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中級者以上結果発表

2025年3月20日週の兼題

風光る

【曜日ごとに結果を公開中】

【類想】

選者コメント

夏井いつき

◆春になると、光の分量が増してくるような気がします。まさに、風が光るという感覚ですね。そういう意味において「明るい」「きらきら」「軽やか」、更に「希望」「未来」「夢」などのキーワードは多かったですね。前者は使いようによっては生きてくる言葉ですが、後者の類いの名詞は句意が抽象的になりがちです。俳句に使うには、難易度がかなり高い言葉だと考えてよいでしょう。


◆更に、春の「風光る」この時期は、人生の「旅立ちの季節」ですので、「卒業」「入学」「進学」「就職」などの句材も非常に多かったですね。この発想の繋がりで、「ランドセル」「通学の子」「黄色の帽子」「はしゃぎ声」であったり、「就活」「新任(の〇〇)」「転職」「退職」「新しいスーツ(靴、バッグ)」などのワードも目に付きました。


◆光景として多かったのは、「沖をゆく船」「白帆」です。まさに風が帆をはためかせる時に、風は光りますものね。更に、「ゆらぐ水面」「さざ波」などの水辺、高いところから見下ろす「街」や「海」の光景も多かったですね。


◆時事ネタとしては、「関西万博」「大屋根リング」「ブルーインパルス」なども見られました。まさに「風光る」光景ですね。ただ、どれも音数の多い言葉なので、十七音に巧く落とし込むのは、難しかったようです。


◆一つ気になったのは、「黄昏」「夕」「夜」の光景を描きつつ、「風光る」という季語を使っている句が散見したことです。「風光る」という季語の本意からすれば、ささやかな違和感を持ちました。「風光る」は、春の気持ちよい晴の日に出会える季語だと認識しておきましょう。


◆毎回お伝えすることではありますが、類想句には、その回の兼題である季語ならではのものもあれば、どんな季語でも必ずといってよいほど出てくる類想もあります。例えば、「村に一つの信号機」「今日も歩けた一万歩」のようなフレーズは、様々な季語と取り合わせても、それなりの一句にはなります。

 たった十七音しかない俳句にとって、オリジナリティとリアリティは生命線とでもいうできもの。同じ発想や句材でも、小さな工夫によって、生き返ることは多々あります。それらのヒントは、佳作・秀作・特選に選ばれている作品の中にあります。

 自句の評価のみに一喜一憂せず、人の作品から多くのことを学んでいただけたらと思います。



※今回の兼題「風光る」中級者以上投句欄へのご投句は、投句数4771句、投句人数1837人となりました。以下、類想句の一覧です。


類想一覧(選外)

