• ひな段のあれはおりられない真顔

  はんばぁぐ

  選者コメント

  

  夏井いつき選

  　雛段に並ぶ雛の表情を描く句は沢山ありますが、「あれはおりられない真顔」という表現に独自性と真実味があります。雛一体を吾の背丈に置き換えてみると、この段差はとてもじゃないけど飛び降りられないに違いない。これこそが俳人のリアルな想像力。「あれ」という距離感、「真顔」という描写、各々の言葉の選択も見事です。
• 雛祭さくらでんぶにある浮力

  ぐ

  選者コメント

  

  夏井いつき選

  　「さくらでんぶ」はちらし寿司や巻き寿司に使われる食材。取り合わせとしてはありがちなのに、後半の展開でオリジナリティを手に入れました。優しい桃色、ふわふわした感触、ほんのりと甘い「さくらでんぶ」を「浮力」と表現。雛祭のうきうきした心持もまさに心の浮力。台所の賑やかな声や、楽しげな雛の膳も見えてきます。
• 雛の日の保育器はしづかな砦

  にゃん

  選者コメント

  

  夏井いつき選

  　保育器を「砦」と比喩していますので、未熟児として生まれてきた赤ちゃんかもしれないと想像しました。保育器を囲むお医者さんや看護師さん、そして家族。「しづかな砦」という措辞に、静かな祈りがこもっているかのようです。雛祭は、子どもたちの健やかな成長を願う行事。季語「雛の日」が確りと立っている作品です。

次回の兼題も
皆さまふるって投句してください。
お待ちしています！