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中級者以上結果発表

2021年4月1日週の兼題

春暑し

【曜日ごとに結果を公開中】

秀作

  • 春暑し怒りの魚が不意に跳ぶ

    龍田山門

    選者コメント

    夏井いつき

    季語「春暑し」と、比喩「怒りの魚」が発する言葉の火花。汚染に対する魚の怒りか、自身を魚に喩えているか。「怒りの魚」という奥行きの深い比喩を、「不意に跳ぶ」という映像が支えます。
  • レンタルの山羊の眼虚ろ春暑し

    斎乃雪

    選者コメント

    夏井いつき

     「レンタル」の一語から一瞬モノを想定するのですが、それが「山羊」であるという小さな意外性、そして納得。「虚ろ」の一語は評価の分かれるところですが、山羊が腥く臭う「春暑し」の景です。
  • 春暑き鼻つ柱へ子の頭突き

    いさな歌鈴

    選者コメント

    夏井いつき

     連体形「春暑き」が「鼻つ柱」に繋がると、うっすらと汗ばんだ吾が鼻に意識が向かいます。そこへ激突するのが「子の頭突き」。笑ってはいけないが、この衝撃を名詞止めが巧く受け止めています。
  • 春暑しグラム数万円の粉

    新蕎麦句会・凪太

    選者コメント

    夏井いつき

     薬物を題材にした句として、こんな率直な中七下五に驚きます。しかもその措辞がそのまま、映像を持たない季語「春暑し」を主役に押し上げるのだから、無謀というか天晴れというか、そんな一句。
  • 春暑し東京といふ繁殖地

    あいだほ

    選者コメント

    夏井いつき

     「東京」を「繁殖地」と比喩した点に惹かれます。人間たちが群れ集い繁殖を繰り返す土地であるよ、と突き放したような視点。2021年の東京を思うと、殊更、春が暑くのしかかってくるかのようです。
  • やたら鳩なついて百羽春暑し

    一斤染乃

    選者コメント

    夏井いつき

     「鳩」「春暑し」を取り合わせた句は他にもありましたが、「やたら」から始まる語順が巧み。「鳩なついて」までは許容できても「百羽」は論外。トホホな可笑しさが、当に「春暑し」の光景です。
  • 春暑し場末に鉈を売るをとこ

    RUSTY=HISOKA

    選者コメント

    夏井いつき

     なぜか中国を旅した時の市場を思い出しました。地べたに物を売る人々の中に、こんな男が鉈を売っていたに違いないと。季語「春暑し」に対し「場末」「鉈」等の言葉のバランスが保たれています。
  • 春暑し二トン車に積むティンパニー

    いかちゃん

    選者コメント

    夏井いつき

     「二トン車」に積み込んでいるのが「ティンパニー」だと分かると、映像がありありと浮かびます。音の鳴らない「ティンパニー」の無駄に大きい胴体は、季語「春暑し」の具現化のようでもあって愉快。
  • 譜面台ジャキジャキ立ちて春暑し

    田中木江

    選者コメント

    夏井いつき

     ブラスバンド部の練習が始まる光景でしょうか。「譜面台」に対する「ジャキジャキ」というオノマトペ、そこから「立ちて」という動詞への展開が巧み。やがて音合わせも始まる春暑き部活です。
  • 蹲る子は春暑き岩となり

    斉藤立夏

    選者コメント

    夏井いつき

     「蹲る子」にはそれなりの理由があるのでしょうが、親から見れば理不尽に拗ねているだけ。まるで「春暑き岩」のようにそこに蹲っているのみ。「~岩となり」の後の余白が増々暑い春の親子です。

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