【並選】
二本目の綿棒たわむ夜長かな
谷本均
空白の第二希望や長き夜
中村一烏
壊れたるメガネ定位置長き夜
佐川碧
憂き事の多し聖書あくる夜長よ
詩
長き夜の何本目かの挿入歌
火炎幸彦
長き夜を回して銀のハムスター
やまさきゆみ
布裂きて草履を編める夜長かな
たむらせつこ
癖のつく受話器のコード夜長し
慢鱚
文鳥の寝言言いたる夜長かな
海色のの
隣室の「月光」ふと途切れ夜長
門谷 伊織
改めて妻の不在の夜長かな
小木さん
野良猫の目の光りたり夜長の吐息
haru_sumomo
長き夜百の仕掛けの秘密箱
大浦ともこ
付添いの病室イヤホンの夜長
露崎一己句
両眉の長さ揃える夜長かな
野澤真澄
ぬるき息ペットホテルの夜の長し
津々うらら
載ってないカクテルにする夜長かな
夏立也
長き夜の入れ歯洗浄剤ろろろ
堀口 房水
長き夜の繰り言先に酒が尽き
横山雑煮
雲の字は笑顔に見える夜長かな
荘司彩舟
長き夜のバスを使いて上京す
名出 結希人
意味もなく笑い続ける夜長かな
山口雀昭
銅版の刻線深き夜長かな
庭野環石
キャンプ場星と炎と夜長かな
内田高雲
茹で汁を捨てて帰りを待つ夜長
ちょくる
追伸のつひ長くなる夜長かな
赤尾双葉
お揃いの性格喧嘩の止む夜長
桃桃こ
黒黒とアスフアルトながるる夜長
太田栗青
診断書読み裏返し長き夜
詩ノ音
陰陵泉しみじみ熱き夜長かな
福原あさひ
かちこちの肉球揉んでゐる夜長
柿司 十六
美しき絵の昭和の切手夜長かな
葉るみ
レイディオが味方夜長の単語帳
青井園蜩
長き夜を牌の砦で囲みたり
くずもち鹿之助
新薬の記事読み返す夜長かな
苺井千恵
母を呼ぶ父の声する夜長かな
鈴木由花子
長き夜や白紙の進路希望表
いくたドロップ
角番の底歩を睨む夜長かな
黄鶺鴒
長き夜や「反省帳」に「失恋」と
ぉ村椅子(志村肇)
夜長し寝息を運ぶ夜行バス
徳翁
それぞれの夜長ありけりシェアハウス
卓鐘
酒苦しエンディングノート書く夜長
中井無心
昨日今日明日のできごと夜長かな
なか かよ
耳鳴りは止まず夜長の海を漕ぐ
村瀬ふみや
丑三つや長夜の尿意切迫す
めいおう星
虫食いのパズルへねっころぶ夜長
江口朔太郎
コンサート余韻ふたたび長き夜
さいたま水夢
夜長人地蔵のごとく座りおり
夏の町子
長き夜熱を帯びたる充電器
木村となえーる
立飲み屋肩で割り込む夜長かな
伊勢乃幸牛
駅前の母子像もまた夜長し
清松藍
飲みくだす嘘を並べし長き夜
河村静葩
ころげたる瓶ころがせる夜長かな
おきいふ
山岳のガイド誌めくる夜長かな
小山 晃
千一夜抑揚豊かなる夜長
ふじこ
夜長かな「坂の上の雲」全八巻
市橋正俊
アカウント消して夜長に閉める鍵
天野若花
救急の患者の脈を診る夜長
田村利平
エストロゲン揺れるや夜長恐ろし
みなづき光緒
長き夜や関西弁のニセ電話
三水
夜長には亡き犬とホットミルク飲む
ひと粒の種
目交の考妣諍ひ無き夜長
らん丸
恋もせず猫を相手の夜長かな
中村笙平
自販機の明かり抗う夜長
暇禍
柴犬の己が尻嗅ぐ夜長かな
居並小
欠航を消せぬ眼力夜長飯
鵬
初七日や夜長の畳踏むタイツ
矢橋
夜長も憂鬱朝来るも憂鬱
菜緒木モカ
御出座しは五度目夜長の鳩時計
たこぼうず
影見えぬ夜長の道で誰を待つ
月夜案山子
リルケ読む夜長の友は黒珈琲
白河夜船
夜長とは一音を欠く〔トロイメライ〕
沢拓庵@いつき組カーリング部
タガ外れ一人夜長のハイボール
浪速の蟹造
ナースらの愚痴聞こえたる夜長かな
境沢一輝
友来たる長夜の酒はほろすっぱ
松高法彦
長き夜のピアノ配信スーパームーン
百卓@ノエル
夜長の帰路ライブ残響の余熱
いさな歌鈴
新しき街灯白き夜長なか
紅塩寝子
乳飲子のごろり夜長の牛の声
もふもふ
のら猫に薬ぬり眠れぬ夜長
亀亀子
夜長なるノーサイドまでのスクラム
京あられ
ペガススの大四辺形探す夜長
笑酔
妻と吾とルンバ夜長の六畳間
宗平 圭司
髪切りし吾子の小部屋の夜長の灯
ちょうさん
長き夜に描く出鱈目な相関図
長谷機械児
お袋のお叱り止まぬ夜長かな
佐藤浩章
或る夜長見栄も本音もわたしです
まんぷく
まなかひに白き闇流るる夜長
acorn
推せ敲け組んづほぐれつ夜長かな
たいらんど風人
オンザロックに光の溶けてゆく夜長
ジン・ケンジ
夜長とて眠れぬ戀を五分だけ
岡崎佐紅
全集を開く夜長を奇貨として
釜眞手打ち蕎麦
牽き寄せて長いこの夜の明けるまで
鈴野蒼爽
長き夜のゆらりと滑る氷かな
佐藤 藍魚
塵払ひ古本括る夜長かな
小林昇
長き夜の五分を使ひカップ麺
かん かんし
長き夜や獄中手記の美文字なる
西村青夏@金カル
幸せってなんだっけかな問う夜長
中島穂華
ラの音を始まりとせむ夜長かな
瑞陽庵
野球のズボンに穴繕ふ夜長
文月あつみ
ほこり立つ文箱をひらく長き夜
釋愚拙
愛蔵の画集を開く夜長かな
塩野谷慎吾
夜長妻ストーリーテラーとなりにけり
acari
夜長楽しも小腹に湯気の小丼
黒蜜かりんとう
長編の下巻に進む夜長かな
遊泉
うつくしき夫の中ゆび長き夜
幸田梓弓
看護「士」は看護「師」ですと云ふ夜長
植木彩由
湿気かけの煎餅と茶と夜長かな
野州てんまり
待ち針を等間隔に打つ夜長
沢井如伽
通販のテレビ消せないまま夜長
どこにでもいる田中
へたり込むリーチの喘ぎ長き夜
村橋 桂
長き夜の鍵束はずし缶コーヒー
余田酒梨
長き夜や左手の清酒句の清書
比良山
涙ごと捏ねる夜長の強力粉
雨野理多
減量のボクサー「変身」読む夜長
ま猿
割るまへのいとほしき皿いざ夜長
岡根今日HEY
イゾルデや昼と夜長のあやふやに
白庵
銘仙のしみの訳知る夜長かな
野田遊水
コンビニは長き夜に浮かぶ漁火
里見脩一
亡きひとのブログ残れり夜の長し
中里 凜
涙腺に効くコメディの夜長かな
秋津穂 実
ラーメンにたまごぽとんと長き夜
吉田わさび
三月分家計簿記す夜長なり
楽和音
夜は長くキーウィの足は逞しく
河島 八々十
長き夜やテンパリングの腕痛し
ほしの有紀
ゆるい猫ゆさゆさゆする夜長かな
ねむり猫
遠き貨車に机共鳴する夜長
一寸雄町
騙し絵の星座をめぐる夜長かな
春海のたり
病院の電話に目覚む夜長かな
松葉学而
(好きでした)合わせ鏡の夜長かな
大 広秋
長き夜の小瓶の中に星を飼う
ピアニシモ@金カル
栞失せて嗚呼長き夜を閉ぢられん
桜鯛みわ
長き夜や耳朶に付く六甲おろし
林常住
定位置に沈みこみゆく夜長かな
公木正
長き夜の戸棚の奥の古茶壺
髙橋弓女
