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中級者以上結果発表

2024年2月20日週の兼題

【曜日ごとに結果を公開中】

【類想】

選者コメント

夏井いつき

◆季語「囀」の基本情報

 なぜ「囀」が春の季語になっているのか。それは、鳥たちの求愛の鳴き声だからです。この基本中の基本情報を確認しないまま、作句を始めている人が一定数いるようです。

 「雛の囀」や「餌を求めての囀」などは、季語「囀」とは意味が違うと考えるべきですし、ましてや女性や子供のお喋り、何かの着信音や信号の音を「囀」のようだと比喩するのは、季語としての「囀」ではありません。

 少し厳しい言い方をしますと、上記のような下調べすらしない人は、まずは初級へ戻ることをおススメします。


◆気になった点を幾つか。

 ・季語の送り仮名が「囀ずり」「囀ずる」になっている句が、ちらほらありました。ご自分の投句を確認してみましょう。


 ・上五「囀に」とした句が相当数ありました。ここは「囀や」と詠嘆すべきではないかと思われるケースがほとんど。上五の助詞「に」は散文的になりがちな使い方でもありますので、確かな意図をもって「に」を選んでいるのか否か、自問自答みましょう。


 ・「囀」が、鳥のことなのか人のことなのか曖昧な句もそこそこありました。好意的に、鳥のさえずりであると読もうと心がけはしましたが、自句にそのような曖昧さがないかどうか、客観的に振り返ってみましょう。


◆【類想パターン】

 (囀に対する感情 イメージ)

 ・ 癒される

 ・ 自分へのエールのよう 

 ・ 気分が晴れやか 心が澄む

 ・ 光 きらきら 明るさ 


 ・ 時には囀が鬱陶しい 嫌だ

 ・ (囀は楽しそうなのに)自分は独り


 (囀を聞きながら)

 ・ うたたね 目覚める

 ・ 歩く 

 ・ 体操 ヨガ 太極拳 など

 ・ 囀に負けないくらいのお喋り

 ・ 楽器を演奏する 歌う

 ・ 囀を真似てみる


 (囀に気づいて)

 ・ 仕事の手をとめる

 ・ 足をとめる


 ・ スマホで検索

 ・ 双眼鏡で見る 写真を撮る

 ・ 姿を探すが見えない


 (囀の季節は)

 ・ 恋

 ・ 出会いと別れ

 ・ 卒業 入学 退社 入社 転職


 (囀っている様子 囀そのものの形容)

 ・ 枝から枝へ

 ・ 空高く舞い上がりながら

 ・ 二羽が揃って

 ・ 小首をかしげる


 ・ まだ下手 拙い

 ・ 楽器 音符 曲に例える

 ・ (囀が)〇〇を真似ている

 ・ 囀に囀が応える

 ・ 音が外れている鳥がいる

 ・ 囀は音符 囀は光の礫


 (場所)

 ・ 窓の外(鳥の声で目覚める) ガラス越し

 ・ 電線

 ・ 森 公園

 ・ 墓 火葬場


 (その他)

 ・ 囀に猫が反応

 ・ 何かの音に囀がかき消される

    → 爆音 重機の音 雨音 など

 ・ 〇〇に囀が届いてほしい 届けたい

    → 病床の人 故人 など

 ・ 吉報が届く

    → 孫が産まれた 結婚の報せ 合格通知 など

 ・ 大樹で囀る

    →「囀りをこぼさじと抱く大樹かな  星野立子」

 ・ 囀に樹が膨らむよう

 ・ 眼下に囀る 囀りの眼下に〇〇

 ・ 右に左に囀 四方に囀 囀に囲まれる


 いつものことではありますが、類想の中には、季語から発想する類想と、季語とは関係なくよくでてくる類想フレーズがあります。ご自分の中に類想データを蓄積していきましょう。


※今回の兼題「囀」中級者以上投句欄へのご投句は、投句数4011句、投句人数1658人となりました。以下、類想句の一覧です。


類想一覧(選外)

