類想一覧(選外)
笑み溢れ揃いのセーターセピアの記憶
宇佐美 秀堂
君編みし虫喰いセーター捨てし我
南波舟
還暦の赤のセーター気後れす
リカ
セーターを後ろ前にし胸を張り
池弘庵翁
別れても変わらぬ温み手編みかな
微笑亭さん太
セーターに頭通せば別世界
京子
虫除けの匂いたっぷりセーター着る
中村 自在
お揃ひのセーター弾む夜の街
渡邉花
セーターの派手なる色の八十路かな
上津 力
新聞を取りに寝間着にセーターを
弥日
父のセーター着て似る我や亡き父に
宮沢 韋駄天
母の忌や手編みのセーター蕭々と
片平仙花
お散歩のセーターを着る小犬かな
文月あつみ
気に入りのセーター虫食いの無念
リコピン
水難のスエタア編み地が出自を
林りんりん。
セーターてふ彼に贈りし重き想い
永田千春
カーディガン祖母の背中のカーブかな
玉野汐音
セーターの袖はカピカピ昭和の子
花咲明日香
豹柄のセーター着込みいざ街へ
九郎四郎
年老ひて派手目のセーター勧められ
ニッシャン
亀の首「万歳」と着る初セーター
美津うつわ
古セーター郷の匂いか静電気
しろくも
母の編む古着解きて新セーター
蒼き鷹
捨てられぬセーターの毛玉刈る
笑酔
巣立つ子の褪せしセーター羽織る夜
紅三季
老いぬれど夫婦揃いのスエタかな
円美々
セーターのほつれをなほす魔法の手
ちくりん
顔も似て揃いセーター親子かな
午 勢至
君からの手編みセーター綻びぬ
玲風
セーターの中でにゃんこの夢いくつ
村上継鳥
ああ悲し白セーターに穴のあり
中田邦光
母編みし毛玉のセーター古希に着る
徳翁
セーターや固き編み目の重々し
楽和音
セーターは彼女の手編みちくちくす
田邉真舟
セーターの胸のまろみの暖かさ
地白 吐素
スウェーターに飼い猫の毛がついてゐて
望月朔
ブランドロゴのセーター我が青春
浪速の蟹造
生家前セーター嬉しき古写真
藤 無南
セーターの腹のふくらみ嘆く父
妄児
通勤ラッシュ同じセーター目を逸らす
羽光
断捨離の出来ぬセーター妻の色
越前 俊水
セーターに隠れし思い恋ごころ
石内宏明
捨て猫やセーターの中まどろみぬ
田村美穂
寒がりの君の棺にセーターを
下條ちりり
セーターをほどく背中のまあるさよ
KOMA
憎っくき奴めセーターのしょうゆ染み
高市青柘榴
セーターや気合いバチっといざ行かん
山海動静
捨てきれぬ祖母編みくれしセーターよ
田中ようちゃん
ばちっと静電気着込むセーター新着
あらいゆう
古セーター掛け声だけの断捨離や
木村木霊
セーターを昔は編み直したものよ
喜多輝女
母ほどくセーターの糸両の手に
妙
同じ顔同じセーター姉妹かな
加藤多作
スーパーへ孫のセーター襟のタグ
豊生スローマン
セーターの胸にイニシャル三姉妹
清水明美
セーターを着たまま白衣纏ふ医師
朱鷺9条湯八
右左段ちの袖の初セーター
風間 燈華
老いしかと赤セーターで独り言
渡嘉敷五福
猫何処セーターが丸まっている
灰田兵庫
カーディガン手隠すほどの袖余り
みのさん
セーターにのこる家族のにおいかな
阿山季思
セーターの母の背中の丸みかな
夏山縁
セーターはお揃旅先限定の
さとマル
肘抜けし二十年前のセーター
青木豊実
妣編みしセーターといて湯のしする
瞳子
新品のセーターに穴猫の爪
なつめモコ
セーターの胸のイニシャル兄のK
日向浜
看護師の深夜の紺のカーディガン
平林政子
脱ぎ方をもがくセーター見えぬ先
津軽まつ
手編みセーターずしりと重く友偲ぶ
宇田女@ノエル
セーターの背越しに吾子の息温し
たこ山焼之輔
英国の漁師のセーター家紋入り
山口朝子
セーターの重さは愛の重さかな
防子
セーターの毛玉なじめり古女房
三崎扁舟
セーターに出口が三つ未だ闇
高橋風香
下ろし立てセーター猫に先越され
田畑せーたん
セーターや嫉妬も愛も封じ込め
辻󠄀本四季鳥
歳月や君のセーターはここに在り
木村カズ
セーターの青はうちの子元気な子
ゆかりん
白衣脱ぎセーター姿や主婦の貌
秋内 壱玖
親、子、孫、手編みセーター永き旅
孔明
セーターに編み込む思い檸檬色
小和布
麗人のセーターに穴親しめり
田村さとこ
赤セーター箪笥の奥にひつそりと
杉山駄芭
先ずは着よ派手なセーター出よ君
山川土時
萌え袖のセーターは白あざとい子
高井大督
