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中級者以上結果発表

2023年8月20日週の兼題

夜長

【曜日ごとに結果を公開中】

特選

  • 長き夜や「こゝろ」を閉じた手を洗う

    常幸龍BCAD

    選者コメント

    夏井いつき

    「こゝろ」は夏目漱石の小説。秋の長い夜をかけて、今、読了したところでしょうか。投げかけられた重いテーマを受けとめかねて、しばし頁を閉じたのかもしれません。「手を洗う」は、己の心のありようを己自身に問いかけるための儀式のような行為かもしれません。答えのない答えを探して、丁寧に手を洗う「長き夜」の静けさ。ひややかな水のかすかな音。
  • 看護師が夜長に薄き線を引く

    蘭丸結動

    選者コメント

    夏井いつき

    病室の夜は殊更長いのです。夕飯は六時ぐらいには終わってしまうし、消灯は九時だの九時半だの。そこからの夜の長さは、秋ともなれば尚更のこと。痛い痛い辛い辛いと寝返りを重ね、うとうとと過ごす夜長。数時間ごとの夜勤看護師の巡回。その実感を「夜長に薄き線を引く」という措辞で、一気に詩にしてしまうテクニックに脱帽しました。
  • 水槽へ夜長のパンを餌として

    ぐでたまご

    選者コメント

    夏井いつき

    「夜長を過ごす相手=水槽の魚」という発想の句はよく見ますが、季語の使い方に工夫があります。中七「夜長のパン」は、小腹がすいてのパンでしょうか。(夜食・食欲の秋などのイメージともリンク。)齧ったパンの粉を水槽へ落とします。グッピーか目高の類か、次々に水面に上がってくる魚たち。そのさまを愛でつつ無聊をかこつ夜長です。

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