  • 耳下をふわりと抜けた風光る

    剛柔

  • 風光る足湯の足の白さかな

    とんぼ

  • 普通の街御神水風光る

    百卓deノエル

  • 葉脈の透けて見ゆるや風光る

    聞岳

  • 瀬戸内の長き航跡風光る

    風花美絵

  • なぜなぜと問ふ幼子や風光る

    谷川ふみ

  • 野良猫の尾の一振に風光る

    渡辺香野

  • 田面水燕尾一閃風光る

    憶詠

  • 晴天や森羅万象風光る

    香西京子

  • 風光る黄色帽子が跳んでゆく

    飯塚煮込

  • 初孫に自分見つけし風光る

    中嶋奈緒子

  • 校庭の誰もが主役風光る

    辻本四季鳥

  • 風光る宝探しの吟行かな

    山田 正山

  • 風光る赤ちゃんの髪やわらかく

    小島やよひ

  • 風光る日がまた来ると信じてる

    美織

  • 青空を銀の機体や風ひかる

    巣組 龍虎

  • 校庭は声の坩堝や風光る

    志村宗明

  • ランドセル黄色帽子に風光る

    かとしん

  • 制服のズボンダブダブ風光る

    蘂六

  • 海切るや引き波白く風光る

    中島裕貴

  • 風光る水切り波紋次々と

    野平無凸

  • みどりごのにぎりこぶしにかぜひかる

    飛来 英

  • 寝入る子の背なの重さや風光る

    儚子

  • 海沿ひを進む列車や風光る

    立野音思

  • 風光る散った花びら尚魅する

    高梨光陽

  • 牧場を駆ける駿馬や風光る

    塩野谷慎吾

  • 風光る御岳白く聳えたり

    霧 澄渡

  • 父と子の自転車畦へ風光る

    井上 几兆

  • 風光る耕農の父背の老く

    守屋 淨久

  • 高く跳ね水切る石や風光る

    町神

  • 老夫婦ゆるりの歩み風光る

    スマイリーK

  • 補助輪の取れてどや顔風光る

    松風花純

  • 紙テープ旅立ちの舶風光る

    西風 心鏡

  • せせらぎや朝日を浴びて風光る

    石内宏明

  • 通学路新ヘルメットの風光る

    木原和子 ださんさん

  • 風光る島に二つの信号機

    本多ポンタ

  • 風光る宙舞うルアー輝きて

    和草雪月

  • 錆びついたペダル漕ぎ出し風光る

    藤本秋蝶

  • ゆらゆらと入江の小舟風光る

    リカ

  • 黙々と四つ葉探すや風光る

    アムゼルえりこ

  • 風光る子らの笑顔も跳ね返る

    葉吾人

  • 風光る三三五五の並木道

    三天朱印

  • 藍染のブラウスひらり風光る

    佐藤香珠

  • 丘陵を駈け抜ける子ら風光る

    伊藤 蒼邨

  • 風光るたまの一人に尚行かむ

    北爪いく葉

  • 信号機今年も小鳥風光る

    村田益次郎

  • トンネルを抜けて眩しく風光る

    玉川 徳兵衛

  • さざ波や渡る水面に風光る

    松本 探句トップ

  • 風光る一年生の通学路

    あさぬま雅王

  • 出帆の朝の白波風光る

    広瀬八重桜

  • あの山もこの丘も越え風光る

    中村 自在

  • 渓流やルアーの先に風光る

    イガチョフ良一

  • 風光る補助輪のペタル兄追って

    栗田 もとえ

  • ニューシューズ履いたニューフェース風光る

    コピー

  • 奥入瀬の苔むす欄干風光る

    中村雪之丞

  • キャプテンの一打一球風光る

  • 風光るツインテールの登校す

    小田嶋隅雀

  • 風光る園庭駆けるカラー帽

    松永恕淳

  • 風光る未来を夢見深呼吸

    だけわらび

  • 風光るハープ奏でる指先に

    片平仙花

  • 旅先の朝の一歩や風光る

    長谷川加尾

  • 風光る紙飛行機の急旋回

    越前俊水

  • 風光る友の術後の経過良し

    中村あつこ

  • 立ち漕ぎの蹠のペダル風光る

    家古谷 硯翠

  • 新品の靴紐きりり風光る

    からすちゃん

  • 人々(ひと)の輪の大屋根リング風光る

    西田武

  • 日光にさざめく湖面風光る

    かぬまっこ木ノ芽

  • 不揃いの登校の列や風光る

    橘 春香子

  • 風光る集団登校のランドセル

    スズランチイ子

  • 風光る旅立つ友とかくれんぼ

    桃姫

  • 寝そべれば嗚呼風光る良い空気

    畑 けん

  • 風光る新色リップを選ぶ午後

    春野たんぽぽ

  • 今度ねと君帰る時風光る

    山本葉舟

  • 風光る黄色い帽子一列に

    小柳ジョージ

  • 風光る孫の得意な二重跳び

    ゆぃ

  • アラフィフの初めの一歩風光る

    絵夢衷子

  • 退院のカートは軽し風光る

    しみずこころ

  • 陽だまりを押す車椅子風光る

    林 和寿

  • 風光る吾子にフォーカス初舞台