  • 囀りのシャワーくぐつて登校子

    ふあんた

  • 囀や陽光のなかで弾け飛ぶ

    マタネ

  • キビタキの高き囀り天を裂く

    カリヨン

  • 囀を猫が聞き耳立て狙う

    れんげ畑

  • 家こもり囀埋める雨の音

    一型

  • 囀や舞う黄帽目で追う老婆

    山海動静

  • 常宿で囀り聞いて起きる朝

    佐藤 聡

  • 囀に曳かれ庭まで半歩ずつ

    一の橋 世京

  • 囀りを交わす番や相思鳥

    はまゆう

  • 囀りのいそがしくなる朝餉かな

    わおち

  • 囀に雨の上がるを知りにけり

    鈴木古舟

  • 囀を目で追う夫婦手を重ね

    岡塚 敬芳

  • 天国に届けと祈る囀りや

    三天朱印

  • 囀や小学校の正門に

    寺嶋杳杳

  • 囀りに心あそばせ独り酌む

    徳翁

  • 響きあう園児の声と囀と

    田中ようちゃん

  • 囀りの今日はなぐさめ通夜の朝

    みしまちづる

  • ガザ地区に囀り聞くはほど遠く

    早坂 一周

  • 囀やきらきら変わる万華鏡

    森 佳月

  • 囀りの止みて静寂に朝日満つ

    田中一升

  • 玉砂利のしずか囀だけの今

    鳥羽南良

  • 囀や村に花嫁来る噂

    越前俊水

  • 鼻歌の伴奏たる囀りなり

    華風ルナ

  • 囀りや目玉ふたつのハムエッグ

    金子泰山

  • 囀やファーストシューズで跳ねる吾子

    玖良咲

  • これだつて囀りだよと鴉鳴く

    横山清華

  • 囀のあしたに届く“孫生まる”

    コーノ凡士

  • 囀りに続く囀りひもすがら

    北川楠山

  • 囀の励まし止まぬ里帰り

    雅屋少将

  • 囀に心ほぐされ寝落ちする

    道楽人生

  • 囀ずらぬままに飛び去る小鳥かな

    富良里多比人

  • 囀りの天上にある散歩道

    吾亦紅

  • 五線譜を埋めるがごとく囀れり

    朝宮馨

  • 囀に水面は踊り影跳ねる

    青い小鳥

  • 屋上で囀聞いてゐるひとり

    西村柚紀

  • 囀や我が道を行く次男坊

    杜野 ほたる

  • 囀や姿見たくてハイキング

    橋野虎空

  • 囀りの俄かに近く森の道

    与志朗

  • 仰ぎ見て囀るオスへ知らん顔

    六山

  • 戦地でも我が窓辺でも囀れり

    日暮れひぐらし

  • 群雀囀りランドセル踊る

    飯沼比呂倫

  • 囀りの真ん中に居り猫二匹

    ひろ志

  • 朝五時の囀りに太極拳を

    哲山(山田哲也)

