以下の①②③については入選決定!
金曜日「優秀句」へのステップアップのためのヒントをご案内します。
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▼①【類想】
啓蟄や農具点検オイルさす
かげろう
啓蟄や野の虫達も楽しそう
泉 恵風
啓蟄や一枚脱いで身を軽く
右田 俊郎
啓蟄やドライブ誘う窓開けて
いつきとさやか
啓蟄や土ゆるびもて虫出る
もる山 もる
愚かなる虫は手の中啓蟄に
木化石
啓蟄やひょっこり出るダンゴムシ
平地かすみ
啓蟄や深呼吸して新世界
さなさな
旅の虫うごめく啓蟄の思案
篠原 蝉秀
虫の巣をまたぎて歩む啓蟄や
讃岐乃駄目夫
スコップで知る啓蟄の訪れ
加藤茉莉花
啓蟄や水差しポトス減り早し
久木 諷
啓蟄や亀が河原で甲羅干す
秋元果林糖
啓蟄や憂き心まで浮き浮きと
高原 徒然草
啓蟄や日差しの下に黒き土
空 行人
生きるもの啓蟄迎えて幸運ぶ
英子
啓蟄や陽に誘われて河川敷へ
やのゆずる
啓蟄や悲喜胸に秘め登校日
駒茄子
啓蟄の土をつつくか迷い鳩
上原まり
啓蟄や袴姿も旅立てり
絹笠竹代
啓蟄の日に旅立つや吾子ひとり
古都酔仙
啓蟄と聞きパステルカラーに袖通す
岩見綾琴
啓蟄かどおりで庭が騒がしい
柳原甲賀
啓蟄や子らの道草解禁日
ひめのつばき
啓蟄にランニングシューズ下そうか
緑星福馬
啓蟄や爺の出番と田へ急ぐ
堀内レイレイ
啓蟄の土より生まれ地に満ちよ
ピコリス
啓蟄や子ら作りをり泥団子
郁松 松ちゃん
啓蟄の陽は輝きて畑の上
八代葡萄
啓蟄や鳥の宴会芝の上
斑鳩 廉
啓蟄だ書を捨て町にくり出そう
草堂Q幸
啓蟄や我も会社を飛び出さん
青砥 転典
啓蟄や補助輪外した吾子遥か
奥山 言成
啓蟄や嘴研ぎて待つ世界
望月つづき
啓蟄や窓から朝光居間で珈琲
四季 影輝
啓蟄や赤子の声も太くなり
蛍草飛田
わらわらと這い登るねむけ啓蟄
珊瑚樹茄子
稿あがり啓蟄開けて陽浴びる
ベル小町
啓蟄や胎動感じる響きあり
有門やっちゃん
啓蟄や散歩メンバーあちこちに
仁尾はにー
ガーデニング土の香の濃し啓蟄や
神谷理風
啓蟄や畑の手入れいそがしく
高瀬マホ
里山も小川も息吹く啓蟄よ
船生伸一
コーヒーを飲んで啓蟄あくびかな
小原ヒデボー
啓蟄に布団から這い出て動き出す
むむむむ
啓蟄やいつもと違う帰り道
宮 由太
啓蟄や慣れし学び舎別れ告げ
佐伯良吉
隠れてた虫がよろこぶ啓蟄よ
春風
啓蟄や我インドア派返上す
田地花
啓蟄や子どもの声と公園に
白バラ椿
啓蟄や爽風流れ眠気増し
素人
啓蟄の土へシャベルの真新し
歌春奈
啓蟄の誘い目覚めし趣味の虫
庭野水泉
啓蟄の気配ただよう土手の穴
涼風 蘭
啓蟄をしりめに布団へ潜り込む
忍穂鞠
啓蟄や虫踊る中我布団
亀田 颯
