俳句ポスト365 ロゴ

初級者結果発表

2022年10月20日週の兼題

立冬

【曜日ごとに結果を公開中】

【入選までもう一歩】

選者コメント

家藤正人

みなさまこんにちは。初級の選者、家藤正人です。

月曜日は、入選にもう一歩という句をご紹介します。

・月曜日の「選者コメント」に掲載されている俳句については、作品検索はできません。

・月曜日の「ステップアップのためのヒント」に掲載された句、入選句、優秀句については作品検索が可能です。

月曜の「選者コメント」や「ステップアップのためのヒント」を参考に、目指せ金曜優秀句への道!!


---------------------------------

▼【季語なし&違う季語】

登校中寒さを語る富士を見て

くじら。


鏡見てリップを手に取る冬の朝

しらす


立秋のビルの隙間に光たち

一乃翠花


しばれ朝草取り遠く病む体

英山


タイヤ替え気を引き締めて雪を待つ

歌笛喫茶


庭園の松葉刈り込み冬支度

河部 能子


初ふゆに襟足匂う乙女かな

京女


朝露に足をとられる通学路

悟り開くべく


秋冬下り陽の行方追う洗濯物

三条


たれならん寒き廊下に林檎贈る

志富 野淵


風流れ揺らすスカート冬の脚

篠原維人


冬近し取り残されし木守柿

上殿のおチイ


木枯らしに右へ倣えの薄かな。

杉本誠


初冬の帰路家々の影長し

石黒久美子


待宵の月スピカはひたむきに

泉野


骨折れて治り早くて初冬なり

増井鴨のせいろ


凩や見つかったのは片手だけ

息七二


立春や夕日見ながらペダル漕ぐ

谷サキス


今日の冬山色づきし風しまる

中村止一


北国人の宣戦布告冬に立つ

沈丁花


秋月やシレッと照らす「食」のあと

滴水


北風よ届かぬ思いを吹き消す

冬の詩


なべ恋し鳥肌立つ初冬の夜

藤扇子


差し入れの林檎の砕けてやまい解す

瞳 野淵


落葉にひろがる青空あらそこに

鈍何処どん


立秋に紅葉葉踊る風のロンド

八坂 千


秋冷や江の電走る我が道を

野口立香


送り出し部屋ざつ然とかじかむ手

林 冬生子


秋月の苔の石段散る紅葉

六文龍


冬の空カラスに負けたとんびかな

眞由美


びゅうと舞い急げ急げと押す背中

夏暁


夜行バス裂け目に夢と白む空

腰致


上向けば恋中山薄化粧

超最強ロボ弓弓マン


「たちふゆ」とよむ我が子はまだ半袖

廣湧大和


●ピックアップコメント:

季語の入ってない句や違う季語が入ってしまっている句をピックアップ。

似て非なる季語として多く寄せられたのが「初冬」。兼題である「立冬」は二十四節気のひとつであり、また暦が冬となるその一日を指す場合もあるのに対し、「初冬」は冬全体を初冬・仲冬・晩冬の三期に分けたうちの最初の一期間を指します。

俳句ポスト365では毎週「兼題」と呼ばれるお題を出していますが、季語が出題された場合はその季語(あるいは、その季語の傍題)を必ず詠み込む、というのがたった一つのルール。

各回の出題に全員が取り組むことで切磋琢磨を目指しております。

今募集中の兼題は、1月19日締切の「寒卵」です。ご投句お待ちしてます。


---------------------------------

▼【季重なり】

風感じ立冬が過ぎ冬はいる

そーす。


立冬や小鳥さへづり朝ぼらけ

ビッグネット


立冬や木の葉踏みしめ寒き夕

よつ葉


立冬や落ち葉と風のドックラン

浦 末子


立冬の朝柔らかき落ち葉踏む

金木星


あかぎれや今日は立冬だったのか

高橋芽澄


冠雪に立冬のいろ野に沈む

上原まり


立冬に咲くやひまわり背高く

深山小鞠


空澄みて思い出すパリ立冬に

須藤 松栄


立冬は花と紅葉伴って

頂風


立冬や寒さはこれから本格化

田口悲真棒


立冬や木の葉舞い散る通学路

田中太郎


立冬の初雪胸に舞い降りる

東野出流


立冬や通学の子ら息白き

萩祐湖


涼風に冷たさひそむ立冬日

八十爺


立冬の支度忙しく蟻は行く

飯村ヤーキン


ストーブに火をくべし日は立冬か

北村誠


立冬や干し柿並ぶベランダに

木村 水晶


立冬や色合い吟味すおでんの具

木村鹿男


立冬やランドセルの子の息白く

佐伯良吉


冬立ちて行き交う人の息白く

立川春風


冬来る

鈴玲


●ピックアップコメント:

一句の中に複数の季語が入っている状態を季重なりと呼びます。

鈴玲さんは投句欄には「冬来る」とだけあり、コメント部分に「焼き芋二つ」と記述されておりました。入力の際にバラバラになっちゃった??

