝮に噛まれた指の婦人
文芸サロン

蛇穴を出づおとなたち管を巻き
酒井春棋

むしむしと我が身蛇這う熱帯夜
仲村波那尾

汗まみれ蛇の脱け殻振り回し
くらきまあこ

「はいさい」とハブ酒にぎくり土産店
宇津良まど

朝焼けの参道蛇と参拝す

白南風や壁を伝うか蛇の道
眞熊

春暑し草繁る土手蛇目覚め
太田 薫子

たわむれて漆黒の花火蛇のごと
藍菜々

黄梅雨黄昏虹下の蛇ゆるり
晴鍬旅人 

蛇食らう階段裏の燕の子
葉子

福来る玄関先に蛇の殻
紋舞蘭

里の杜空蝉ヘビのライン待つ
ロミ

アカマムシ災害奉仕の手が止まる
のんさん

豆の花小さき蛇に後ずさり
尾下鬼幹

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●選者コメント:
俳句ポスト365では毎週「兼題」と呼ばれるお題を出していますが、季語が出題された場合はその季語(あるいは、その季語の傍題)を必ず詠み込む、というのがたった一つのルールです。
藍菜々さんは「蛇」というよりは「蛇花火」の句。
部江十兵衛さんの句は映像としても綺麗で、「光りぬ」の中七も良いのですが、歳時記には「蛇の衣」という別の季語として扱われている場合が多いです。
俳句ポスト365では同じお題に全員が取り組むことで切磋琢磨を目指しております。

伊藤柚良さんは「百年椿」という固有名詞が良いですね。「蛇」と「椿」の季重なりはどちらが主たる季語かを判断する必要がありますが、上五が中七にかかっていくことを考えると「椿」の方が主役に立っていると考えるべきでしょうか。
季語が複数入っている名句もあるので、「季重なり」は絶対にダメ! とは言いませんが、複数の季語を作品として成立させるのは、上級者コースのウルトラ技。まずは、一句一季語からコツコツ練習です。

今募集中の兼題は、7月19日24時締切の「浴衣」です。ご投句お待ちしてます。
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※今回の兼題「蛇」初級者投句欄へのご投句は、投句数2497句、投句人数997人となりました。

以下の句はアーカイブに掲載決定!

金曜日「優秀句」へのステップアップのためのヒントをご案内します。



▼時事句pick up


ペットかよ迷惑な蛇今何処

PE天使


逃奔し世界の広さ知るや蛇

想予


逃げ出した蛇捜す刑事の目

小池是空


逃げた蛇徐々に野性を取り戻し

蒲柳


巨大蛇逃走中やステイホーム

久世わわ


逃走た蛇カメラにチロチロ赤い舌

霧音


「蛇逃げた」脳裏をよぎる帰り道

湯沢 無食子


梁の上気持ちよさげに眠る蛇

和野たんぽぽ


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●選者コメント:

偶然にも兼題「蛇」の募集期間に世間を騒がせた蛇関連のニュースがありました。ニシキヘビが脱走したニュースを聞き及んだ方も多くいらっしゃったのではないかと思います。

そのためか「脱走」や「捜索」を描いた句がちらほら届いております。もちろん全ての句がニュースに触発されてというわけではないでしょうが、件のニュースの光景だと想像して読むと、小池是空さんや和野たんぽぽさんの句は事件の顛末の一部始終が想像されて可愛らしいですね。


こういった時事を扱った句は「時事句」と呼ばれます。その当時の共感度は高いものの、時代を経て見直された時に作品の評価が変動しやすいのが時事句の特徴でもあります。

ともあれ、今は保護されたニシキヘビの無事を寿ぎましょう♪ よかったよかった♪

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▼オノマトペpick up


くねくねと水面泳ぐ黒い蛇

かげろう


鉢合わせ蛇くさむらにしゆるしゆると

里山まさを


ぬめぬめと鱗の艶や蛇あゆむ

鍋岡若采


鱗てふ死を纏いたる蛇ぴょろろ

平良嘉列乙


光る湖にそろそろそろり蛇の舌

大西みんこ


蛇ずるり我が濃き影を横切らん

ぽんこ


雨後の蛇ぬたりぬたりと鴨居を行く

笑酔


窓をあけ舌チョロチョロと蛇の居し

大村真仙


夕暮れを子ら行く竿先に蛇ダラン

ひよはるばば


納屋の奥のたりのたりとふくら蛇

中島裕貴


水鏡蛇ゆるゆると月へ

こんじゃのよしこ


蛇の背へおそるおそるとざらりざり

牧野一薫


古家や屋根裏を蛇ずるずると

藤原訓子


理科室の壁に貼られて蛇ぎろり

かえる L


蛇川をひらひらのぼりゆく真昼

松山のとまと


草むらをさわさわとして蛇の道

高橋柳邦


山羊鳴いて蛇にょろにょろとでかすぎる

犬井山羊


青大将ぐるぐるぐると皿に描く

たけうちおうすけ


しゅぅしゅぅしゅぅ我しまへびのこへびなり

☆杏是りゐ菜☆


腕しゅるり白くてひやり赤目蛇

田村美穂


姫路城しゅるりしゅるりと泳ぐ蛇

緒里乃


天井をトトトトズズズねずみ蛇

あいまい もこ


きらきらと川面の蛇やくねくねと

榎本はなちゃちゃ


月夜にはぬらぬら滑る蛇の腹

小川さら


OBの探す球あり蛇しゅるり

光南ゆう


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●選者コメント:

「蛇」はその動きが面白い季語です。ただそこにいるだけで面白いし、動いたり捕まえたりするともっと面白い。その様子を描写するために擬音語や擬態語=オノマトペを使った人たちがたくさんいらっしゃいました。

オノマトペを使う時のポイントは、リアリティとオリジナリティ。小川さらさんの「ぬらぬら」の爬虫類らしい蠢き方や、平良嘉列乙さんの「ぴょろろ」の意外な音の登場はとても愉快です。

読んだ人が思わず「うんうん」と頷きたくなるようなリアルさと同時に、「あ~その言い方私が先に気づきたかった!」と思わせるようなオリジナリティが発揮できれば百点満点です。オノマトペを使いこなして、目指せステップアップ!

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明日から火曜日、水曜日、木曜日、と入選句を発表します。入選句の評価は火、水、木ともに同じランクです。順不同での掲載です。

そして金曜日は、初級者投句欄の優秀句発表です。

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