啓蟄や制服の子ら笑ってる
富山のひろやままん
啓蟄や始発のベルで高野山
義文
啓蟄や私もそろそろ目覚めるか
小林弥生
啓蟄に憂鬱知るも人なれば
土師崇太郎
啓蟄や庭で啄む鳩一羽
山田はつみ
啓蟄や布団引き寄せあと五分と
とうくろう
啓蟄や顔出すカメの土はらう
京野ののか
啓蟄や自転車駆ってゆく海辺
原 南山
啓蟄に土竜ゴソゴソ大食漢
みなづき はるるん
啓蟄や新しい口紅を買いに行く
桃瀬菜美子
啓蟄のふくふくしたる蕾かな
七ほし天とう
啓蟄の土も目覚める起動音
石志
啓蟄や園児の列の伸び縮み
草深みずほ
啓蟄に出遅れた虫あわており
矢部うさぎ
街ガラス啓蟄漁る不燃ゴミ
竹升明子
啓蟄や苦土石灰を撒く農夫
藤 円清
啓蟄やすわまろび退く虫一つ
只野黙念
啓蟄や命の息吹土に湧く
道草散歩
啓蟄やもの皆活きて息吹き満ち
moto髪結
啓蟄や庭に不思議の穴ありて
粒野 餡子
啓蟄やモグラの穴を見つけたり
小林抹茶
啓蟄や手脚伸ばして大欠伸
竹 美玲
啓蟄や食物連鎖が始動する
大家港一
頬撫でし啓蟄の風やわらかに
おはぎの母
啓蟄や鍬ふり下ろす畝固し
亀くみ
吾まねて背伸びする虫啓蟄なり
屋敷 公園
啓蟄の生まれたてなる土匂う
すずき 弥薫
日差し浴び顔ほころびし啓蟄や
本田へのか
啓蟄や穴より出ル虫達よ
野口立香
啓蟄や猫窓際で暖を取り
吾亦紅也
啓蟄や退院予定告げらるる
山根 円壱
啓蟄に産まれし赤子は大地立つ
北伯和鈴
啓蟄や土の眠りを醒ます雨
トヨとミケ
ほんのりと土の香りの啓蟄や
四葩
啓蟄や畑と虫との開戦日
山彦 てっせん
庭の土も臭ひ始める啓蟄
伊呂八 久宇
啓蟄かさあてと父の伸びのする
鳴川 尚好
啓蟄の公園久し稚児の声
七瀬 巧
啓蟄や付箋だらけの参考書
三樹tack
啓蟄や黒土に光滲みをり
ランナーズ寅さん
啓蟄のファーストシューズ第一歩
中川肱洲
啓蟄や心軽やか一万歩
古寺 憲子
啓蟄や床上げし母縁に居て
小我こうぢ
啓蟄や土の匂いの戯る子
藤原明太子
啓蟄をすっとばさないで温暖化
オーガニック紅茶
暦では啓蟄虫も首すくめ
渋谷小石
啓蟄やアスファルトのヒビ土動く
神里 タスク
啓蟄や堆肥の匂ふ畝へ鍬
ルージュ
啓蟄や散歩も心はずむなり
夏川涼
いのち数多起きる啓蟄ゆるむ風
竹内揚羽
啓蟄の空に背伸びの一呼吸
鈴木 京
啓蟄や花粉飛び散る音を聞く
江梨子
啓蟄を待たず飛び出す庭の虫
久世越仙
啓蟄の木立ほのかに目覚めかな
岡崎藍
啓蟄だコート脱いだぞ蓑も脱げ
いつき白藤
啓蟄の河川敷を立ちこぎで
玲
啓蟄や小さき外履き買い替えて
猫田美毛
啓蟄や付箋の多き時刻表
森 薫
啓蟄やサンダル下ろし歩く庭
青峰
啓蟄や我も新天地へ向かう
十八番屋さつき
啓蟄やピンクのヒール出番なり
中村水音
かぐわしい天下のさきがけ啓蟄や
沢松宏美
