類想一覧(選外)
膝小僧列なる足湯余寒かな
仲村調息
犬小屋の犬に余寒のまとわりぬ
三輪修平
子等帰る部屋の四隅の余寒かな
蔵原 貢次郎
余寒着て背中の丸みふくらみぬ
沢瀉みやこ
目を閉じて朝日感じる余寒かな
玉川 緑風
病室の終の間ひとり余寒かな
桃姫
余震きて余寒の夜に猫を抱く
防子
傷心の私に刺さる余寒かな
宮川幸子
閉店の手書き貼紙余寒なほ
宏楽
回転ドア出づる余寒と入れ替へに
古賀
転職のヒールコツコツ余寒かな
土井あくび
余寒なお駅頭で子の帰り待つ
熊本与志朗
「サクラチル」余寒の駅にただ一人
からすちゃん
真夜中の秒針の音余寒かな
峰泉しょうこ
固き芽のもどかしげなる余寒かな
杉岡ライカ
ゴミ出しの朝にサンダルああ余寒
おん ころころ
神経痛またぶり返す余寒かな
境内集
猫たんぽ膝に漱石繰る余寒
小西天
外出の我が背を襲う余寒かな
山口雀昭
余寒なり「ホットで」にまだ迷ひなし
嶋田奈緒
制服の少し大きめ余寒かな
奏月 葉音
追い焚きを毎夜重ねる余寒かな
スマイリー
余寒なほ濃茶右手に猫抱く
岩文太
余寒かな父の亡きこと思ひ出す
サトサナ
余寒なるもぐる寝床の冷え冷えと
稲垣さら
余寒なり曇天を刺すスカイツリー
田中紺青
うづく膝なだめてゐたり余寒かな
しおやま句吟子
一人居に手狭で広き部屋余寒
海猫
保育園落選しての身に余寒
駒野繭
午前十時の上着を迷ふ余寒
ひでやん
徒歩一分コンビニまでの余寒かな
海谷泰水
訃報告ぐ紙の一枚あり余寒
どすこい早川
早朝に布団取り合う余寒かな
円谷琢人
息つつむ両手をといて余寒なほ
島陽広
散歩中ランニングへと余寒かな
美年
君を待つ車の中の余寒かな
西村柚紀
電線は風裂き唸る余寒かな
井口あきこ
バスの中陽光と足追う余寒
野山夕理
能登地震に一月経ちし余寒かな
相模仙人
余寒の駅子等の声飛ぶ能登募金
えふしー芭流砂
薬飲む喜寿の食後の余寒かな
徳翁
病床の母の手そっと余寒かな
森の真林
アイツからチョコにやけ顔に余寒
すかーてぃっしゅ
北の庭ようやく日のさす余寒かな
花とわこ
余寒なほ時折り軋む長廊下
はるく
能登を刺す余寒や余震また余震
佐藤浩章
また余震眠れぬ夜を余寒かな
加賀くちこ
余寒なほ猫二匹足早の路地
まろのり
雨垂れの音に余寒を覚えけり
北川楠山
待ちかねた朝釣り行けど余寒かな
杉と松
失恋後余寒変換恋予感
夏目あかり
救急車サイレンとまり闇余寒
川蜷
陽だまりに猫が団欒余寒かな
宏峰
既読スルーに眠れぬままの朝余寒
山乃尾乃道之翁
寝返りに布団出る猫入る余寒
俳句王
避難所に寄せ合う背中余寒あり
広瀬八重子
午前五時触れた蛇口の余寒かな
房総とらママ
余寒ふと午前三時の目覚めかな
正雪
糸通し苦戦して居り余寒かな
りんごのほっぺ
寄り道の少なき散歩余寒かな
杜野 ほたる
ふと気づく余寒に想う義兄の死
平川一空
庭先の日差しに余寒首すくむ
寺木 風宣
待ち惚け骨身に沁みる余寒かな
松沢ふじ
ジョギングはキャンセル余寒の朝
なつめモコ
真夜中に手洗いに二度余寒かな
中村 自在
産土にもう父母あらぬ余寒かな
奥田圭衣
束の間の陽射しに余寒ゆるびけり
平林 政子
二冊目のお薬手帳余寒かな
ななかまど
