【並選】
余寒ありひときは空のあをあをと
タケザワサトシ
正誤表二枚はさまる余寒かな
ひねもす
放課後の余寒の廊下告白す
風の木原
余寒なほ海葬望む遺言書
不二自然
磔刑像余寒のナガサキに立つ
入口弘徳
ひとり居て独りと思ふ余寒かな
幸田梓弓
駅前に迎えを頼む余寒かな
清瀬ハイジ
銀波なる余寒奥歯のアマルガム
ジン・ケンジ
「閉店」の紙一枚の余寒かな
もふもふ
戸袋を覗く番や余寒なほ
村上継鳥
自慢の福耳にイヤホン余る余寒
きゅうもん@木ノ芽
余寒なほ月中天に城の町
市橋正俊
牛革のランドセル赤余寒の日
まー坊
夕暮れや赤ポリタンクに余寒滲む
那津
遠隔の地震速報聴く余寒
酔水
しつこさう余寒の鳥の水飛沫
栗山おかか
余寒なお国境沿いの鉄条網
野澤真澄
七尾湾余寒の波の打ち寄せり
楽花生
余寒まだ銭湯までは角三つ
神島六男
現役の足踏みミシン踏む余寒
岸来夢
公園のオブジェひび割れていて余寒
けーい◯
不良図書追放運動てふ余寒
長谷機械児
シャリシャリと残る寒さの砥石かな
いその松茸
鎌倉の余寒の朝や豆腐切る
大久保加州
万物の涎が匂い立つ余寒
高遠見上
鏡中の白き生脚余寒なほ
篠原雨子
余寒なほモンドリアンの白のごと
夏風かをる
自在鉤鉄の香りやなほ余寒
acari
隅っこに追われ余寒の喫煙所
ヒマラヤで平謝り
陸に船引っくり返る余寒かな
夜ノ森ムーミン
たばこ屋は遠きにありて余寒かな
KOMA
100点を取っても残る寒さかな
コーヒー博士
「ちゃん」と呼ぶ訃報の電話より余寒
たけぐち遊子
余寒あり空の碧さの突き刺さる
ひすい風香
酔い醒めを歩く2kmの余寒かな
イサク
倒されてゆく診察台の余寒かな
さいたま水夢
鉄輪の鉄路踏み換ふ余寒かな
ウロ
川底の空瓶眠らせる余寒
ヒロヒです
磐梯の山頂尖る余寒かな
一久恵
罔象女神余寒の水のありがたき
まりい@木ノ芽
トローチの穴崩れたる余寒かな
まるちゃんにいさん
透明の骨と抱擁する余寒
よしぴこ
余寒の音楽堂再起のショパン
永井春蘭
使われぬ部屋に時計の余寒かな
ららら句らら
内見のベランダにある余寒かな
まるにの子
塵芥吹くごと愛を云ふ余寒
花彼岸
100メーター廊下を余寒・チャイム音
椿 佳香
鈍色の薬缶笛吹く余寒かな
る・こんと
余寒なほ写経の筆の滞り
勘太郎
蒙求の書かれ余寒の格天井
悪七兵衛
独居も徐々に慣れゆく余寒かな
角田 球
余寒なほ祝詞のこゑの上滑り
喜多丘一路
神童のおもちゃ箱の隅に余寒
一の橋 世京
亡き母の椅子を乗っ取る余寒かな
吉川花ほっぺ
納骨堂一段毎の余寒かな
黄鶺鴒
眦のなほ濡れてゐて余寒
魚返みりん
白々と海も遠のく余寒かな
夏の町子
この余寒子の不登校受け入れて
根なし草
ぶちまけた珈琲豆余寒に別る
謙久
十万の鶏埋めてゐる余寒
佐藤茂之
ふるさとを離れるバスの窓余寒
沙那夏
余寒なほ離婚の友とハーブティ
源早苗
朝の白湯腑に落つまでの余寒かな
在在空空
蜂蜜の舌にざらつく余寒かな
黒木水産
雄猫は余寒を割つて去り行きぬ
糸川ラッコ
余寒かな夕陽は昨日より明き
山口朝子
余寒なほ厨は今も北側に
若林鄙げし
おかもちは空柴又の余寒積む
山香ばし
鈍色の空低し偏頭痛のち余寒
坂本雪桃
カヌレなど甘きもの買う余寒かな
狩谷わぐう
薔薇窓や余寒の祈りひびきをり
笹間明明
プレゼンに控えし小部屋余寒かな
三水
縮れ麺一気にすする余寒なり
山本マユミ
雑踏の人黙々と余寒かな
笑詠化
新任の内科医靴音の余寒
新山晶花
この余寒最適解の抱き枕
始の子
俯きあるく余寒の検察官
三水低オサム
夜更まで余震の続く余寒かな
森一平
余寒かな熱出てごめんの返信来
山口絢子
図書館へ入る数歩の余寒かな
山本烏骨鶏
廃屋に鴉の群れる残る寒さ
森爺
明日入院松に造花を足す余寒
神山やすこ
ぎょうかんを読み取るまでの余寒かな
増本空ふね
能登揺れて底の抜けたる余寒かな
杉山駄芭
鉄骨に余寒防災無線の君よ
清水奈々子
予備校の説明会の余寒かな
青木豊実
パチンコで遊びし後の余寒かな
石内宏明
カピバラの硬き毛先に余寒なほ
坪田恭壱
アンパンマン膨れ損ねる余寒なほ
鶴富士
残寒や夜行列車の固き床(とこ)
哲庵
守衛らの暖簾へ雪崩れ込む余寒
雪だるま
魔導師の杖のやうなる余寒の樹
千夏乃ありあり
最高値余寒は背筋張り付きし
川辺世界遺産の居候
水道の水の漏れゐる余寒かな
蒼鳩 薫
痩躯なる野良犬の背になお余寒
駄々
空を引つ掻くシンバルの余寒
鷹星
親友は心アブレーション余寒かな
村崎 雫
息凝結す東京の余寒かな
田中ぽんすけ
深酒の余寒に夜鳴そば美味し
池 閑茶
ファミレスに喪服のふたり余寒かな
竹原かよこ
硝子戸の重き余寒の歯科医院
竹田むべ
余寒なほ回覧板に訃報あり
田口大寒六
標本のピンに影無き余寒かな
東山すいか
星数へ始めて羽織る余寒かな
田辺富士雄
黝く眠る水泡や余寒なほ
東田 一鮎@金カル
真夜中のトイレの軋み余寒かな
藤永桂月
古時計ぼんぼんぼんと鳴る余寒
中根由起子
餡かけの出汁のころあひ余寒の夜
島田あんず
余寒なり茶筒の蓋を閉むる朝
朝宮馨
親指の切創濯ぐ余寒かな
内田こと
イヤホンの音よりさきに在る余寒
如月宗局
ゴミ出しのつっかけ脱げて余寒かな
木村となえーる
珠洲焼の手にやはらかな余寒かな
百瀬はな
教本の目次の多き余寒かな
毛利尚人
駐車場のレシート吐き出してく余寒
鳥乎
がちやがちやと鍋を取り出す余寒かな
野ばら
ツイッターのタヒね余寒の竹林
坪山紘士
珪藻土マットの余寒土踏まず
吉野川
夜の河のぞく児を待ち余寒かな
櫂野雫
コッヘルの味噌汁余寒のソロキャンプ
栞虫かじり
プロテインシェイク飲み干す余寒かな
芍薬@独逸
どつかりと盆地の底の余寒かな
菫久
余寒かな新しきくつ濡れゆくを
haruwo
余寒の夜尽きぬ貧しき日の話
野瀬藻石子
銀行に足音ひびく余寒かな
与志魚
軒短か余寒の仏立ちおはす
山 ゆり
夕刊薄しひらく紙面の余寒
鈴野蒼爽
閉店の貼り紙よれて余寒なり
國本秀山
神様の不倫している日が余寒
新蕎麦句会・凪太
不妊治療外来ロビーの余寒
猪子石ニンニン
人感のライトすつと消え余寒
江良 中
紙の肌すべらかならぬ余寒かな
信木庸子
看護師の急ぐ足音余寒なほ
林真紗湖
捨てざるを得ない状況下の余寒
ヤヒロ
抗議する国会前の余寒かな
西村小市
ネックレス付ける後ろ手にも余寒
高橋風香
