初級コースの金曜日掲載は中級への昇級の目安。中でも特に目を惹く句についてピックアップコメントをお届けします。

「色鳥を聴き分けている点字盤　　　濱野　五時」

色鳥は体や羽の美しい小鳥の総称であり、特定の一種のみを指す季語ではありません。視覚障害の方は鳥たちの鳴き声を繊細に聴き分け、手元の点字盤で打刻します。傍らでサポートする介助者は代わりの目となり、色鳥の個々の姿形を伝えることでしょう。声とあわせて鳥の色形を思い描きつつ、点字盤は楽しげな音で記録を付け足します。

「美しいものに怯えよ色鳥来　　　山中えいみ」

警句のような上五中七は色鳥を取り巻く環境に対してでしょうか、あるいは普遍的な人生の真理でしょうか。美しげに見えて毒を持つ植物や虫。小鳥を狙う猛禽の恐ろしくも鋭く美しい爪。色鳥は色鳥の身の丈のなかで、美しくも恐ろしいモノに対処しつつ命を繋ぎます。そんな色鳥の健気な美しい小さな体躯が目の前に現れたら、思わず怯んでしまうかも。

「色鳥は果てる大樹が生んだのだ　　　大地緑」

空想的な発想を口語で言い切る強引さが詩を発生させています。見事な葉を茂らせていた大樹。かつては果実を実らせ、鳥たちを喜ばせたかもしれない大樹。年月を重ね、朽ち果てようとしている大樹が纏っていた色彩は、いまや大樹に育まれた色鳥たちに引き継がれているのです。地から離れ、自由に飛ぶ色鳥の姿が眩しくもあり、少し寂しくもあり。

いずれもお見事でした。自信がついたら中級にもぜひ挑戦してみましょう！