類想一覧(選外)
追想す友告別の夜長かな
松永恕淳
ハイボール少し薄めの夜長かな
石崎京子
眠れぬわたしを包み込むは夜長の月
木徒 樹実
ワイン開け全話イッキに見る夜長
虹岡思惟造
アルバムの断捨離迷ふ夜長かな
蒼鳩 薫
カーテンを引く長き夜の始まりぬ
野口楽居庵
帳尻の合わぬ家計簿夜長かな
ぼたんのむら
俳句集夜長頼みに千句読む
蒼き鷹
ミステリーページの進む夜長かな
星影りこ
長き夜やネット俳句の締切り日
くろべぇ
長き夜は独りが好きと言いきかす
秋雪
長けれど愛しき季よ夜長妻
水鏡新
宿坊の静寂に浮かぶ夜長かな
松元転石
各々の営みありて夜長の灯
ピアノおじさん
八十迎へ昔を語る夜長かな
kikuti-aya
来し方を夫と語らう夜長かな
田中ようちゃん
眠られずまた飲み直す夜長かな
大谷如水
太陽系この惑星のこの夜長
始の子
長き夜や不眠の理由探しをり
岸 小広
Wi-Fiの価値の高まる夜長かな
よしおかあんみつ
長き夜お酒と歩く帰り道
帰宅部めんそ
傍らの戦史本読み返す夜長かな
橋本諒駿
検査前にわか禁酒の夜長かな
紫鋼
長き夜や指を湿らせスマホ繰る
田邉真舟
盤上に頭寄せ合う夜長かな
池弘庵翁
難しき数独ためす夜長かな
たなべ早梅
ただ独り目覚めて夜長空あふぐ
かじま木犀
思い出話を母とまたする夜長
岡崎ゆきこ
川音の絶えず聞ゆる夜長かな
和泉明月子
名作に涙夜長のタブレット
原島ちび助
思ひ出の浮かびて消ゆる夜長かな
dragon
長き夜のひとりライブの風呂舞台
ゆぃ
猫の目とスマフォこうこう夜長かな
田村 宗貞
旧友と語り明かそう夜長かな
ニッシャン
久々や母の愚痴きく夜や長し
川島欣也
遠足の服縫う亡母夜長の灯
またね
ほくほくと頁をめくる夜長かな
濃紫えみ
語らいの尽きぬ夜長や古時計
加和 志真
並のため下手な推敲夜長かな
一茶お
コルトレーンとバーボンで夜長かな
千葉睦女
読了や時計の音のする夜長
海老煎餅
ひとり居のしつこい咳とゐる夜長
乃の
静けさといふ音ありて長き夜
大熊猫@四句八句
老耄の夜長の瞑目眠り待つ
天東あさじ
長き夜君と語ふ心地良さ
鹿島 萬
よいどれの夜長たのしむ親子かな
佐久間鮎
居眠りの老父揺れてる夜長かな
風の旅人
思い出の母の小言に夜長かな
彩明
薄がけに包まり朝待つ夜長かな
大木典子
波音は絶えぬ地球の夜長かな
勘八
来し方の脳裏に深し夜長闇
三島ひめばしょう
長き夜の別れ話となりにけり
岡田雅喜
旅心「るるぶ」で癒やす夜長かな
渡嘉敷五福
会いたいを消してまたねと打つ夜長
砂 芽里
ただ磨きただ抱くギター長き夜
カオス
もて余す夜長や猫とワンルーム
竹内ユキ
推理もの読めば過ぎゆく夜長かな
せりよさ
電池切れのスマホもて余す夜長
藤源卿
酒ならべ選びに選び夜長待つ
川口雅裕
最終回見終えてロスの夜長かな
星田羽沖
昭和歌謡繰り返し聴く夜長かな
戌の箸置
積ん読の少し低まる夜長かな
リコピン
ガラスペンするする洗ひ夜長かな
牧野あや子
酔いどれの愚痴聞く母の夜長かな
茜咲
5時に酒背徳感の夜長割り
丘上 すめる
昼寝して寝入りに苦労夜長かな
中野風鈴
無防備の嚔のありし夜長かな
Early Bird
長き夜や植物図鑑を捲りをり
涼月橋
長き夜の劫争いの勝負かな
東 湘輝
オリエント急行の謎へ夜長の書
こきん
スタンプが行ったり来たり夜長かな
相沢薫
老いの猫昼よる寝てる夜長かな
大谷 芳
夜長さや背中合わせの二人かな
辻󠄀本四季鳥
終電を過ぎし酒場の夜長かな
永想
天仰ぎ来世へおもひ馳せ夜長
ひぐちいちおう(一応)
人生に意味はあるのか嗚呼夜長
羅蒐
楽しみに夜長をまつやじふご冊