啓蟄や人間たちも走り出す
四十 カラ
啓蟄やぼくも部屋から出る夜明け
野風庵
啓蟄や朝日眩しい夜勤明け
峯森梟
啓蟄や餌を追う鳥の目がキラリ
野上紫功
啓蟄やパステルコーデひらふわり
夜ツ星シズク
啓蟄に旅立つわが子エアポート
さかい癒香
啓蟄の風に誘われ吾子踊る
タンザニア恵
啓蟄の土の膨らみ雨あたる
森乃涼風
啓蟄や我も負けじとペダル漕ぐ
春野桜草
啓蟄で畑仕事忙がしくなり
太田桜
啓蟄の苔もぞもぞと鳥舞い来
平原 碧子
校門でピース啓蟄に巣立つ
代官野兎
啓蟄や旅程書き込むカレンダー
早良ますみ
啓蟄の息吹き味わう山野草
魚木孫
啓蟄や荷作り終えて一息す
集 真藍
啓蟄や狙い定めて獲りにくる
福田 小さな花
啓蟄や上着一枚助手席に
三枝松平
啓蟄や外出楽しむお洒落して
水城みずき
啓蟄や大地を動かす知らぬ虫
片寄道幹
啓蟄や畑の野菜食ひし跡
河村 呂便
啓蟄にカット完璧美容院
はっぴー猫
餌台に集くすずめの啓蟄や
神津歩地
啓蟄やスカートの裾軽やかに
ツキミサキ
啓蟄や数多の穴の生まるる日
小田緑萌
啓蟄や家から出ずる高齢者
水晶文旦
啓蟄や悪さの虫も疼き出す
河国老保忠
啓蟄に歩き始めた男の子
武田鳥渡仁
紅白の香りがひらく啓蟄に
もちねこ
啓蟄や布団中から飛び起きる
越中之助
自然界生物たちの啓蟄で
菜の花
啓蟄や蠢く者あり鉢の下
東の山
啓蟄や花草綺麗目が痒し
甘栗
啓蟄や視線感じる耕運機
清実
畑にて啓蟄聞くも畝白く
麦夏
啓蟄にうごめく土に耳すます
石川明世
啓蟄のランドセルたち手をつなぎ
奈良風子
啓蟄に虫に合わせて出るニキビ
加賀欣ぶ
就職先未だ決まらず啓蟄なり
丸岡彩映
啓蟄に「こも」外しけりアルバイト
ぴょん吉 龍
啓蟄の汗ばむ野良着トラクター
西倉美紗子
啓蟄に季節感じる雨の音
林一芳
啓蟄の庭の賑わい鳥の群れ
平香
啓蟄や始業チャイムの軽やかに
鴨の里
啓蟄やまだ眠そうなうちの猫
ピアニカたろう
啓蟄や彼方にも生こちらにも
松浦のぶこ
啓蟄や農具搬出種数え
高崎怪人
啓蟄や見知らぬ世界さあ出でよ
藤原 迷月
むずむずと啓蟄の朝土香る
中山長風
啓蟄や這い出る虫の大欠伸
北乃大地
退職後啓蟄感じ土いじり
春乃一朗
ふくよかな雨後の土の香啓蟄来
伊藤美詞
啓蟄や鳥たちはしゃぎ飛び回る
黒鶫
啓蟄や握る孫の手離れ行く
於河吏玖
根開き初め啓蟄知らす草や木も
大泉 竹芳
啓蟄や病室の窓光さす
小澤五月
啓蟄や草の根の下息衝かむ
小澤翔明
合格の吉報を受く啓蟄の日
蓮花
啓蟄や追加の灯油必要か
たがわぱてい
啓蟄のパン屋の犬の大あくび
不知飛鳥
啓蟄や蕾まだかと背伸びする
楠十瀬子
啓蟄を知らずに生きる現代の人
小春日和
啓蟄の野路行く園児らたどたどし
ケンケン
カレンダーめくりて知る今日啓蟄
彩李緑