頬を打つ風の硬さや余寒なほ
安田蝸牛
駅前のさびれし町の余寒かな
渡辺宵雨
余寒なほ訃報をなぞる小さき指
球追
古寺の畳廊下の余寒かな
坂口いちお
朝方に余寒感じる夜具の中
鈴木由花子
庭に出て豆拾う素手余寒かな
箕浦敬光
人工の関節痛む余寒かな
空郷 阿房人
次回の兼題も
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選者コメント
夏井いつき選
◆まずは、基本的なことを確認しましょう。
似たような季語に見えますが、「春寒」「冴返る」は、別の独立した季語として考えるべきです。
更に、入力ミスなのか勘違いなのか、「夜寒」が三十数句もありました。また「余寒」を「よさむ」と読んでいる人も一定数いるようです。コメント欄に、俳句の読み方を書いている人がいますが、その中にも「よさむ」とルビを振っているケースもありました。
◆「余寒」は三音の季語なので、「余寒風」「余寒雲」「余寒晴」のような使い方をしている句もあったのですが、無理に五音にした感を受けました。
下五を「余寒かな」と詠嘆した句は相当数ありましたが、中七で調べが滞っているため、「かな」の詠嘆が効いていない句がかなり目につきました。
五音にしたいから……という理由で、無理をすると失敗します。特に「かな」の詠嘆に関しては、心して遣って頂きたいと思います。
◆以下、類想のパターンを紹介しておきます。
□ イメージ 連想
・ 凛とする
・ 光(明るさも) 旅立ち
□ 寒いので
・ 灯油や冬物の服を仕舞えない
・ なかなか起きられない
・ 何かするのをやめる(外出とか水仕事とか)
・ 毛布や布団をまた一枚かける
・ 厚着をする
・ 懐炉を貼る
・ 温かなものを食べたり飲んだり (温かな)カップを両手につつむ
・ 首をすくめる 手を擦る
・ 手を繋ぐ 寄り添う
・ 傷が疼く
・ 足早になる 帰りを急ぐ
・ 足踏みしながらバスや電車を待つ
・ 夜中にトイレ
・ 古傷が痛む
□ 気温が低いので
・ いろいろなものが「堅い」「硬い」 → 風や声やチョコや生地や塩などなど
・ 蕾がほぐれない
□ その時期は
・ 昨日の節分の名残
→ 豆が落ちている
・ 受験シーズン 合格や不合格の報せ
・ 卒業 卒論 異動 別れ
・ そろそろ杉花粉が……
・ バレンタインデーのチョコ
□ 春の予感
・ 恋の予感 (失恋 別れの予感も)
・ 子供の成長
□ 悲しみ
・ 震災の地の余寒 能登地震 黙祷
・ 訃報 葬儀 故人を想う
・ 検査を受ける 入院 余命
□ 余寒の街
・ ショーウインドーは季節の先取り 春の色
・ 錆びた看板 シャッター街
・ 閉店 空きビル 空き家の庭
□ 猫……83句 → (寒いので)猫が布団に入ってくる くっついてくる 縁側で猫が丸くなっている 等。
□ 余寒はここに
・ 部屋の隅 廊下
・ 指先 足元
・ 〇〇へ行く途上
□ その他
・ 〇〇が余寒を纏う 〇〇に余寒がまとわりつく
・ 余寒でも子供は元気!
・ 余寒の風の荒さ
・ ~に一人 孤独
※今回の兼題「余寒」中級者以上投句欄へのご投句は、投句数3863句、投句人数1642人となりました。以下、類想句の一覧です。