類想一覧(選外)
耳下をふわりと抜けた風光る
剛柔
風光る足湯の足の白さかな
とんぼ
普通の街御神水風光る
百卓deノエル
葉脈の透けて見ゆるや風光る
聞岳
瀬戸内の長き航跡風光る
風花美絵
なぜなぜと問ふ幼子や風光る
谷川ふみ
野良猫の尾の一振に風光る
渡辺香野
田面水燕尾一閃風光る
憶詠
晴天や森羅万象風光る
香西京子
風光る黄色帽子が跳んでゆく
飯塚煮込
初孫に自分見つけし風光る
中嶋奈緒子
校庭の誰もが主役風光る
辻本四季鳥
風光る宝探しの吟行かな
山田 正山
風光る赤ちゃんの髪やわらかく
小島やよひ
風光る日がまた来ると信じてる
美織
青空を銀の機体や風ひかる
巣組 龍虎
校庭は声の坩堝や風光る
志村宗明
ランドセル黄色帽子に風光る
かとしん
制服のズボンダブダブ風光る
蘂六
海切るや引き波白く風光る
中島裕貴
風光る水切り波紋次々と
野平無凸
みどりごのにぎりこぶしにかぜひかる
飛来 英
寝入る子の背なの重さや風光る
儚子
海沿ひを進む列車や風光る
立野音思
風光る散った花びら尚魅する
高梨光陽
牧場を駆ける駿馬や風光る
塩野谷慎吾
風光る御岳白く聳えたり
霧 澄渡
父と子の自転車畦へ風光る
井上 几兆
風光る耕農の父背の老く
守屋 淨久
高く跳ね水切る石や風光る
町神
老夫婦ゆるりの歩み風光る
スマイリーK
補助輪の取れてどや顔風光る
松風花純
紙テープ旅立ちの舶風光る
西風 心鏡
せせらぎや朝日を浴びて風光る
石内宏明
通学路新ヘルメットの風光る
木原和子 ださんさん
風光る島に二つの信号機
本多ポンタ
風光る宙舞うルアー輝きて
和草雪月
錆びついたペダル漕ぎ出し風光る
藤本秋蝶
ゆらゆらと入江の小舟風光る
リカ
黙々と四つ葉探すや風光る
アムゼルえりこ
風光る子らの笑顔も跳ね返る
葉吾人
風光る三三五五の並木道
三天朱印
藍染のブラウスひらり風光る
佐藤香珠
丘陵を駈け抜ける子ら風光る
伊藤 蒼邨
風光るたまの一人に尚行かむ
北爪いく葉
信号機今年も小鳥風光る
村田益次郎
トンネルを抜けて眩しく風光る
玉川 徳兵衛
さざ波や渡る水面に風光る
松本 探句トップ
風光る一年生の通学路
あさぬま雅王
出帆の朝の白波風光る
広瀬八重桜
あの山もこの丘も越え風光る
中村 自在
渓流やルアーの先に風光る
イガチョフ良一
風光る補助輪のペタル兄追って
栗田 もとえ
ニューシューズ履いたニューフェース風光る
コピー
奥入瀬の苔むす欄干風光る
中村雪之丞
キャプテンの一打一球風光る
茶
風光るツインテールの登校す
小田嶋隅雀
風光る園庭駆けるカラー帽
松永恕淳
風光る未来を夢見深呼吸
だけわらび
風光るハープ奏でる指先に
片平仙花
旅先の朝の一歩や風光る
長谷川加尾
風光る紙飛行機の急旋回
越前俊水
風光る友の術後の経過良し
中村あつこ
立ち漕ぎの蹠のペダル風光る
家古谷 硯翠
新品の靴紐きりり風光る
からすちゃん
人々(ひと)の輪の大屋根リング風光る
西田武
日光にさざめく湖面風光る
かぬまっこ木ノ芽
不揃いの登校の列や風光る
橘 春香子
風光る集団登校のランドセル
スズランチイ子
風光る旅立つ友とかくれんぼ
桃姫
寝そべれば嗚呼風光る良い空気
畑 けん
風光る新色リップを選ぶ午後
春野たんぽぽ
今度ねと君帰る時風光る
山本葉舟
風光る黄色い帽子一列に
小柳ジョージ
風光る孫の得意な二重跳び
ゆぃ
アラフィフの初めの一歩風光る
絵夢衷子
退院のカートは軽し風光る
しみずこころ
陽だまりを押す車椅子風光る
林 和寿
風光る吾子にフォーカス初舞台
北美三風
初ライブ手拍子乗りし風光る
祐 紀杏里
窓開けて朝日差すバス風光る
西町花冠
風光るいつもと違う散歩道
平川一空
登校のペダル逸りて風光る
岡崎佐紅
まさをなる大谷翔平風光る
草野立青
五歩はしるまたはしる孫風光る
テラゴン
背伸びして波眺めゐる風光る
今乃武椪
坂道を登り切ったり風光る
渡辺 小豆
風光る孤独つくらぬ復興に
ふんちん
風光るZ世代の孫スマホ
夜ノ森ムーミン
風光るさらの自転車こぎ出す子
のんのんた
やわらかな花の雫や風光る
一 華楓
竹林を抜けて大空風光る
どいつ薔芭
光る風はらんだシャツ着る月曜日
マーサ
朝練の初々し声風光る
雅蔵
ハイヒール履いてランチへ風光る
菅原ゆう
風光る沖ゆく船の小ささよ
kikuti-aya
紅髪の青年巣立ち風光る
とき
畦道や命の声に風光る
星夢 光風
さざ波を湛へてダム湖風光る
海猫
五十路にもTomorrowあるわ風光る
おおきどくん
木漏れ日の水面に揺るる風光る
おんあいす
新任の教師の君や風光る
悪七兵衛
一万歩今日は超えてる風光る
うさぎ柚和
下ろしたての靴フィットし風光る
柴桜子
ひたすらに飛行機雲や風光る
小澤翔明
風光る大縄跳びの子ら高く