余寒なほパンクの自転車を押して
清鱒
ステーキを奢られている余寒かな
ふゆの都々逸
バリウムを混ぜる手際の良き余寒
鳥羽南良
明王の眉毛隆々余寒なほ
Early Bird
狛犬の瞼の重みてふ余寒
樹海ソース
煉り切りの花々並ぶ土間余寒
美津うつわ
靴下で眠る余寒の足の指
陽光樹
余寒のスタバ順番シールの剥がし跡
空豆魚
いてもうたろかレターケースにメモ、余寒
伊藤映雪
泣いて切る馬謖が多すぎて余寒
あさのとびら
もう少し余寒へ足してゆく辣油
藤白真語
余寒かな気休めほどの頭痛薬
松本裕子
老いし子と二人暮らしの余寒かな
白井百合子
余寒かな今日の保護猫シャーは二度
チームニシキゴイ太刀盗人
キー叩く指窓外の余寒かな
河野灰土
裸婦像の尻に粟立つ余寒かな
祐
脱殻の崩るる鱗余寒かな
千鳥城@いつき組広ブロ俳句部カナダ支部
余寒てふ漉き残されし砂金粒
めいおう星
スタジオのフロア白々たる余寒
佐藤香珠
門灯の球を換えおる余寒かな
也和
余寒なる粉糖ふるうブラウニー
秋野茜
祖母逝きて部屋を彷徨く余寒かな
藤 えま
余寒なお独居老人スーパーへ
妄児
のろのろと千鳥ヶ淵の余寒かな
わおち
余寒なお退院の日の出入り口
川島 欣也
遺影置き喪服脱ぎたる夜の余寒
東原桜空
余寒をば袋に入れん質草に
むじーじ
銀河系の端余寒の朝迎ふ
一条春枕
雀どち飛び立つ畑に余寒かな
宮川武久
緘黙の余寒放さぬ千曲川
花屋英利
友逝きて棺重たき余寒かな
於大純
深呼吸の朝両肺に入る余寒
小倉あんこ
海鳴りや余寒を今日も野辺送り
杜乃しずか
雨に風こんぐらがつてゐる余寒
蜥蜴の尻尾
鍵盤のシの音掠れゆく余寒
花はな
余寒あり色とりどりの流し染め
畑山六十二
塁塁の化粧(けわい)のまだら能登余寒
三群梛乃
解かれをる隣家の屋根の余寒かな
吉村一音
干したての下着の固き余寒あり
居並小
救助隊待ちたる崖下の余寒
ふじかつとび
背伸びしてまた猫背なる余寒かな
落人家楽人
欄干のあせたのぼりにある余寒
れんげ畑
本堂の香煙ゆらぎ余寒かな
高本蒼岑
父亡きを実感灯油無き余寒
剛海
小さき手にハムスター余寒のひげ顫う
吉永那夫子
記帳する背骨の底の余寒かな
畑野稔
パーカーのフードに落とす余寒かな
外鴨南菊
狛犬の仄暗き喉余寒なほ
seki@いつき組広ブロ俳句部
戦など知りたくもなき余寒かな
月城龍二
収集車余寒のゴミを噛みにけり
金子泰山
内見の家に煙草の香と余寒
ひなた和佳
乗るはずの赤き尾灯の余寒かな
西風 心鏡
老椎の木肌ぼろりと堕つ余寒
戸口のふっこ
空つぽの肚へ余寒の酒おとす
大黒とむとむ
爪切って畳に落ちる夜の余寒
染野まさこ
鍵盤をトリル余寒の薬指
一斤染乃
ミッキーの首傾げたる余寒かな
酒井春棋
余寒なほ上人像はいつも素足
はぐれ杤餅
日雇いの現場に余寒あるんかい
鳥田政宗
暗室の診察室の椅子余寒
平としまる
ばきばきのスマホ余寒のマッチング
野点さわ
ボール返して子らにつき合ふ余寒かな
天東あさじ
カラメルに余寒5パーの混ざりけり
永田千春
駆け抜ける斜度40の余寒かな
吉 や
鍵の音余寒の廊下巡りゆく
余田酒梨
補聴器を選べる母の余寒かな
紗藍 愛
駄菓子ごみ拾いゆく余寒の公園
鈴木 浮浮
余寒かな腕立て伏せぞ始めたる
本宮豆奴
閨窓に余寒の風の一頻り
ひぐちいちおう(一応)
速達の文字にかすかな余寒かな
もふ美
廃園に猫缶ひとつ余寒かな
日暮ひぐらし
来賓はずらり余寒の大ホール
ツユマメ@いつき組広ブロ俳句部
廟所へと歩く余寒の石畳
千の葉
肺胞に余寒を詰めて上京す
たまのねこ
母は呼ぶ余寒の着替え拒む朝
ツユマメ末っ子12歳@いつき組広ブロ俳句部
余寒なほ棒線を引く予定表
竹内ユキ
軽トラの荷物の揺れや余寒なお
登盛満
研修へ旅立つ朝や余寒あり
カバ先生
白襟のをんな余寒の西口に
亀田荒太
とどこおりなく終えたと届く余寒
新城典午
余寒なほ月影清き家路ゆく
紗羅ささら
神様はわり算がへた余寒あり
広瀬 康
火葬場の点火釦の余寒かな
聞岳
余寒にて透き通りたる鳥の声
野中泰風
あの猫さえおらぬ余寒の裏通り
木ぼこやしき
1Kに高く積みたり余寒の荷
南方日午
晴れの日に余寒連れ去る父の息
岡塚 敬芳
古民家の納戸の奥に棲む余寒
小川野棕櫚
膝小僧の痣の広がりゆく余寒
Q&A
火山湖へ残る寒さの光かな
かつおぶし
譲り合ふ灯油の補充余寒の夜
吉武茂る
鼠径部に術後の重石ある余寒
じゃすみん
学校のにはとり小屋の余寒かな
松本笑月
スマホよりはつと顔上ぐ余寒かな
河島 八々十
水拭きはロボに任せる余寒かな
澪那本気子
余寒なる夫の自由といふ虚構
柳絮
避難所を去りぬ余寒を断ち切りぬ
はなぶさあきら
余寒千歳上空旋回中
斗三木童
野良猫匿ふ旧校舎の余寒
日向こるり
老僧の法話に笑ふ余寒かな
月影 重郎
外猫の鳴き声ヨクァン添う余寒
まっちゃこ良々
おやゆびの夜爪やすらふ余寒かな
滝上 珠加
余寒なほ言い訳探し白む空
竹村マイ@蚊帳のなか
原発に受け渡す町余寒かな
花蜜伊ゆ
古着着る地蔵や被災地の余寒
彩明
余寒のおと室外機のがたつきに
太田栗青
物言わぬ鳩に語りし余寒かな
西町彰子
余寒なほ下巻戻らぬ開架書架
森 毬子
錠剤の喉元触れる余寒かな
刈屋まさを
人影の見えぬ交番余寒かな
琵琶湖のおばさん
灯りなき三月堂を裂く余寒
ふくろう悠々
エレベーター閉の釦に触る余寒
椋本望生
祖母の黙りて渋茶飲む余寒かな
大 広秋
朝くりや余寒の湯気に薄らぐや
洋々
欠け月の下にまあるく余寒あり
しばのおはる
どよめきの球場余寒の100マイル
灰谷素数
愛犬の鼓動よ起きぬけの余寒
卯之町空
余寒なほ母亡き部屋の振り子時計
いつか
髭面の代理店長来て余寒
朱鷺9条湯八
絵の具出し余寒閉じ込め青き空
石原しょう
余寒余寒歯並びよかる女ども
もりさわ
段ボール箱の余寒を畳みけり
武井 超凡
重ならぬ三面鏡の余寒かな
伊藤 柚良
波の間に小夜風そよぐ余寒かな
永井旅人
句碑探しきれず余寒の停留所
松山茜柑
青信号立ちすくむ吾の背に余寒
田中ミノル
大かさご余寒の針に胴震い
古乃池糸歩
袖口を夕日に濡らす余寒かな
菅井香永
戦線は膠着したり余寒の野
ふくじん
余寒なほ一番列車のジョイント音
五十嵐 三連単
生徒らに最後の授業終へ余寒
柿司 十六
耳鳴りの変調したる余寒かな
高田杏
プレハブに余寒家族は我ひとり
越前俊水
