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中級者以上結果発表

2022年3月20日週の兼題

暖か

【曜日ごとに結果を公開中】

秀作

  • あたたかやウクレレ漏るる生花店

    はなあかり

    選者コメント

    夏井いつき

     楽器の音に「あたたか」を感じた句もありましたが、「ウクレレ」は存在自体もあたたかな感じですね。その音が漏れてくるのが「生花店」というささやかな意外性もいい。店内の春の花々の色も見えてくるかのようです。
  • 影きゅっと細くする鳥あたたかし

    浦野紗知

    選者コメント

    夏井いつき

     鳥たちの中に、影をきゅっと細くしたかのような鳥を見つけたのです。春になって動きが活発になると、影の動きも多彩になります。繊細な観察の芯に、季語「あたたかし」がしっかりと結球しています。
  • 匂ひ消しゴムむんと缶ペン暖かし

    トポル

    選者コメント

    夏井いつき

     「匂ひ消しゴム」に頭がクラクラすることがあります。缶のペンケースを開けたとたん「むん」と鼻腔をつく強烈な甘い香り。嗅覚で感じとった「暖かし」には子どもの頃の記憶も入り交じっているのかも。
  • 春暖の夜の空気を泳ぎたる

    どいつ薔芭

    選者コメント

    夏井いつき

     傍題「春暖」は、「暖」の皮膚感に「春」の気分がのっかってくる感じ。「春暖の夜の空気」は温いプールの水の感触。「泳ぎたる」は、我が身に水かきが生まれているかのような実感なのでしょう。
  • ボンネットのワックスの円暖かし

    百瀬はな

    選者コメント

    夏井いつき

     みな折々目にしているはずの光景ですが、それを「ワックスの円」と描写するだけで、質感も匂いもワックス掛けの動作も、読者の脳内で鮮やかに再生されます。これも「暖か」の確かな具現化ですね。
  • 雑貨屋の窓辺の埃あたたかし

    ヒマラヤで平謝り

    選者コメント

    夏井いつき

     店の外から、店内の窓辺か。いつも素敵に飾られている雑貨屋さんの窓辺を眺めていると、隅の「埃」に気づくのです。それもまた暖かい光景だと肯く、作者の心持ちもあたたかい春でありますね。
  • 猫の舌ほどにぬくくて浪速の夜

    RUSTY=HISOKA

    選者コメント

    夏井いつき

     「ぬくい」「ぬくし」の程度に「猫の舌ほど」という表し方があるとは! と思わずニヤリ。「浪速の夜」という固有名詞の利き方も半端ないなと。浪速の夜を恋猫たちも駆け回っているに違いありません。
  • あたたかや花食ふ河馬へフィリピノ語

    七瀬ゆきこ

    選者コメント

    夏井いつき

     季語「あたたか」と「河馬」を取り合わせた句も多かったのですが、「花食ふ河馬」へ投げかけられるのが「フィリピノ語」であるという展開の意外性。材料の多さを感じさせない構成力に脱帽です。
  • あをあをとみづのみやこもあたたかし

    なしむらなし

    選者コメント

    夏井いつき

     全て歴史的仮名遣いの平仮名書きという表記の特性と内容とがマッチした作品です。青々と春の水をたたえた水の都。水の匂いも光も風も春の声をあげているかのよう。「あたたかし」のたおやかな余韻もまた。
  • 暖かや胡坐はプレッツェルのかたち

    あいだほ

    選者コメント

    夏井いつき

     「胡座」と「プレッツェル」が相似形だに気づいただけで、俳人は、ヤッタ! と思うのです。さらにその形と感触に季語「暖か」が似合う! と分かれば、こんなユニークな作品ができあがるのですね。

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