コイケキクエ
割り切れぬ円周率の夜長かな
夢雨似夜
長き夜の母の語りは五度目かな
一純。
ポチポチとLINEの光る夜長かな
吉岡パフ
日に何度着信を待つ長き夜
鮫島しょうん
雨音にリズム生まるる夜長かな
池田 凜
老眼鏡探しくたびれ夜長かな
滝美音
長き夜牧野博士の本を読む
田畑せーたん
着て脱いで断捨離悩む夜長かな
岡崎秀恵
歓声はかすか夜長の二階窓
OMI
1Kや一人晩酌「はぁ」夜長
橋邑 高豪
長椅子で産声を待つ夜長かな
渡部 あつし
抗はず睡魔の心地良き夜長
島田ポン吉
長き夜を空気のごとき妻とあり
愚老
この夜長栞挟めぬミステリー
ゆみづき
長き夜にテレビ相手の独り言
阿万女@ノエル
寅さんの恋の実らぬ夜長かな
文月
夜長妻鶏唐の分2キロ増
男鹿中熊兎
病せば積ん読ばかり夜長かな
衣笠 野波
映画二本常速で観る夜長かな
田辺富士雄
名人の長考一手待つ夜長
風間 燈華
二度三度目覚めし老の夜長かな
夏目タンチャン
夜長のブルーライト着信は0件
嶋村らぴ
積ん読の机に更けて夜長かな
やっせん坊 池上
アルバムを開きて夜長夜長かな
喜多輝女
Thelongestnightハモる夜長かな
柴桜子
夕闇の訪れ静か長き夜
砂月みれい
亡き人に思ひ出語る夜長かな
仙川チュン
針落とす流るる夜長ビートルズ
玖良咲
ひとマスを埋める長き夜の数独
たけろー
産声を今か今かと待っ夜長
小池是空
恋文の送信押せぬ長き夜
すぷ雷人
野菜来る夜長ことこと常備菜
うさぎ柚和
隣の家に救急車来る夜長
清白真冬
ハーブティーゆっくり煮出す夜長かな
西町彰子
頻尿に悩める八十路長き夜
髙見艀舟
銀の砂時さらさらと落つ夜長
はまお
友からの文読み進む夜長かな
紋舞蘭
壁のしみ数へてひとり夜長かな
糺ノ森柊
長き夜や妻の携帯の充電
剣翔寺亜太琉
ちくちくと無心に刺し子縫う夜長
雨李
明日朝のプレゼン資料読む夜長
殿さまペンギン
ドッグイヤーおかわりはモカ夜長
山本 マユミ
夜長の不眠よ望まぬ瞑想また
緑茶花
長き夜や辞書を繰る音の続きたる
信木庸子
妻里へ帰りて酒の夜長かな
片桐 洋
遥かなる声聴く長き夜の不眠
いこん
長き夜の液晶点滅アイタシ❣
うはのそら
ぐずぐずとぐずる子背負う夜長かな
きべし
長き夜に十八年ぶりのアレ来たる
雅蔵
点滴の雫数える夜長かな
駄々
行きずりのチャット重ねし夜長人
清瀬ハイジ
長き夜残り僅かな暦見ゆ
久えむ茜咲
長夜明けまな板の音子守唄
新米にぎりめし
アルバムの古きジャズ聴く夜長かな
なかの花梨
長き夜星を見つめて母思う
加藤光狗
失ひてつのる想ひの夜長かな
林 和寿
長き夜の駒音高き棋譜並べ
村崎 雫
やりかけの「人生ゲーム」嗚呼夜長
水木花水木
来し方を子にメールして夜長かな
きょんちゃん
手術後の痛み眠れぬ夜長かな
寺木 風宣
寝返りの氷枕温む長き夜
沼宮内 かほる
歳時記を捲りて過ごす夜長かな
上津 嘉子
長き夜に膨満感のウォーキング
二十八
友がいて飲み語り合う夜長かな
於大純
終活のアルバム整理夜長し
ふじかつとび
消さぬままラジオ流れる夜長かな
佐藤 聡
マニキュアを乾かしている夜長かな
土井あくび
彼のメール迷ひては消す夜長かな
ほんちゃん
夜長満つゆっくり話す友とゐて
青木りんどう
乾杯のこれが幾度や夜長の灯
一港
長き夜を岡田阪神優勝に
正岡若ん輔
来し方を考に語りし夜長かな
希布
サザンのバラードふと呟く夜長
羽柳武助
第二子の産声一人待つ夜長
三無季生
幼子に戻る夜長の夢のなか
小田和子
夜勤の手止めさせるほど夜長かな
小田虎賢
次回の兼題も
皆さまふるって投句してください。
お待ちしています!