啓蟄や畑の水面に雨響く
斉燈学楽
庭先の啓蟄の畑鍬軽し
日向幸朗
啓蟄や農園フードUVで
逢花菜子
啓蟄や池の中からぽこぽこと
横山 沙石
啓蟄や掘り起こす土黒々と
かじやのタケ
啓蟄や土から産まれ土へ死す
雪谷ひすい
雨上がり啓蟄の畝深掘りす
松田白山
啓蟄やあとしばらくは眠りたし
秋野明石
啓蟄や子らも虫らも皆同じ
河村のび太
啓蟄を違え這い出る虫もあり
花園 メイ
虫発見暦捲れば啓蟄か
凪涼夏
啓蟄や荷物まとめて新天地
齋藤鉄模写
啓蟄や蠢く大地騒ぐ風
高橋裕ノ盆
啓蟄や猫窓越しに庭睨む
美村羽奏
啓蟄に嫌いな虫も目覚めるや
川口あおい
啓蟄に我も街へと陽は優し
さくら沙月
畦道を三拍子で行く啓蟄に
樽井薫
啓蟄に鼻歌響く地も空も
泉 早希子
啓蟄に初めて一歩一歳児
神谷隆元
啓蟄や公園の猫のつそりと
春の新々
啓蟄や菰外さむと吾も松も
麦乃小夏
啓蟄や深呼吸して里山へ
赤恥山子
啓蟄や時経りて吾子独り立つ
好陽晃
啓蟄の密度高まるいのちかな
笑うレーニン
啓蟄や通学路慣らす孫の背中
水木 晶子
啓蟄や人事異動の内示あり
著子民人
啓蟄や朝体操の人の増え
あすかS姫
入れ替へて啓蟄の土植木鉢
加藤遊鹿
啓蟄や気持ち新たに早出社
いとう小枝
啓蟄に球児の声もはずみけり
アツシ
啓蟄の地下の鼓動に耳澄ます
杜青樹
啓蟄の野辺はどろんこ秘密基地
開山Moon
啓蟄やひかりふる午後眠る吾子
七海ひな子
掘り出した薄手衣類を啓蟄に
ムララ
啓蟄や土の匂いに虫めざめ
流れ星
むくむくと真黒き畝よ啓蟄か
西行葉牡丹
啓蟄や納屋の先頭耕運機
茨城つく婆あ
啓蟄や合格通知届いた日
雪竹積
アスリート啓蟄を期に蠢いて
のろ爺
啓蟄の空に弾ける子の叫び
優音
啓蟄やジョギング再開ダイエット
伝説の晴れ女
啓蟄を過ぎし賑わうジョギンガー
齊藤りゅうじょう
啓蟄や新品のワンピース着て
吉河好
啓蟄の土掘り起こすスズメかな
谷 佳
そろそろと支度しょうかい啓蟄に
ぴょんばぁ
啓蟄や生命蠢く胡坐の下
四王司
啓蟄やリュックひとつで夜汽車にて
寺ゆた
啓蟄や雨打たれ土香リ出し
アンクル・ペコス
啓蟄や小鳥も児らも野に出て
チョコの母
啓蟄や気持ちは嬉し散歩道
明石のたった
啓蟄に一枚軽くお出かけや
夢バーバ
啓蟄やトラクター追う鳥四五羽
玉京子
啓蟄のあらはになるや雨上がり
沖 若永
子らの歓声啓蟄の校庭に
愉来理あゆむ
啓蟄や散歩しようと誘う声
仲西 たえ
啓蟄の甥の合格心地よい
わきのっぽ
久々に誘われて出る吾も啓蟄
中屋敷北羊
子等公園で球遊び啓蟄に
高志
啓蟄の土に小さき足跡が
深草 くう
啓蟄に巣立つ君の背見送りて
氷室東沙
啓蟄や青空を知り生命かな
原城鯉一
啓蟄に嫌われ虫もあらわれる
津田豚女
啓蟄や早く出んかと猫の鳴く
和龍