飲むほどにしらふ夜長の台所
駒村タクト
うはばみの袋小路の夜ぞ長き
すがりとおる
テレビ消し夜長は言路の屋台酒
須田 爪黒
爆音の暴走の音夜長過ぐ
葉月けゐ
裏窓のラジオ笑ひし夜長星
西浦 貴浩
長き夜の起点一つおきの橋灯
滝上 珠加
人生とは永き夜の線香の渦
吽田のう
逝きし人皆夢に来て夜長談
岡塚 敬芳
吸い呑みに母の名記する長き夜
芋 二郎
長き夜や耳鳴りやまぬ砂時計
茫々
片仮名に書かれし日記読む夜長
清水明美
乾物の水含みゆく夜長かな
みなみはな
夜長の地下扉「魔改造の夜」
満嶋ハト
ふたり居のレトルトカレー長き夜
淡湖千優
遺されし師の書をまねぶ夜長かな
深草あやめ
清張に敲かれてゐる夜長かな
いその松茸
急患の犇めきあっている夜長
小笹いのり
相槌をただ待つだけの夜長かな
飛翔
ポシェット浚ふ夜長明日は病院
野瀬藻石子
伏線はあれか夜長のサスペンス
アンサトウ
隣席の溜息のわけ夜長かな
華風ルナ
羅紗紙を千切り夜長のピンセット
卯月紫乃
兄妹で実家終いする夜長の灯
みうら朱音
長き夜や型紙に引く襟ぐり線
木染湧水
デッサンをなほしなほしの夜長かな
花和音
長き夜や飛び散らぬよに鱗とる
岡井風紋
名人の封じ手読めぬ夜長かな
信濃のあっくん
いつ死のうか明日死のうか夜長し
北里有李
ラジオより「尋ね人」を聞く夜長
一条春枕
終活の遺言したたむ夜長かな
哲庵
古写真みな捨てて終活の夜長
かなえの
長き夜や誰もいないといふ無言
小夏
見たことないスタンプ並ぶ夜長かな
ほうちゃん
夜長に書捲る音は祖父の心音
海乃一夏
老猫の浅き呼吸の夜長かな
杉柳才
亡き父と二人夜長の葬儀場
川蜷
たれもかも深海魚となる夜長かな
防子
夜長の灯赤子に乳やり尻をふく
松本裕子
コマーシャルフィルムばかりの夜長かな
かぬまっこ@木ノ芽
分度器の生真面目な線夜長かな
砂山恵子
一人目の死体の挿し絵長き夜
ダンサーU-KI
放屁するえせ肛門の夜長かな
まるちゃんにいさん
夜長のグラス言い訳のレパートリー
日向こるり
俳号は絶家の名より夜長人
柳浦総師
長き夜や欄間の龍の眠りたる
三月兎
十代の日記を燃やす夜長かな
西村小市
箇条書きいくつ夜長の介護ノート
小川都
詠み惑い罹患めく私の夜長
野点さわ
栞外し最初から読む夜長かな
ららら句らら
ディスプレイに真顔が映る夜長かな
咳肋骨
長き夜に電話警察署からなり
関津祐花
指名手配写真眺める或る夜長
鬼殻
フィリピンの袋売る子や長き夜
ことまと
プラセボ渡しずんずん長き夜を帰る
佐々木のはら
明日はライブ弦を張り替える夜長
羽光
小論の添削六つ夜長かな
東原桜空
膨らみを残し夜長のナフタリン
東山すいか
環八は事故渋滞のため夜長
ヒマラヤで平謝り
長き夜の絵本に広き余白かな
みやま千樹
竹輪切り安酒あおる夜長かな
白井百合子
犯人の検討つかぬ夜長かな
岡本 戎
ラフロイグシングル二杯夜長かな
哲山(山田哲也)
ミシン踏む夜長に猫は瞑想す
ぱぷりかまめ
長き夜鎖骨の壺に魔物すむ
仲 操
マシン油は伝ふ長夜を象りて
梅路みね
音量を絞り枝雀を聴く夜長
堀邦翔
容赦なく続く夜長の打鍵音
笑松
長き夜を貪るキョンの眸の素直
沼野大統領
烏賊釣りの仕掛けを作る夜長の灯
唯果
先っぽの硬い疣ある夜長かな
山田蚯蚓
推敲に嵌まるを夜長笑ひをり
佐藤のぶ子
彫る指のまたこわばりて夜長かな
吉川花ほっぺ
長き夜やピンクチラシを貼るバイト
みづちみわ
長き夜遺影写真を決めかねて
山くじら
やりかけのものばかり出てくる夜長
ぐりえぶらん
ラヂオでは土星の話わく夜長
しろくも
再読のサガン夜長のアームチェア
ほしのあお
手にキャンティ「ローマの休日」の夜長
沙那夏
厄介を乗せて夜長のベビーカー
千夏乃ありあり
Yogiboに絡み取られて夜長かな
うめやえのきだけ
トイピアノ弾くや語るや夜長果つ
酒井春棋
ページ繰り二人程死ぬ夜長かな
外鴨南菊
家中の鏡を磨く夜長かな
坂野ひでこ
雲海を渡る夜長の読書灯
雨霧彦@木ノ芽
回廊や今は夜長のどの辺り
龍田山門
長き夜やドクターブルーの覚ます目を
新城典午
報告書まだ仕上がらぬ夜長かな
ナゾラブ
完全食湯入れて運ぶ母夜長
おん ころころ
同じ穴に落ちた二人の夜長かな
おのまい
イヤホンが常に手元の夜長かな
余熱
迷ひ込むアリスのやうな夜長かな
栗山おかか
ちゃんとしたコーヒー淹れる夜長かな
寺嶋杳杳
手芸棚を子に組み立ててやる長夜
鈴木 浮浮
焼にぎり匂ふ作業場夜長かな
亀田かつおぶし
六十色の鉛筆削る夜長かな
高田杏
ナースコール連打始まっている夜長
おかげでさんぽ
おととしの句帳を開く夜長かな
田中美蟲角
産院の門灯淡き夜長かな
みらんだぶぅ
グッピーに餌目を合わせ夜長かな
中村雪之丞
ピンセット優し夜長の切手かな
山姥和
劣等感手懐けてゐる夜長かな
嶋田奈緒
長き夜の二号宿舎の片廊下
柳絮
ローマ史を読み始めての夜や長し
妄児
つまさきはとほくにみえて夜長かな
野山遊
長き夜の「潮騒」めくる指の影
ぎんやんま
焼き網を洗う夜長の泡ブクブク
ナガ
長き夜妻の背中を清拭す
ふくろう悠々
長き夜や仕事を終えて名画館
山水
夜長とはエンドロールのやうなもの
風の鳥
長き夜の訪問介護七軒目
山尾政弘
レコードの枝雀夜長の泣き笑い
晴菜ひろ
ぢぢはまたうかとばば引く夜長かな
椋本望生
遠吠えののびゆく先の夜長かな
み藻砂
薬袋を破って捨てて夜長なり
つばさ
梁襖魑魅魍魎によき夜長
悪七兵衛
退職の報せ夜長に読み返す
花咲めだ香
夜長にて馬引き寄せる河童かな
野中泰風
友人の恋を翻訳する夜長
中山月波
長き夜やテレビを置かぬ山の宿
竜胆
長き夜やトーンチャイムの楽譜見る
かずポン
君の嘘見抜き夜長の長電話
さんざし
九十の窓煌々と夜長かな
一型
薬また切れて夜長の常夜灯
朝月沙都子
命日の塗り椀洗ふ長き夜
宇田女@ノエル
雑誌打つドラムスティック夜長かな
福田みやき
夕刊の上に爪切る夜長かな
ちゃあき
秒針の律儀な間合長き夜
一生のふさく
夜長だし辻褄のあう話など
おぼろ月
旅先の夜長に次の旅を練る
宏楽
いざ起業夜長に屋号案二つ
秋月
長き夜の耳にボレロの爆発す
大岩摩利
酒あらば夜長うかれてくるものを
あたしは斜楽
ゆるゆると形見の時計振る夜長
遅狐
時差ぼけの夜長やひとり聴くラジオ
はまゆう
長き夜や進路希望の期日明日
フィビキ I
明るいラジオ受験勉強の夜長
水木合歓
長き夜や義父に酌まるる電気ブラン