余寒の朝振り返り母探す子
望月ぽん
中継の東京忙しき余寒かな
なしむらなしん
意地悪の透けて見えます余寒なお
佐川碧
誰も来ぬぽつんと遊具余寒の日
ゆぃ
診察や一日余寒の雨意の雲
片平仙花
雲梯の錆握る手の余寒かな
くぅ
常盤木の尖りて光る余寒かな
はれまふよう
オルゴールの終の一音待つ余寒
羊似妃
図書館に余寒誰もが上を見ず
大和田美信
白檀の香のほどけゆく余寒の夜
翡翠工房
ごきげんよう遺言のごと余寒かな
伊藤順女
余寒なお義父は今夜も眠れぬか
新井ハニワ
一服の葛根湯の余寒かな
石塚彩楓
発掘の石室内の余寒かな
いなほせどり
余寒の校庭タイムカプセル開く
満嶋ハト
背を壁にもたれ靴下履く余寒
林 和寿
息継ぎを幾度余寒のカーラジオ
小豆白虎
セロファンの封剥がす音して余寒
海峯企鵝
知らぬ曲ばかりを聴かさるる余寒
西郡うり
国旗なき掲揚台や余寒なほ
中島走吟
余寒なほ樹皮裏にかめ虫不動
あたなごっち
押入れを開けて余寒の残る闇
梅鶏
インバウンドの余寒たこ焼きの湯気
山路碧水
鏡台の布そと上ぐる余寒かな
とはち李音
富士仰ぐ吊り橋の上余寒なり
井上於莵
革靴にオイル塗り込む余寒かな
ナオコ タイラー
余寒なお続く目減りや年金日
津軽わさお
風吹けば弥増す余寒たじろげり
津軽まつ
アドレスを返し名札を抜く余寒
一寸雄町
余寒なお津軽に酌む情っ張りの酒
津軽ちゃう
明日もまた自習余寒の教室は
蓮花麻耶
一筆に列す余寒の喪の夜なり
登りびと
海見える余寒の町のミニシアター
ほうちゃん
アレグラの一錠増えて余寒かな
蘂六
給油ノズルかたんと終はる余寒かな
おきいふ
箱罠の猪後退る余寒かな
ゆすらご
余寒なほ珠洲の重機唸る唸る
清水祥月
一握の火薬に余寒カカオ園
翼つばさ
笑はせて余寒母には感じぬやう
伊藤なおじい
地下街はダンジョン名古屋駅は余寒
長谷川加尾
余寒なり中絶手術待つ散歩
前田
つけ置きの余寒の烏鷺を洗うべし
春風流士
さよならは君への余熱あゝ余寒
四條たんし
余寒かな母の死を告ぐ携帯音
髙橋弓女
余寒の北斗上高地夢うつつ
山姥和
余寒なほ堪へし齢となりにけり
風花まゆみ
ダダ長い所長の訓示余寒嗚呼
at花結い
妊活のミネストローネまだ余寒
sol
缶珈琲かたん夜の余寒に落つ
谷川ふみ
枝を切る音に篭りし余寒かな
田中一升
ダンボール無音保護猫ヘ余寒
衣笠 野波
ワンクリック余寒のサーバ再起動
宮坂暢介
古書店の狭き通路の余寒かな
杉柳才
持ち株の二日下落し余寒まだ
玉響雷子
定まらぬ阿修羅の顔の余寒かな
篠田ピンク
六畳の箪笥の跡の余寒かな
海野青
寝返りの夫に手を添ふ余寒かな
中村あつこ
あの駄菓子屋去年閉じたと聞く余寒
西町花冠
照明の落ちた舞台の余寒かな
砂楽梨
鹿毛の猛追確定までの余寒
二十八
抜糸待つ金属音の余寒かな
文月
炊き出しの湯気に余寒の月明り
桃香
うち揃い出棺見送る余寒かな
広島あーやあーや
重なりて絵馬音立てる余寒かな
風の鳥
アオダモの硬き削音余寒かな
橘 春香子
余寒の夜父待つ母の背は硬し
原島ちび助
攣りし脛の痛み残れる余寒かな
つづきののんき
ウォン使い切って余寒のラウンジへ
沢胡桃
プチプチの角めくれ出す余寒かな
高永 摺墨
床板の余寒のきしみ台所
笑酔
余寒なお普段通らぬ道の闇
坂本羊雲
臥龍の背ひとつ畝りて余寒かな
犬山裕之
思いの外に返信長く余寒の日
田中勲
友といふ政治屋の来る路余寒
海星葛
無味である余寒のバニラエッセンス
佐藤儒艮
礼状に二行の余白余寒なほ
信濃のあっくん
袖釦留める余寒のヘルメット
碧萃生
釣り糸のごと日矢の射す余寒かな
藤白月
余寒の弁当昨夜もハンバーグ
だてまき
朱印記す札所は余寒の西安
鈴木裕公仁
飯場軒足袋洗い干す余寒かな
岩瀬正人
三日月の研ぎ澄まされてゐる余寒
明後日めぐみ
子宮とり迎ふる朝や余寒なほ
柊瞳子
紙エプロンつけて余寒のカレー饂飩
かんこ鳥
リウマチの指に小瓶の余寒かな
和泉攷
余寒分け合える相手のいない朝
齋藤鍵子
早朝の軋む江ノ電余寒なり
那須のお漬物
余寒なほ晴天の頬触るる風
たなべ早梅
余寒なほ歯科の麻酔の頬に垂れ
公木正
退職の夫淹るる茶の余寒かな
茜咲
弔砲や火薬の臭う街余寒
百瀬一兎
広目天薄目で余寒のこの世見る
森 佳月
氷川神社参道二キロの余寒
三崎扁舟
墓石に苔のひかりて余寒かな
鳳凰美蓮
ガラス張りの余寒「ライオン療養中」
坂めぐみ
番号で呼ばれ余寒の予診室
深山むらさき
焼山寺余寒の中の杉木立
立町力二
骨上げの箸のふるえの余寒かな
布村 柚子
電灯の届かぬ先の余寒かな
小夏
自治会長再任拒み余寒かな
斧 的部
余寒なおサイトはまたも通知なし
晴菜ひろ
山羊の毛の深さ余寒の潜む小屋
どこにでもいる田中
剪定の枝を鎮める余寒かな
砂月みれい
棚卸し余寒散らばる書庫ひとり
星詩乃すぴか
筆を置く余寒の髭の朝日影
くろけん
ポケットに手を終電にある余寒
阿曽 遊有
始発待つ余寒を一一0番の声
仮名鶫
休園の朝や余寒の猿団子
杜まお実
池底の罅割れ深き余寒かな
玖良咲
足湯する別府の地獄に余寒あり
秋野木吾
ひとりなる空のガレージ余寒なほ
松本厚史
耳の背に触るる簪余寒かな
水きんくⅡ
余寒ごと掃き散らかして昼放課
芦幸
部屋籠る窓に余寒の波映る
無し
叔母の通夜家路を急ぐ余寒かな
そうま純香
水槽に余寒の滲む稚えびかな
白庵
余寒なほブルーシートの増えゆく地
凪ゆみこ
ブルックリンブリッジ突っ切りゆく余寒
井納蒼求
マグカップ湯気の向ふの余寒かな
黒蜜かりんとう
坂道をキーキキ余寒のスカート
紫月歪丸
月のもの終わる余寒や河原町
田季たまき
D51や余寒の鉄の黒光り
くみくまマフラー
おにぎりはラップ午前二時の余寒かな
伊予吟会 重松栄翔
味噌汁を残る寒さが旨くする
風来坊健丸
子らを待つ遊具の赤の余寒かな
おかえさき
レコードの針音ひろふ余寒かな
藤井赤童子
街灯のまたちらつきて余寒かな
くぼたみどらー
消しカスのほろりまとまる余寒かな
やまさきゆみ
盆栽の松に余寒の風渡る
釜眞手打ち蕎麦
栞紐深紅にわだかまる余寒
綾竹あんどれ
ぽた、ぽたと蛇口の余寒深夜勤
風間 燈華
哺乳瓶さます午前四時の余寒
時まる
バスを待つ白杖の君余寒かな
有田みかん
余寒なお旗音響く競技場
古川一光
取り返しつかぬくちびる閉づ余寒
石浜西夏
手に取りし古書の頁にある余寒