七年経ち新天地へと啓蟄に
楽・豊・幸で行こう
啓蟄よ車窓全開深呼吸
山笑み
陽気浴び外へ足向く啓蟄かな
古谷芳明
啓蟄や鍬振り下ろす手には豆
西乃羊雲
啓蟄や出るか戻るかおろおろと
青空
まず一歩部屋から出よう啓蟄よ
フリージア
啓蟄の朝に響けり鳥の声
藤田 圭
啓蟄やマンションを出よ街に出よ
道後K3
啓蟄の土はにほへりやはらげり
わたなべ蘇芳
啓蟄やクラス替え待つ不登校
陽介山
啓蟄の大地の歓喜ほとばしる
たなか ゆきの
啓蟄や徒歩通勤で身も軽く
鈴木雪
あったよ番号嬉しき啓蟄
ゆかいなさっくす
啓蟄に巣立つ若者声高く
緒方悠十
啓蟄や我はまだまだ土の中
松山石子
啓蟄の息吹き新たな命生む
大家由美子
啓蟄や土竜塚掘る犬せわし
永田みゆき
啓蟄や地中に活ありモグラ塚
まんはく
啓蟄や萌え出ず野面眩しか
みっちゃん
●ピックアップコメント:
初級・中級に関わらず、類想は似通ったものが集まります。
季語の意味を調べた結果、いろんな生き物の活動を連想した方は多かったようです。もちろん人間の活動も例外ではありません。啓蟄の陽気に触発されて重い腰をあげる人、陽気に外へ飛び出していく人、いろんな過ごし方が並んでおります。
また、地面や土との連想も多かったようです。人の活動と土とのイメージが合体した結果、農作業へと辿り着く人も多かったですね。
たくさんの類想を見ることによって、自分の中に類想のデータベースが構築されていきます。今回見かけた発想のおかげで、陥りがちな類想も避けられるようになるかもしれません。
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▼②【二重切字】
啓蟄やもぞもぞとする地球かな
朝香碧心
啓蟄やジョギングシューズ弾みけり
大森真
啓蟄や待ち合いで聞く心音よ
詩小桃
啓蟄や草々の葉も増えにけり
居 栄心
啓蟄や仰向けの犬跨ぎけり
河地 草芝
啓蟄や眠り続ける老犬よ
ラッキー&クロ
啓蟄や秘めたるパワーの目覚めかな
小路愛生
啓蟄やフィールドの芝緩みけり
布花紙花 ちまいもん
啓蟄や鶏糞匂う大地かな
k幸女
啓蟄や花のにおいを集めけり
水野 孝
啓蟄や錆た金庫の開きけり
伊達ノ半蔵
●ピックアップコメント:
俳句の世界でいわゆるタブーの一つに「二重切れ字」があります。「や」と「かな」、「や」と「けり」など、いわゆる三大切字の重複が中心ですが、稀に「よ」などの例もあげられます。
切れ字はスポットライトのようなもの。一句の中に複数のスポットライトが存在すると、どちらを主役にしたいのかわかりにくくなってしまいます。
季重なり同様、複数切れ字が入った名句もあるので、絶対にダメ! というわけではありませんが、上級者コースのウルトラ技と考えて良いでしょう。まずは、切れ字は一つから!
