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中級者以上結果発表

2025年6月20日週の兼題

夜の秋

【曜日ごとに結果を公開中】

【類想】

選者コメント

夏井いつき

◆兼題「夜の秋」は、比較的若い季語です。

元々は、「秋の夜」と同じ意味の季語でしたが、近代以降になって「秋の夜の気配が漂いはじめる晩夏の夜」という意味で独立しました。まずは、この季語の本意をしっかり押さえていただく必要があります。

 今回の投句の中には、「(夜の秋なのに)まだ暑い」という句意のものが散見されました。が、「まだ暑い」という段階では、「夜の秋」ではないということですよね。


◆更に、季語を「夜の秋」ではなく、むしろ「秋の夜」としたほうが良いのではないか? という句もあり、なかなかに悩ましい選句となりました。選ばれなかった自句を、皆さん是非検証してみて下さい。


◆類想という意味では、「夜の秋にはこんなことをする」という括りでみれば、

 ・ 読書……ミステリーやら純文学やら

 ・ 子供に絵本の読み聞かせ

 ・ 音楽を聴く 楽器を弾く

 ・ 手紙を書く LINEやメールを送る → 返信がこない

 ・ パズルなどを解く

 ・ 星を見る 星座を探す

 ・ 散歩する

 ・ 酒を飲む (あたたかな)紅茶やコーヒーを飲む

 ・ 煙草を吸う

 ・ ゆったり風呂につかる 旅の露天風呂

 ・ 窓を開ける

 ・ 泣く 

 ・ 故人を偲ぶ 遺影

様々ありましたが、入選句の中には、これらの類想の範疇に入るものも多くあります。それらの句には、「読書」や「音楽」ならば具体的な書名や曲名を入れたり、どんな仕様の本であるのか、どんな楽器であるのか等、ささやかなオリジナリティを入れる工夫が見てとれます。他の類想例でも、会話の形にしてみる、数詞で映像を作る等、小さなアイデアが入っていますので、是非参考にして下さい。


◆ついでといっては何ですが、最近の投句には「大屋根リング」「ミャクミャク」「大谷」がコンスタントに登場するのは、ご愛嬌というやつです。

 

◆また、毎回のことですが、類想句の中には、兼題「夜の秋」に限らない(どんな兼題の季語でもでてくる)ありがちな句意、凡人フレーズがそのまま使われているものもあります。類想句は、参加者みなで共有するデータです。それらの土台を踏まえた上で、小さな工夫を重ねていきましょう。



※今回の兼題「夜の秋」中級者以上投句欄へのご投句は、投句数4407句、投句人数1794人となりました。以下、類想句の一覧です。

類想一覧(選外)

  • 床の間に静寂招きて夜の秋

    宮川武久

  • 死を想い生を想うや夜の秋

    夏草はむ

  • 夜の秋虫の死骸と風の音

    富士桜花

  • バーボンの氷を回す夜の秋

    dragon

  • 友集ひ侃々諤々夜の秋

    田邉真舟

  • ぐい呑みの手触り優さし夜の秋

    増本空ふね

  • 新しいシャンプー香る夜の秋

    なつめモコ

  • 泣きやまぬ揺する浜風夜の秋

    kikuti-aya

  • 夜の秋聞こゆ室外機の静か

    たこ山焼之輔

  • 今日からは寝間着が揃う夜の秋

    平川一空

  • 和かに湯気立つ白湯や夜の秋

    小倉あんこ

  • 変人を恋人と読み夜の秋

    榎美紗

  • ダージリンは二杯目夜の秋

    山本マユミ

  • 窓を開け息深く吐き夜の秋

    山城明子

  • 夜の秋妣の庭下駄のひんやりす

    らん丸

  • 横丁の灯の一つ欠け夜の秋

    仮名鶫

  • 夜の秋眉間の皺のゆるみたる

    木村となえーる

  • 戦後八十安穏辿る夜の秋

    中島諒吾

  • 夜の秋何かを羽織る刹那あり

    月夜案山子

  • 数Ⅰの点数睨む夜の秋

    くみくまマフラー

  • 歳とらぬ遺影の夫や夜の秋

    ななかまど

  • 失ひて気付くばかりや夜の秋

    鶴見ツル

  • 子の寝息満足気なり夜の秋

    かなの りえこ

  • 湯殿の戸開ける衿元夜の秋

    ほのぼぉの (蚊帳のなか)