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選者コメント
夏井いつき選
◆時候の季語「夜長」。
傍題として「長き夜・長夜・夜長人・夜長妻」などがあります。
が、今回の投句には「秋の夜長」「秋夜長」がちらほら見受けられました。特に「秋」を入れる必然性が無いと思われるものが大半でしたので、選外にしました。
◆更に、余り効果のない季重なりもちらほら。
「虫の音」「鈴虫」「蝉」等との季重なりが見られましたが、季重なりとしては成立してないものがほとんどでした。
◆今回、非常に勿体ないと思いましたのは、
入力ミスだろうと思われるもの、仮名遣いの間違い、文法的に疑問の残るもの等が、散見したことです。それらの中には、目の付け所や発想など、光るものが多かっただけに、非常に勿体なく思いました。今回、選に入らなかった句については、ご自身で確認&推敲してみて下さい。
◆「夜長」の類想パターン
◇ 夜長のイメージ
・ 静か 静寂
・ 孤独
・ しみじみ
◇ 偲ぶ 想う
・ 来し方を想う 昔を想う
・ 恋しい人を想う 亡き人を想う
・ 余命、老い、来世を想う
◇ 夜長の頃になると(朝晩冷え込むので)
・ 一枚羽織る
・ くしゃみ 咳
・ 人肌恋しい
◇ 夜長にすること(一人で)
・ 読書
→ 積読が増える 積読に手をつける 積読が減らない
→ ミステリー ポワロ 長編小説 司馬遼 清張
・ 音楽を聴く
→ ジャズ ブルース 昭和歌謡
・ 映画やドラマを観る YouTube スマホ ネトフリ
・ ギターやピアノを弾く
・ 刺繍 編み物 繕いもの
・ ジグソーパズル 数独 あと一つが解けない
・ 古いアルバムを見る
・ 句作 指折り数える 推敲する 脱ボン
・ 旅の荷物を整える 旅の計画を練る
・ 断捨離 終活
・ 露天風呂や家の風呂にゆったり浸かる(星を見がち)
・ 家計簿をつける(赤字 計算が合わない)
◇ 夜長にすること(誰かと 誰かへ)
・ 手紙を書く 辞表を書く
・ メールする Lineする 返信を待つ 返信がない
・ 長電話
・ 将棋 囲碁 チェス
・ 夫婦二人でいて無言
・ 猫や犬を抱く 撫でる
・ 背中の子がぐずる 子に添い寝
・ 愚痴を言う 愚痴を聞く 喧嘩する
◇ 飲んだり食べたり
・ 日本酒 バーボン ワイン
・ 一人飲む 友と飲む 亡き人と飲む
・ とっておきの酒を飲む
・ 深夜のラーメン カップ麺(ちょっと罪悪感)
・ じっくりことこと煮込む料理
◇ こんな日の夜長
・ 病室 点滴しながら
・ 明日手術 検査 明日(仕事の)面接 明日試験
・ 産まれるのを待っている
・ 明日締め切り
◇ その他
・ 眠れない 寝たり起きたり 目覚めてもまだ夜中
・ 夕餉が早くなる 帰宅が早くなる
・ 灯りがひとつ 病室 自宅 コンビニ 駅
・ (同じ家 同じ部屋にいて)それぞれの夜長
・ 遠くから声 音 波音や川音
・ (隣家 隣室から)笑い声 喧嘩の声
・ 闇を引き裂くような音 救急車 列車 爆音
◆選句の過程で、「これは選に入れてよいだろう」と判断しつつ、選を進めていくと、思いがけない類句に遭遇することが多々あり、少々驚きました。
上記の類想パターンの中の「音楽を聴く」を例にとると、「サザンオールスターズ」「ジョン・コルトレーン」などがかなり出てきて、結果論的に類想類句と判断するしかないか、という例が大変多かったことを申し添えておきます。
◆他にも似たような例がありましたので、今回、選を漏れた皆さんは、その視点をもって自句の考察&推敲をすすめてください。
※今回の兼題「夜長」中級者以上投句欄へのご投句は、投句数3918句、投句人数1614人となりました。以下、類想句の一覧です。