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初級者結果発表

2023年5月20日週の兼題

蜘蛛

【曜日ごとに結果を公開中】

【入選までもう一歩】

選者コメント

家藤正人

みなさまこんにちは。初級の選者、家藤正人です。

月曜日は、入選にもう一歩という句をご紹介します。


・月曜日の「選者コメント」に掲載されている俳句については、作品検索はできません。

・月曜日の「ステップアップのためのヒント」に掲載された句、入選句、優秀句については作品検索が可能です。


月曜の「選者コメント」や「ステップアップのためのヒント」を参考に、目指せ金曜優秀句への道!!


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▼【季語なし&違う季語】

麦秋のひこうき雲に馳す戦地

雨読人


夕焼けの空に拡げる雲の網

佐伯良吉


ソーダ水貴方との未来みえるかな

小田 芙蓉子


木の枝糸をまきつけ獲物とり

海原


朝は愛で暮れは追い出す迷信よ

大渕航


●ピックアップコメント:

季語の入ってない句や違う季語が入ってしまっている句をピックアップ。

前回の季語「麦の秋」で送ってしまっている人もいます。残念!

投句締切時刻を過ぎてしまうと次の兼題に切り替わってしまいますので、投句はお早めに。

また、蜘蛛をテーマにした句ではなく季語「蜘蛛」を使った句であることもポイントです。

俳句ポスト365では各回の出題に全員が取り組むことで切磋琢磨を目指しております。

今募集中の兼題は、8月19日締切の「コスモス」です。ご投句お待ちしてます。


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▼【兼題の考え方】

中学の恩師勧めた「蜘蛛の糸」

さこたゆう


乾く喉冷えたビールは蜘蛛の糸

東 燈父


敵の敵は味方蜘蛛的戦略

手毬まりこ


顔につく蜘蛛の巣のごときマスク取り

明砂座人


●ピックアップコメント:

兼題に季語が出題された場合、その季語または傍題を詠み込むのがルールです。

今回の兼題は「蜘蛛」。投句の際には「蜘蛛」をちゃんと季語として使っているかも注意したいところです。

さこたゆうさんの場合「蜘蛛の糸」は芥川龍之介の短編小説の題名だと察せられます。

東 燈父さんの場合はビールに対して「蜘蛛の糸のような救いだ」という意味になりましょうか。

いずれの場合も季語である本物の「蜘蛛」として使われているのではないことがわかります。

手毬まりこさん、明砂座人さんの場合もそれぞれ「蜘蛛のような戦略」「蜘蛛の巣のようなマスク」と比喩として「蜘蛛」が使われています。それはつまり本物の「蜘蛛」ではないわけです。

季語を固有名詞や比喩などの一部に使うと、季語としての力を正しく発揮できないことがありますので、気をつけておきましょう。


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▼【季重なり】

四十路過ぎ蜘蛛すら素手で麦の秋

山内きみ


熱帯夜網目にはまる蜘蛛の腹

どれみ


海の家あるじのごとし蜘蛛の巣よ

ながた由樺楽


夏の月蜘蛛を餌にて夜釣りかな

ロミ


日焼けした顔より大きい蜘蛛の糸

飴最中


女郎蜘蛛食す命に年明ける

一発


蜘蛛の巣で蝉捕まえし祖父隣

壱岐まがり


黒点や近づけば蜘蛛薔薇の花

久世わわ


梅雨の中二輪に潜む蜘蛛の糸

窪田壱刻


積乱雲くもの巣の糸ぴんと張り

高橋順子


蜘蛛きらい糸をだしてる百合につく

時間餅


湯上がりの路新緑の蜘蛛たなびき良き

神さん


病葉のかかりて高き蜘蛛の糸

東予稲村


オニグモが塞ぐ巣と初夏の近道

林トマトジュース煮


●ピックアップコメント:

一句の中に複数の季語が入っている状態を季重なりと呼びます。

蜘蛛はいろんな場所に出てきますから、その場所や状況を語ろうとした結果季重なりになってしまった例がちらほら。

うっかり季重なりは新たな季語を覚える良いきっかけ。これを機会に新しく知識を増やして次に活かしましょう。


季語が複数入っている名句もあるので、「季重なり」は絶対にダメ! というわけではありませんが、複数の季語を作品として成立させるのは、上級者コースのウルトラ技。

ここに紹介した以外にも季重なりの句はあり、火曜日以降に紹介される場合もありますが、比較的許容しやすい季重なりとして受け止めているものもあります。

やはりまずは、一句一季語からコツコツ練習して参りましょう。


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※今回の兼題「蜘蛛」初級者投句欄へのご投句は、投句数4003句、投句人数1701人となりました。


以下の①については入選決定!