百瀬一兎
つくつては食べつくつては食べ夜長
へな☆けん
古着物手厚くほどく夜長かな
いのうえそら
農終へてじゅげむじゅげむの夜長かな
そうま純香
モニターの皮脂と夜長の飛沫かな
宮坂暢介
夜長なり聴き通せるかワルキューレ
むじーじ
ひらがなのどれもあやしき夜長かな
伊予素数
とんかつの衣もへたり長き夜
快晴ノセカイ
活版の文字の凹みや夜長の灯
織部なつめ
玻璃越しの夜長の雨や地図の旅
もりたきみ
瓶詰めのさなぎは夜長地割れめく
流流
ドアマンのひとみ月白たる夜長
青水桃々@いつき組俳句迷子の会
祖父の顔史料に探す夜長かな
そめいゆ
残留の懸かる秒読み夜長し
原神 かたな
おもむろに机上の埃払う夜長
望月ぽん
せんべいに孤独かみしむ夜長かな
海猫
背徳の夜長や時差の蒼い渦
満る
手遊びにジャムを煮てみる夜長かな
遥風
院内のコンビニ灯る夜長かな
水須ぽっぽ
見送りて歩く夜長のターミナル
野村起葉
ガレージの道具を磨く夜長かな
百瀬はな
長き夜に鍋は静かに沸騰す
花伝
背表紙を見ているだけの夜長かな
成瀬源三
猫三匹を持て余す夜長かな
ノアノア
耳かきの綿の夜長のふうわふわ
宥光
金持ちのように酒飲む夜長かな
山路碧水
長き夜の「黒い樹海」を戻り来ず
荒一葉
クルトンにスウプの広い夜長かな
大和田美信
夜長夜長布団の鈴布団の鈴
立川茜
深爪を知らぬふりして夜長かな
大野美波
長き夜や順番に聴くブルックナー
和泉攷
棋王戦は二百手を超え長き夜へ
田中紺青
駅しずか長き夜の寝台は揺れ
吉田竹織
起こさぬやうウクレレを弾く夜長かな
西郡うり
夜長には翻車魚として深海へ
コモドドラゴン
長き夜や猫は添寝に飽いたらし
佐野すずめ
あとがきに夜長を留むる栞紐
菅井香永
夜長の手帳ランタンの灯り揺れ
鳳凰美蓮
オシツオサレツに綿詰めなほす夜長かな
佐藤香珠
遠吠えの夜長閉園の動物園
松本笑月
夜長しさて賃貸か持ち家か
前田
長き夜のソファーにへばりつく胃痛
小豆白虎
読書灯点けて機上の長き夜
三休
長き夜を二つに分ける介護ブザー
金子泰山
ベビーカーでロビー徘徊する夜長
紀友梨
ブラウン管昏き熱持つ夜長かな
佐藤志祐
ジャグジーでぶくぶく思案など夜長
のはらいちこ
棋譜並べ千年前の師も夜長
広瀬 康
目薬の一滴重し長き夜
里すみか
葬儀へのボーディング待つ長き夜
アムゼルえりこ
長き夜のテレビさつきも見たニユース
伊藤映雪
長き夜や弟はデカ兄はホシ
たま走哉
美しき石の吸いつく夜長かな
苫野とまや
YouTube有事の何故を知る夜長
伊沢華純
活字といふ星々拾う夜長かな
青い小鳥
漆黒が宙の裂け目を縫ふ長夜
haruwo
パソコンを小舟に渡る夜長かな
月岡方円
溜息はぐんじょう色に長き夜
森 日美香
幽霊も足攣るほどの夜長かな
小田慶喜
黄身溶けるラーメンくど過ぎて夜長
虎八花乙
またジェンガ乳歯ぐらぐらの夜長
瀬央ありさ
闇持ちて己の重さ知る夜長
積 緋露雪
音信の途絶えた部屋の夜長かな
錆田水遊
鳥籠に帳をかける夜長かな
中岡秀次
印刻のルーペの火照る夜長かな
トポル
水晶の成長速度夜の長さ
秋野茜
居酒屋の長押に長き夜の重み
鳥羽南良
「三つ指のミイラ」夜長の再検索
ぼたにこ
子離れサノヨイヨイアルバム繰る夜長
一斤染乃
長き夜や映画昭和のリバイバル
谷町百合乃
長き夜の微弱陣痛部屋白し
スモールちもこ
大トリは「らくだ」夜長の一門会
小川野雪兎
お悔やみのカードに長き夜綴る
芍薬@独逸
惚けたる脳に説教する夜長
もぐ
WindowsUpdateばかり脈打つ夜長の灯
椿 佳香
砂糖菓子ふた粒やさし夜長かな
星詩乃すぴか
夜長かな回し車はゆりかごに
さとけん
手土産の酒の底つく夜長かな
石黒なを子
卓ひとつハラール料理屋の夜長
武井 超凡
踊り字の字面楽しき夜長かな
大黒とむとむ
夜長し原稿用紙十枚目
巣守たまご
長き夜や斜線の多き住所録
鶴岡木の葉
湯加減を我に合わせる夜長かな
石原しょう
夫の足果つまで動けと揉む夜長
つづきののんき
フィリピンの病室鶴を折る夜長
あまぶー
硝子ペン浸す夜長の蒼インク
富山の露玉
ざりざりと字を書く今宵夜長かな
あおのめ
さみしうてロックは歌ふもの夜長
英ルナ
父逝けば半身削がるる夜長かな
八幡風花
うぉんうぉんとAMラジオ鳴く夜長
水蜜桃
夜長にて詩臭き日記にならぬやう
麻きなり
密林めく動物園の長き夜は
栞虫かじり
一日の心の傷を縫う夜長
新蕎麦句会・凪太
ロボ犬が怪し夜長の大長編
白プロキオン
長き夜のインクの量を透かしみる
蔵原 貢次郎
「ジムノペディ」リピート夜長の孤独
森中ことり
長き夜やナースシューズの鳴る廊下
安春
ふくよかな塗椀の弧を拭く夜長
木ぼこやしき
夜長にはウェンブリーのフレディを
どみ どみそ
副業のコピペコピペの夜長かな
季切少楽@いつき組広ブロ俳句部
血縁のうすき人あり夜長かな
木村木霊
検温をナースに告げてより夜長
妹のりこ@金曜カル
引き出しの婚姻届夜長人
新山晶花
長き夜ふたりぼっちの同期会
ぽんたちん
志望校決めた夜長の周期表
李安
亡き娘の名呼び続く夜長の老婆
白薔薇
長き夜や期待外れの下巻閉づ
夏雨ちや
シャンプーも湯も白濁として夜長
まめばと
到着を告げてハノイの長き夜
吉永那夫子
二杯目のお湯注いでゐ夜長の香
旺上林加
長き夜や父母在りて鬱独り
京野さち
赤電話おもき受話器をおく夜長
まぐのりあ@蚊帳のなか
置き配の荷開け夜長を愉しまむ
前田いろは
ばあば業は九時で閉業して夜長
越智空子
骨張ったソファで"Angie"聴く夜長
さく砂月
献杯はやつと一巡夜長し
春よ来い
検査待つ父と夜長のストレッチャー
春野ぷりん
長き夜の幽かな水を抱いて壺
村上優貴
長き夜やいまだ復職できぬ理由
かつたろー。
玩具散乱やっと一人の夜長
千暁
死者の奏でる笛やかましき夜長かな
アロイジオ
変圧器呮してストゼロ夜長なり
川上 生煎
探し物急に始める夜長かな
もふ美
出勤の何か忘るる夜長かな
毛利尚人
平仄以て廃炉水吐く夜長かな
佐藤烏有
亡き友のブログ訪ねる夜長かな
山内順子
長き夜留学生の重き腰
鶴亀
頁めく風は夜長の生乾き
葦屋蛙城
とつとつと夜長に満ちるタイピング
佐野明世
ピクルスを仕込めば尖る夜長かな
遠山比々き
吾の名前わすれし母の夜長かな
椿叶@木の芽
働かぬ身にも一律夜長かな
さぶり
週末はデーゲーム独りの夜長
はなだんな
再読の下線異なり長き夜