万里の森
下宿屋のお湯がしゅんしゅん余寒かな
小林番茶
自律神経乱れて余寒広がりぬ
睦月くらげ
余寒なほ居も定まらぬ地震の街
よかわもりお
余寒なほ文字の擦るるボールペン
ちゃあき
雲水行脚の余寒を鈴の非平衡形
絵夢衷子
打粉拭く剣の蒼さ余寒かな
野田遊水
肺胞の膨らみきれぬ余寒かな
満る
始発待つリズムとりつつ踏む余寒
黒猫かずこ
アンモナイト死なずに生き延びる余寒
野原 華
コンビニのポストリストラさる余寒
立ち漕ぎブランコじゅん
斎場の石鹸のごと固き余寒
中村すじこ
ため息を飲みこみ電話切る余寒
深草あやめ
余寒のサイクリングまだ無彩色
天照昭光
鳩放つ空へ余寒の音として
アンサトウ
余寒なほ異国の硬貨くすみけり
佐藤レアレア
チンチン電車軋む余寒の右カーブ
雑魚寝
失着の駒音重き余寒かな
八十六九
鳶も人も黙す縄手の余寒かな
山河穂香
三日目も扉開かぬ余寒かな
江口朔太郎
余寒の夜母の衣類に名前書く
白薔薇
鳥啼くや重き余寒を切り裂きて
acorn
市民課の余寒転出する女
成瀬源三
ちやりんこのサドルに残る余寒かな
宮村土々
すり足のやがて余寒の床を蹴る
馬場めばる
愛猫の最後の写真を余寒の陽
天雅
モノトーンの八時の空の余寒かな
山下とらぺけ
永平寺朝課深心余寒あり
哲山(山田哲也)
使はれぬ応接室にある余寒
高木音弥
脱け殻の三和土に潜む余寒なお
平野水麦
添い寝終え母を終えたる余寒かな
赤尾双葉
怪しげなセミナーにゐる余寒かな
堀口 房水
エラ呼吸して余寒の道を歩く
伊予吟会心嵐
五十日ぶりの学校余寒かな
HNKAGA
新しき音叉に潜む余寒かな
めでかや
余寒の渋谷配るティッシュの硬さ
小川さゆみ
たも網の余寒ばかりを掬いおり
はまゆう
折敷置く巫女がゆび先なほ余寒
百田信三郎
川底を丸き影ゆく余寒かな
写俳亭みの
猫の死を抱いて余寒の部屋夜よ
泉晶子
盛り塩のゆたかに凹む余寒かな
きなこもち
このごろは死亡記事より読む余寒
檜鼻ことは
名も知らぬ魚を釣りし余寒かな
千原 十吾
マンホール踏みて知るなり余寒の音
青井えのこ
余寒かな鍵っ子ひとりあずきバー
暇禍
曇り日のこめかみにある余寒かな
岩木順
小刻みに摺り歩く母余寒かな
相沢薫
アルコヲルテシューでドアノブ拭く余寒
豚々舎 休庵
鍵穴にいたづらの痕余寒あり
石塚碧葉
性別を回答したくない余寒
まめばと
薪低しいつまで続く余寒かな
田畑せーたん
ランドルト環の切れ目へ余寒なほ
綱川羽音
荷解きの終の住処の余寒かな
八幡風花
靴先で余寒蹴とばす停留所
み藻砂
余寒なほ母口ずさむ「早春賦」
塩風しーたん
始発から降り立つ群れの背や余寒
忘れちゃった
かくれんぼ鬼は遠くへ余寒かな
はぐれ雲
針は五時仕込む豆腐屋余寒なほ
清水 岳
廃鶏を詰め込み余寒の出荷籠
伊予素数
点滴を連れて余寒の自販機へ
青野遊飛@蚊帳のなか
丸刈りの生徒余寒のおみおつけ
川口雅裕
ふいごの火鋼の匂ひ立つ余寒
堀邦翔
残寒や埋蔵金はここらしい
清松藍
「1812年」の祝砲は余寒
高井大督
余寒とはドミノ倒しを曲がれぬ牌
帝釈鴫
知らぬ香の夫の茶碗を割る余寒
季切少楽@いつき組広ブロ俳句部
床が鳴く指先解れ落つ余寒
江ノ島泰成
健診の回転椅子の余寒かな
涼月橋
鍵盤にいつまでもある余寒かな
あなうさぎ
貫入の阿弥陀に迷ふ余寒なを
如月ドロップ
他人として母に頷く余寒かな
看做しみず
電線を鴉の揺らす余寒かな
佐久凡太郎
大仏の影くろぐろと踏む余寒
藤源卿
御朝勤の御堂に抜ける余寒かな
淡湖千優
離職する理由雑多にして余寒
まぐのりあ@蚊帳のなか
余寒なり小さき体はもう鳴かぬ
ヒマラヤ杉
あれ捨ててこれ片付ける余寒かな
やっちゃんち
雨の朝通勤急ぐ余寒なほ
ぐりぐら京子
参道の露店の熱き余寒かな
いごぼうら
余寒なほ路上で歌ふ人ひとり
小原実穂
閉ざされた三面鏡に有る余寒
一走人
盛り塩の少し傾く余寒かな
増山銀桜
大烏余寒の朝を切り裂きぬ
富佐野ほろよい
残る寒さや急くこともなく余生いく
宇田女@ノエル
検査着の紐の細さを縫ふ余寒
栗田すずさん
お護摩の火袈裟むらさきに余寒かな
樹魔瑠
他人事と笑ふな詐欺を余寒なほ
達坊
朝刊のポストに潜む余寒かな
こま爺
うす濁る空と余寒と憂鬱と
ちびつぶぶどう
ソーラーの連なる里の余寒かな
日向浜
君が居て濃いめのコーヒー余寒の朝
みしまちづる
余寒とはオニアンコウの歯の尖り
ほしの有紀
犬の名を寝言で呼んで泣く余寒
GONZA
五十億果つや余寒の通知状
小だいふく
鐘楼の屋根そりかへる余寒かな
村木年子
宵越しの茶殻を捨てる余寒かな
ゆみづき
買い忘れコンビニ巡る余寒かな
円美々
飼い猫の抜け毛の中にある余寒
奈良の真
余寒とは線形尖る空気なり
おこそとの
売り上げを数える声の余寒かな
誠馬ノマド
朝帰りの猫余寒を舐めてゐる
大熊猫@四句八句
余寒あり迷い鯨の動かざる
あおみどり
茶柱の立つも立たぬも余寒なほ
さかえ八八六
かの曲をまた思ひ出づ余寒かな
珈藤絵本
猫抱くやふはり余寒の飛び下りる
中 兎波
カセットのだるくリバースする余寒
TAKO焼子
棄てきれぬ男の肌に余寒しむ
内藤かをる
ここからとここまでが過去余寒かな
中島穂華
留袖の染みながめいる余寒かな
百卓@ノエル
早朝の拭う肉球余寒かな
飛来 英
午後二時のガラスのビルの余寒かな
いこん
余寒なほバイオマス発電の湯気
林常住
音楽室の窓開け歌う余寒
山川凛
鳴く雛の無い鳥の巣の余寒かな
メレンゲたこ焼き
ポストから赤い封筒取り余寒
榊昭広
朝市の魚のひかりや余寒なほ
伊奈川富真乃
シエラスコの肉を殺ぎゐる余寒かな
中原柊ニ
轆轤挽く小指に残る余寒かな
せいしゅう
未登記の実家引き継ぐ余寒かな
小笹いのり
選考の結果余寒に立つ凛と
北爪いく葉
首筋を造影剤の這う余寒
野々村澄夫
丸ポスト空っぽ里山の余寒
だがし菓子
道内の牛舎は特に余寒でさ
正岡田治
缶珈琲まずふた口の余寒かな
みうらけんじ
瑠璃色の玻璃に白湯つぐ余寒かな
巳智みちる
余寒なお座布団に猫の残り香
たこ山焼之輔
バスの来て順に置き去る余寒かな
鶴小なみ
余白無き薬手帳や余寒なほ
塩野谷慎吾
手につつむマウスにあまる余寒かな
あつちやん
トタン屋根錆びて余寒の零れ落つ
とも子
足場鳶風をまともに余寒かな
高岡春幸
余寒この風のなじむを待つうなじ
秋星子
