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中級者以上結果発表

2024年1月20日週の兼題

余寒

【曜日ごとに結果を公開中】

【類想】

選者コメント

夏井いつき

◆まずは、基本的なことを確認しましょう。

 似たような季語に見えますが、「春寒」「冴返る」は、別の独立した季語として考えるべきです。

 更に、入力ミスなのか勘違いなのか、「夜寒」が三十数句もありました。また「余寒」を「よさむ」と読んでいる人も一定数いるようです。コメント欄に、俳句の読み方を書いている人がいますが、その中にも「よさむ」とルビを振っているケースもありました。


◆「余寒」は三音の季語なので、「余寒風」「余寒雲」「余寒晴」のような使い方をしている句もあったのですが、無理に五音にした感を受けました。


 下五を「余寒かな」と詠嘆した句は相当数ありましたが、中七で調べが滞っているため、「かな」の詠嘆が効いていない句がかなり目につきました。


 五音にしたいから……という理由で、無理をすると失敗します。特に「かな」の詠嘆に関しては、心して遣って頂きたいと思います。


◆以下、類想のパターンを紹介しておきます。


□ イメージ 連想

 ・ 凛とする

 ・ 光(明るさも) 旅立ち


□ 寒いので

 ・ 灯油や冬物の服を仕舞えない

 ・ なかなか起きられない

 ・ 何かするのをやめる(外出とか水仕事とか)


 ・ 毛布や布団をまた一枚かける

 ・ 厚着をする

 ・ 懐炉を貼る

 ・ 温かなものを食べたり飲んだり (温かな)カップを両手につつむ

 

 ・ 首をすくめる 手を擦る

 ・ 手を繋ぐ 寄り添う

 ・ 傷が疼く

 ・ 足早になる 帰りを急ぐ

 ・ 足踏みしながらバスや電車を待つ

 ・ 夜中にトイレ

 ・ 古傷が痛む


□ 気温が低いので

 ・ いろいろなものが「堅い」「硬い」 → 風や声やチョコや生地や塩などなど

 ・ 蕾がほぐれない


□ その時期は

 ・ 昨日の節分の名残

    → 豆が落ちている

 ・ 受験シーズン 合格や不合格の報せ

 ・ 卒業 卒論 異動 別れ

 ・ そろそろ杉花粉が……

 ・ バレンタインデーのチョコ  


□ 春の予感

 ・ 恋の予感 (失恋 別れの予感も)

 ・ 子供の成長 


□ 悲しみ 

 ・ 震災の地の余寒 能登地震 黙祷

 ・ 訃報 葬儀 故人を想う

 ・ 検査を受ける 入院 余命


□ 余寒の街

 ・ ショーウインドーは季節の先取り 春の色

 ・ 錆びた看板 シャッター街

 ・ 閉店 空きビル 空き家の庭


□ 猫……83句  → (寒いので)猫が布団に入ってくる くっついてくる 縁側で猫が丸くなっている 等。


□ 余寒はここに

 ・ 部屋の隅 廊下

 ・ 指先 足元

 ・ 〇〇へ行く途上


□ その他

 ・ 〇〇が余寒を纏う 〇〇に余寒がまとわりつく

 ・ 余寒でも子供は元気!

 ・ 余寒の風の荒さ

 ・ ~に一人 孤独


※今回の兼題「余寒」中級者以上投句欄へのご投句は、投句数3863句、投句人数1642人となりました。以下、類想句の一覧です。

類想一覧(選外)