    北美三風

  • 初ライブ手拍子乗りし風光る

    祐 紀杏里

  • 窓開けて朝日差すバス風光る

    西町花冠

  • 風光るいつもと違う散歩道

    平川一空

  • 登校のペダル逸りて風光る

    岡崎佐紅

  • まさをなる大谷翔平風光る

    草野立青

  • 五歩はしるまたはしる孫風光る

    テラゴン

  • 背伸びして波眺めゐる風光る

    今乃武椪

  • 坂道を登り切ったり風光る

    渡辺 小豆

  • 風光る孤独つくらぬ復興に

    ふんちん

  • 風光るZ世代の孫スマホ

    夜ノ森ムーミン

  • 風光るさらの自転車こぎ出す子

    のんのんた

  • やわらかな花の雫や風光る

    一 華楓

  • 竹林を抜けて大空風光る

    どいつ薔芭

  • 光る風はらんだシャツ着る月曜日

    マーサ

  • 朝練の初々し声風光る

    雅蔵

  • ハイヒール履いてランチへ風光る

    菅原ゆう

  • 風光る沖ゆく船の小ささよ

    kikuti-aya

  • 紅髪の青年巣立ち風光る

    とき

  • 畦道や命の声に風光る

    星夢 光風

  • さざ波を湛へてダム湖風光る

    海猫

  • 五十路にもTomorrowあるわ風光る

    おおきどくん

  • 木漏れ日の水面に揺るる風光る

    おんあいす

  • 新任の教師の君や風光る

    悪七兵衛

  • 一万歩今日は超えてる風光る

    うさぎ柚和

  • 下ろしたての靴フィットし風光る

    柴桜子

  • ひたすらに飛行機雲や風光る

    小澤翔明

  • 風光る大縄跳びの子ら高く

    新香

  • ひさかたの硅砂の浜よ風光る

    反芻医 時光

  • 大谷の犬はデコピン風光る

    大野美波

  • 風光る瀬戸の島々一望す

    斉藤百女

  • 空へ刺すピースサインへ風光る

    瓢箪鮎

  • 風光る前しか見れぬ吊り橋や

    橋野こくう

  • 初紅の風光りてや孫娘

    一条春枕

  • 「パパ抱っこ」重さ忘れる風光る

    はるく

  • 風光る自問自答の学び舎よ

    柳浦総師

  • 風光る羽ばたく夢よ咲く花よ

    花菜瑞香

  • 風光る黒、茶、ピンクのランドセル

    千代 之人

  • 風光る友らと伊豆へ記念旅

    武蔵野青空

  • ムスリムの祈る背中に風光る

    メディックス千里

  • 田舎とは堆肥の匂い風光る

    山香ばし

  • 髪切りし襟足撫でて風光る

    みゆむうしば

  • 風光る丘野を駆くる茶目駿馬

    弥勒夕陽

  • 風光る駿馬の駆ける土埃

    松元転石

  • 風光る背伸びをする子我超える

    あらい ゆう

  • 風光る十三センチの靴が鳴る

    河上 晃

  • 塩にぎり頬張る木陰風光る

    宮坂変哲

  • 馬場歩く馬のたてがみ風光る

    平井伸明

  • 風光るプリーツふわり乙女駆け

    朋部 琉

  • 初試合初の打席の風光る

    高橋 基人

  • 風光る友とスキップランドセル

    北斗星

  • 出番待つスタバのコーヒー風光る

    ニリンギ

  • 通学のまっさらメット風光る

    秋野木吾

  • 職辞せし帰路かぜひかる交差点

    堀川ゆうき

  • 廃屋の庭にもソヨと風光る

    虎の尾

  • 風光る鉄板ネタの漫才師

    土佐俳句人

  • 風光るヒールカツカツ五味坂を

    哲山(山田哲也)

  • おにぎりのごはん一粒風光る

    勘太郎

  • アンパンマンマーチ歌う子風光る

    菅野まこ

  • 緑翠に眼染まるや風光る

    み藻砂

  • ほろ酔いの歩みに寄り添い風光る

    枡矢書右衛門

  • 風光る長き道のり後れ髪

    野田遊水

  • 朝練の厳しき声や風光る

    笑詠化

  • 風光る負けない若さ張ってみる

    どらまにあ

  • トランプを肴に酒宴風光る

    神谷史記

  • 小岩井の牛の鼻さき風光る

    秋田俳楽

  • はにかみし中三の孫風光る

    森の真林

  • さらさらのブラウスの妻風光る

    渥美 謝蕗牛

  • 風光るだんだんパパにそつくりに

    満る

  • 風光る妻の日課の一万歩

    達坊

  • 揺れ走るランドセルにて風光る

    燕山内

  • 孫抱く君のうなじに風光る

    嵐菜

  • 電線の音符賑やか風光る

    わたり 和

  • 風光るチェックで包む初弁当

    みしまちづる

  • 風光る九の段歌い歩く子ら

    ichihoppe

次回の兼題も
皆さまふるって投句してください。
お待ちしています!

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