身ひとつの離郷に背負う余寒かな
蓮井理久
ビリケンさん擦る余寒の足の裏
コーノ凡士
チンチラの肉球猫カフェの余寒
渥美こぶこ
諍ひを諫め今宵の余寒かな
山崎 かよ
山寺の残る寒さや修行僧
上津 力
供花清らなり余寒のごみ屋敷
幸田柝の音
持ち帰るロケ弁余寒のアパート
大庭慈温
薬袋の数字の歪む余寒かな
碧西里
モツ煮込み皿に油膜の余寒あり
野口真砂輝
漱ぐ余寒の水の硬き芯
バンブー
洗わずにいるジーンズの余寒かな
羽野あき
余寒なほ光あふるる御堂筋
岡崎秀惠
鈍色の余寒の宵や黄金雲
坂土海夏
余寒なる蛇口盗られし水飲み場
若井柳児
雀にありけふの余寒といふかたち
あまぶー
ヨーグルトは蓋に罅割れて余寒
川澄栞大
子の振るふタクトの角度てふ余寒
白プロキオン
指抜きのしっくりこずの余寒なる
京あられ
鬼平のやうに余寒をひと睨み
鈴木麗門
体拭くタオルの固き余寒かな
水無月
余寒なほ用件のみのLINE来て
森中ことり
落ちてきそうな天井の汚点余寒
水越千里
登校の自転車に北京の余寒
オクシー
戦争が喉元過ぎて余寒かな
大
磨りガラス余寒に透けるセロテープ
あまぐり
液晶の失せる余寒の置時計
唯野音景楽
殺生石真ふたつに割れ余寒かな
むったん@狐狸山会
肺へ入る余寒の肝を震はせり
暖井むゆき
下帯姿の熱気か余寒の地
真喜王
閑かさや町へ余寒の落し蓋
黒子
余寒なほ七年前の兄に会ふ
古庄 萬里
余寒の雨やライオンの背に響く声
むねあかどり
艇庫開けカヌーの息の余寒かな
小藤たみよ
すつと描く鹿の瞳孔余寒かな
笹野夕
「御朱印はおやすみします」寺余寒
西村 棗
病ひ得て残り一つの余寒かな
酒井均
舌下錠溶ける間の余寒なほ
春海のたり
転職の決まらぬ子の部屋余寒なほ
おかだ卯月
余寒なり死に際の猫の二三歩
ハルノ花柊
局止めの手紙や祈る手の余寒
春蘭素心
遺産分けぶれる実印余寒なほ
小田ビオラ
熱の子の呼気の波間にある余寒
諏訪ヤス子
ため息のかたちつくりて余寒かな
望月朔
各駅の余寒溜め込み電車来る
丹波らる
余寒なほ草焼くにほひ遠近に
辻 螢
硬券に鋏を入れる余寒かな
岩本夏柿
バイタルとる独居患者の腕の余寒
杼 けいこ
余寒なほショパンのワルツを固くせり
あずさゆみ
告知受く鼓膜に残る寒さかな
夏草はむ
つむじ風頬に余寒の棘ひりり
はまお
夕雲の低く添いゆく余寒かな
そまり
獣らの薄目余寒の森深し
入道 まりこ
啄まれ実は皮と果つ余寒かな
一歩亭六案
内蔵の座敷正座して余寒
さおきち
全壊のブルーシートや余寒なお
富山の露玉
癒えて吸ふ空気甘きも余寒かな
みやかわけい子
ためらいは見せず上京あえて余寒
陽乃姫
蛍光灯ちらつく子供部屋余寒
武志望
余寒の夜弾くそろばんなほ響く
ふみ
二千超え未だ余寒の採寸場
うた 歌妙
赴任地の空にくゆりて余寒かな
ナタデココ
蒼白の真珠余寒の父の通夜
中島 真珠
言いたいこと言えず余寒の風の中
おのまい
ダム底の余寒心が決壊す
島田雪灯
礼状の斜めの宛て名余寒なる
くま鶉
釣鐘の余韻は長し余寒なほ
葉月庵郁斗
風音の賑やかなこと余寒かな
たかはし千百
一刷毛の紅差す鼓動余寒なほ
陽
ガリガリとのど飴砕く余寒かな
桂子
コストコの満車ぐるぐる余寒かな
みなみはな
二度鳴らすりんはレの音余寒あり
オキザリス
銀だこの列の夫待つ余寒なり
服部勝枝
今日は帰るまい余寒のヘッドフォン
五味海秀魚
燃料のごと酒に咽せ余寒なお
オニチョロ
詩を綴る余寒の指を手で包む
葉るみ
射的場貸し切りでパン余寒の夜
羅美都
母逝きてはやひと月と知る余寒
たかみたかみ・広ブロ俳句部
重文の仏像一体余寒かな
老人日記
ポタージュのとろみの渦へ余寒溶く
月待 小石
留守電に母のため息余寒なほ
星月彩也華
廃校やアンモニアのごと余寒
深町宏
旧友を通す仏間の余寒かな
キッカワテツヤ
積ん読の寝間に崩れし余寒かな
志きの香凛
ハイヒール返品帰路の余寒かな
月枝いと
青空と木末カーブミラーに余寒
梅朶こいぬ
手に余寒海峡仰ぎ走るチャリ
丘るみこ
鳴き竜のまだ鳴き出さぬ余寒かな
太平楽太郎
骨折の妻のベッドにゐし余寒
八尾の正吉
乳吸うてこぶし握りて余寒かな
西野桃果
東京へ高速を踏み込む余寒
司啓
終点と車掌に揺すられて余寒
白猫のあくび
三品を供ふ仏間の余寒かな
香羊
体にバネ埋めて余寒の街をゆく
桃園ユキチ
余寒の国道啄まれる死骸
夏雨ちや
傷ついた傘のセロファン剥く余寒
白玉みぞれ
延滞三日目余寒のコイントス
柴田藤安
すこしだけ余寒に耳を噛ませをり
比良田トルコ石
コロナ四日目いまだに余寒なんだとさ
ぜのふるうと
本漁る神保町の端に余寒
紫小寿々
リフレイン余寒の中の沁む心
松元転石
煎餅を噛む音高き余寒かな
丸山隆子
返されぬままの乱歩よ余寒なほ
咲間元文
チケットは売り切れ雨の街余寒
鈴白菜実
坂道の轢死の牙に白き余寒
橋本有太津
余寒とは酸いコーヒーの檜皮色
横縞
エリーゼのために余寒の街ピアノ
横山雑煮
浦暮れて鱗ひかる余寒かな
能研ショテカ
夜な夜なと埋まらぬパズル程余寒
松風花純
理科室の余寒友との蒼き日々
楊梅江風
棺には明るき花を余寒かな
朗子
譲渡会保護猫鳴いて鳴く余寒
伊沢華純
男湯にベビーベッドのある余寒
あいだほ
余寒なり便座の蓋が開いている
猫ふぐ
納骨の粉骨舞い上がる余寒
どくだみ茶
文絶えてポストの底の余寒かな
たつき
教習の車余寒の国道を
山吹なお
寝床から厠へ通ふ余寒かな
そめやまさみ
かはたれに足踏み余寒の国道
はたやま こう
書き置きの細字の楷書余寒あり
石神湖畔
消灯の療養病棟余寒あり
細木さちこ
日めくりを破りし朝の余寒かな
大西秋桜
余寒なほチーズの銀の包み噛む
伊藤恵美
塩の道余寒抱えた瞽女の足
桂葉子
発熱の寝室いつぱいの余寒
旺上林加
跡継ぎの読経長し余寒かな
田辺ふみ
日浴びる薪割る二人余寒かな
増田楽子
迷いつつ桝目を埋める指余寒
南波舟
余寒のポスト迷惑なDMがまた
Nakahara結月
処方箋握りしままの余寒かな
ぶうびい
石垣の修復つづきたる余寒
可笑式
抱擁は余寒のなかに熔けるバター
シュレディンガーの獏
遮断機へ残響遠き余寒かな
桜月夜
ゴジラ吠ゆ余寒の銀座四丁目
周防の鼠
鳴り龍に柏手を打つ余寒かな
藤 レイ
吊り下がる魚の揺るる余寒かな
上津 嘉子
傾けて閉じぬ人形の眼や余寒
樫の木
ドアベルの余寒マスター準備中