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▼③【三段切れ】
啓蟄や才能開花ゴール切る
群馬爽走
啓蟄や学生多し教習所
ナンプラー大好きママ
啓蟄や学校を出づ悪太郎
鯨之
●ピックアップコメント:
俳句の世界で忌避されやすい手法に「三段切れ」があります。ぶつぶつと言葉が途切れてちぐはぐな印象を与える場合があり、扱いの難しいテクニックです。
切れが発生する主なタイミングは上五中七下五が切字か名詞、または動詞の終止形で終わっている場合です。
群馬爽走さんの例をみると「啓蟄や」の切字、「才能開花」の名詞、「ゴール切る」の終止形、となります。
ナンプラー大好きママさんと鯨之さんは共に中七の「多し」「出づ」が終止形となり、三段切れになっています。この例は解決は簡単。中七を連体形「多き」「出づる」に変えれば下五へと繋げられます。後者は一音増えるため合わせて助詞も調整し「学校出づる」といった形でしょうか。
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明日から火曜日、水曜日、木曜日、と入選句を発表します。入選句の評価は火、水、木(ステップアップのためのヒントに掲載分も含む)ともに同じランクです。順不同での掲載です。
そして金曜日は、初級者投句欄の優秀句発表です。
選者コメント
家藤正人選
みなさまこんにちは。初級の選者、家藤正人です。
月曜日は、入選にもう一歩という句をご紹介します。
・月曜日の「選者コメント」に掲載されている俳句については、作品検索はできません。
・月曜日の「ステップアップのためのヒント」に掲載された句、入選句、優秀句については作品検索が可能です。
月曜の「選者コメント」や「ステップアップのためのヒント」を参考に、目指せ金曜優秀句への道!!
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▼【季語なし&違う季語】
あの鳥この鳥に領空侵犯
石田如水
君が言った。雪の夜道だ。君が逝った。
明光
ミミズ食うムクドリめがけ猫ジャンプ
中山蒼社
亀が鳴く狭いベランダ光さす
タカハシネコミサ
鳥集う梅満開の庭に蟻
長田みんと
すれ違う薄着姿の春近し
西野あさ
春隣運ぶは白の花のごと
門田 夕陽
霜柱踏めば母の声響く
田浦釵釧金
だんごむしいもむしけむしこんにちは
えのん
ひそむ虫あわや切らむや夕げの菜
与那城あかり
ANA五八五記す暦よ春待つ父母よ
宇都宮ちぃち
気づけば最終章春風もめくる
熱々 幸
梅の香に寺駆け回る童たち
桜栄
恐竜のお目覚め蜥蜴穴出る
飛島海道
春隣心が冷えつつ月遠く
山乃珊瑚
桜の芽光に飛ばされまだ見えず
由良どれみ
雛の日病室赤光乱舞
益田空虚
外寒し俺はまだ出ん穴の中
草自生
土のなか虫が蠢き春支度
笹椰かな
虫出しの雷鳴らす天の声
藤井博子
小指にも満たぬ児流る春の土
西脇しろ
春うららゆっくり曲がる教習車
鹿松君洋
一羽鴨水面に波紋つがい鴨
麻座輝貞
水温みウーパールーパーぽわんと跳ねた
鴨らいち
●ピックアップコメント:
季語の入ってない句や違う季語が入ってしまっている句をピックアップ。
啓蟄は時候の季語。二十四節気のひとつです。地中に籠もっていた虫が地上へと出て来る頃といわれています。人間を含め、さまざまな生き物の姿が登場しますが、肝心の兼題「啓蟄」がすっぽ抜けてしまいました。
兼題として季語が出題された場合は、その季語を一句に詠み込むのがルールです。
俳句ポスト365では各回の出題に全員が取り組むことで切磋琢磨を目指しております。
今募集中の兼題は、5月19日締切の「牡丹」です。ご投句お待ちしてます。
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▼【季語の考え方】
土に入る無事啓蟄となれますよう!
西宮ケイ
●ピックアップコメント:
二十四節気「啓蟄」は、地中に籠もっていた虫が地上へ出て来る頃の意なのですが……西宮ケイさんの句ではむしろ啓蟄を前にして土に入っていってます。
さて、この不思議なタイミングを「啓蟄」の句と考えて良いものか……?