  • ほろ酔いもすぐに覚めやる夜の秋

    空流峰山

  • 終電を降りて一人の夜の秋

    甘泉

  • 傍らのひとの恋しく夜の秋

    北乃薫衣草

  • ころあひの風となりけり夜の秋

    かん かんし

  • 夜の秋カランコロンと下駄の音

    月城龍二

  • 夫と子のゐてもひとりや夜の秋

    ことまと

  • 寛解とや深呼吸する夜の秋

    麗し

  • 雨にほふ夜の秋駅の灯(ひ)も消ゆ

    夏雨ちや

  • 篠笛の音色澄みけり夜の秋

    五島 潮

  • 夜の秋術後の母の寝息聴く

    みつき 夏

  • 宿題は親子合作夜の秋

    一本杉 

  • 夜の秋つかむカーテンふと褪せて

    鹿野川小舟

  • 窓少し開けて夜の秋を覗く

    河野灰土

  • 湿布する母の小さき背夜の秋

    水野 寿香

  • 夜の秋積み上げた本捗りて

    藤村 一寿

  • 湯上がりのほつれ髪にも夜の秋

    柊瞳子

  • 日本酒の頬を冷まして夜の秋

    中川青嵐

  • 風入れて上衣はおりし夜の秋

    白石彌生

  • 角刈りも夢の跡かな夜の秋

    片山蒼心

  • 夜の秋川面を走る風の息

    竹の子

  • 夜の秋這い這い稽古力尽き

    糺 森子

  • 寝返りが少し減ったよ夜の秋

    清鱒

  • 『虫の音』を三味で爪弾く夜の秋

    かんこ鳥

  • スマホ置き文庫を開く夜の秋

    羽馬愚朗

  • 謎解きの最後のページ夜の秋

    スモールちもこ

  • 恋破れやけ酒進む夜の秋

    原島ちび助

  • 冷よりもぬる燗所望夜の秋

    卓司

  • 夜の秋夫の布団によせて敷き

    彩 詩充

  • 子ら帰り気だるき余韻夜の秋

    村上継鳥

  • 夜の秋背を向けて人愛しませ

    片平仙花

  • ヘアダイのやめ時思案夜の秋

    案浦笑里

  • 弾みたる隣家の声や夜の秋

    冬乃子

  • パレオ干しパックに潤む夜の秋

    有骸蟲蜴

  • 夜の秋お隣お風呂沸いた声

    黙々笛

  • 焼鳥の匂ふ路地裏夜の秋

    竜胆

  • 君宛ての書簡見つめ入る夜の秋

    風のピアノ

  • ふと我に返る一瞬夜の秋

    平野恵風

  • 読経の静に沈む夜の秋

    立歩

  • 家々の夕餉の香り夜の秋

  • 夜の秋や母の骨折見舞ふ道

    風虎

  • 一言も口きかずして夜の秋

    伊藤勘太郎

  • 日中の火照り冷まして夜の秋

    おおにしまこと

  • 鳥虫も草木も安堵夜の秋

    日暮ひぐらし

  • 夜の秋や夫に内緒の缶チューハイ

    くつの した子

  • はやコーラ自販で買わぬ夜の秋

    岡崎佐紅

  • うたたねし目覚め無音の夜の秋

    清水千種

  • 窓静か3センチ開け夜の秋

    山海動静

  • 体毛も白くなりしや夜の秋

    木下風民

  • 夜の秋ねこ忍び寄る枕もと

    野田遊水

  • 夜の秋ばあちゃん風呂を炊いている

    とき

  • 夜の秋吾の太腿へ猫の添う

    月見里ふく

  • 娘来る話弾んで夜の秋

    早坂 一周

  • 夜の秋体感ずるくしゃみする

    WEDA ASH

  • 寝静まる遠く電車の夜の秋

    雨水 二三乃

  • ペティキュアの根元剥がれし夜の秋

    緩木あんず

  • 窓開けて続きを読もう夜の秋

    百日紅

  • 夜の秋のしづかに帰る救急車

    大黒とむとむ

  • 死に目には会えず爪切る夜の秋

    山和子

  • 夜の秋電器はオフで手うちわオン

    ゆかりん

  • 夜の秋紫煙がやけに目にしみる

    入口弘徳

  • 父の背や何も語らず夜の秋

    哲山(山田哲也)