大岡秋
ダイナーの鏡に残る寒さかな
吉田涼太@
包丁が人差し指を切る余寒
うさぎ柚和
折れ線の振り幅小さくなる余寒
黒蜜きな子
三回忌終へて余寒の栞抜く
松山めゐ
霊峰の透き通りたる余寒かな
山内 負乗
鍵盤に残る寒さや老楽士
夏埜さゆり女
両替す余寒のコインランドリー
織部なつめ
ランニング信号待ちの余寒かな
わたり 和
上履きの片方の無き余寒かな
高橋寅次
余寒なほ埴輪の眼窩黒々と
山田蹴人
身の内の骨こきと鳴る余寒かな
龍田山門
余寒あり人生四億五十年
藤鷹圓哉
捨てられぬ時計狂つてゐる余寒
関津祐花
白湯で飲む小青龍湯なほ余寒
中岡秀次
余寒なほ花卉店はもう消えてゐた
孔明
花街の濡れたる路面てふ余寒
広木登一
ロウソクの照らす仏間の余寒かな
小湊 八雲
強らかなる円空仏にある余寒
みらんだぶぅ
非常階段余寒の微炭酸
Vn 花のん
右クリックの効かないマウス余寒嗚呼
里山子
二台目の救急車過ぐ余寒かな
高山佳風
イエスマンばかりの会社出て余寒
野地垂木
喫水のしづかに下がりゆく余寒
ぐでたまご
遺品整理や余寒の竜頭手に馴染む
七瀬ゆきこ
鐘の鳴る村の集いの日の余寒
下條ちりり
残業や余寒の部屋の暗き黙
ももたもも
余寒あり手のひらに熱去らぬまま
ちゃうりん
空低くなる古時計鳴る余寒
豆くじら
子を寝かし喧嘩を延期して余寒
植木彩由
通知表の文言削る手の余寒
苫野とまや
もつ煮屋の屋台消え去り余寒かな
花和音
自販機のゴトン余寒の港町
海乃一夏
篩の目にまとわるひげ根余寒かな
ふわり子
正義とか常識だとか問うて余寒
三無季生
待つ人の無き窓ガラス余寒かな
遊羽女
余寒つれランナーたちの怒涛なり
松本俊彦
猫の瞳の白く濁れる余寒かな
水須ぽっぽ
同志逝く街は余寒と騒色と
篠雪
闇夜の救急車余寒の赤色灯
一井蝸牛
終日の曇に余寒点く灯
高見艀舟
委任者代理人代筆者余寒
飯村祐知子
余寒の夜ひとりの家の施錠音
藤咲大地
意に添わぬ引越しの箱積む余寒
麗し
ほとばしる水路濁れる余寒かな
国東町子
残業のレンジに真顔ゐて余寒
桜鯛みわ
予約時刻過ぎて余寒の外廊下
沢拓庵◉いつき組カーリング部
朝練の鉄扉に残る余寒かな
春よ来い
左手で心音を聞く余寒かな
きべし
幌上げて余寒切り裂く赤ポルシェ
兵頭紫峰
剥製の猿の目聡し余寒かな
和緒玲子
募金箱持つ手も入れる手も余寒
さくら悠日
パイプ椅子並ぶ講堂余寒なほ
雨李
窯出しに一呼吸をく余寒かな
吉谷地由子
カーテンと窓のあひだの余寒かな
そめいゆ
「豚汁はサービスです」と余寒かな
陽花天
残業のヒールに響く余寒かな
松坂 コウ
夜遊びのおやつ余寒のローソンへ
帝菜
一枚の舌の裏にも余寒あり
山崎なお
消し忘れの部室余寒の放課後
ペトロア
散歩道のシャッター揺れる余寒かな
八光地蔵
蒼天にジェット一筋余寒かな
殿さまペンギン
吊り橋を歩すれば揺れる余寒かな
三天朱印
別室の余寒余談をカウンセラー
さく砂月
散髪を終へて余寒や盆の窪
一日一笑
名画座を出でて余寒の二人かな
武田ラーラ
ギターの弦ゆびに食ひ込む余寒かな
はごろも856
朝チョークキック三発余寒かな
定位置
余寒とはうらはらな恋めけるもの
森脩平
唄ひだしさうに柩のなか余寒
ろまねす子
余寒なり既読なき役員LINE
快晴ノセカイ
湯気たてて馬の尿する余寒かな
工藤悠久
青空個展の裸婦画に尚余寒
鳥不驚
老僧の袈裟のこわばり余寒かな
井上美月
寄道の母を迎へに町余寒
西川由野
継ぎ目ない時間流れる余寒あり
蘇子
入浴剤値引シールの余寒かな
梅世耕
見入るうちに余寒そのものサインポール
星田羽沖
病む母の髪のみだれをとく余寒
風蘭智子
健診の紙で指切れたる余寒
新樹番人
鼻頭よりだんだん滲みる余寒
全美
余寒なほ手帳に×を書き付ける
緩木あんず
逆上がりの指導鉄に余寒なほ
窪田ゆふ
不揃いのチベタンベルの音へ余寒
野井みこ
余寒なほオルガニートを繰る指に
音羽凜
チロルチョコつまむ余寒の門くぐる
たけろー
どう見ても電話してゐるふり余寒
倉木はじめ
買い置きの味噌の重なる余寒かな
蓮田 つばき
バラードの余寒の硬き弦弾く
ふみづきちゃこ
余寒の酒酌むやまた詩の話など
杏乃みずな
踝の靴下や足首の余寒
祐 紀杏里
潮風や揺れる幟に余寒見る
二階堂詠介
風の中答は見つからず余寒
一雁低空
ソナチネは硬き音色となり余寒
河村静葩
飛び立てぬ唐門の鶴余寒なほ
小池令香
イヤホンは死角余寒の空返事
石田将仁
宗教をひとつ断る余寒なり
三尺玉子
外階段の靴音加速する余寒
みつれしづく
ノズルより迫り出す余寒なるリンス
さくさく作物
装丁の深緑中公新書に余寒
ピアニシモ@金カル
野放しのごとき余寒に我が足は
赤馬福助
塀沿いに除草剤撒く余寒かな
天野若花
ライトカバー虫の墓場のままの余寒
久米穂風
代理人署名余寒の塵のかげ
加座みつほ
「ただいま」と言ふ君の手に余寒あり
下野海
余寒なる抽選会の長きかな
鷹見沢 幸
亡き母の踝きれい余寒かな
本村なつみ
日の落ちてローカル駅の余寒かな
寺嶋杳杳
ねんごろに去るや余寒の譲渡会
清水 三雲
伏す前のままの暦にある余寒
有野 安津
からくりの肘の上がらぬ余寒かな
内藤羊皐
そっと寄る野良猫余寒のなで声
白山一花
剥製のつばさ余寒のミュージアム
すりいぴい
明日は雨薄いタオルを使う余寒
綿鍋雪
母の目の予後問う電話余寒なお
柚木みゆき
うめきたの無人の重機余寒の夜
てつなお
山里の梵鐘鈍き余寒かな
是空
朝夕に薬十錠飲む余寒
ひろ志
余寒かな北野の絵馬はぎょうさんに
うに子
手離せぬ小物の多き余寒かな
池田 凜
半音の上がる余寒の立ち話
そうり
昨日まで愛車在りし場所余寒なり
鳴海沓子
空き箱となったティッシュを積む余寒
はっしー
ブルペンに砂舞う余寒河川敷
馬門宗太
羊羹の端のざらざら余寒なほ
さとうナッツ
支援へり軽き帰還の余寒なほ
長操
余寒撫づ修正液の跡の凸
加良太知
CTの癌再検査余寒かな
石川順天
送別のどちらも台詞めく余寒
原 水仙
あさぼらけ写経に残したる余寒
モッツァレラえのくし
愛猫の睫毛も覆ひたる余寒
云々 美雲
葬式の受付に来る余寒かな
富山湾
余寒なお空っぽを満たす術なき吾
みうら朱音
頑張るな数字落とすな余寒また
黒麹 糀
ピーラーの走る余寒の膚かな
卯月紫乃
後5キロの距離余寒のツーリング
テラゴン