和泉穣
アマテラス岩戸の夜長アマデウス
春風流士
部屋干しの白衣かほりを断つ夜長
山吹なお
長き夜かそけき文字の日記帳
登盛満
長き夜隣家もひとり吾ひとり
独星
書き出しの手偏掠るる夜長かな
海峯企鵝
信号の点滅残る夜長かな
倉たけ
街灯もつぶやきをする夜長かな
ふんちん
実のならぬ蔓を見つめる夜長かな
望月朔
旅行記の夜長やチャイに角砂糖
青柿
押し花の栞生まるる夜長かな
平としまる
三国志両手に運ぶ夜長かな
山川土時
キャンドルの影ゆれる夜長を献杯
豆闌
長き夜を生きるスルメとワンカップ
Q&A
ラウンジにレコード並ぶ夜長かな
土佐藩俳句百姓豊哲
夜長更け帰るや自室無き家に
津軽わさお
夜長酒蟹のあぶくの版画集
篠田ピンク
珈琲の甘し夜長のレイトショー
谷川ふみ
長き夜や座敷わらしはあの奥に
杜まお実
義母の手のぬくみふうはり夜長かな
たかみたかみ
三度目の暗夜行路を読む夜長
豊岡重翁
便箋は手付かずのまま夜長かな
白山一花
夜長かなマイルス滲む摩天楼
あおみどり
朱き尾灯数え夜長の北の旅
豊後の李子
訪問者の影や夜長に膨脹す
榊昭広
指は録画にまた遠のく音の夜長
山田雅己
フロリダと奈良と夜長のWeb会議
青居 舞
夜長憂し長き休職の身なれば
空郷 阿房人
痛みさする言ひ聞かせるやうに夜長
蓮花麻耶
五頁も読めぬ夜長の投資本
渥美 謝蕗牛
添い乳は三度目半目なる夜長
梨西瓜
般若湯はワイン船旅の夜長
たけぐち遊子
間延びした夜長サイレンよく響く
正念亭若知古
遠吠えや手術同意を書く夜長
山本たか祥
ドッペルゲンガーと対峙したまま夜長
鈴木くんの父
懺悔して焼海苔かじる夜長かな
平野水麦
ハイドンの皇帝沁むる夜長し
野々原ラピ
百年の鬼の棲む土間夜長の灯
ときめき人
電話口オレとはダレと問う夜長
松田てぃ
誰も観ぬレンタルビデオ夜長かな
手座
成り切ってデニーロ殺っちまえ夜長
司啓
長き夜の元はゼウスの浮気です
南方日午
夜長更けいよよ津軽の艶笑譚
津軽まつ
病室の外の靴音長き夜
奥田早苗
地図広げまた違ふ地図夜長なり
石垣ようせい
長き夜や厠廊下の薄明かり
知恵さん
解きほぐす足の浮腫や夜長妻
津軽ちゃう
薬包を数へ夜長の旅支度
桜井教人@金カル
天下国家論じて尽きぬ夜長かな
森一平
朝までと言ったあいつの居ぬ夜長
しんしん
練り消しの白きを探す夜長かな
青野遊飛@蚊帳のなか
長き夜の釣り師は眼爛々と
松風花純
韓流のせりふと字幕に差違夜長
河合郁
疑問符のやうなハンガー長き夜
月石 幸
テロップのニュース流れている夜長
富佐野ほろよい
引退のアイドルの曲夜は長し
小藤たみよ
鉛筆はFの六角夜長し
菫久
ウクレレの手ほどき夜長のYouTube
猫山みちこ
しまひ湯に美肌湯ははの夜長かな
村木年子
長き夜やシャガールの絵と一つ灯に
浩子赤城おろし
背徳のケーキ艶やか夜長かな
花咲明日香
居酒屋ののれん生き生き夜長かな
こま爺
惹かれ合ひながら夜長を出逢はざる
元野おぺら
ゆるく噛む御座候の夜長かな
林省造
孔明も死んだKindle夜長なる
泉晶子
吐ききれぬ息もどかしき夜長かな
音のあ子
六畳の部屋の大きさ夜の長き
藤井勢津子
ガラスペンインク尽きたる夜長かな
円美々
目を閉じて悩みなぞないけど夜長
大山香雪蘭
その話今日もしている夜長かな
とき坊
夜長の白虎ベンガルを忘れけり
三重丸
あと一つもう一つ鶴折る夜長
あじさいパスタ
夜長には亡母の小引出しを開け
美津うつわ
長き夜月の裏側濡れてゐる
笠山静香
失ひしパズルピースの夜長かな
小園夢子
長き夜の劈頭飾るタンゴなり
坂土海夏
母の爪ほつほつ切つてやる夜長
あつちやん
長き夜哀猿の咆鼓打つ
玉響海月
壁ひんやり今日も夜長を泣く隣人
仁山かえる
夜長の気晴らしスクワット100回
オアズマン
カルメ焼きぱちつと爆ずる夜長かな
宮武濱女
映写機のジジジ夜長の解像度
久留里61
年よりの放課後続く夜長かな
海星葛
からからと夜長アンタは眠つたら
看做しみず
長き夜や顕微鏡座に合ふピント
福良ちどり
古棋書をまた持ち出してゐる夜長
いごぼうら
君と僕足して二でわる夜長かな
豆柴
長き夜難曲弾くやカポタスト
那須のお漬物
針に糸通らぬ母の夜長かな
一走人
人体をお酒が巡る夜長かな
木村隆夫
ゲルニカの牛と目があう夜長かな
高遠見上
長き夜や小さき柩にミニ四駆
コーヒー博士
みちのくに進路を決めた夜長かな
小林番茶
五巻目の竜馬ワイン空ける夜長
謙久
夜長には白い句集を一つ持ち
樹魔瑠
長き夜のソムリエナイフ行方不明
田口大寒六
長き夜をアルゴー船の出航す
紗羅ささら
贋作の画の皺なじむ夜長かな
狩谷わぐう
夜長かなリズム正しき寝息あゝ
ウロ
長き夜を繰り返さるる父母の不和
おかだ卯月
還暦の夜長毎日罪と罰
竹令呑
伸びた爪気にして夜長本捲り
雅屋少将
口笛が鳴って夜長の風が吹く
志村紀昭
嫁ぎしと風の噂や夜長の灯
辻野 花
鍵探す事にはじまる夜長かな
でんでん琴女
ロフトへの梯子の軋む夜長かな
赤尾実果
洗剤を詰め替えてゐる夜長かな
香田ちり
病床の硬さに慣れぬ長き夜
角野角子
夜長し父の使いし道具箱
也和
読み返す英語の手紙夜長人
万寿果
長き夜は鏡を右に三ミリずらす
野原 華
ゆるゆると逃げる夜長の絹の糸
鶴小なみ
長き夜や灯の色淡き乳児院
小島やよひ
日本語の台詞の変な夜長かな
ひでやん
てはじめに蹠のつぼを攻め夜長
綾竹あんどれ
子だくさんのフェルメール夜長の遅作
地球人
家康の本と夜長を渡りたる
一久恵
手術後の痛み夜長の透かしつ屁
松井くろ
長き夜のジミーは永遠に反抗期
立部笑子
揚げ物の火傷の疼く夜長かな
夏湖乃
劈きは悪夢みた鳥長き夜に
文月蘭子
聞こえ来る下手なくちぶえ夜長なり
竹原かよこ
長き夜のソファに乾くピノッキオ
池内ときこ
長き夜を時埋めるごと入力す
樹朋
飲む音の身体にひびく夜長かな
戸口のふっこ
いつか住む平屋の間取り描く夜長
永井春蘭
長き夜の電池の切れた電子辞書
星月彩也華
すれちがふ老後の話長き夜
桃香
闇を裂く突貫工事長き夜
鯛 風
長き夜や煽り運転してません
さくら悠日
夜長には縄文人の分布地図
まりい@木ノ芽
夜長のボサノバ積みあぐる文庫本
緑の手
シナモンティー淹れて夜長のドビュッシー
姫川ひすい
長き夜や自我てふものと格闘す
円路
シラバスは真白のままに長き夜
遊羽女
文机に広ぐ夜長の江戸古地図
岩本夏柿
長き夜のレコードの傷スロージャズ
