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中級者以上結果発表

2022年3月20日週の兼題

暖か

【曜日ごとに結果を公開中】

特選

  • 暖かや象の瞼のやうな雲

    ほろろ。

    選者コメント

    夏井いつき

     暖かくなってきたなあと思うと人々は空を見上げます。季語「暖か」に対して「雲」「空」を取り合わせた句が多かったのは、それが理由なのではないかと推測します。
     それらの類想句の中で、これを推す理由は、比喩を生かした語順の工夫です。「暖かや」と詠嘆した後に「象」が出現し、「瞼」のアップ。動物園の光景かと思ったとたん、中七すべてが比喩だと分かるのです。が、読み手の脳内には、すでにちゃんと象がいて皺の瞼も映像化されていて、それらの背景として暖かそうな雲が見えてくる。この語順でなければ成功してない点を褒めたい作品です。
  • あたたかや椅子はもともと大きな木

    にゃん

    選者コメント

    夏井いつき

     時候の季語から取り合わせの句を作る時、例えば、自分が「暖か」と感じるのは何を見た時だろう、何に触れた時だろうと考えてみるのも一手です。
     木の椅子のあったかい手触り、ほのかな木の香。作者はそれらに「暖か」という季語を感じているのです。が、この句の最も褒めるべき点は、椅子って元々は大きな木なんだと気づき直していることです。何十年もの樹齢を重ね、太陽や水の恵みを受けた木だからこんなに暖かいのだと、作者は季語「あたたか」をしみじみと味わっているのです。
  • あたたかを脱けてエレベータに真顔

    花屋英利

    選者コメント

    夏井いつき

     季語「暖か」は時間と空間を内包しています。ですから、その時空を抜け出すという逆の発想もあってよいのです。とはいえ、「あたたか」は時間の幅が厚いので、一句の時間が冗長になり失敗する確率のほうが高いですね。が、「エレベータ」という箱、というアイデアが生きました。
     季語「あたたか」を作者は全身で受け止めつつ、散歩してきたのでしょうか。昼休みを過ごした公園から会社に戻ってきたのかもしれません。「脱け」という動詞の選択、「エレベータに真顔」という場所と表情の描写。シンプルな書き方なのに、見事に映像化されています。エレベータを降る時に必要な「真顔」なのですね、きっと。

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