ドアベルのカラコロ会えぬ日の余寒
きのえのき
あのフォークシンガー囲む余寒かな
小木さん
縁切れしをとこの眼鏡余寒なほ
佐藤さらこ
鳶の声低く途切れる余寒かな
花南天anne
余寒なほ焙煎の豆香り良し
吉田わさび
床上げの鯉濃恋ふる余寒かな
すがりとおる
電鋸がうなる余寒の並木道
ほしのあお
卵白の泡立つまでは余寒かな
空山プラネタリウム
承諾書二枚三枚書く余寒
沼宮内 かほる
ワイパーは重し余寒の縦貫道
うみのすな
ぎぎぐぐとワイパー硬き余寒かな
川越羽流
手術日の決まらず新聞みる余寒
よみちとせ
寝床より鼻の寂しき余寒かな
立山穂高
じんじんと脛の疼きに余寒あり
橋野虎空
ホームドアただ銀色の余寒かな
戸井島はな
余寒なほ斜面に津波到達線
多々良海月
余寒なほ同居を打診の唇
阿山きし
雨後の庭おちし滴に余寒あり
カジマ木犀
余寒なほ鍵の開かない古日記
ふじこ
ミシン踏む余寒の闇の凭れつつ
あるる
金剛の頂とぼる余寒かな
木村ひむか
タワークレーン数多都心の余寒かな
伊予吟会 玉嵐
寄席を出るひと風受けし余寒かな
滝美音
パラボラで受くる異国語余寒あり
久里尋太
銭湯の黒煙は余寒へと果て
まるかじり
AIの無音に綴る余寒かな
ほこ
米一合研ぐ二拍子に棲む余寒
歯科衛生子
駅伝の去りし通りの余寒かな
阿部油
棺桶の隅に余寒と宝物
山口葵生
遠方へ見送る戸口なほ余寒
上山凡仁
廃棄待つダンボールハウスに余寒
水蜜桃
散歩より余寒の鼻のもどりけり
愛燦燦
母の立つお勝手広し余寒かな
小和布
缶積みて自転車行くや余寒の朝
亀亀子
余寒なり平山郁夫の色使い
あらかわすすむ
余寒てふ空ひろがりぬ駿河台
林省造
直されぬままの石橋余寒なほ
峰 乱里
病む妻の声嗄れ果てる余寒かな
遅狐歩
忌明けて線香を消す余寒かな
フージー
新橋の九時の屋台にくる余寒
ちょくる
約束は昨日余寒のせいにする
高瀬瑞憲
医者の声とおく余寒の手術台
えいぎょ
余寒まだ八十路となるも無神論
新濃 健
釣銭で買いしコロッケ余寒なほ
砂山恵子
はとバスの名所着くたび余寒かな
小田毬藻
炊き出しのカレー余寒の膜破る
多数野麻仁男
割れたまま掠れたままの路余寒
かねつき走流
度の合はぬ眼鏡の奥の余寒かな
岡井風紋
鶴亀の蓋の吸付く余寒かな
ふのんへん宗悟
父逝きて海鳴りの街吹く余寒
藤 正風
遷化の葉書静寂のち余寒
石岡女依
余寒なほ最後に拾ふ喉仏
リカ
同意書を医師へ捧げて余寒あり
主藤充子
花時計余寒に遅れ二三分
芋 二郎
ヤギ小屋の小ヤギ軽やか跳ね余寒
梨山碧
旅程表修す余寒の円安よ
瀬央ありさ
つり革に訃報のバイブ余寒あり
伊ナイトあさか
母の忌やロシアンティーに余寒なほ
霧 澄渡
朝市の跡覆ひたる余寒かな
羽柳武助
同居人は結婚余寒のソファ
三隅 涙
しわがれた反戦歌哭く余寒の夜
藤いろにか
余寒なりバッハは睡眠導入剤
虎堂吟雅
余寒なほ御殿場に行く自衛隊
斉藤百女
余寒なほ時折疼く手術跡
玲風
くちびるの疲れあらはる余寒かな
小園夢子
月に海網膜に影余寒染む
紫水晶
オペ室に胎盤どんと座す余寒
白子ポン酢
始発バス行くテールライトの余寒
山川腎茶
ギイという郵便受けに余寒あり
紅塩寝子
余寒なほ北を向きたる風見鶏
あさぬま雅王
心音の穿つ踊場余寒かな
鈍亀
蹲に余寒がひかり閉じ込めて
コモドドラゴン
指先に都会の余寒纏ひつく
宮井そら
蹲の手水一杓余寒かな
茶
粉薬胸につかへてゐて余寒
夏湖乃
深紅の霊力余寒の鉄パイプ
土佐藩俳句百姓豊哲
いつまで余寒いつまでもこの余生
伊江かつじ
二で割って余る温度の余寒かな
星醒
余寒の渋谷ジーンズに浅き穴
藍創千悠子
結局は出前を頼む余寒かな
野州てんまり
余寒かな思ひ出と言ふ不老不死
リーガル海苔助
余寒かな郵便受けに手を入れず
紙威楓
新人の居ない余寒の会社哉
山尾政弘
終点へひとりとなりしバス余寒
英子
はじかれしおはじき一つ余寒かな
茅々
朝市に鎮座まします鯛余寒
宮沢 韋駄天
薔薇窓を抜くる余寒の色深し
村瀬ふみや
遠吠えに起床急かるる余寒かな
増田 昴
余寒なり引率先はライバル校
みなづき光緒
インク壺にたぷんと青の余寒なり
林りんりん。
余寒あり園バスまでダッシュダッシュ
アニマル可秘跳
目眩して余寒の品川駅出口
安溶二
救心糖衣錠三粒飲む余寒
朶美子(えみこ)
ワイファイの通路を塞ぐ余寒あり
おぼろ月
余寒あり宿坊深夜のラップ音
紫鋼
余寒なり痩せし背中に聴診器
田畑 整
四つ目の姓(せい)名乗る姪余寒空
宗平 圭司
神楽坂に猫ゐぬけふの余寒かな
えりべり
塩齧る牛の舌下にある余寒
青木りんどう
海の無い県からメール「余寒なう」
星野はいかい
抱かれる吾子や余寒の高架下
とんぶりっこ
余寒の跫音カルーアミルクをあっためる
羅蒐
社宅群すべて更地となり余寒
竜退治の騎士
天秤のひだりに余寒みぎに恋
草夕感じ
繕ひの玉結ぶ弧の余寒かな
比良山
デッサンの指に余寒やパンを練る
三重丸
街宣車角を曲がつて行く余寒
うめやえのきだけ
ロケ余寒バンジー飛ぶまで帰れません
あらい
生き死にをジャッジする余寒のスマホ
青海也緒
羽根ひとつ旅立ちさうな余寒かな
恵勇
分校の朝礼の列余寒なほ
田中美蟲角
点滴の針に強ばる皮膚余寒
ノアノア
ちさき君の強き鼓動をたどる余寒
夢雨似夜
繋ぐ手のひらのあはひの余寒哉
片山蒼心
待合室時計の音のみ余寒
石垣ようせい
まだ温きポン太を強く抱く余寒
いくたドロップ
サンドレッド手繰りて安堵の余寒かな
浪速の蟹造
カット屋の週刊誌開く余寒かな
S・葉子
マナー音闇揺らめける余寒かな
島田ポン吉
帰宅して余寒を少しおすそわけ
香田ちり
商店街途切れるあたり余寒の灯
木寺 仙游
箏はじき余寒に浸す指となる
月石 幸
見本めく寄書き貰ふ余寒かな
秋月
水揚げの声も静まる余寒あり
みつき 夏
騎馬像の護る余寒の天守跡
酔下弦
風切るバイク余寒の再配達
四丁目
病棟に雲の流れて余寒かな
後藤三梅
彼奴の死SNSで知る余寒
えりいも
子持石抱き余寒の村の路
辻野 花
余寒なおチョコの苦さを持て余す
だいやま
余寒かな今日も見かけし猫のこと
空木眠兎
着衣すべて再生繊維てふ余寒
伊予吟会 宵嵐
聞かざると言わざるの間に余寒かな
コイケキクエ
パチンコで負けて余寒の駐輪場
羽光
極彩のランタン仕舞う余寒かな
竹春エリザベス
余寒あり門を開けると島の路地