セーターの脱ぎ方おなじ三世代
立石神流
セーターのてかる袖口めんこの子
水無月
セーターの虫食い穴にダーニング
砂月みれい
セーターやどちらを選ぶ白と黒
渡部 あつし
トイプーに手編みセーターの溺愛
藤源卿
セーターは真紅モノクロ写真の祖母
井田みち
セーターの編み上がってからの恋
多木緑風
滅びしかセーターの袖てからす子
黒澤墨青
セーターの出口さがしている頭
前田
彼のセーター裾をコソッとつまみたい
猪子石ニンニン
子のセーター無になってする毛玉取り
でんだ浜千鳥
かくれんぼ鼻水はセーターのソデ
粋庵仁空
セーターの手編みに絡む妻の怨
佐藤浩章
おさがりの朱のセーター二十余年
望月ぽん
慣れぬ手でセーター編みし日懐かし
真林
抜け殻となりしセーターまだ其処に
風の旅人
三度あみ直されし姉妹セーター
むったん@狐狸山会
犬柄のセーター跳ねし鬼ごっこ
珈藤絵本
つんつるてんのセーター着てた戦後つ子
コーノ凡士
セーターのパチパチ吾子の逆毛かな
太之方もり子
セーターの赤いイニシャル姉のK
ゴーマ
断捨離のセーター救い出す母よ
古都 鈴
チェストへぎゅう今年もきっと着ぬセーター
雪音
セーターの虫くい憎し胸の谷
コイケキクエ
アルバムの揃ふセーター夢のごと
永井旅人
だぶだぶのセーターを着る童かな
紋舞蘭
セーターを着るか着ないか悩む日々
だけわらび
お揃いのセーター嫌ひ手編みはなほ
佐々木のはら
母の編むセーターの柄前衛ぞ
立歩
過ぎし日は奥意に納め子のセーター
三島ひめばしょう
断捨離のセーター惜しむ母の愛
すずらん似のチイ
令和の断捨離昭和のセーターよ
羽柳武助
セーターに白衣かさねて夜回診
竜退治の騎士
ぬくもりや手編みセーター喜寿の旅
加藤光弘
残されしセーター吾にはちょっと派手
加藤理恵子
セーターを古着が好きな犬小屋へ
埼玉の巫女
押入れに手編みのセーター色褪せぬ
春風
猫の顔セーターの首から二ャーン
水城
セーターに子猫くるみて走りくる
酔蚊眼
モヘアのセーター萌え袖の手繋ぎ
不二自然
捨てられぬカンガルー柄セーターよ
夏 しのぶ
巡回のナースが羽織るカーディガン
鈴木由花子
セーターを匂いもろとも脱ぎ捨てん
だいやま
還暦に孫の手編みのセーター来
原島ちび助
今年また似たるセーター買いにけり
野澤真澄
セーター袖隠す手小悪魔の技
桃姫
ぶかぶかのトックリセーターいとをかし
⑦パパ@いつき組広ブロ俳句部
昨年のセーター未だ出来ぬまま
横山くみこ
隙目なきセーター重し恋人へ
豆はな
赤札のセーターLサイズがない
Dr.でぶ@いつき組広ブロ俳句部
虫食ひのセーター犬へお下がりか
水越千里
同柄のセーター着せて犬を曳く
遊泉
セーター編む婆ちゃんの手のその細き
喜余人
セーターは黒ジョブズなる登壇へ
縞ふみ
セーターの毛玉むしるは吾子の癖
どいつ薔芭
還暦の赤いセーターボール蹴る
伊勢乃幸牛
セーターへ潜るが如く朝支度
虎穴虎児
もふもふと眠る豆柴スエタ掛け
望月 円
次回の兼題も
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選者コメント
夏井いつき選
冬の人事生活の季語です。
今回、「セーターを編む」という内容の句がかなりありました。勿論、「セーター」ですから、編むという状態も季語「セーター」の一部ではあります。ただ、「毛糸編む」という季語もありますので、内容によっては選外としたものもあります。
更に悩ましかったのは、場面としては面白いのだけれど、「セーター」でなくもよいのではないか、というもの。「ショール」でも「白服」でもいけてしまう、季語の動きそうなものもありました。
「セーター」の特性をどこまで踏まえることができるか。そこが重要なポイントであったかと思います。
いつものことではありますが、
類想を土台として、ささやかなオリジナリティやリアリティを加えることで、選に入っている句も沢山あります。それらを丁寧に読んでいくことは、自分のデータベースを豊かにすることでもありますので、復習をおろそかにしませんよう。重ねてアドバイスしておきます。
※今回の兼題「セーター」中級者以上投句欄へのご投句は、投句数3796句、投句人数1600人となりました。以下、類想句の一覧です。