【佳作】
禁足の神庫の陰の余寒濃し
播磨陽子
糠床の余寒の右手引き上ぐる
夢見昼顔
サドル抜けば余寒の穴のひとつあり
常磐はぜ
兄嫁と喪服あつらふ余寒かな
このみ杏仁
空つぽの掲揚ポール打つ余寒
久留里61
千の窓吾を向く余寒の団地群
剣橋こじ
マヨルカ島雨の余寒を弾き続く
北欧小町
幾千の稚魚透きとほる余寒かな
姫川ひすい
残寒やもう無き郷の忘れ方
風慈音
通夜余寒ボッと灯油の点くにほひ
にゃん
余寒の夜電気の匂ふドライヤー
トポル
電飾の骸の垂るる余寒かな
山本先生
猫のいる漁港にフェリー待つ余寒
山本蓮子
余寒まだ路上ライブの客まばら
さぶり
ごみの日の烏余寒をのびのびと
秋野しら露
魚鼓の口あぶく吐きゐる余寒かな
たこぼうず
転職や余寒のカブにまたがりて
久保田凡
余寒かな神話は並べて色と欲
松田てぃ
酒肆を出た顔に余寒の右フック
吟 梵
バリウムの残る躰や余寒の夜
沼野大統領
地より出で処理水となる水、余寒
郡山の白圭
無人駅そらと余寒のあり余る
まんぷく
瓦斯の火のぽぽと余寒を舐め出しぬ
火炎幸彦
折衷案蹴って余寒のビルの灯よ
岬ぷるうと
肉片を咥へ余寒の鴉発つ
三月兎
うめちかの余寒五叉路のいづれより
秋津穂 実
ドレーンは抜けて余寒の三分粥
朝月沙都子
セロテープに引つ掻き傷のある余寒
さとけん
避難所に日がな余寒の塗師でいる
花亭五味
痩鴉余寒の路の罅へ嘴
月岡方円
元伊勢の紙垂浄く透く余寒かな
玉家屋
仁王の眼の力いや増す余寒かな
渡嘉敷五福
失職の余寒の腹のきゅうと鳴る
冬のおこじょ
まな板の鱗を流す余寒かな
渡部 あつし
晒されて土は余寒を受け入るる
そら
腎兪刺す鍼の鈍色なる余寒
くさ
絡まったエナメル線を解く余寒
平良嘉列乙
靴紐の蝶になれない余寒かな
菅野まこ
特急凄まじ余寒の跨線橋
宮武濱女
縄文の女神余寒の展示室
渡海灯子
灰色に薄桃色を混ぜ余寒
秋白ネリネ
老眼や一身上と添へ余寒
西田月旦
鉄橋を鴉の歩く余寒かな
銀 次郎
点鬼簿に同じ日付の余寒なほ
嶺乃森夜亜舎
回転ドア押して余寒のひとりぶん
佐野明世
町中が水待ちならぶ余寒なほ
笑姫天臼
黄金の仏に残る寒さかな
たーとるQ
文春が余寒の中に落ちている
どいつ薔芭
荷出し終へ部屋は余寒の夜の底
春那ぬくみ
客船にテープ曳かるる余寒かな
巴里乃嬬
海鳴りが耳に澱んでゐる余寒
久森ぎんう
象ゐなくなつた象舎の余寒かな
晴田そわか
ぬか床の野菜の何もなき余寒
明惟久里
正論に潰され余寒に追われて
紅紫あやめ
余寒しか出ねえ月末のATM
元野おぺら
バツイチや余寒のモツ煮湯煎せり
着流きるお
兜煮の眼の真珠めく余寒かな
RUSTY=HISOKA
墨継の箇所ずつしりと余寒かな
山田不律
薪を割る一閃余寒深くして
風早杏
みりみりと煙草に沈む余寒の火
長谷川水素
まだまるくならぬひかりを余寒とす
みづちみわ
余寒なほ薄はだ色の舌下錠
広島じょーかーず
猿山の喧嘩見下ろす余寒かな
遠山比々き
湯灌せし軀しづかな余寒かな
