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初級者結果発表

2025年2月20日週の兼題

啓蟄

【曜日ごとに結果を公開中】

【優秀句】

  • 啓蟄や影太くなる御神木

    文室七星

  • 啓蟄の土へ和金をかへしけり

    夏野夏湖

  • 啓蟄やひっこしの分からぬ二人

    ちょうちょう

選者コメント

家藤正人

初級コースの金曜日掲載は中級への昇級の目安。中でも特に目を惹く句についてピックアップコメントをお届けします。



「啓蟄や影太くなる御神木   文室七星」

啓蟄はその由来から地面との親和性を発揮します。堂々たる「御神木」に意識を引っ張られそうになりますが、この句で注目しているのは、御神木が地面に投げかける「影」の方。春が深まり日が長くなるにつれて、日々少しずつ影の輪郭は力強く太っていくかのようです。個人的には豊かな黒土を想像しました。啓蟄の土は御神木を育むと共に、御神木を中心とした生態系からふくふくと恩恵を受けているのでしょう。


「啓蟄の土へ和金をかへしけり   夏野夏湖」

季重なりを乗りこなし一句の世界を「啓蟄」の懐に収める手腕が見事。「和金」は金魚の基本となる品種で、大型に育ち十年以上生きることもあります。命尽きた和金を土へと葬るのでしょう。自ら土を掘り、柔らかく湿った穴へと和金を横たえます。弔いの土をかけ戻しながら、いずれその身が分解され土へと還っていく事実にはたと気づく「けり」の詠嘆がシブい。いつか啓蟄の土には色鮮やかな花が生えるような日もやってくるだろうと祈りつつ。


「啓蟄やひっこしの分からぬ二人   ちょうちょう」

「ひっこしの分からぬ二人」には色々な解釈が浮かびます。転居先不明説? 老齢で記憶が怪しくなった説? いえ、個人的には幼い子どもを連れての転居説を推します。まだ物心つくかつかないかの子どもには、住むおうちが変わることも、「ひっこし」の理由もわかりません。願わくば、このひっこしが新しい希望へと踏み出せるものでありますように。「啓蟄」が踏み出す一歩の確かさを伝えます。



いずれもお見事でした。自信がついたら中級にもぜひ挑戦してみましょう!


  • 啓蟄やべふと爆ぜ出るマヨネーズ

    ほしのり

  • 啓蟄の雨はこそばい川は眠い

    モモザウルス

  • けいちつやたぶんあそこにあながあく

    おんぷ(7さい)

  • 啓蟄や土曜の朝はだがし市

    ともや10才

  • 啓蟄の雨や熟していく地球

    原田くろなつ

  • 啓蟄や地球に罅のはしる音

    春の風花

  • 啓蟄や嘉兵衛の船を真帆の風

    澤木樹心

  • 啓蟄のカップ麺明日旅立ち

    若海真

  • 啓蟄や三年ものの味噌の出来

    前田まだら

  • メロンパンほこりと割れば啓蟄の色

    葉之 月

  • 啓蟄や山はさみしく吠えている

    俳句川棒人間

  • 啓蟄や土偶の貌の虚ろなる

    かい みきまる

  • 啓蟄やシューズに通す紐真白

    藤井荘太

  • 啓蟄や蹴りがいのある空高く

    門のり子

  • 啓蟄やナースにはだか洗われて

    池野五月

  • 啓蟄のパン種膨れつつ笑窪

    高山玲徹楚々

  • 啓蟄や地球のバグとして歩く

    森脇かな子

  • 啓蟄や足背の火照りに目覚む

    谷しゅんのすけ

  • 啓蟄やレコードに破調のノイズ

    喜祝音

  • 啓蟄や飲み屋のダチは戀がたき

    鬼石 祥瑞

  • 啓蟄や死の上にある石一つ

    山本薩埵

  • 啓蟄や笑ふ埴輪と泣く埴輪

    足立とんび

  • 啓蟄やクロスバイクに注す油

    米山

  • 啓蟄や隣家の犬の干されおり

    ねうねうこ

  • 啓蟄や法科の廊下しづかなり

  • 啓蟄の朝湯で終う湯治かな

    忠園太冨三

  • 啓蟄やはにわも妻も大あくび

    大石鉄馬

  • 啓蟄や重ねて高きタンバリン

    小山まきに

  • 荒地踏んだら啓蟄の気ゆらゆら

    鉢垂藤

  • 口笛が下手啓蟄の通学路

    ふう兎

  • 啓蟄や昨日の恋より明日の恋

    みかん成人

  • 啓蟄や遮光器土偶の薄目開く

    鈍子

  • 啓蟄やとどろテューバのタンギング

    茗乃壱

  • 啓蟄や二塁の上にダンゴムシ

    野江門美

  • 啓蟄は猫の死骸の匂いかな

    ヤギリワタル

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