洋々
長き夜や寝返ればつる足の指
大庭慈温
バラッドや夜の長きに沈みをり
吉崎赤絲
長き夜の農業ノート貸せ貸さぬ
紅茶一杯
メモ置いて共働きやサァ夜長
星夢 光風
歳時記の背表紙凹む夜長かな
山もと あき坊
救急車止まり夜長の一時間
桂子
不安症渦巻きはじむ長き夜
笑姫天臼
D組の亡き人数ふ夜長かな
朶美子(えみこ)
ヴィオロンの途切れ途切れに聴く夜長
高木音弥
守備兵の遠きまなざし長き夜
郡山の白圭
耳鳴りの果てに夜長の声がする
半ズボンおじいさん
夜長なり手術室前ランプ赤
茶
積ん読の塔の扉の開く夜長
ちゃうりん
長い夜の手持ち無沙汰を犬とゐる
誉茂子@野の花
黴臭き漱石捲る夜長かな
黒澤墨青
深海を描く夜長の刺繍糸
夏椿咲く
長き夜の便箋穢し焚べ笑ふ
泉水あやめ
骨に火の粉亡母を送る夜長かな
枯丸
長崎の旅の夜長の福音書
内田こと
何かする何かするぞと言ふ夜長
羅美都
一滴落ち一滴夜長ふくらみぬ
中島 真珠
5冊目の闘病ノート繰る夜長
新多
少年のうすき背中に長き夜
在在空空
黄門に平次に越前夜長かな
森 佳月
長き夜やラムネのやうな導入剤
高橋寅次
長き夜を車窓の我と目を合わす
若井柳児
電鐘の律儀にずれてゆく夜長
加座みつほ
再生のノヴィーの調べ夜長かな
塩風しーたん
長き夜や螺旋ほどける飛び鉋
高永 摺墨
厠への合間短き夜長かな
向日葵姐@いつき組広ブロ俳句部
湯の沸いて使ふあてなき夜長かな
露草うづら
重力の音す夜長の尾骨より
大山和水
催促のメール打つ、消す、夜長かな
あまぐり
上の子のやけに擦り寄る夜長かな
風花まゆみ
だしぬけに雨戸震へる夜長かな
る・こんと
夜長かな詫び状なのに責めてゐる
蒼空蒼子
締切の夜長にブルーチーズ食む
一井蝸牛
長き夜やジオラマの倶知安駅
中村すじこ
眠剤切らしている夜長が怖い
津島野イリス
チャーハンを掬う夜長の書斎かな
着流きるお
耳冴えてペンは進まぬ夜長かな
平山千鶴
アルミ箔切って夜長の落し蓋
沖原イヲ
しばらくは聞き手になりし夜長かな
クラウド坂の上
黙々と量る夜長や後妻業
チームニシキゴイ 太刀盗人
漆喰の影深まりて夜長かな
小川 さゆみ
週末の誰も帰らぬ夜長かな
戸井島はな
土星めく香のうずまき夜長かな
海月のあさ
パトカーを降りて始まるこの夜長
多数野麻仁男
亡き友へ紅茶と新譜夜長の灯
羽奈あかり
長き夜の数学教師一家かな
きみどり
非通知の着信ひびく夜長かな
おかえさき
秀吉の家系図にらみ夜長し
くぼたみどらー
面会交流六時間前の夜長
かゐみすず
なんとなくコンビニにいく夜長かな
陽光
おくるみに名前を刺して夜長かな
たまのねこ
冷めてゆくひとりの鍋の夜長かな
月城龍二
陣痛の合間祈りて夜の長し
西野桃果
読み物の如く夜長の時刻表
松山茜柑
長き夜やひと月前の子の無邪気
かゐ
長き夜や明日を決める服決める
渥美こぶこ
人生をラジオで学ぶ夜長かな
齋藤方南
自販機が一隅照らしゐる夜長
樋口滑瓢
インボイス制度わからん長き夜
小倉あんこ
パイプ椅子軋む夜長の保護者会
芦幸
次は右ニ時間おきの夜長かな
高岡春幸
長き夜や父の机の時刻表
檜鼻ことは
長き夜のサゲ録れていぬ噺かな
石田将仁
系統樹すこし伸びゆく夜長かな
横縞
子の手話と母の返事を結う夜長
野々村澄夫
人気ない夜長の餃子販売所
永田千春
終日の助肩を伸ばす夜長かな
千賀子
出雲へと夜長の雨の汽笛かな
辻阿頼耶
山姥ニヤリ夜長の包丁研ぎ
綿鍋雪
徘徊の祖母の説教長き夜
むったん@狐狸山会
長き夜や時折疼く手術痕
玲風
コーヒーにマシュマロ溶かす夜長かな
ももたもも
鶏ささみふわふわにさく夜長かな
石神湖畔
灯台の螺旋階段夜長人
虎堂吟雅
妻破水夜長を走るひた走る
新右衛門
爪を切り爪を磨きし夜長かな
田中一升
オールドを注ぐマグカップ長き夜
猫ふぐ
粘菌のごともてあます夜長かな
香壺
長き夜をネオンテトラを泳がせて
東京堕天使
長き夜の教会の壁真白なる
山中 揚
猫尻尾だらり落として夜長かな
高市青柘榴
気管支へ注ぐ夜長のホルマリン
星埜黴円
長き夜のシンクに増ゆるカップかな
キートスばんじょうし
長き夜ああこの本に出逢うとは
竹村マイ@蚊帳のなか
新婚のやうにワインを夜長し
吉武茂る
地響きてオペラの幕や長き夜
ふゆの都々逸
プリズムの月に笑うや夜長妻
杉岡ライカ
長き夜の手ぶり交えて飛ぶ意見
桂葉子
つれづれに般若心経誦す夜長
山内 負乗
はち蜜のひと匙灯る長夜かな
シュレディンガーの獏
老猫の蒼き呼吸よ長き夜よ
どくだみ茶
語りべの炎揺らぎて夜長かな
西風 心鏡
ぬるま湯や母乳の溶けてゆく夜長
ハンマーヘッド会釈
卒アルに選べた道を問う夜長
杼 けいこ
黒猫の尻尾艶めく夜長かな
山本蓮子
長き夜に流木の揺るボッカボッカ
堀ゆうき
傷口は疼く留置場の夜長
楽花生
常世へと船首を返す夜長かな
理酔蓮
妻のゐて子のゐぬ家の夜長かな
亀田荒太
閉館のロープ夜長の立ち話
白玉みぞれ
夜長なれど冷める暇なき大時計
葛飾シトロン
長き夜や腓返りと格闘す
達坊
指赤し弦輪三つ目作る夜長
鳥不驚
ベッドには服色々と夜長かな
入道 まりこ
双方の云ひ分尽きて夜長かな
とはち 李音
カップ跡残る古本読む夜長
横山くみこ
名付け本めくる仏間の夜長かな
ろまねす子
紐解いてガレのランプの夜長かな
春あおい
養命酒うすめてぐいと長き夜を
とんぼ
長き夜やあとがきは感謝に満ちて
かねつき走流
午後四時の風呂は夜長を長くする
野井みこ
締切は鬼ぞ夜長と共闘す
八十六九
ダム底の骸は長き長き夜へ
落句言
晩学の目薬しみる夜長かな
広島しずか80歳
長き夜や瀬音と雨を聴き分けて
深山むらさき
礼服を掛けて献杯長き夜
ナタデココ
ネスカフェにエンゼルパイを添へ夜長
樫の木
焦げこびりつくパン磨くさあ夜長
弘友於泥
長き夜を千の音統ぶるソナーマン
坐花酔月
長き夜のラジオの声の女かな
ぶうびい
独り言パズルの溝へ落つ夜長
西田武
夫「太宰」我「みすゞ」の夜長の洋灯
服部勝枝
夜長夫明日宇宙へ行くと言ふ
吉谷地由子
四人部屋の寮にグローブ抱く夜長
犬山裕之
長き夜の規則正しきモニター音
くぅ
ひらがなの名前でいいの夜長妻
三井伽那
遊び紙に角折れありて夜長かな
ゐるす
ラヂオから蘇州夜曲を聞く夜長
太平楽太郎
彫りこんで仏現る夜長かな
広島あーやあーや
長き夜や夜の音数七つ四つ
清仁
婆ァ手解きの小箱鶴折る夜長かな
きゅうもん@木の芽