  • 囀りを真下に聞くや大鳥居

    一雁低空

  • 囀や杜の社に木霊する

    黒田 修一

  • 囀りや移りて移る高き樹々

    増田楽子

  • 囀に慰みを乞うこの異動

    ちゃるこ

  • 籠の中テレビに応え囀れり

    美年

  • 囀に猫も加わるソプラノで

    Karino

  • イヤホン取る笹さわさわと囀りと

    清水千種

  • 囀や木々に空に渡り合い

    kikuti-aya

  • 囀りて盛りを散らし枝渡る

    OH典子

  • 囀りの主を探すも姿無し

    おやじ

  • 囀や梢の先の空深し

    緩木あんず

  • 囀に背中押されてひとり旅

    からすちゃん

  • 囀りに導かれつつ田舎道

    くろべぇ

  • 囀りや窓がへだての老夫婦

    やっちゃんち

  • 囀や犬も鳴くなく朝餉まえ

    丸 なちか

  • 囀の大樹ゆたかに揺れてをり

    ぎんやんま

  • 囀りの方へ歩を変う散歩道

    熊本与志朗

  • 今年また囀ききて命知る

    中村 自在

  • 囀や声真似通る童子かな

    やまだ童子

  • 囀も飛び乗る通勤電車かな

    閏ゆうすみ

  • 囀りの梢も風にそよぎをり

    佐藤藍魚

  • 囀の弾けて揺れる小枝かな

    河野灰土

  • さえずりや姿見えぬが木々渡る

    中村笙平

  • 囀に冷やかされをりミスショット

    田中 葵

  • ふられてもまたふられても囀らん

    佐藤綉綉

  • 近づけば薮の囀静まれり

    白薔薇

  • 富士の裾囀る鳥と笑う遊び子

    咲夢

  • 拝殿に囀りこぼれ宮参り

    櫂野雫

  • 車椅子囀る方へ指を差す

    鮫島しょうん

  • 囀りに対峙してゐる風見鶏

    余田酒梨

  • 囀や言ひ訳続く遅刻の子

    山崎 かよ

  • 囀りやママチャリの列公園へ

    洋々

  • 囀るは愛と同義語うららなり

  • 囀よキャンパスの恋爛漫よ

  • 耳元の囀り無視や同居猫

    春野ももみ

  • 囀止まぬ公園や孫告る

    佐藤孤高

  • 囀と歩幅合わせる靴音と

    珈藤絵本

  • 囀りの果てに真綿のやうな雲

    佐藤 藍魚

  • 囀の満ちて溢れし谷歩む

    はなだんな

  • 囀ずりを夢でききしか夜明けまえ

    コイケキクエ

  • 囀の降りそそぐ日の目玉焼き

    遥風

  • 囀や透きとほりをる木々の声

    関津祐花

  • 囀や君のためにと紅を引く

    新山晶花

  • 囀に視線上げれば青に点

    どらまにあ

  • 囀りの洗礼受けて会社行く

    一純。

  • 囀や今日が最後の通学路

    新井ハニワ

  • 囀りや全ての事に歓喜せん

    テレシア

  • 囀の音色様々公園樹

    高見艀舟

  • 開け放て囀の窓朝の窓

    もりたきみ

  • 囀やすぐに見つかるかくれんぼ

    えいぎょ

  • 囀と母の応援バット振る

    森の真林

  • 囀や探り探りの反抗期

    陽乃姫

  • 囀りてパートナー待つ籠の鳥

    ぽんたちん

  • 囀るは巨木の上の上の辺

    尚茶

  • 囀やレンズの中の恋模様

    むねあかどり

  • 囀や朝の喧噪後の目覚め

    荒木響

  • 囀や調子はずれてゐる一羽

    佐々木一栗

  • 囀や体慣らしに高尾山

    松山茜柑

  • 吾子の目覚めと共に消える囀り

    茶太郎

  • 囀りに誘われ遍路廻り道

    花空木

  • 雨上がり窓越しに囀の山

    山下とらぺけ

  • 囀りに覚めて句作の一句二句

    畑中幸利

  • 限界集落囀清々し

    田村 宗貞

  • 囀は生くる悲鳴か哀哭か

    めでかや

  • 囀に歩行瞑想とまりけり

    ぉ村椅子(志村肇)

  • 囀も招く野外音楽会

    春よ来い

  • 囀の主を探せど青空へ

    鷹見沢 幸

  • 囀や呼ばれし如く振り向きぬ

    ゆかりん

  • 囀ればホームの庭に恋の花

    せりよさ

  • 囀やベビーカーも車椅子も

    白石 美月

  • 粥が前微か囀窓遠く

    江ノ島泰成

  • ピカピカのランドセル達と囀

    モリコリゴリ

  • 睦まじき囀を聴く吾ひとり

    ひと粒の種

  • 囀りや二羽の鋭声の高々と

    円美々

  • 群れの囀り漣に日が遊ぶ

    久下 真一

  • 囀やひとり腰掛け塩むすび

    わたり 和

  • 囀りの行方探しつ笑み交わし

    奏月 葉音

  • 囀や言葉少なに反抗期

    角田 球

  • 独り居の小さき囀今朝の窓

    平林政子

  • 囀に見上ぐる猫の油断なき

    畑山六十二

  • 囀りのふいの姿や愛のうた

    桔梗

  • 囀りか笹の葉風音に飛びを待つ

    しいなはづき

  • 頂きを二つ高々囀りぬ

    いなほせどり

  • さえずりや嗚呼生きてゐるこの刹那

    岡井風紋

  • 寝坊助に囀るiPhoneはや二羽目

    だてまき

  • 囀りや流るる雲に語りかけ

    ニッシャン

  • 囀やベンチの二人おべんとう

    ののさわ 麗ら

  • 牛小屋の藪に囀り見えもせず

    竹令呑

  • 新居にて囀りのなか投句する

    恵翠善

  • 囀やピアニッシモから始まりぬ

    風間 燈華

  • ベランダの囀りや遺影の父よ

    柴桜子

  • 囀りに目覚めて宿の朝湯なり

    月影 重郎

  • 囀りや一服できる茶屋みえて

    かねつき走流

  • 囀りや菩提樹揺らす朝まだき

    はれみちる

  • 囀や旅立ちの日の応援歌

    高橋美譜

  • 群はなれ空で囀じゃれし二羽

    原貼女

  • 囀見上ぐまだ殺るのか老描

    あが野みなも

  • 囀りや静かな調べ誘う夢

    橘 春香子

  • 囀りは一人居従妹励ますや

    りんごのほっぺ

  • 赤子の寝息コーヒーと囀と

    吉 勇之助

  • 囀の木々を震はせ膨らませ

    伏見丹耶

  • 鳥の声いや子が笑う囀りか

    増本空ふね

  • 蒼天に囀る光人は地に

    喜田紫雲

  • 囀の高みかさねて飛行機雲

    佐藤 位相朗

  • 囀に口笛応戦力負け

    玉川 徳兵衛

  • 囀りに負けずに告るプロポーズ

    深澤 健聖

次回の兼題も
皆さまふるって投句してください。
お待ちしています!

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