季語が複数入っている名句もあるので、「季重なり」は絶対にダメ! というわけではありませんが、複数の季語を作品として成立させるのは、上級者コースのウルトラ技。

ここに紹介した以外にも季重なりの句はあり、火曜日以降に紹介される場合もありますが、比較的許容しやすい季重なりとして受け止めています。

やはりまずは、一句一季語からコツコツ練習して参りましょう。


---------------------------------


※今回の兼題「立冬」初級者投句欄へのご投句は、投句数4308句、投句人数1780人となりました。


以下の句は入選決定!

金曜日「優秀句」へのステップアップのためのヒントをご案内します。


---------------------------------

▼【二重切れ字】

立冬やコーンスープのうましかな

ゆうき百倍ミイコ


立冬や一人しみじみ番茶かな

ゆうちゃん


立冬や比叡の山に灯かな

宗天衣


立冬や届く封書の白さかな

清正


立冬や終わらぬ歌が残りけり

布施 木啄


●ピックアップコメント:

俳句の世界でいわゆるタブーの一つといわれているテクニックに「二重切れ字」があります。「や」と「かな」、「や」と「けり」の重複ですね。

切れ字はスポットライトのようなもの。一句の中に複数のスポットライトが存在すると、どちらを主役にしたいのかわかりにくくなってしまいます。

季重なり同様、複数切れ字が入った名句もあるので、絶対にダメ! というわけではありませんが、上級者コースのウルトラ技と考えて良いでしょう。まずは、切れ字は一つから!


---------------------------------

▼【るる?れる?】

立冬や一夜変わるる鬼怒の山

しげ爺


ギターの音響き渡るる立冬や

取渕靖志


●ピックアップコメント:

動詞の活用の間違い? それとも、助動詞の「り」の接続の間違い?

「変わる」「渡る」は四段活用の動詞なので、連体形は終止形と同じ「変わる」「渡る」となります。下二段活用の動詞連体形のように「るる」にはなりませんので注意が必要です。