金曜日「優秀句」へのステップアップのためのヒントをご案内します。


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▼①【類想】

髪の毛についた蜘蛛の巣ねばっこく

アボカドブロッコリー


詫びつつも払う巣跡に蜘蛛の母

あまねくみぞれ


ピョンピョンと蜘蛛ジャンプしてカーテンに

あらきこころ


蜘蛛の囲を額で破り野良仕事

イーグル東山


壊しても再建続く蜘蛛の糸

オイラー


朝蜘蛛をポケットに入れ大安日

おかえさき


真夜中のバスタブ底に蜘蛛がおり

おといり ひとみ


八つの足八つ目で八艘飛びす蜘蛛

かなのりえこ


ぶら下がり振り子となりて蜘蛛の網

キミネコちゃん樋口


蜘蛛だって巣を張らないのもいるんだよ

くりはらのんき


福呼ぶと言われし朝の蜘蛛拝む

さわだ佳芳 


朝蜘蛛の拡げた光揺らす風

しろくも


ティッシュ広げ蜘蛛を追いやる旅の宿

すずき鈴花


祖母の家蜘蛛の巣居間に仏壇に

せんべい


物干しや蜘蛛のヨーヨー遊びかな

つついぐれちゃん


蜘蛛の囲をはらひて蜘蛛に詫びを入れ

とりゆふ


蜘蛛動くだぁるまさんがこぉろんだ

ばつおましょう


帰りきた家に主なる蜘蛛にらむ

はっとりじいじ


闇潜む蜘蛛一匹や餌を待つ

ビーフステーキ早川


糸絡む蜘蛛の動きや風任せ

ビッグネット


ドアミラーにかかる糸先蜘蛛泳ぐ

ぴょんばぁ


虫はいや蜘蛛はいい子だ役に立つ

まほろば菊池


掃除機で蜘蛛を吸い込みごめんなさい

みかん


青空に幾何学アート蜘蛛の糸

みかん成人


払っても同じところにクモの巣が

みちくさQ幸


風に乗り今日の巣をはる朝の蜘蛛

メ之下クマ子


天井の角に息殺す蜘蛛

やのかよこ


朝蜘蛛を見つけし出社の歩軽く

ゆきのふ


球探す薮の行手に蜘蛛の囲や

ゆりのいろ


軒下や朝日に光る蜘蛛の糸

よつ葉


朝の蜘蛛見つけて期待良い出会い

渥美 さや香 


深夜のキッチン目の前蜘蛛降りて

安曇野くーみん


部屋の隅我の持ち場と巣張る蜘蛛

案山子の鹿か


朝の蜘蛛釈迦の使いと放しけり

伊丹春水


見上げたる先に蜘蛛の囲と青空と

伊能幸穂


わがゆくて何故にさえぎる蜘蛛の糸

井口幸嬰


雨上がり蜘蛛の巣だけが煌めいて

一色凛夏


掃へども翌日の網や蜘蛛の奴

羽柳武助


蜘蛛の糸そよ風に舞うひとり歌

影夢者亜


裏庭に女郎蜘蛛棲む古家かな

永井うた女


雨戸開く朝日に揺れる蜘蛛の糸

岡崎梗舟


故郷の吾の実家よ蜘蛛住まう

岡崎秀恵


蜘蛛の糸風を捕らえて新天地

岡崎藍


雨上がり蜘蛛の巣ながめ句作りに

加藤光狗


朝のクモ今日もいい日と壁歩く

可可夫豆


蜘蛛さんよ悪い虫さん捕まえて

歌笛喫茶


はらっても知らぬ間に張る蜘蛛の家

華生華名


黒点や急に動きし小さき蜘蛛

海笑里


真夜中のカーテン裏の蜘蛛密か

笠川香奈


蜘蛛の糸眩しき朝日照り返す

梶正


犍陀多を救う気あったのか蜘蛛よ

甘蕉


夜蜘蛛や朝まで待てば福になる

岸本 五月


蜘蛛の巣は見本になりしレース編み

岩橋 夕紀


八つの手獲物捕える蜘蛛の糸