福花
余寒なほ腰のボルトの影白し
新多
法要の一灯の下余寒あり
村岡花風
電柱のしずく余寒の黒きすじ
豊後の李子
戦争を余寒の紐として括る
ギル
蛍光灯点けよ余寒の形見分け
蒼空蒼子
先客はふたり余寒の保健室
平本魚水
湯をつかう音だ余寒の安ホテル
青水桃々@いつき組俳句迷子の会
草やれば指を突つく鶏余寒
亜桜みかり
不明者の一覧たどる指余寒
唯果
鬩ぎあふ湯気よ余寒の蒸しぱん屋
みやま千樹
山羊小屋に塩の塊余寒なほ
小池博美
参観日は余寒Z(ゼット)のよみはズィ
豆闌
九つを打つて余寒の慰霊祭
キートスばんじょうし
山門の大草鞋余寒の結願
坂野ひでこ
余寒の夜半エレベーターの鏡の吾
仁山かえる
たなすゑに鮮血余寒まじりゆく
みずくらげ
象の目の潤み余寒の鉄格子
城内幸江
酢酸と余寒の臭ふ写真館
桜井教人
猛禽が距離を測つてゐる余寒
石上あまね
あの色は余寒吸ひこみたる鴉
橘鶫
余寒強しリップクリーム短し
シュリ
鶏舎へと消毒液を踏む余寒
さるぼぼ17
余寒なほ象の鎖を重くせり
笑笑うさぎ
余寒なり煙草火がなお瓶の底
ふるてい
ただ歩く鳩身中の余寒かな
北代晋一
ジッポーのやたら四角き余寒なり
北里有李
パーマ液頭皮に伝ふ余寒かな
福原あさひ
上靴の中に余寒と押しピンと
クラウド坂の上
余寒なほ客間の花器に小さきひび
かつたろー。
雨きれい余寒を打ちつけてきれい
古瀬まさあき
早朝の余寒シアター5はひとり
鬼殻
対象外多し余寒の求人票
かゐみすず
医師として父の腹水抜く余寒
星埜黴円
猿山の余寒閉園告げる曲
大岩摩利
羽撃たずに余寒の羽を縮みをり
熊谷 温古
影だけが添ひし余寒の骸かな
浦野紗知
銀の斧ふるへばすさまじき余寒
渋谷晶
木を穿つ余寒の螺子の右回り
コンフィ
水甕の昏きひかりや余寒なほ
天陽ゆう
手を洗ふ余寒の水の捻れゆく
沖原イヲ
病抜けて残る寒さや息浅し
青居 舞
余寒なほ被爆樹木の持つ痛み
河上摩子
余寒いま餌の鼠の子のピンク
西原露花
薬草茶を煮出すガス火の余寒かな
とんぼ
じゃりじゃりのはちみつ湯煎して余寒
古都 鈴
高裁へぎゆんと余寒の銀輪は
渡辺桃蓮
経血の余寒の水に交はらぬ
津々うらら
糠床に余寒のへたを掴みけり
華胥醒子
太陽の塔に三つの顔余寒
高尾里甫
E線が残る寒さに共鳴す
千歳みち乃
余寒の漣さざなみ桟橋を
としなり
大菩薩峠余寒のタイヤ痕
丁鼻トゥエルブ
鳩居堂でてきらめける余寒かな
日永田陽光
サボテンのポーズ余寒の運動場
ノセミコ
曖昧な影曳く余寒のガラスペン
北野きのこ
採尿のわずかに足りぬ余寒なほ
塩の司厨長
花束のひりひり匂ふ余寒かな
眩む凡
外階段の音して帰宅らし余寒
武井かま猫
余寒なほ被災の漏水菅あらわ
せとみのこ
倒壊の家に押し入る余寒かな
菊池克己
東京に慣れず余寒のランドリー
海老名吟
主取りの牛よ余寒の縄に毛羽
葉村直
電灯とガス燈照らし合ふ余寒
石井一草
濁る陽を遠心分離して余寒
坐花酔月
包丁の脂に曇る余寒かな