一人子の親父と二人夜の長し
国東町子
長き夜や目の端で追うチャット欄
雪音
三度目の枝雀の寝床聞く夜長
ふくびきけん
廃寺が慄きはじめる夜長かな
ちゃるこ
さて夜長結局酒になる予感
雨森 茂喜
膝に顎のせて夜長の中にゐる
川越羽流
ラジオ点け一人豆選る夜長かな
藤永桂月
長き夜や思考実験では死なず
黒木水産
夜長のドイル完破して主犯確保
林りんりん。
長き夜や卵子を捨つる月のもの
丸山隆子
ちちははの夜長のフィーカ便乗す
古都 鈴
長き夜やいまだきのふに長電話
中 兎波
君の名を水面に刻む夜長の湯
濃厚エッグタルト
長き夜を一周レンジの回転皿
坪山紘士
病母なる地球長夜の闇深し
たつき
長き夜や独り占めする柿の種
なしむらなしん
頸椎をこきと鳴らして夜長かな
くま鶉
古民家の死者と親しむ夜長酒
熊谷 温古
辞世の句また書きかえる夜長かな
田辺ふみ
長き夜の鳥の生まれてくる魔術
橘鶫
前略の後の続かぬ夜長かな
中根由起子
長き夜や友はなぜ死をえらびしか
岡山由加
壁越しのジャズに聞き入る夜長かな
竹春エリザベス
ヨーグルト殖やしては食ふ夜長かな
かりかり久助
ベースソロ短し我の夜は長し
月待 小石
トウキョウの夜長のカフェやヒトリ・ヒトリ
大久保加州
蒙恬の末路咀嚼して夜長
三群梛乃
レコードを漁り夜長の帰路は雨
オニチョロ
マルクスに愛の詩あり夜長かな
一日一笑
積年の悔いふつふつとただ夜長
からすちゃん
物置となりし夜長のピアノかな
太閤検地郎
「ゲーム禁止」の貼り紙はがす夜長かな
千原 十吾
話しこむ和裁士の叔母夜長かな
恋瀬川三緒
夜長やり過ごす戦争やり過ごす
一慎
長き夜を膨らみ縮む高炉の火
染井つぐみ
重力に疲れ夜長をふくらはぎ
そら
勿体をつける秒針長き夜
千歳みち乃
街の灯の消えぬ旅宿夜長し
千の葉
百キロの単身赴任長き夜
菊池克己
長き夜やスマホに残る妻の声
老人日記
長き夜や床をルンバの独り占め
藤咲大地
ラストピース嵌めて夜長のカップ麺
竹田むべ
明治創業夜長の垂れを継ぎ足しぬ
髙田祥聖
すまんすまんと繰り返す夜長かな
真喜王
絶縁の友の絵手紙読む夜長
翡翠工房
志ん朝にひとり笑いの夜長かな
阿波オードリー
髭面のカフェや夜長の山談義
さかえ八八六
長き夜にをとうと欲しくうなぎパイ
嶺乃森夜亜舎
長き夜や花咲くようにカリンバを
閑々鶏
船上の長夜かそけき三崎の灯
周防の鼠
新聞を天眼鏡で読む夜長
れんげ畑
物書きの夜長のパンはミルクの香
高井大督
翅脈透く火影微動す夜長かな
佐藤 位相朗
夜長さて松葉かがりの十個目へ
沢胡桃
かきの葉の雨滴に叩かるる夜長
桜月夜
えんぴつの転がるはやさ長き夜
冬野とも
長き夜に愛する夫が死ぬ映画
山野麓
AIの英訳遺漏なく夜長
周防の兎
切子へ蜂蜜酒赴任地の夜長
紅小雀
長き夜や隣家の厠また点る
朗子
ナベサダと角瓶のある夜長かな
祥林
又来ると腰浮かす人夜は長し
草間八千代
雄弁なノートの余白夜長人
夏埜さゆり女
厩舎にて熱き夜長や水含む
はたやま こう
蛇口からぽたりぽたりと夜長し
だけわらび
コピー機の修理の音を聴く夜長
世良日守
当直の静寂研修医の夜長
一本橋ふくろう
一行を決めて夜長を始めけり
大塚迷路
誰も居ぬ部屋に「ただいま」
夜長くる
葉月庵郁斗
飽きもせず旅の夜長のへぼ将棋
村上継鳥
長き夜たぶんアイツも寝ていない
石浜西夏
長き夜や歎異抄まだ三の章
伊江かつじ
気を遣う小姑来たる長き夜
加賀くちこ
夜長の子ティラノサウルスの勲章
紫小寿々
長き夜を言葉の海に遊びをり
冬島 直
やはらかに歳時記匂ひ来し夜長
美織
撃鉄のかちりと起きる夜長かな
富田健朗
切り株に尻とコーヒー夜長かな
水越千里
石段昏し脱兎四谷の夜長
天照昭光
夫も吾も表紙を閉じる夜長かな
多可木@ノエル
参列の喪服の淀み夜長人
寿貢
ものさしの影のあらわす夜長かな
麻生四里
レバニラの横に東スポ夜長かな
野口真砂輝
恋文の父は饒舌なり長夜
海野青
ためらうて昇る夜長の紫煙かな
藤白真語
リリアンがまだまだ伸びる夜長かな
斎藤さんけん
飯台で図面引く父長き夜
さゆり@金カル
来たバスに乗らない自由夜長嗚呼
空豆魚
明日来るな念じ布団に入る夜長
諫鼓苔深
詩に飽きて夜長の果てと話し込む
赤馬福助
絶望の珈琲淹れる夜長かな
梅世耕
錠掛けて去るひと夜長の伽藍堂
赤端独楽男
斉唱の霧散するかに染む夜長
山香ばし
ビーズ編む夜長や眼鏡ずらすなり
梅朶こいぬ
夜長にて二人は一人一人なり
松本俊彦
書架の空き四冊分の夜長かな
つまりの
コンタクト早めに外す夜長かな
坂本宙海
長き夜や赤いシールのフラスコA
仁和田永
ペンローズの三角形知る夜長
北爪いく葉
ヘッドホン置いて日記を書く夜長
あなうさぎ
長き夜の旧き手紙の「自愛」かな
みやかわけい子
長き夜の壁の鬼面とわが影と
雪井苑生
四畳半たばこ燻る夜長かな
荒木響
長き夜を感想文に足す朱書き
高尾里甫
夜長かな鬼まんぢうを裂いて食う
西田月旦
夜長かなカッターシャツの皺は波
桃園ユキチ
長き夜や宇宙のはたて記す式
陽花天
失業や転職サイト繰る夜長
ざうこ
孫が来て子が来て茶の間夜長の灯
そめやまさみ
交渉妥結手締めの宴へ夜長し
コーノ凡士
神将のひとり背伸びをする夜長
池之端モルト
持て余す夜長よ今日も不登校
大津美
繰り返し世の実存を問ふ夜長
俳句ファイヤー立志
ペーパーの芯あり君の居ぬ夜長
駒野繭
昼間見し映画の中へ長き夜
こひのむ
長き夜のおのづと閉ぢる蝶番
林山千港
遺影に映る夜長の秒針の影
縞ふみ
夜長夜長スマホの顔に落ちてくる
野地垂木
くだらないはなしくりかえしつつ夜長
白石 美月
立ち読みの興奮冷めてゐる夜長
広木登一
シュメールに文字の生まれて夜の長し
久森ぎんう
長き夜やマトリョーシカは小さい順
靫草子
冷蔵庫呻く夜長の鼻濁音
雑魚寝
二冊目に栞を移す夜長かな
香依蒼
シナプスのしづかに結びゆく夜長
谷山みつこ
持ち上げし夜長のティーバッグの重さ
みつれしづく
長き夜の額縁正せども斜め
葉村直
サイフォンのコーヒー語り出す夜長
太之方もり子
夜長てふ洞埋めるごと果実熟む
村岡花風
呟きへ貨物車細り行く夜長
多事
Switchの起動は速し夜は長し
ぜのふるうと
長き夜や釣りの仕掛けを長くする
種種番外
私語のごと灯る夜長の料金所
登りびと
封印を解かれしポテチ夜長開く
田中ミノル
埃払ひて夜長のトットちゃん
四季春茶子
珈琲のよく冷めさうな夜長かな