吉田明由夢


蜘蛛の巣を顔にまきつけ秘密基地

久間 いたる


サイドミラーくるりと駆ける蜘蛛の子や

久慈川


雨降りて軒に戻るや蜘蛛二匹

久世青葉


陽光や庭掃く朝に蜘蛛の糸

球子


竿に蜘蛛洗濯物に糸絡み

橋口惠


祖母の家の厠の黒き大蜘蛛や

玉 ゆこげん


蜘蛛の巣や主はじっと待っている

玉井令子


糸を張り喰らう獲物を待つ蜘蛛よ

玉京子


八つの目を持つ蜘蛛と我同居せり

空野朔月


網をかけ独り客待つ夜の蜘蛛

桂 歩


新築の庭の隅っこ蜘蛛二匹

桂都智風


主人なき箪笥の底の蜘蛛の巣よ

月下美人


目の前にすうつと蜘蛛の下りて来し

月野うさぎ


晴天や物干し竿に蜘蛛ぞわり

月野ひとみ


雨降りて駆け込む軒端蜘蛛の影

古寺 憲子


陽光にきらり一筋蜘蛛の糸

五十嵐 驟雨


飛び跳ねし蜘蛛と遭遇洗面所

五葉 松子


降る雨や雫に光る蜘蛛の糸

吾亦紅也


わが古家たまに顔出す主の蜘蛛

好運


朝蜘蛛は縁起がよいと歓迎す

広島立葵


蜘蛛の糸また顔につく駐輪場

弘月令五


朝蜘蛛は殺生するなと祖母の言う

紅い靴


善行で垂らしてほしい蜘蛛の糸

高槻知子


するすると忍者のごとく蜘蛛の妙

高田コブシ


雨上がりキラキラ雫の蜘蛛の糸

黒原夢美


病床で思ふカンタダ夜の蜘蛛

佐藤朱子


張り詰める物干し竿に蜘蛛ひとつ

斎藤コロンのママ


軒下に住みつく蜘蛛は主になり

桜華姫


夜の蜘蛛縁起悪いと祖母ぽつり

桜木レイ


微風に蜘蛛の囲揺れて虹色に

薩摩南風


主なく夕にたゆたふ蜘蛛の巣よ

山口 笑骨


ぎつしりと絡む雨粒蜘蛛の糸

山田由紀子


主なき家の蜘蛛の巣凛として

山田翔子


蜘蛛の囲を透かして空は青みたり

紫陽花の父


夜の蜘蛛吉祥呼ぶと母の言

鹿人 紅葉


職人の蜘蛛レースの刺繍個性でる

鹿哲里


蜘蛛の囲がブルーの空を透かし見せ

漆崎 明


夜の蜘蛛とるなと聞きし幼き日

柴田あやめ


朝蜘蛛を福と捉えて吉日に

酒井 癒香


朝に蜘蛛茶柱立ちて宝くじ

秋谷 忍


久々の古き母屋に蜘蛛一匹

集 真藍


雨上がり蜘蛛の囲ひとつとおせんぼ

春木ともこ


雨上がり光る蜘蛛の巣匠わざ

春野桜草


蜘蛛の囲の主はひそかに身を隠し

勝瑞 陽


蜘蛛の巣を払って眩し空の青

小花風美子


昨日と同じところに蜘蛛の糸

小笠原 くう


少年や蜘蛛の巢網で虫をとり

小関啓明


蜘蛛の巣いつの間に早朝のサドル

小室雅俊


女郎蜘蛛風に吹かれて渡りけり

小春風 幸


山登り見上げりゃそこに女郎蜘蛛

小塚ちか丸


蜘蛛の囲は風に吹かれて哀れかな

松本光由


雨や降る滴る水と蜘蛛光る

上萩 龍一


納屋の隅巣張り巡らし蜘蛛の目

植木照美


蝿取蜘蛛八艘跳びのごとく逃げ

新谷夏風


手の中の朝蜘蛛そっと放しけり

森 茉那


蜘蛛の巣を昨日も今日も払いけり

森川真澄


くしゃくしゃの蜘蛛抽斗の隅におり

森毬子


妹と怯む祖母宅のデカ蜘蛛

深空汐音


軒先に一筋垂れる蜘蛛の糸

神谷史記


雨上がり水玉光る蜘蛛の巣や

神谷理風


押し入れの二つの角に蜘蛛の巣よ

親睦