また、完了の助動詞「り」の連体形「る」に接続したい場合は以下が正しい形となります。


「立冬や一夜変われる鬼怒の山」 しげ爺

「ギターの音響き渡れる立冬や」 取渕靖志


文法は一見難解ですが、少しずつ慣れたら怖くなくなる……かも?しれません。


---------------------------------

▼【類想】

俳句づくりの上での思考や発想が似通ってしまう事を【類想(ルビ:るいそう)】と言います。


立冬の長き影踏む通勤路

アクエリアスの水


立冬の暦に合わせて鍋囲む

あらきこころ


立冬や風呂の設定1度上げ

いしかわ


立冬やハンドクリーム奮発す

いちご一会


ずるずるとはながでるでるりっとうだ

えりり本人


立冬や長い長い白の世界

エンタメしんのすけ


立冬やおもわずふねこぎ座席の暖

おといり ひとみ


灯油求めて立冬に並ぶ人

かさぶた2コ


立冬が穏やかすぎて冬はいつ

かじまとしこ


冬立てどウール着の首汗を拭く

かつしか幸


立冬にクリーム塗りし唇に

かめよかめ


立冬に黄や紅の葉や濃くなりて

カモメ


立冬の事務所加湿器試運転

きくらげ つくね


吾も犬も身震いの今朝の冬かな

きさらぎ


立冬やきらびやかる化粧富士

さかまつ


立冬やまだ行くな黄よ赤色よ

すげがさ


立冬やしまったライナー探す朝

すみたん


立冬にコーヒー温し日が暮れて

セロ弾きの早川


立冬や小さきものも襟立てて

ちゃるこ


立冬やホットワインを二人分

ねこか花はっか


立冬にしばし悩むは着衣かな

のろのろ爺


色付きのリップクリーム冬に入る

ぱらん


靴下を二枚重ねて冬に入る

ファストペンギン 丈達


立冬や湯気立ち昇るお味噌汁

ふじかわ むり


立冬やおこわの湯気も立ち上り

ふみちゃん


立冬や香箱座り撫でる喉

ふら麦酒


冬が立ち皆既月食赤の月

みちくさQ幸


立冬に初さぶいぼか皆既食

みちのこ


目覚めても起きつ戻りつ立冬の朝

みつ子


立冬の日の半袖やら長袖やら

ゆうみりん


立冬や日向探してバスを待つ

逢花菜子


襟立てて日向を選んで歩く立冬

安武絹紬


立冬の夜勤のお供スープジャー

安部亜喜代


ダウン要るゴミ出しの朝冬立ちぬ

伊勢赤太郎


半袖にダウンを羽織る立冬や

伊東まる


立冬や湯舟恋しき日暮れ時

伊豆大黒


立冬も出直す覚悟温暖化

伊予産


立冬や日向拾ひて散歩かな

奥の昼行燈


立冬の風吹くホーム首元閉じる

岡 由紀阿希


立冬の夜は夫婦で鍋つつく

下のごう こころ


立冬や携帯友に熱き酒

下田あらた


立冬や家族揃いて鍋の膳

下田せつちゃん


立冬や老猫寝入る膝の上

加藤暖


立冬や帰路の子の手のあたたかさ

回道周


冬来たる上着迷いし身支度す

海笑里


縁側に立冬の陽を待っており

外町よしのり


立冬の陽におもほへず上着置く

岩淵の地蔵


立冬の風吹けば葉が落ちにけり

鬼塚樹童


立冬や結露拭く手はしわしわに

吉河好


珈琲とベーコンの湯気今朝の冬

久水


暦見て立冬来たれ鍋にしよう

九塚 光星


立冬の風にストール探す朝

栗花落カナヲ


立冬と思えぬ朝の庭掃除

蛍草飛田


立冬の空の重さに憂い増す

犬塚季夏


冬が立つ首は縮まり影は伸ぶ

研亭


水遣りの服を迷ひし今朝の冬

古都酔仙


立冬や煮物の湯気の沁みる朝

吾亦紅


立冬の通勤電車ややメタボ

光顕


立冬や給湯温度変更す

孝崎有辺


吐く息で暖めた手と知る立冬

工藤もこ


ぬくいねと擦る手頬に今朝の冬

国津もとゆき


手も欲すレジ横の湯気立冬や

黒ぶち眼鏡


猫退いた膝で感じ取る立冬

黒井猫棗


駅向かう人の背まるく立冬なり

黒瀬三保緑


エアコンのフィルター掃除冬きたり

黒田美月


一服の茶柱嬉し冬来たる

佐竹草流


立冬や懐炉代わりの缶コーヒー

佐野智之丞


立冬や干した布団はいと温し

菜花


立冬や子の暖かき手に触れて

坂本 節子


立冬や子らの吐く息きしゃぽっぽ

山口 笑骨


立冬のベランダで見る赤い月

山田 幸玉


立冬や尻で温もる犬と猫

山田 正山


立冬の目覚まし止めてあと一分

紫由紀乃


立冬や湯温設定一℃上げ

手塚童好


風よけを探すホームの立冬よ

朱康君


立冬や「芋でお湯割り」白薩摩

諸岡豆々


今朝の冬夏の陽射しを懐かしむ

小島啓


立冬の陽だまり見つけ猫だんご

松山プネウマ


立冬なの半そで姿本当か

松村 とん


ペダル漕ぐ立冬の朝軋む音

上山凡仁


あと十秒念じて十回今朝の冬

上村 いま