新香
ひさかたの硅砂の浜よ風光る
反芻医 時光
大谷の犬はデコピン風光る
大野美波
風光る瀬戸の島々一望す
斉藤百女
空へ刺すピースサインへ風光る
瓢箪鮎
風光る前しか見れぬ吊り橋や
橋野こくう
初紅の風光りてや孫娘
一条春枕
「パパ抱っこ」重さ忘れる風光る
はるく
風光る自問自答の学び舎よ
柳浦総師
風光る羽ばたく夢よ咲く花よ
花菜瑞香
風光る黒、茶、ピンクのランドセル
千代 之人
風光る友らと伊豆へ記念旅
武蔵野青空
ムスリムの祈る背中に風光る
メディックス千里
田舎とは堆肥の匂い風光る
山香ばし
髪切りし襟足撫でて風光る
みゆむうしば
風光る丘野を駆くる茶目駿馬
弥勒夕陽
風光る駿馬の駆ける土埃
松元転石
風光る背伸びをする子我超える
あらい ゆう
風光る十三センチの靴が鳴る
河上 晃
塩にぎり頬張る木陰風光る
宮坂変哲
馬場歩く馬のたてがみ風光る
平井伸明
風光るプリーツふわり乙女駆け
朋部 琉
初試合初の打席の風光る
高橋 基人
風光る友とスキップランドセル
北斗星
出番待つスタバのコーヒー風光る
ニリンギ
通学のまっさらメット風光る
秋野木吾
職辞せし帰路かぜひかる交差点
堀川ゆうき
廃屋の庭にもソヨと風光る
虎の尾
風光る鉄板ネタの漫才師
土佐俳句人
風光るヒールカツカツ五味坂を
哲山(山田哲也)
おにぎりのごはん一粒風光る
勘太郎
アンパンマンマーチ歌う子風光る
菅野まこ
緑翠に眼染まるや風光る
み藻砂
ほろ酔いの歩みに寄り添い風光る
枡矢書右衛門
風光る長き道のり後れ髪
野田遊水
朝練の厳しき声や風光る
笑詠化
風光る負けない若さ張ってみる
どらまにあ
トランプを肴に酒宴風光る
神谷史記
小岩井の牛の鼻さき風光る
秋田俳楽
はにかみし中三の孫風光る
森の真林
さらさらのブラウスの妻風光る
渥美 謝蕗牛
風光るだんだんパパにそつくりに
満る
風光る妻の日課の一万歩
達坊
揺れ走るランドセルにて風光る
燕山内
孫抱く君のうなじに風光る
嵐菜
電線の音符賑やか風光る
わたり 和
風光るチェックで包む初弁当
みしまちづる
風光る九の段歌い歩く子ら
ichihoppe
次回の兼題も
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選者コメント
夏井いつき選
◆春になると、光の分量が増してくるような気がします。まさに、風が光るという感覚ですね。そういう意味において「明るい」「きらきら」「軽やか」、更に「希望」「未来」「夢」などのキーワードは多かったですね。前者は使いようによっては生きてくる言葉ですが、後者の類いの名詞は句意が抽象的になりがちです。俳句に使うには、難易度がかなり高い言葉だと考えてよいでしょう。
◆更に、春の「風光る」この時期は、人生の「旅立ちの季節」ですので、「卒業」「入学」「進学」「就職」などの句材も非常に多かったですね。この発想の繋がりで、「ランドセル」「通学の子」「黄色の帽子」「はしゃぎ声」であったり、「就活」「新任(の〇〇)」「転職」「退職」「新しいスーツ(靴、バッグ)」などのワードも目に付きました。
◆光景として多かったのは、「沖をゆく船」「白帆」です。まさに風が帆をはためかせる時に、風は光りますものね。更に、「ゆらぐ水面」「さざ波」などの水辺、高いところから見下ろす「街」や「海」の光景も多かったですね。
◆時事ネタとしては、「関西万博」「大屋根リング」「ブルーインパルス」なども見られました。まさに「風光る」光景ですね。ただ、どれも音数の多い言葉なので、十七音に巧く落とし込むのは、難しかったようです。
◆一つ気になったのは、「黄昏」「夕」「夜」の光景を描きつつ、「風光る」という季語を使っている句が散見したことです。「風光る」という季語の本意からすれば、ささやかな違和感を持ちました。「風光る」は、春の気持ちよい晴の日に出会える季語だと認識しておきましょう。
◆毎回お伝えすることではありますが、類想句には、その回の兼題である季語ならではのものもあれば、どんな季語でも必ずといってよいほど出てくる類想もあります。例えば、「村に一つの信号機」「今日も歩けた一万歩」のようなフレーズは、様々な季語と取り合わせても、それなりの一句にはなります。
たった十七音しかない俳句にとって、オリジナリティとリアリティは生命線とでもいうできもの。同じ発想や句材でも、小さな工夫によって、生き返ることは多々あります。それらのヒントは、佳作・秀作・特選に選ばれている作品の中にあります。
自句の評価のみに一喜一憂せず、人の作品から多くのことを学んでいただけたらと思います。
※今回の兼題「風光る」中級者以上投句欄へのご投句は、投句数4771句、投句人数1837人となりました。以下、類想句の一覧です。