洒落神戸
巻貝の小石抱へる余寒かな
山野麓
七分のロスタイムとか余寒とか
あみま
街灯に白し余寒の鉄階段
山内彩月
戸袋の闇垂直に立つ余寒
ふもふも
諍いと濁りたる紅茶の余寒
庭野環石
ゐんゐんと月に余寒の響きあり
ぐ
春の本ならぶ廊下の余寒かな
どゞこ
さかさまのビーカー濡れてゐる余寒
細川鮪目
黙祷は余寒や波の音もまた
ぞんぬ
行進の靴に余寒の刃音あり
山城道霞
余寒の雨ヘバーデン指じんじん
広島しずか80歳
哲学の終りに余寒てふ消し滓
ツナ好
弧に伸びる爪や余寒のナマケモノ
二重格子
爪切りのなかに爪ある余寒かな
髙田祥聖
余寒なほ体育館の陰のにほひ
玉庭正章
今朝はまたことさら潮の香や余寒
しゃれこうべの妻
ハーレーのような余寒でゅるんでゅるん
あさきまほろ
炊出しの湯気やはらかき余寒かな
俳句ファイヤー立志
きしきしと余寒古物に暗き口
錆田水遊
百均のゴム手ひりつく余寒かな
加山シンゴ
奥羽路に鳥居幾百佇つ余寒
稲畑とりこ
新しき電柱孤高たる余寒
真井とうか
父としてぼそり余寒の裁判所
酒井おかわり
余寒なほ菜の茹で汁に手を浸し
空 ひろ
余寒なほ石碑の浅きかへり点
満生あをね
乗継のホーム短しただ余寒
大山和水
神饌や裸地へ余寒の杭一つ
薫夏
川底に鯉動き出す余寒かな
香依蒼
貝塚の万年分の余寒かな
沙一
魚さばく余寒の骨に身がのこる
北藤詩旦
6号線余寒の波の荒立ちて
星影りこ
余寒なほ七寸壷の湾曲部
春野ぷりん
弓袋の朱の濃し北口の余寒
金朋かいと
余寒なり茹でて膨らむ鶏の皮
あなぐまはる
吊り下げて肉屋の奥にある余寒
せいち
WEB面接カチと退出して余寒
梵庸子
余寒の朝や仮免のクランク
名出 結希人
ナイロン地硬し余寒のミシン台
山中 あぎ
低温の火傷の黒き余寒かな
ほんちゃん
睡魔とか尿意とか廊下を余寒
無弦奏
木々の根の木霊に屈む余寒かな
今林快波
しりしりと余寒を滑る金の砂
亘航希
aloneを余寒と訳す一人かな
堀雅一
搾乳器あてる深夜の余寒かな
空井美香
非通知の履歴余寒の喫煙所
ゴーマ
龍神の能登半島の余寒かな
田邉真舟
劇場の外はゴジラの居ぬ余寒
阿部八富利
余寒の灯漏れて敷金戻らない
げばげば
地震の神まだここに棲む余寒かな
蜘蛛野澄香
御免では済まぬハチ公前余寒
藤田ゆきまち
ボイラーの唸り堂々たる余寒
山羊座の千賀子
バスまだか余寒に割れるアスファルト
嶋村らぴ
八トン車余寒の橋の揺れにけり
駒村タクト
謝りてしばし余寒の屋上へ
渡辺香野
管である我よ余寒の再検査
樋口滑瓢
また余寒仮設トイレは十八基
ふくびきけん
金敷に木槌余寒の作業部屋
木染湧水
切開の喉唸りあぐ余寒かな
岡田雅喜
コモドドラゴン余寒の舌のまつしろけ
清水縞午
トー横の余寒や黒きアイシャドウ
宇野翔月
次回の兼題も
皆さまふるって投句してください。
お待ちしています!
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