  • 膝小僧列なる足湯余寒かな

    仲村調息

  • 犬小屋の犬に余寒のまとわりぬ

    三輪修平

  • 子等帰る部屋の四隅の余寒かな

     蔵原 貢次郎

  • 余寒着て背中の丸みふくらみぬ

    沢瀉みやこ

  • 目を閉じて朝日感じる余寒かな

    玉川 緑風

  • 病室の終の間ひとり余寒かな

    桃姫

  • 余震きて余寒の夜に猫を抱く

    防子

  • 傷心の私に刺さる余寒かな

    宮川幸子

  • 閉店の手書き貼紙余寒なほ

    宏楽

  • 回転ドア出づる余寒と入れ替へに

    古賀

  • 転職のヒールコツコツ余寒かな

    土井あくび

  • 余寒なお駅頭で子の帰り待つ

    熊本与志朗

  • 「サクラチル」余寒の駅にただ一人

    からすちゃん

  • 真夜中の秒針の音余寒かな

    峰泉しょうこ

  • 固き芽のもどかしげなる余寒かな

    杉岡ライカ

  • ゴミ出しの朝にサンダルああ余寒

    おん ころころ

  • 神経痛またぶり返す余寒かな

    境内集

  • 猫たんぽ膝に漱石繰る余寒

    小西天

  • 外出の我が背を襲う余寒かな

    山口雀昭

  • 余寒なり「ホットで」にまだ迷ひなし

    嶋田奈緒

  • 制服の少し大きめ余寒かな

    奏月 葉音

  • 追い焚きを毎夜重ねる余寒かな

    スマイリー

  • 余寒なほ濃茶右手に猫抱く

    岩文太

  • 余寒かな父の亡きこと思ひ出す

    サトサナ

  • 余寒なるもぐる寝床の冷え冷えと

    稲垣さら

  • 余寒なり曇天を刺すスカイツリー

    田中紺青

  • うづく膝なだめてゐたり余寒かな

    しおやま句吟子

  • 一人居に手狭で広き部屋余寒

    海猫

  • 保育園落選しての身に余寒

    駒野繭

  • 午前十時の上着を迷ふ余寒

    ひでやん

  • 徒歩一分コンビニまでの余寒かな

    海谷泰水

  • 訃報告ぐ紙の一枚あり余寒

    どすこい早川

  • 早朝に布団取り合う余寒かな

    円谷琢人

  • 息つつむ両手をといて余寒なほ

    島陽広

  • 散歩中ランニングへと余寒かな

    美年

  • 君を待つ車の中の余寒かな

    西村柚紀

  • 電線は風裂き唸る余寒かな

    井口あきこ

  • バスの中陽光と足追う余寒

    野山夕理

  • 能登地震に一月経ちし余寒かな

    相模仙人

  • 余寒の駅子等の声飛ぶ能登募金

    えふしー芭流砂

  • 薬飲む喜寿の食後の余寒かな

    徳翁

  • 病床の母の手そっと余寒かな

    森の真林

  • アイツからチョコにやけ顔に余寒

    すかーてぃっしゅ

  • 北の庭ようやく日のさす余寒かな

    花とわこ

  • 余寒なほ時折り軋む長廊下

    はるく

  • 能登を刺す余寒や余震また余震

    佐藤浩章

  • また余震眠れぬ夜を余寒かな

    加賀くちこ

  • 余寒なほ猫二匹足早の路地

    まろのり

  • 雨垂れの音に余寒を覚えけり

    北川楠山

  • 待ちかねた朝釣り行けど余寒かな

    杉と松

  • 失恋後余寒変換恋予感

    夏目あかり

  • 救急車サイレンとまり闇余寒

    川蜷

  • 陽だまりに猫が団欒余寒かな

    宏峰

  • 既読スルーに眠れぬままの朝余寒

    山乃尾乃道之翁

  • 寝返りに布団出る猫入る余寒

    俳句王

  • 避難所に寄せ合う背中余寒あり

    広瀬八重子

  • 午前五時触れた蛇口の余寒かな

    房総とらママ

  • 余寒ふと午前三時の目覚めかな

    正雪

  • 糸通し苦戦して居り余寒かな

    りんごのほっぺ

  • 寄り道の少なき散歩余寒かな

    杜野 ほたる

  • ふと気づく余寒に想う義兄の死

    平川一空

  • 庭先の日差しに余寒首すくむ

    寺木 風宣

  • 待ち惚け骨身に沁みる余寒かな

    松沢ふじ

  • ジョギングはキャンセル余寒の朝

    なつめモコ

  • 真夜中に手洗いに二度余寒かな

    中村 自在

  • 産土にもう父母あらぬ余寒かな

    奥田圭衣

  • 束の間の陽射しに余寒ゆるびけり

    平林 政子

  • 二冊目のお薬手帳余寒かな

    ななかまど

  • 頬を打つ風の硬さや余寒なほ

    安田蝸牛

  • 駅前のさびれし町の余寒かな

    渡辺宵雨

  • 余寒なほ訃報をなぞる小さき指

    球追

  • 古寺の畳廊下の余寒かな

    坂口いちお

  • 朝方に余寒感じる夜具の中

    鈴木由花子

  • 庭に出て豆拾う素手余寒かな

    箕浦敬光

  • 人工の関節痛む余寒かな

    空郷 阿房人

次回の兼題も
皆さまふるって投句してください。
お待ちしています!

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