立冬と聞けばソックスウールにし

常陸舞々


立冬の風トレンチの襟を立て

森下真棹


立冬に皆で見上げる皆既月食

深雪


立冬や我に添い寝し犬ぬくし

神崎園子


立冬や茶柱ひとつ朝の幸

星海


足踏みでバスを待つ立冬の朝

晴耕雨読


立冬や赤提灯の灯が恋し

清水猿虎


立冬やスマホの指に息を吐く

西乃羊雲


一年の四季のおわりか冬来る

青玄


皿洗い湯を使おうか冬に入る

静月夜


立冬と思えぬ気候ありがたし

石川明世


いつの間に立冬の風身ひきしむ

赤羽ナナ


立冬や右灯油注ぎひだり息

千夜美笑夢


立冬や厚手の布団天日干し

泉北の石ヤン


病室は結露立冬の同意書

前欽


立冬や今朝も着替えで思案する

前川一老


湯気踊り立冬を知る朝の膳

早川 微睡


立冬やシャワーの温度2℃上げる

窓川ぽん


浅間山白く凍える今朝の冬

其池庵 範満


襟立てて背筋伸ばして今朝の冬

村上熊子


冴えし立冬に赤銅の月食

村田益次郎


湯気立つ窓ヒールで歩く立冬の街

太子橋さくら


立冬の朝ボッと点く暖かさ

大江戸小紋


立冬や皆既月食飯途中

大谷芳


キッチンに珈琲匂ふ今朝の冬

大和杜


立冬や列なす鳥の空は灰

谷本真理子


もう何回目のスヌーズ今朝の冬

智空 谷川


重ね着にまた重ねたり今朝の冬

竹東子


アラームをスヌーズ立冬の朝

茶々子


立冬や帰路は足早子と散歩

中村猗千鰤


今朝の冬家族お揃い囲炉裏鍋

長宗夏羽


立冬の朝上着重ねる散歩哉

津嶋有明


立冬や擦り寄る猫の毛のふかさ

鶴見魚座


今朝の冬茶柱立ちて母の声

徹光よし季


立冬は名ばかり我は半袖ぞ

田雀


布団から抜けれず嘆く立冬よ

田中誠一郎くん


立冬や足湯ほっこり待ち時間

田畑 千嘉子


立冬の白湯染みわたる五臓六腑

渡辺白萩


立冬も粋に半袖誇らしげ

島田 志風


立冬の二階陽当たり猫ねまる

藤 えま


立冬や日暮が急かす帰り道

藤原訓子


立冬や民家の灯り人恋し

陶豪


立冬のひなた探す信号待ち

南全星びぼ


立冬と聞いて便座を温める

南良ならこ


立冬や上着重ねて週初め

猫辻みいにゃん


立冬に暖をとりたいミルクティー

梅雨まち子


眠る猫立冬感じる足元で

白海きい


立冬や風呂の温度を二度上げて

白崎華芳


温暖化衣服に迷う立冬かな

白山


立冬や陽だまりの猫耳ピクリ

白川ゆう


立冬や小雨に背中丸くなり

八代阿見


コーヒーの湯気冷えたベンチでふぅ立冬

浜のじじい


立冬や朝の予報で冬を知る

富雄子


立冬や上着一枚持って出る

芙蓉


名ばかりの立冬迎えし暦繰る

武藤有香


立冬が帰り支度をスピードup

福心棒


立冬の街ゆく服の厚と薄

聞亭圭輔


立冬やタイヤ交換いつにする

丙颯子


ぶるっと身震い眼鏡曇る立冬

朋子


今朝の冬慌てて探すハーフダウン

北欧


立冬や風呂の湯温二度上げて

本田  浩美


立冬の自販機前で迷ふ指

蔓草葛藤


陽だまりで犬も動かぬ立冬かな

鳴澤カノ


立冬やバス停並び手を擦る

木下浩文


立冬や日なたさがして歩く朝

野間 薫陶


立冬に喪中ハガキの筆を取る

野中琴梨


穏やかな今年の立冬上着なく

落合ペコ


立冬や上着羽織って朝散歩

涼風 蘭


立冬や散歩まだかと吠ゆる朝

良梨木


立冬の夕空燃えて茜色

蓮花


肌荒れに溜め息ミドル立冬か

和の光子


大きめのカップにココア冬来る

和野みつ


立冬に風呂ふた開ける湯気楽し

糺 森子


立冬で富士山変わる白妙に

翡翠


立冬の母の布団のぬくもりよ

茉叶


立冬や一枚多く羽織りけり

槇 まこと


●ピックアップコメント:

立冬を迎えると寒い! から始まり、類想には寒さからくる行動がたくさん並びました。上着を羽織ったり、お風呂の温度をあげたり、温かい飲み物を飲んだり。

2022年独特の事情で言えば、月蝕を題材にしたと思われる句も多くありました。たまたま2022年の立冬近くに月蝕が起こったからだと思われます。巡り合わせの妙でありますね。

たくさんの類想を見ることによって、自分の中に類想のデータベースが構築されていきます。今回見かけた発想のおかげで、陥りがちな類想も避けられるようになるかもしれません。


---------------------------------

明日から火曜日、水曜日、木曜日、と入選句を発表します。入選句の評価は火、水、木(ステップアップのためのヒントに掲載分も含む)ともに同じランクです。順不同での掲載です。

そして金曜日は、初級者投句欄の優秀句発表です。


投句はこちら