洒落神戸
連絡帳またひとり消す夜長かな
藤白月
定まらぬ吾子抱く産院の夜長
大槻税悦
珈琲を挽いて夜長のビリージョエル
ゆうじい
長き夜の土間に国勢調査票
倉木はじめ
長き夜の湿布の匂ひ溺れさう
柚木みゆき
生配信終へて夜長の躙り寄る
ツナ好
君のゐる夜長ひとりでゐる夜長
あみま
高速降りる夜長限定ブックカフェ
松山めゐ
絶交を告ぐる電話来長き夜
麗し
試供品のリップ夜長に選りてをり
栗の坊楚材
十二時の点滴換はりまた夜長
鷹見沢 幸
手の皺をしみじみ見るや夜長人
蘇子
長き夜のテレビの垂れ流す正義
青井えのこ
ロープの輪上げられ長き夜の船首
山城道霞
不規則な母の寝息を知る夜長
ペトロア
時差一時間夜長のウィーチャット
蘂六
夜長来てルーペしげしげ点眼す
國本秀山
なめらかに夜長に添って切る切り絵
浦野紗知
肋骨がけふも一本無い夜長
たーとるQ
長き夜や野生の音に聴き入りぬ
はごろも856
夜長さや塩ラーメンの濃度の差
染野まさこ
アイロンに水をそそぎて夜長かな
飯村祐知子
知恵の輪を指が覚える夜長かな
音羽凜
蔵わらし箪笥を鳴らす夜長かな
唐木 陶子
岩風呂の端へ夜長の波紋満つ
細川鮪目
亡き母の診察券捨てて夜長
立石神流
夜長のソファー付箋嵩むカタログ
まこ@いつき組広ブロ俳句部
女子ふたり起承転結なき夜長
原 水仙
長き夜の地図は北京の裏通り
さとうナッツ
長き夜や階下の夫も等しき夜
清水 三雲
チクチクと僧衣繕ふ夜長かな
中島走吟
眠る君と夜長を撫でる箒星
小林一平
出稼ぎ人だらけ夜長のふるさと
西町花冠
赤身肉常温にとけゆく夜長
森脩平
長き夜は本棚の司馬遼太郎
大阪駿馬
アルバムの吾の髭黒し夜長かな
ゴーマ
亡き母の通帳めくる夜長かな
伊藤てまり
叱りかた叱らるる寝間ながき夜
さとうゆうき
録画二本削除している夜長かな
松本厚史
ページ繰る指に夜長の憂いかな
伊予吟会心嵐
捨て台詞ひとつ減りたる夜長かな
黒麹 糀
渋皮煮ラム酒を垂らす夜長かな
六花
長き夜の波止場骨片流れ着く
入口弘徳
水槽の匂ひ夜長を領すかな
鷹取 碧村
長き夜や宇宙の闇に入る地球
東太
飯食へばもう消灯の夜長かな
木村ひむか
息詰めて探る行間長き夜
夢見昼顔
司馬遼の下巻を探しをる夜長
山内彩月
幕間のシャンパン巴里の夜長かな
伊藤恵美
夜長の三度の銃声波静か
伊藤辰弥
長き夜のラフ描いて消す描いて消す
丹下京子
親父に初めて殴られたこの夜長
藤田味
一つずつピアス外して長き夜を
コウ
泣けるだけ泣いて夜長を埋め尽くす
片平仙花
触れあつて夜長を腐りゆく液果
眩む凡
権力とはなにいろ夜長の信号機
北野きのこ
ほろゑひの父よ夜長の饒舌よ
秋白ネリネ
マスト立て帆を張る夜長ビンの中
吟 梵
家系図の半紙一枚長き夜
四丁目
雨音の絶えて夜長の本開く
小池令香
夜長なりガットの切れしを持ち帰る
岡 柳仙
顔パック厳かに乗せ長き夜
杏乃みずな
湯めぐりの下駄響き行く夜長かな
埼玉の巫女
妻の居る受話器へそつと寄る夜長
塩の司厨長
古本の誤植唱えし夜長かな
加山シンゴ
本籍を移して一人夜長かな
ひいらぎ
みんみんと夜長のシンク磨きをり
きのえのき
千ピ―ス封の切られぬ夜長かな
中田邦光
終便を待つ駅長の夜長かな
銀 次郎
四六判伏せてテリアを抱く夜長
江良 中
アルバムの古きを香る夜長かな
永井旅人
「モモちやん」の栞のにほひ長き夜
夏 しのぶ
会いたいと言って会いたくなる夜長
GONZA
殻付きの会話や夜長のピスタチオ
橋本有太津
壁一枚隔て夜長の喧騒は
渡辺香野
くせっ毛を何度も梳かす夜長かな
斗三木童
片恋が熟す夜長の薄力粉
綱川羽音
モンゴルの短波放送長き夜
無弦奏
解体の木造匂ふ夜長かな
沙一
ふと見れば妻もこちらを見る夜長
可笑式
長き夜や声なき歌をリフレイン
山川凛
筆跡は若き日のまま夜長かな
四條たんし
長き夜や爪研ぎし猫の目赤し
ふわり子
再入院29階にある夜長
うみのひつじ
AIが三四飛車を指す夜長
広島じょーかーず
ドロシーのいない夜長のバースデー
渡辺桃蓮
部室棟灯りて砦めく夜長
渡海灯子
悔の日の夜長や白き金平糖
後藤三梅
アチャールの夜長や睫毛触るる間に
翼つばさ
長き夜チョークアートの下絵かな
ぐりぐら京子
助手席の寝顔長夜の塾帰り
小西天
ヨガポーズとる猫の居て夜長かな
まー坊
長き夜に銀の波たて足洗う
山 ゆり
もて余す夜長倦怠期の間合ひ
そうり
ピアフ聴き無花果煮込む長き夜
美月 舞桜
オオカミの哮り夜長の動物記
だいやま
五冊目の抜き書き手帖長き夜
小川しめじ
ホットフラッシュ辛くて辛い夜長
天雅
蓋碗の茶葉ほどけゆく夜長かな
陽光樹
二軒目を捜しに戻る夜長かな
虎穴虎児
長き夜や屋上の象「高子」の記
東田 一鮎@金カル
宙のつぶ草葉に宿る夜長かな
香羊
切りすぎし前髪ちくと夜長の灯
夕虹くすん
飯粒を残らず噛みて夜長かな
時まる
長き夜や猫に添ひ寝をせかさるる
伏見丹耶
長き夜や四十九日を過ぎてなほ
山田蹴人
カーテンのまだ無き部屋の夜長かな
絵夢衷子
嫁ぐ子に持たせる道具箱夜長
野ばら
帰れなんて言わなきゃよかった夜長
あやっぺ
終電を逃し酒場の夜長かな
森爺
長き夜や耳を閉ざして灯を消して
ひろ志
長き夜やひっぱり出した古き文
花空木
仏前の畳の窪み母夜長
中原柊ニ
ひとりごといへば夫問ふ夜長かな
主藤充子
長き夜や頭だけゐる編みぐるみ
月枝いと
時差刻む闇抱きしむる夜長かな
山根湖七
わら紙へチュロスの油染む夜長
丹波らる
籍入れて離ればなれになる夜長
つくも果音
ナンを焼く如く湿布貼りける夜長かな
灰色狼
抜いた親知らず持ち禁酒の夜長
八光地蔵
耶蘇槍を刺されしあたり撫で夜長
吉田涼太
長き夜や与作は五度目の木をきって
馬場めばる
鼻歌の豆選る母の夜長かな
いつか
エゴサーチ文字追う漁る病む夜長
水間澱凡
うたた寝の目覚め栞抜く夜長
まつといのいち
パスワード決めかねている夜長かな
青木豊実
長き夜や充電ランプ青くなり
西村優杏
雨音の細き夜長をスクロール
栗田すずさん
マッサージ・パック夜長は無表情
蜥蜴の尻尾
冒険の火蓋夜長の一冊目
藍創千悠子
病室の五秒二滴や長き夜
三水低オサム
尻尾濡れ夜長の野原佇んで
飛来 英
わが夜長仔犬枕を舐めつづけ
ちびつぶぶどう
長き夜やささひなことを語り合ひ
如月ドロップ
頻尿も慣れて夜長の午前2時
秋野木吾
夜長人余白に灯る遠き家
シュリ