  • 夜の秋今日も自分が風になる

    眞さ野

  • 夜の秋宿題よ私を見るな

    岡田道一

  • ヨーキーがグイグイ引っ張る夜の秋

    南全星達

  • 川の水ほのかに香る夜の秋

    あおのめ

  • ここまでと栞を挟む夜の秋

    みやかわけい子

  • 杖つきておもてに出れば夜の秋

    みにとまあいこ

  • 月照らすぼた山の影夜の秋

    ふじかつとび

  • 星捜し煌めきに逢う夜の秋

    田畑せーたん

  • 天の友心でかたる夜の秋

    水野 孝

  • 帰り途頬に感じる夜の秋

    一 華楓

  • 我が家は魚隣家はカレー夜の秋

    道歩

  • 久方の名出てこぬ友夜の秋

    反芻医 時光

  • 明日君に別れを告げる夜の秋

    夏目あかり

  • 重ねても思い薄れし夜の秋

    鈴屋玲瓏

  • お湯に割る酒のゆらぎや夜の秋

    わおち

  • 夜の秋ブックカバーを交換す

    太之方もり子

  • 墨書きの店仕舞いビラ夜の秋

    篠雪

  • 室外機は静か夜の秋を読書

    一山いくら

  • 仲直りの言葉を探す夜の秋

    富田健朗

  • 本屋まで散歩がてらに夜の秋

    悠雨木 はな

  • 夜の秋ぽっかり浮かぶ月がゐて

    中島穂華

  • 独り飲みながながとなる夜の秋

    中村笙平

  • 夜の秋愛しき人の泣き黒子

    林 和寿

  • 夜の秋や絡繰時計あとしじま

    てるきち

  • ベランダでひとりじゃないと夜の秋

    子杜 水琴

  • 月光清かに改む夜の秋の風

    有名人一字違い

  • 長生きは二人がよろし夜の秋

    とも子

  • 散歩する人も増へたり夜の秋

    立野音思

  • 冷凍庫開けるの減った夜の秋

    ひまわり怪獣

  • 風受けて二駅歩く夜の秋

    石神湖畔

  • ひとり居に歌劇視聴す夜の秋

    亀亀子

  • 韓ドラを一気見するか夜の秋

    高岡春雪

  • 燭光のぢりりゆらめく夜の秋

    華胥醒子

  • 菊判の歳時記膝に夜の秋

    杣むぎ

  • ネオン街ネオンが消えて夜の秋

    ミント・スチュワート

  • 外を行く人の声音か夜の秋

    まんはく

  • サイレンがまた遠ざかり夜の秋

    池の端昇雲

  • 1日を労い合えり夜の秋

    卯の花雅子

  • デカフェなる一杯の湯気夜の秋

    月見柑

  • 夜の秋赤ちょうちんの灯も消えて

    神谷史記

  • 見つからぬ老眼鏡と夜の秋

    古都 鈴

  • ひととせを問わず語りや夜の秋

    サツキトラヲ

  • 夜の秋洗い晒しに日の匂い

    いとう香り子

  • 夜の秋結婚四十年のぬる湯

    時まる

  • 夜の秋ふとんを足でひきよせる

    風花

  • 夜の秋猫の食欲戻りけり

    上村茶娘

  • ピロリンと眠れぬ友か夜の秋

    辻󠄀勢

  • 仕舞い風呂少し湯をたす夜の秋

    眠 睡花

  • 既読無しLINEを閉じて夜の秋

    小薗紀彦

  • まんじゅうの代替わりの味夜の秋

    中嶋奈緒子

  • 夜の秋隣家の風呂の窓のうた

    北爪いく葉

  • 夜の秋君の拙い嘘一つ

    俳句王

  • 籐むしろひと足ごとに夜の秋

    三木青猫

  • 寝返えればシーツひんやり夜の秋

  • バンガロに忍び込むよに夜の秋

    あらかわすすむ

  • かこちつつ厠にかよふ夜の秋

    藤井赤童子

  • 風鈴をしまいこみけり夜の秋

    藤 柳絮

  • 有栖川有栖とトリス夜の秋

    せいち

  • LINE既読スルーいよよ夜の秋

    新山晶花

  • 何気なく閉じたる窓や夜の秋

    増田楽子

  • 夜の秋日記の筆の進むこと

    大空輪夢

  • 対岸のネオン揺るるや夜の秋

    陽光樹

  • 夜の秋やショートホープの煙の輪