青天に網掛ける蜘蛛独り占め

水戸定家


夕餉前子の騒ぐ先蜘蛛いっぴき

水晶兎


軒先に不気味に光る蜘蛛の巣や

水野 孝


庭掃けば通せんぼする蜘蛛の糸

水野 寿香


蜘蛛の子に一寸の生命感ずる夜

瑞雲和合


蜘蛛の囲を残したままで主は留守

杉田ひらさこ


蜘蛛の巣に雨粒零れ色変える

星宮雨霧


銀色に揺れしゆりかご蜘蛛の糸

星野美咲


雨上がり蜘蛛のレースにビーズ散り

清澄麻子


雨上がりきらりと光る蜘蛛の糸

清正


蜘蛛の罠主不在の社かな

生田 大五郎


雨上がり軒下に光る蜘蛛の糸

西牡丹


下駄箱の蜘蛛に悲鳴の朝刊取り

西原 煌舟


夜の蜘蛛よろこぶと呼び縁起もの

青い手まっちゃん


雨戸開けスッと糸引く朝の蜘蛛

青空小鳥


泣き叫ぶ弟しり目に蜘蛛不動

赤坂芝園


益虫と何度呟けども蜘蛛

川蜷


蜘蛛の糸切っても明日出来ている

早坂 一周


蜘蛛の糸どこまで続く行く先は

早風


朝の蜘蛛殺すなと言った母の影

村井雅優


蜘蛛の囲や風にゆらゆらハンモック

大家由美子


蜘蛛の巣や取っても取ってもまた張られ

大熊猫 美由浜


空舞ふやながき糸吐き蜘蛛何処へ

大石 真水


我が家に棲む蜘蛛の名はシャーロット

大泉ちんちろりん


無人駅待合い室に女郎蜘蛛

大塚青鯨子


久しぶり自転車出すと蜘蛛の巣が

大野なな


大蜘蛛や暗闇走る恐ろしさ

大薮薫子


雨上がり蜘蛛の数珠映え鐘響く

谷屋しゅん丸


夜勤あけ玄関に蜘蛛出迎えか

男子三兄弟


蜘蛛の子を四方に散らし風にのり

池ばーちゃま


蜘蛛の囲にかかる命のあえぎあり

竹内 喜和


雨上がり蜘蛛の軽わざ空に舞う

茶子父


朝起きて光り輝く蜘蛛の家

中岡 桂


蜘蛛の囲に占領されゆく秘密基地

中村のりぴ


糸吐きて旅立つ蜘蛛の潔し

中澤深翠


今朝もまた蜘蛛の巣かかる車庫の隅

仲嶋孝人


目の前をすっと下り来る朝の蜘蛛

長谷川 玲瓏


古家の先客の蜘蛛動かざり

鳥の凡庸子


完敗ね蜘蛛の手仕事レース編み

塚田柳糸


蜘蛛浮遊今目の前に蜘蛛の糸

椿 律


朝の蜘蛛けふは良き事ある一日

田中香月


細き糸渡る蜘蛛の子風に揺れ

田中妙女


レース編み窓辺に揺れる蜘蛛の糸

田島さえこ


真夜中や蜘蛛がタンスの隅に居り

渡部鳴堂


朝蜘蛛に縁起かつぎの日差しかな

渡辺 あつし


家蜘蛛や闇夜に光る忍者の目

渡辺小豆


寺静か母の墓には小さき蜘蛛

冬藻翠花


傘立ての影にひっそり蜘蛛の子ら

島田 モンブラン


雨後の夜の蜘蛛の囲光る玉真珠

桃姫


無音の白糸落つ眼前に蜘蛛

藤 無南


宵蜘蛛は良い蜘蛛と言ふ昔から

藤原訓子


掃出してもはきだしても戻る蜘蛛

藤晋


朝の蜘蛛生かしておいて夜殺す

陶豪


朝蜘蛛は殺さず居なくなるを待つ

陶冶


今朝もまた蜘蛛の囲払い出勤す

日向浜


雨上がり蜘蛛の巣は真珠の館

乃奈


照りつける陽に蜘蛛放つ糸光る

乃邑歳幸


おかえりと迎えてくれるの蜘蛛一人

馬平良洲


糸織りて巧みな蜘蛛の夢の網

俳狂老人卍


悪気なく蜘蛛のリビングこわす吾子

梅津桜子


軒先に糸を張りたる蜘蛛一つ