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▼【季語を比喩にすると】
啓蟄のごとく這い出せひきこもり
シマエナガちよちよ
18歳の休暇啓蟄の如く
巫稲葉
腰上げし啓蟄ごとく庭仕事
加藤耀月
●ピックアップコメント:
季語を比喩として使っている句をピックアップ。
「ごとく」や「ごと」は比喩の表現。季語を比喩にした場合、季語としての力は限りなく失われてしまいます。
「如く」だと堅苦しくてイメージしにくい……という方は「ように」「ような」に置き換えて考えてみるとわかりやすいかもしれません。たとえば「花のような笑顔」という慣用表現がありますが、この場合、表現されているのは「笑顔」であって「花」ではありませんよね。
「ごとく」にも同じことがいえます。「啓蟄のごとく」=「啓蟄のように」といった場合、季語「啓蟄」そのものではなくなってしまうのです。
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▼【季重なり】
啓蟄や畑起こしおり我が狭庭
放浪者
啓蟄や霞むる山の息深し
ブルーベリージャム大好き
啓蟄も鉢下のカエル未だ出ず
曽我のシオカラ
窓の外啓蟄の雪甘藷食う
よかやまっこ
啓蟄や梵天ほどの蟇の息
竹石猫またぎ
啓蟄や春の陽射しで自然遊ぶ
山田いね子
啓蟄と知ったひよどり野良仕事
唐水仙
啓蟄やかおるかぜにもまぶしさが
村岡ネロネロ
啓蟄や朝露匂ふ蕗の薹
松島吟遊
啓蟄や網戸に停まるひ弱き蚊
千峰 江月
啓蟄や垂れた梅に歓喜鳴る
田乃無骨池田
啓蟄や雪解川から風の音
藤川カコ
啓蟄の人も蠢く野焼きかな
ウマーベラス
啓蟄や大地も空ものどかなる
本山喜喜
啓蟄や山茶花の花くたびれし
初老俳人
啓蟄や裸木の枝に枯れいもり
石田ひつじ雲
木の枝で虫待つ蜥蜴啓蟄か
有馬山稲三郎
啓蟄や春の訪れ桜日和
隅田一期一会
薬王の啓蟄蝶々春天狗
高雄から高尾
啓蟄に瓜坊走り大騒ぎ
葦の丸屋
啓蟄や出ては引っ込む寒戻り
川口翡翠
啓蟄や夫の畑にカリフラワー
どれみ
啓蟄やマーガレットに蜂二匹
是出童台
啓蟄の音に誘はれ家守出づ
くわい
啓蟄や寝ぼけまなこな蛙たち
こみくらむしに
啓蟄は寒し虫達は地団駄
久呂朋実
散歩にて啓蟄感ず沈丁花
チャロ
啓蟄の寒の戻りに虫も鳴き
キャタレント 三雲
啓蟄の鴨脚並ぶ岸は映え
上田 七重
啓蟄や石垣登る蟻二匹
西尾 翠峰
啓蟄や親子蛙の合唱か
蒼大
啓蟄の蟻ひっそりと池わたる
坊平あきら
啓蟄や菰を外して蜘蛛一匹
関戸 小町
啓蟄や暖かき風の吹く朝
明日葉
空蝉や啓蟄時が思はるる
ロミ
啓蟄や三月五日の土の外
鳶野狩月
啓蟄を雪かき人に助けられ
今野 武聡
啓蟄やにゅるりシマヘビ側溝へ
金澤詩像麩
啓蟄の蟻は働く吾も忙中
笹本ミワコ
卒業す啓蟄の雨冷たき日
奈良塔子
啓蟄やバスパンパンの卒業生
浪速K号
啓蟄や桜は固し雨上がり
田村杏胡
啓蟄や伸びて整うミミズの輪
山 怠夢
啓蟄の蛙よたよたあらわるる
咲花 みえこ
蜘蛛の糸きらきら光り啓蟄や
津軽 りんご
啓蟄の陽光に蟻ご出勤
芒 花
彼方此方に春のトレモロ啓蟄や
遥湖
啓蟄や暖か日差しに跳ね起きる
横尾寂心
啓蟄や鶴が水面を揺らしゆく
日置好美
啓蟄や徒歩出勤で汗を拭く
熊谷子南
啓蟄の入試発表日スマホ視る
里山稲穂
啓蟄の落柿舎の花つぼみまだ
しばたせつげん
啓蟄や老爺這い出す鵯の声
厚木閑人
啓蟄や畑耕しひとっ風呂
川わらべ
啓蟄やいもむし変身準備する
森田一華
啓蟄や異常大雪まだ早い
松瀬章章
●ピックアップコメント:
一句の中に複数の季語が入っている状態を季重なりと呼びます。
