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中級者以上結果発表

2023年11月20日週の兼題

セーター

【曜日ごとに結果を公開中】

秀作

  • セーターの花の萎れぬ忌日かな

    亘航希

    選者コメント

    夏井いつき

     セーターに刺繍された「花」が萎れることはありません。が、故人が愛用していたセーターを手にしているのが、その人の「忌日」ともなれば、萎れないセーターの花の艶やかさが、悲しさを一入に誘うこともあるのです。
  • ラメ入りのセーターあれが新師長

    巴里乃嬬

    選者コメント

    夏井いつき

     私服でやってきたのが、新任の看護師長さん。「ラメ入りのセーター」がいかにも艶やか。美人でやり手の新師長さんなのでしょう。「あれが」という措辞によって、指さして噂している看護師さんたちの様子も見えてきます。
  • 思い出というセーターの縮みかた

    嶋村らぴ

    選者コメント

    夏井いつき

     セーターが縮むのは洗濯ミスなのですが、なるほど「思い出」という縮み方もあるな、と。子どもの頃はなんでも大きく思えたものですが、父や母のセーターはそんなに大きくもなかったのだという感慨かも。
  • セーターを重ねて歩く遺跡かな

    まりい@木ノ芽

    選者コメント

    夏井いつき

     こちらは発掘調査かもしれませんが、「重ねて歩く」という措辞から観光地を巡っている様子を思いました。予想以上に寒い地であることに驚き、思わず重ね着をしたのではないか。「かな」の詠嘆も好感がもてます。
  • にわか雨にセーターむつと獣臭

    川越羽流

    選者コメント

    夏井いつき

     雨に濡れると獣臭がするニット類。「セーター」とは羊たちから頂いているものなのだと実感する瞬間です。「にわか雨に」という上五は、更なる改善の余地があるかもしれませんが、中七下五に強い共感を覚えます。
  • セーターや仲良きころの家匂ふ

    公木正

    選者コメント

    夏井いつき

     久しぶりの実家で懐かしいセーターを手にしているのでしょうか。セーターを巡る様々な思い出が過ります。「仲良きころの家」という措辞の奥行の深さが、この句の眼目。下五「匂ふ」の詩的嗅覚が心に刺さります。
  • セーターにカレーうどんのつゆの星

    まこ@いつき組広ブロ俳句部

    選者コメント

    夏井いつき

     類想のど真ん中のような句材ですが、下五「つゆの星」と書くだけで詩になっていくのが、言葉の面白い化学変化。季語「梅雨の星」を一瞬思わせるのも、俳人の詩心をくすぐるウイットというやつですね。
  • セーターや火山観測する仕事

    どくだみ茶

    選者コメント

    夏井いつき

     火山の状況を常に観測する仕事にとって、冬の季節のセーターは相棒のようなものなのかもしれません。上五「セーターや」という詠嘆と中七下五のフレーズが、がっちりと取り合わせられていて、微動だにしません。
  • セーターなんか着てロックやめたんか

    七瀬ゆきこ

    選者コメント

    夏井いつき

     セーターなんて軟弱なものを着やがって。お前は、ロッカーとして生きるのではなかったのか。「ロックやめたんか」という台詞を激しく叩きつけるのか、淋しく呟くのか。その読みの幅も、この句も味わいです。
  • セーターに文字Zだか2だか乙

    大黒とむとむ

    選者コメント

    夏井いつき

     セーターに編み込まれた文字の句はよく目にしますが、「Zだか2だか乙」があまりにもリアル。技術は未熟でも、愛を込めて一生懸命に編んだのだよと思いつつも、この三択どれだろう? と想像するだけで愉快が尽きません。

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