類想一覧(選外)
夏山や切り立つ緑迫り来る
暮木葉
梓川かかる木の橋夏の山
星影りこ
夏の山老いたこの身で登りつつ
山本葉舟
夏の山いのちの数を確かめる
鶴舞櫻山
汗拭う青空届く夏の山
黒木なずな
尾根の崖鈴の音(ね)こだま夏の山
白汀子
夏の山行った気分でYoutube
ナゾラブ
夏の山靴紐締める八合目
岸壁の龍崎爺
青々としげる道なり夏の山
一 華楓
夏山や熊よけ鈴を鳴らしつつ
リカ
鳥声の一瞬の黙夏の山
花南天anne
頂上はまだかまだかと夏の山
桃香
五合目の国際色や夏の山
三上 栞
夏の山土砂災害の復旧を
橋大(きょうだい)
夏の山頂上で一体化
管原道真
八百万ただ鎮まれる夏の山
えみまる
リック背に一歩一歩と夏の山
茶
遊山旅親娘で初の夏の山
ださんさん
夏の山子らの嬌声遠のいて
あらかわ鈴
山ガールに励まされる夏の山
北五帆
ドクターヘリ着陸夏の山経て
有名人一字違い
夏の山背負いて笑う若き父
隣野つるばら
夏の山超えて広がる海の青
肴
夏の山魅せる星の大パノラマ
ほのちゃん
夏山に飛行機雲の筋二つ
猫辻みいにゃん
夏山の湧水手汲み里の人
小金
分け入りて溺るる緑夏の山
西川千波
街の味知りたる熊や夏山へ
焼菓おやじ
岩登る腿逞しき夏の山
雨戸 ゆらら
病院の窓から見える夏の山
なつめモコ
黒々といのちのにほふ夏の山
増本空ふね
藪漕ぎの果てにぽっかり夏の山
くろべぇ
朝風呂の窓一面や夏の山
宝塚御殿子
熊出没影にもびっくり夏の山
藤村 一寿
夏の山よろづ息づくおどろの路よ
おおいし 陽葵
里山のここから先が夏の山
奈良の真
命満ち希望む彼方や夏の山
神山すい如
夏の山ケーブルカーの先の先
絵十
ふんわりと獣の香して夏の山
田村 宗貞
ペダル踏む心走るや夏の山
風のピアノ
夏山や大パノラマの命なが
荒木ゆうな
「やっほー」と留学生も夏の山
苺井千恵
夏山やあれは絶対UFOだ
健央介
夏の山てのひら熱し塩むすび
岬りこ
もののけの気配感じる夏の山
雅 京夏
夏の山緑緑も青のうち
朽葉茶織
夏の山その勢いの恐ろしき
大月 銀
夏山の緑血液の浄化
一井かおり
木道に熊鈴響く夏の山
からすちゃん
園児らの歩みに抜かれ夏の山
風友
夏の山岩間に香る珈琲や
影夢者亜
大雨にテントが数多夏の山
瀬音ふみお
鳴り響く護身の鈴や夏の山
かんこ鳥
迸る生命黒部や夏の山
さくらバディ
夏の山ドクターヘリの音と影
月見里ふく
夏の山尾根で行き交うこんにちは
高旗みつき
夏の山ダム湖の色を深緑に
横山山水
還らぬ友夏山に吹き出しの雲
鶴屋桃福
夏の山アルペンルートをザクザクと
銀猫
高速バス窓に半分夏の山
井登をかし
鈴鳴らし来し方想う夏の山
三宅翔丞
初孫に逢える車窓に夏の山
浅井ねむり
つり橋へかぜ青々と夏の山
佐藤知春
天空の青い夏山迫り来る
大阪駿馬
八ヶ岳思い出残す夏の山
加藤光狗
悠悠と雲の影行く夏の山
月あか里
法螺の音の響きけふより夏の山
蓮田つばき
父の塩むすび携え夏の山
柴桜子
夏山は下りて楽し大ジョッキ
円堂実花
見渡せば緑濃淡夏の山
笹団子
下界には降りたくないな夏の山
早坂 一周
少子化の日本頑張れ夏の山
津軽まつ
車窓から緑の匂い夏の山
中川青嵐
夏山を登ればぱっとあおい海
戸田なお
夏の山裾に湖水の光る波
浩子赤城おろし
夏山の頂に立つ風の音
小野倫花
夏の山フィトンチッドを肺胞へ
伊東海芋
夏の山富士パノラマや暁や
義日月
分け入れば自我と向き合ふ夏の山
黒澤墨青
夏の山緑深むる通り雨
聞岳
尾根歩き風通りぬく夏の山
祐 紀杏里
熊鈴の音重なりて夏の山
潮崎 くじら
もりもりの夏山雲に喰らはれり
正念亭若知古
頂に立ち遥かなり夏の山
國本秀山
園児らの跳ねる背中や夏の山
杜まお実
遠くから駆け来るハイジ夏の山
あたしは斜楽
塩むすび食む夏山や今の黙
仮名鶫
夏山へ飛行機雲の刺さりけり
桂佐ん吉
ゴンドラの窓まで覆ふ夏の山
蒼井小桃杏
夏の山感じた寂寥僕だけか
高島げも
ぽつかりと一輪の花夏の山
ななかまど
夏の山岩陰流るる水恋し
俳邦山
譲りあひ交はす和顔や夏の山
上村惠翠
無理は無し救助員も人夏の山
冬の土の子
長いもの出ませんように夏の山
越前俊水
空近く緑濃くして夏の山