モンポウのピアノ揺蕩ふ夜長かな
さざなみ葉
弔意文ピリオドを打つ夜長かな
増田 昴
語り部の遠野の里や夜長なり
上津 力
米乾燥の音のなかなる夜長かな
杉尾芭蕉
ラタトゥイユしみゆく夜長なべ重し
パンの木
水銀に熱見張られる夜長かな
城内幸江
庭植の花の悩みの長き夜
ひすい風香
つまらない喧嘩夜長の無駄遣い
明後日めぐみ
長き夜やドラムパッドの八角形
千代 之人
屋根裏の梯子の軋む夜長かな
刈屋まさを
わからん句いよよわからぬ夜長かな
与志魚
夜長かな今夜読みたき本開く
山口朝子
灰皿にシケモク探す夜長かな
はるく
明るきは母の病室長き夜
祐
肋骨の包む太古の夜長かな
空 ひろ
卓袱台に夜長カフカとカップ麺
高橋風香
長き夜や厨に匂ふ母の影
渡邉 花
ペンギンが尋ねて来さう夜長かな
絵十
長き夜や八十億人の価値観
愛柑
血管に糖が噛み付く夜長かな
泥塗れのポスト
明日届く義足に靴を選る夜長
紅三季
長き夜は鈴鳴りやまぬ耳の奥
杜乃しずか
スマホ黙らせそこから先が夜長
時小町
長生村より友来る長き夜
藤鷹圓哉
ミルフィユの層重ねゆく夜の長し
鈴木来穂
長き夜を「ハンチバック」の絡みつく
英子
長き夜や泣いて馬謖を斬るところ
清瀬朱磨
長き夜を咽ぶホテル・カリフォルニア
高山佳風
長き夜や点滅深き洗濯機
じょいふるとしちゃん
長き夜や残す写真を選り分けて
玉響雷子
パチ屋並び頻りに時計見る夜長
団栗あんパン
遠来の客は帰りて長き夜
どいつ薔芭
折り上がる蛙七つの夜長かな
立山穂高
カーテンのドレープ象った夜長
青柳修平
つらつらと夜長の育児日誌かな
山羊座の千賀子
短編を一冊閉づる夜長かな
石塚碧葉
尻裂けを縫ひまた破裂夜長ああ
北青山晋
留守番の夜長を満たす着香茶
むらぴ
漆黒とならじ麓の夜長かな
亀山酔田
予後伏せて夜長を順に棚拭ふ
北欧小町
KissMeと歌うラジオや長き夜
堀雅一
思ひ出の良きも痛きも抱く夜長
岡山小鞠
最後またタラに戻りて長き夜
渡辺十把
長き夜や句帳の隅に名付けメモ
鉄腕二十八衛門
マックイーンはクール夜長のリバイバル
花南天anne
長き夜の思いとどまる模様替え
伊藤なおじい
ひたひたのシートマスクや夜長し
森海まのわ
長き夜や籠城先は社長室
紅紫あやめ
三人で分けるラーメン長き夜
酔蚊眼
祈りのごとく害獣丸くなる夜長
あなぐまはる
乗り越したと夫のメールや嗚呼夜長
増山 銀桜
祝賀会後特急の車窓は夜長
林 水城
兄の字の震へ夜長の状差に
鈴白菜実
粗熱は夜長へ全き豚汁へ
しばた もめんこ
夜長かな数ページ書く日記帳
丘るみこ
『ノンタン』に古きらくがき夜長かな
井田みち
長き夜や昭和歌謡のむず痒さ
山川腎茶
おばちゃまはスパイ夜長を百ページ
オキザリス
饒舌のAI誤答せる夜長
酔下弦
長き夜の窓へ新種の深海魚
森 毬子
ライカメでヴェネツィアの水見る夜長
川代つ傘
年号を綯交ぜにして夜の長し
木寺 仙游
さあ今日はとことん課金嗚呼夜長
けーい〇
錆のうく電動ミシン長き夜
卯年のふみ
カップ麺世界史置いて夜長かな
草夕感じ
長き夜の反芻牛のごと横臥
はれまふよう
若しや時が逆に流れている夜長
河野灰土
言いたきこと言って更けゆく夜の長き
愛燦燦
夜行バス初上京の夜長かな
細木さちこ
ねぶり目や夜長一句にこだはれば
桔梗
長き夜の列車は大河渡りけり
峰 乱里
長き夜や二重に包む水枕
仮名鶫
ヂップロックの二重動画に夜長し
豆はな
国際宇宙ステーションのち長夜
月見柑
優勝のニュース何度も夜長し
としたか
長き夜を外灯の艶増しにけり
石川順天
放列の竿をしならす波止夜長
パッキンマン
ふうはりとシルクに包む夜長かな
立ち漕ぎブランコじゅん
スウィングに右脳の漬かる夜長かな
山河穂香
会話なく気まずくもなく夜長かな
糸川ラッコ
雨樋の時折咽せてゐる夜長
恵勇
長き夜や辞書に編者の巻頭言
多々良海月
居間までも心斎橋の夜長かな
春今
待合の産声はまだ長き夜
おたまじゃくし
長き夜のゲーム領主の国づくり
だがし菓子
画面だけが煌々とする夜長かな
坪田恭一
裏紙へ理想の間取り描く夜長
久保田凡
食道へ薬酒を捨ててゐる夜長
足立智美
芳しき思ひ出畳むごと夜長
伊予吟会 宵嵐
長き夜壺庭の燭眺めをり
山紗季茉悠海
使ひ切る四千秒の夜長かな
HNKAGA
老猫と仔犬と亀と夜長の餉
羊似妃
長き夜の重ねし黒き日記帳
ほこ
マネキンの髪切る美容師の夜長
フージー
長き夜の父の遺せしCDよ
佐久凡太郎
金継ぎの大皿父とゐる夜長
古乃池糸歩
果実酒の五色を棚に長き夜
えりべり
二枚目の絆創膏よ長き夜よ
Dr.でぶ@いつき組広ブロ俳句部
新幹線載せて長夜をトレーラー
つちや海郷
EP盤階下に咽ぶ夜長かな
伊ナイトあさか
のど飴の苦み薄れぬ夜長かな
るびちゅ
長き夜や骨のありかの確かなる
星野はいかい
アイデアは邪道夜長のペン走る
安達りんだう
悔しさを睡眠薬に溶く夜長
風来坊健丸
長き夜の鉛筆削り溢れけり
イサク
長き夜回廊照らす釣り灯籠
カバ先生
長き夜星が訪なふプリズンの窓
樅ノ木・ライラック
長考の棋聖は矢倉夜長し
新濃 健
ニュース観るまたニュース観る夜長かな
鈴木古舟
口笛は禁止夜長の街歩き
鈍亀
長き夜の座敷童子のはしゃぎよう
Kかれん
天井の子やもり見失ふ夜長
ゆすらご
長き夜や時計が嘘をついておる
鷹星
下の毛に白髪露天風呂の夜長
斉藤百女
七並べ一枚足りぬ夜長かな
匹田小春花
ワイングラス夜長に気づく縁の傷
馬門宗太
夜長かなスマホはスパム選り分けて
神谷たくみ
うたた寝の見てないテレビ長夜更く
みゆむうしば
虚しさも慣れて独りの夜長かな
弥勒夕陽
常夜灯眼裏にある夜長かな
まるにの子
時々は物言ふ老の夜長かな
ひだ岩魚
長き夜や探し続ける住所録
秋星子
遠き音の夜長の稽古笛太鼓
はれみちる
雑誌より付録が大事夜長かな
空木眠兎
長き夜や環状道は不眠症
ゆきなごむ
レコードの針の波打つ夜長かな
岸来夢
徒然に画面を開く夜長かな
角田 球
トリケラの骨格軋みだす夜長
そまり
夜長夜長口説き損ねしをんなをんな
向原てつ
録り溜めし寅さん君と観る夜長
佐藤さらこ
陰性の夜長二浪が繰る単語
戸部紅屑
夫とゐて一人の夜の長さかな
対馬清波
犬の遠吠こそばゆき夜長の灯
久下 真一
酩酊にその名を聞いて夜長かな
宇野翔月
長き夜や五年日記の三段目
林真紗湖
次回の兼題も
皆さまふるって投句してください。
お待ちしています!
投句はこちら