八代葡萄


祖母の家便器の蜘蛛に見つめられ

尾崎ダリア


居候蜘蛛天井に部屋作る

美月つみき


「いるだけで迷惑がるな」蜘蛛の言

瓢箪鮎


陽を受けて何処に流れて蜘蛛の糸

武田鳥渡仁


またしても蜘蛛の囲はらふごめんねと

風かおる


今が世のカンダタ見てる蜘蛛の糸

風間 爺句


軒下に雨粒キラリ蜘蛛レース

福田もふもふたん


白き床跳ねて可愛や部屋の蜘蛛

聞亭圭輔


床掃かれ右往左往のクモ二匹

丙 颯子


知らぬ間に部屋の隅で死んだ蜘蛛

平沢小歌


目の隅に蜘蛛お互い身じろぎせず

米米


雨上がり蜘蛛の囲きらり我が狭庭

放浪者


カーテンの陰から蜘蛛や跳び跳ねる

北の星


悪させぬ間借りを許せ蜘蛛の声

北乃かんばし


つぶやきは蜘蛛の巣に水滴綺麗

本橋多賀士


旅立つ蜘蛛おーいどこいく?風のままに

未知女


蜘蛛の囲や遊ぶ雨玉軒先に

木化石


円網で虎視眈々の黄金蜘蛛

木谷 きょうみ


物干しに伸びる光の蜘蛛の糸

目黒のさんま洋幸


朝散歩顔につくのは蜘蛛の糸

野村すず


湖に日を浴び踊る蜘蛛の糸

野本 ゆな


ごめんよと蜘蛛の巣払う山路かな

野々山あざみ


今朝もまた箒一振り蜘蛛落とす

愉来理あゆむ


独居する侘びしき家に蜘蛛の糸

唯野 夢色


糸はらう物干し今朝も君か蜘蛛

由凛


蜘蛛の巣にひとひら残る虫の羽

与野小町


蜘蛛の囲に一枚の翅揺れてをり


蜘蛛の巣が顔へかかりし朝の山

陽介山


蜘蛛が出て母親悲鳴皆退散

立川夏子


朝蜘蛛や出会って後に吉報来

涼風 蘭


人通り閉ざすがごとき蜘蛛の糸

林一芳


寝室に昨日の蜘蛛は今日もまた

鈴木秋紫


蜘蛛の巣に輝くしずく虹の色

蓮花


蜘蛛の糸庭木手入れに顔に付き

篭山眺望


蜘蛛の巣や静けき山路顔に手に

徘徊志太郎


ベランダにせっせせっせと蜘蛛の網

濱野ぽにょりん


朝起きて雨戸に垂れし蜘蛛の糸

珈琲舎亮


木の間より長く一筋蜘蛛の糸

齋藤由


山道を蜘蛛糸かき分け頂上へ

藪本ゆかり


犍陀多を思ひて今朝は蜘蛛眺む

髙橋好泉


●ピックアップコメント:

傍題である蜘蛛の巣を扱った類想が多かったのも印象深い結果となりました。生きて動いている蜘蛛だけでなく、その場に留まり続けるモノな分、目にする機会も多いということでしょうか。そして、その蜘蛛の巣になにかが掛かっているのもお約束。時には水の粒であり、時には虫であり、時には気づかず触れてしまった自分自身であり。

たくさんの類想を見ることによって、自分の中に類想のデータベースが構築されていきます。今回見かけた発想のおかげで、陥りがちな類想も避けられるようになるかもしれません。


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明日から火曜日、水曜日、木曜日、と入選句を発表します。入選句の評価は火、水、木(ステップアップのためのヒントに掲載分も含む)ともに同じランクです。順不同での掲載です。

そして金曜日は、初級者投句欄の優秀句発表です。


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