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中級者以上結果発表 秀作
2026年1月20日週の兼題
鱵
【曜日ごとに結果を公開中】
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似てるって褒め言葉さて細魚へ刃
一斤染乃
選者コメント
夏井いつき
選
「似てる」とは確かに褒め言葉なのでしょうが、この魚のもう一つの特徴は、腹腔の黒い膜。まさか、そっち? という思いも過ぎりつつ、「細魚へ刃」を入れる。この魚ならではの、切り口の一句です。
さよりさより悲しいほどに直進的
中岡秀次
選者コメント
夏井いつき
選
この真っ直ぐな体形ですから、泳ぐのも釣られるのも真っすぐなのだろう、と。「悲しいほどに直進的」という表現には、鱵に投影した己の人生へのため息も感じられます。「さより」のリフレインには、生きる悲哀も匂います。
透明は白のはじまり鱵干す
苺井千恵
選者コメント
夏井いつき
選
大量に獲れた鱵は干物にします。腹を開いて干物にすることが多いようです。鱵の美しい透明は、太陽に干され、やがて白濁していきます。「白のはじまり」は、実感を伴った「鱵干す」という季語の現場の真実です。
鱵買ふこの下顎を何としやう
くちなしの香
選者コメント
夏井いつき
選
新鮮だし美味しそうだし、思わず買った鱵ですが、いざ調理しようとしてみると「この下顎を何としやう」という呟きが口をついて出てきたのでしょう。ユーモアとリアリティのある鱵ならではの一句です。
鱵行くしづかにみづを刺しつづけ
常幸龍BCAD
選者コメント
夏井いつき
選
鱵の泳ぐ姿を想像すれば、まさに「しづかにみづを刺しつづけ」であろうという詩的説得力。真っすぐな体形の鱵に対して、「く・し・つ」等の平仮名の視覚的効果も狙ったのか……と、深読みもしてしまいました。
水に傷つけぬ針魚の下顎は
岡根今日HEY
選者コメント
夏井いつき
選
「針魚」とも書かれる体形ですから、水を縫うように静かに泳ぐのでしょう。その感覚を「水に傷つけぬ」と表現した点に、独自の詩があります。下五「下顎は」の切れのない余韻に、針魚という存在の哀しみも漂います。
鱵買ふ砂町銀座雨さつと
樫の木
選者コメント
夏井いつき
選
「砂町銀座」は、昭和時代の良さを残す江東区の商店街。鱵が並び始める春を喜ぶ心が「鱵買ふ」という上五に弾みます。下五「さつと」降る雨もまさに春の明るさ。俳句はまさに日常の詩なのだと、改めて納得させられた一句です。
日に干され顎のずれたる鱵かな
高嶺織人
選者コメント
夏井いつき
選
鱵の長い下顎は興味を持たないではいられない句材ですが、「日に干され」た後の様子までをも観察するのが、素晴らしい俳人根性。「顎のずれたる」という発見と描写のリアリティこそが、この句の肝となりました。
鱵は日輪に突き刺さる。稀に、
赤馬福助
選者コメント
夏井いつき
選
鱵には小さな羽があって、海面を跳ねます。そんな鱵の中には「日輪に突き刺さる」ものもいるのだという妄想。句点の後の「稀に、」という押さえ方が、逆に、強い詩的真実味を醸し出しているのが、ニクイ手腕です。
鱵釣る釣る鉄臭い倦怠期
川村ひろの
選者コメント
夏井いつき
選
「釣る釣る」のリフレインが楽しそうな空気になっていないのが、後半の言葉の力。人生の「倦怠期」における暇つぶしが、鱵釣りなのでしょうか。「鉄臭い」という形容が、全ての単語に影響を及ぼすような構造が巧い作品です。
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