時候の季語である「啓蟄」は3月6日頃にあたります。年によって前後しますが、2025年の啓蟄は3月5日でした。姿を現し始める「蜥蜴」や「蛙」といった生き物はもちろん、咲き始める「桜」をはじめとした植物や、一大イベントである「卒業」などの人事・生活の季語とも季重なりがみられました。
季語が複数入っている名句もあるので、「季重なり」は絶対にダメ! というわけではありませんが、複数の季語を作品として成立させるのは、上級者コースのウルトラ技。
ここに紹介した以外にも季重なりの句はあり、火曜日以降に紹介される場合もありますが、比較的許容しやすい季重なりとして受け止めているものもあります。
やはりまずは、一句一季語からコツコツ練習して参りましょう。
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▼【来月もまた会おう!】
啓蟄やあかるきルシファー人を呑む
蟻馬次朗
啓蟄や孫のムニュムニュ七色に
トラマロ
花香聞き啓蟄顔見せ鳥が鳴く
シャノワールさとる
啓蟄過ぎコゾは未だかと岩覗く
猪鹿蝶
糖を断ち蘇生を祈念啓蟄や
祥対無
静かなる道路の下の啓蟄のささやき
sodeco
啓蟄や地もぐり見つけ笹根っこ
華花開く
●ピックアップコメント:
投句してくれてありがとう!
まずはしっかり「啓蟄」をいれた投句をしてくれてうれしゅうございます。これから一歩一歩学んでいきましょう。今募集中の兼題は、「牡丹」です。これからの投句も楽しみにしています。
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▼【入力と変換にはお気を付けて】
北国や啓蟄の便りまだ通し
松本ばば
啓蟄は生きつもどりつ足もとに
翠善
啓蟄や初め買った腕時計
知念 まる
啓蟄や香る野菜は苦みありけ
数哩
●ピックアップコメント:
なんらかの変換ミスや入力ミスがありそうな句をピックアップ。
松本ばばさん、翠善さんはそれぞれ文字変換に失敗している可能性があります。「通し」は「遠し」、「生きつ」は「行きつ」の誤変換でしょうか。
知念 まるさんは本来「初めて」となるはずが、一文字入力抜けがあって「初め」になっちゃった? 数哩さんは逆に余計な一文字が入ってしまった疑惑。「あり」のあとに謎の「け」が追加されてしまっています。
自分が表現したい内容が正確に伝わるよう、送信の前には今一度文字の見直しをおすすめします。
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▼【文法の問題/つながる活用・切れる活用】
啓蟄や遠くに聞こゆ打球音
伴田至誠
啓蟄やとほし親友訃報来る
つついぐれちゃん
啓蟄や送り歯錆びきミシン踏む
春野たんぽぽ
●ピックアップコメント:
頻出の文法チェックポイントをピックアップ。
動詞や形容詞の活用には注意が必要です。
三段切れの項目とも内容が重なりますが、動詞や形容詞の終止形は意味の切れを生みます。
伴田至誠さんは動詞「聞こゆ」が終止形。連体形は「聞こゆる」となります。三段切れにもなっていますので、助詞の調整と合わせて「遠く聞こゆる打球音」とすれば意味が繋がります。
つついぐれちゃんさんは形容詞「とほし」が終止形。連体形は「とほき」となります。
春野たんぽぽさんはやや事情が込み入っています。動詞「錆び」と助動詞「き」がくっついて「錆びき」なっています。この場合、助動詞の活用形が判断のポイントになります。過去の助動詞「き」は終止形ですから、連体形にする場合は「し」となります。
※今回の兼題「啓蟄」初級者投句欄へのご投句は、投句数3776句、投句人数1576人となりました。