村上薫
売りつくし幟二本の余寒かな
中田邦光
断食の行に余寒の半跏趺坐
ちくりん
鐘の音の遠き余寒や二月堂
るびちゅ
余寒なお壁新聞はケセラセラ
華風ルナ
苗載せし猫車の手余寒なお
島田順子
産卵のあとのここここ余寒なほ
杉尾芭蕉
前髪ぱっつんの二十歳余寒まだ
藤田味
きつく抱く余寒を点す指先も
松岡拓司
余寒なほこの事件冤罪ぢやない
さざなみ葉
筆談のペンの掠れを読む余寒
宥光
燃え滓は音なく崩れ余寒なお
妹のりこ
ここに余寒忙しなく生きる何故に
ちぅっ。
寝るだけのために使ひぬ部屋余寒
Kかれん
繰り上げ出発デジタルカウントの余寒
野山遊
子のひらう石の礫も余寒かな
柚明楽
生え際に白髪の二三本余寒
豆柴
空き交番きしむ余寒のパイプ椅子
前田いろは
明け方や余寒の星たちはジュエル
花咲明日香
うたた寝も達磨座りの余寒かな
香取扇公
歯磨き粉絞り出すごと余寒かな
ぐりえぶらん
趣味ばかり増えて余寒の子供部屋
ぉ村椅子(志村肇)
余寒厳し寄り合ふ午下のドッグラン
三島ひめばしょう
サイレン遠く余寒四◯五号室
京野さち
丑三つの余寒貫く半鐘音
みゆむうしば
本日よりシングルマザーとして余寒
苺井千恵
ただ無言名残惜しんでゐる余寒
はれみちる
母が逝きいまだ余寒が占める臓
伊都
余寒なほそれでも洗ふ皿と鍋
ゐるす
魚市場余寒切裂くかすれ声
松永恕淳
先取りの房総半島旅余寒
坂 とき
遊具軋み余寒漂う清掃日
白井 佐登志
駆け抜けて余寒の朝の消防車
ぎんやんま
避難所を遠慮余寒に犬抱いて
戸部紅屑
奉る燭に余寒の光かな
対馬清波
余寒なほ能登にキッチンカーの湯気
佐藤烏有
「いや正に余寒ですが」と校長は
西田武
星一つ丁石一つ余寒あり
たむらせつこ
余寒なお漁港隆起の地震の跡
夏目たんちゃん
最終便降りて故郷の余寒かな
菅原ゆう
なんもかんも忘るゝ姑(はは)を抱く余寒
らん丸
遠山に雲の動かぬ余寒かな
渡邉花
少し濃い今朝のコーヒー余寒かな
大阪駿馬
バス停の行列揺るる余寒かな
楽和音
一人居て奥歯噛む日の余寒かな
笑松
乳鉢に砕く猫の餌余寒なほ
中里 凜
履歴書の返送さるる余寒かな
紅三季
松籟の余寒潮の香きりきりと
葦屋蛙城
駅前の五時ぶら下がる余寒かな
花紋
余寒なほ高足膳の作法訊く
北乃薫衣草
永遠に予習してゐる余寒かな
中山月波
閉業の長蛇余寒の映画館
千代 之人
唇を濡らし余寒のコルネット
いたまき芯
立ち食いのうどんに一味ふる余寒
だっく
脳味噌のぎゆるとねぢれる余寒かな
沢井如伽
余寒の霹靂マストドンの咆哮
富士桜花
旧約の金字剥げたる余寒かな
森器
傾城の硝子くもらす余寒哉
喜多輝女
夢殿に灯り火ひとつ余寒かな
reion
ISS過ぐ薄明の余寒かな
高木石塊
会いに行かない人の波余寒かな
青みどり
余寒なる駅前名菓焼きあがる
むらぴ
電気来て明日水通る舎よ余寒
雪さやか
余寒にて窓にしたたる水の線
武知小雪
月曜のメトロ出でれば余寒なり
大谷如水
青墨の滲み余寒の筆立てて
岡山小鞠
すべり台余寒の雨の滑りおり
山田蚯蚓
盛塩に残る指痕余寒なほ
木村隆夫
地図を持ち余寒の絡む一人旅
谷 道悦
補聴器を取り落したる余寒かな
でんだ浜千鳥
仄暗き格子余寒の仁王像
清瀬朱磨
大仏の胎内に在る余寒かな
こもりく
呉服屋の暗き玻璃戸の余寒かな
おかげでさんぽ
被災地のアンテナショップ余寒なほ
夏 しのぶ
逆縁の通夜の一服余寒かな
安春
枝打ちの鉈の食ひ込む余寒かな
田村利平
招き猫余寒の棚に畏まる
岩田遊泉
定まらぬ未来や余寒の十五歳
瀬戸ゆらり
梵鐘の帰路を茜に染む余寒
清水明美
ラヂオでは株価早口尚余寒
亀山酔田
余寒かな庭の砂利道音荒む
蒼き鷹
部室の余寒残された自画像
玉野汐音
「笑いの電話」依頼百件余寒かな
佐々木のはら
母の家に味噌汁作る余寒かな
渡辺十把
幕張や余寒も夢の一小節
平山仄海
動く雲動かぬ雲の余寒かな
ふんちん
余寒なほ君の高さのピアノ椅子
まちる
病状を問う人も無き余寒かな
小島やよひ
余寒なほ仮設住宅木の香して
田村 宗貞
余寒ゆく吾を窺う猫五匹
小山 晃
残業の図書室余寒あり佇立
緑茶花
居酒屋のぐるり一町余寒なほ
くずもち鹿之助
理科室の引っ掛かる戸ぐるま余寒
吽田のう
愛猫の命日に添ふ余寒かな
三好一彦
抱き枕の柴犬笑ふ余寒かな
柴桜子
朝ぼらけ名残りの星の余寒かな
中井無心
野球少年余寒を払ふ素振りかな
虎穴虎児
澄み増さる天正疎水余寒かな
ときめき人
作業場の木端くべ入る余寒かな
君島笑夢
手水舎の龍の吐きたる余寒かな
松葉学而
第五番凶「待ち人は来ず」余寒
山くじら
宮崎の余寒スイングして日の出
松本独り
午前四時脈に手を遣る余寒かな
宝塚御殿子
ひとまわり大きく根張る余寒かな
マタネ
あの余寒大観音の背に潜む
町神
薮医者の言葉を濁す余寒かな
谷本均
鋏鳴る庭師二人の余寒かな
夏 六葉
肌を食む余寒のマゴットセラピー
岡根今日HEY
釣具屋ののぼりせわしき余寒かな
斎藤さんけん
出勤の自販機包む陽の余寒
渥美 謝蕗牛
余寒の病棟缶コーヒーごとん
伏見丹耶
センサーの夜灯戸口に余寒の影
靫草子
半世紀ぶりや余寒の新京極
愛柑
南極の魚も旨いとか余寒
なか かよ
通院日ざくざく道の朝余寒
ルーミイ
服薬の減ることも無く余寒かな
露崎一己句
くるくると水抜きの渦余寒なほ
dragon
余寒余寒悪因悪果を考証
水鏡新
ワイヤレスイヤホン余寒の雑音
矢橋
余寒のカンバス桃色のパンプス
落句言
切盛りのバイト余寒の深呼吸
小林昇
村余寒焼鯖定食コーヒー付
大塚迷路
祭壇の共鳴長き余寒かな
赤尾実果
レコード盤の溝の飛び飛びして余寒
舟御前@ノエル
線香を焚いて余寒の灰崩る
小川都
夫逝きて我に寄りくる余寒なほ
卑弥呼
渋滞に呑まれ余寒の救急車
夏立也
余寒かな食指の先に小さき罅
恋瀬川三緒
町会の新役員の余寒かな
青い空加納
琴の絃浅く戻りし余寒かな
福田みやき
ひだまりの隙間に余寒の穴ありて
空流峰山
お手玉を三つ落として余寒かな
大野美波
薬塗る背に余寒のひと日過ぐ
浩子赤城おろし
昇降口余寒だれかのリコーダー
西野誓光
余寒なほぎこちなきババロアの揺れ
あねもねワンヲ
リスザルは居留守余寒の動物園
かなの りえこ
次回の兼題も
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