    ちやあき

  • 終車灯遠ざかりゆく夜の秋

    杼 けいこ

  • 寝返りて夢のつづきへ夜の秋

    儚子

  • 周波数合はせしラジオ夜の秋

    伊集院紅緒

  • 旅終えて里灯迎える夜の秋

    岡 草紅葉

  • テレビ消し静を楽しむ夜の秋

    空心菜

  • 録り溜めた『鬼滅』一気見夜の秋

    井田みち

  • 夜の秋妻の繰り言生返事

    北斗星

  • マジックナンバー一桁に減り夜の秋

    はなだんな

  • 後ろ髪を引かれてふと夜の秋

    千曜 桜

  • 君が目を合わせなくなる夜の秋

    宇佐美好子

  • 未熟なる果実の六十路夜の秋

    武田豹悟

  • 煮物よし日本酒がよし夜の秋

    松浦 姫りんご

  • もう一杯呑んでもいいよ夜の秋

    スズランチイ子

  • 寂寥の老いた母の背夜の秋

    桃姫

  • 今電話してもいいかな夜の秋

    谷本均

  • 少しだけ道順変へる夜の秋

    天王谷 一

  • ざわめき去り星と露天湯夜の秋

    あらいすみこ

  • 膝枕夢から醒めて夜の秋

    響楽境

  • 前髪を切られベソかく夜の秋

    飯沼比呂倫

  • 夜の秋窓辺の童星を繋ぎ見

    夕凪灯凜

  • 夜の秋また明日ねと閉じる本

    だいやま

  • なんとなくラジオを点ける夜の秋

    ヤヒロ

  • 夜の秋寝間にひとりの静寂かな

    家古谷 硯翠

  • 夜の秋気配も見せぬ季語悲し

    寺木 風宣

  • チリリンが心に沈む夜の秋

    テラゴン

  • 夜の秋出せぬ手紙の消しし跡

    ちょうさん

  • 夜の秋柱時計の低き音

    紅 珊瑚

  • 人去りし浜の潮香に夜の秋

    三村武信

  • もう少し居て欲しくもあり夜の秋

    中村 自在

  • コンサートの余韻にひたる夜の秋

    小泉久美子

  • 夜の秋今日の寝息の深きこと

    小林理真

  • 街灯のぼやけて白し夜の秋

    羅美兎

  • 夜の秋吹けぬ口笛吹いてみる

    みみみ

  • 身ほとりの皆寝静まり夜の秋

    畑中幸利

  • つい団扇つかひて止まる夜の秋

    水木合歓

  • カルピスの味は薄くて夜の秋

    花咲めだ香

  • カウンターテナーの澄めり夜の秋

    ふじこ

  • 待受を替えたくなりし夜の秋

    忠園太冨三

  • 激動の選挙終わりて夜の秋

    田中紺青

  • 夜の秋やがて水洗静まりて

    沖乃しろくも

  • 終電車見送りてをり夜の秋

    まるかじり

  • さらさらと夫の寝息の夜の秋

    稲川ほろろ

  • 残照の温もり嬉し夜の秋

    高旗みつき

  • サンダルに銭湯帰りの夜の秋

    中島満足山

  • 団塊の世代の憂ひ夜の秋

    伊藤 蒼邨

  • 忘れじの言の葉散るや夜の秋

    おおいし 陽葵

  • 靴下の親指の穴夜の秋

    リカ

  • 病室のちいさき母よ夜の秋

    菅原ゆう

  • 夜の秋まくらの熱に顔埋め

    小湊 八雲

  • 夜の秋ふと触れる肌憎からず

    広島あーやあーや

  • ジョッキ置きワイングラスに夜の秋

    ゆきなごむ

  • 一日の終り労う夜の秋

    越中之助

  • 豆腐屋のラッパ素通り夜の秋

    はれみちる

  • カクテルと追憶に酔ふ夜の秋

    青雨青緒海

  • 淋しくない?問われるままに夜の秋

    星影りこ

  • 言の葉を伝えきれずの夜の秋

    雅蔵

  • シャンソンをラジオとはハモる夜の秋

    sekiいつき組広ブロ俳句部

  • 夜の秋縁台占めて腕枕

    くろべぇ

  • 夜の秋やさしき風に潮の香

    山田翔子

次回の兼題も
皆さまふるって投句してください。
お待ちしています!

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