北乃薫衣草
湖に濃き影映す夏の山
塩野谷慎吾
留守番の宿の窓には夏の山
中谷素太
夏の山だいだらぼっちみてござる
北山 烏兔
修験者に道を譲りて夏の山
木村ひむか
SNS異人こぞりぬ夏の山
わおち
稜線を緑のステッチ夏の山
風間 燈華
夏山を蹴つてせせらぎ渡るこゑ
稲川ほろろ
万物の呼吸の風や夏の山
桐山はなもも
夏山の五合目飲み干せるポカリ
Q&A
夏山や大きく動く雲の影
くみくまマフラー
アイゼンをガッチリ掴む夏の山
松尾 一司
熊鈴の鳴り響く音夏の山
紗津 夢虹
バスタ発夏山行きの夜行バス
原島ちび助
百色のテントはためく夏の山
君塚美蕉
ロックフェスの谺轟く夏の山
竹春エリザベス
夏の山トトロの影を追うふたり
圓山みかん
須走で目と脚疲弊夏の山
小島 三毛
湯治場の窓を殆ど夏の山
永井無々
夏の山濃淡染める絵師の筆
秋谷 忍
木道を譲り譲られ夏の山
ハギノ穂々々
一ノ倉出会いに祈る夏の山
呆け鴉
校庭を呑み込むやうな夏の山
遊子眼鏡
小さき子が追い越して行く夏の山
伊藤勘太郎
夏の山故郷抱く神の山
りえ
夏の山子らの歓声駆けおりる
高木美月
夏山の命の色の濃かりけり
神楽れもん
列島の七割熱き夏の山
露崎一己句
水筒を飲み干す午後や夏の山
真咲よしの
山に棲む青嶺の息を糧として
音羽凜
夏の山美ヶ原の花畑
岡田いっかん
夏の山に登り夏の山と化す
笹 靖子
夏の山だいだらぼっちの玉の汗
白川譽
夏山や色とりどりの登る人
小林理真
ギラギラと漲る夏の山あおし
種種番外
夏の山揺るる三日月露天の湯
里山まさを
ふる里の我包み込む夏の山
スマイリーK
夏の山湖畔を染めて暮れゆけり
木村カズ
夏の山足緩めれば緑と青と
希凛咲女
次回の兼題も
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選者コメント
夏井いつき選
◆今回の季語に関して、少々悩ましい点がありました。
まずは、同じ三夏で地理の季語「山滴る」を、傍題としている歳時記もあるようで、これを許容するか否か。
「山滴る」とは、夏の山の形容で、水の滴りとは関係ありません。中国北宋の画論『林泉高致』の山水訓「夏山蒼翠にして滴るが如く」という一節から生まれた季語です。この書物から、春の「山笑う」、秋の「山粧う」、冬の「山眠る」という季語が生まれています。大きな意味では、比喩の季語となります。
今回の兼題「夏の山」は、もっと即物的な光景を表す季語ですから、これらを同じグループのものとするのは少々無理があるのではないかと考えます。
◆更に、「夏の〇〇山」「青○○」のように○部分に固有名詞が入っている句をどう判断するか。これにも悩まされましたが、歳時記の例句に「まぼろしの鷹をゑがくや青伊吹 森澄雄」などがありましたので、今回は許容しています。
とはいえ、「夏富士」をこれまた同じグループに入れるのは如何なものかと。ほとんどの歳時記でも、「夏の山」と「夏富士」は別立てになっているのは、それだけ富士山の存在は別格であるからでしょう。
さまざまな傍題は、音数調整のためにあるのではなく、それぞれの傍題でしか出せない味わいを追求するために存在しています。その一点を、堅く肝に銘じていただきたいものです。
◆「夏の山」の現場に立てば、季重なりの経験もします。例えば、「霧・虹・驟雨」等の天文、「滝・泉・雲海・雪渓」等の地理、「汗・登山」等の人事生活、「蟬・蝶」等の生き物との季重なりです。巧く成立させた句もありましたが、どちらが主たる季語なのか、分かりにくいものも散見しました。
このご時世ですから、冬の季語「熊」は許容。とはいえ、かなりベタな発想のものが多く、体験というよりはニュースネタに終わっていました。
◆いつもお伝えしていることですが、類想には兼題「夏の山」ならではのものもあれば、どんな兼題でも出てくるテッパンの類想もありました。
自句の評価に一喜一憂するのではなく、類想データを自分の中に蓄積していくのも、地道な俳筋力養成のための筋トレです。ご一緒に、コツコツと励んでまいりましょう。
※今回の兼題「夏の山」中級者以上投句欄へのご投句は、投句数4608句、投句人数1912人となりました。以下、類想句の一覧です。