俳句ポスト365 ロゴ

中級者以上結果発表

2023年3月20日週の兼題

野遊

【曜日ごとに結果を公開中】

秀作

  • 野遊の荷物と雲の係かな

    嶋村らぴ

    選者コメント

    夏井いつき

     「野遊」の荷物の番という類想は山ほどありましたが、「荷物と雲の係」と展開させるだけでほのぼのとしてきます。春の雲を眺めて過ごす楽しさ。俳人たちは、荷物と雲の係に向いているのかもね。
  • 聖剣と名付けし棒や山遊

    洒落神戸

    選者コメント

    夏井いつき

     拾った棒で戦うという類想も多かった今回。「聖剣と名付けし棒」と書くだけで、それがどんな棒でどんなふうに掲げどう戦っているかまで想像できます。類想からの脱出のヒントになりそうな一句。
  • 野遊や錆びたる罠を遠巻きに

    中根由起子

    選者コメント

    夏井いつき

     野原の端の繁みは森に続いています。探検をしていた子どもが見つけたのでしょうか。何を捕らえる「罠」だったのか。禍々しい思いを抱きつつも「遠巻きに」という描写にリアリティがあります。
  • 野遊を胡散臭そにトラクター

    寺尾当卯

    選者コメント

    夏井いつき

     「野遊」に来た人たちにとっては、美しく楽しい野原ですが、近隣の住人たちは、なんであんな所で……と訝しく思っているのかもしれません。「胡散臭そに」の真実味もまた「野遊」の現実です。
  • 野遊の野が海ならば母は舟

    葉村直

    選者コメント

    夏井いつき

     「野遊」の野原が「海」であるならば「母」は「舟」だ、という発想が詩です。母のいる場所に戻ってくる、逃げてくる、走り出す、疲れて眠る。母と子の光景が次々に立ち上がってくる美しい作品。
  • 野遊の牛見る野遊の我ら

    うさぎまんじゅう

    選者コメント

    夏井いつき

     放牧の牛を「野遊の牛」と擬人化し、それを見る自分たちを「野遊の我ら」と客観的に描写。「見る」の一語を真ん中に置くことで、「牛」もまた「我ら」を見ているとも読めるとは、面白い企みです。
  • 野遊やこの風ぼくによくなつく

    赤馬福助

    選者コメント

    夏井いつき

     「この風」の手触り肌触りを喜ぶ「ぼく」の気持ちを、この風こそが僕になついていると表現。春の「野遊」の実感を、素直に書いた点に共感します。私も「この風」を知っているよという共感です。
  • 野遊や百千の名あるみどり色

    しゃれこうべの妻

    選者コメント

    夏井いつき

     「百千」は「ももち」と読み、数が多いことを意味します。美しい日本語です。「野遊」の現場には、当然ながら野の緑が広がっています。一つとして同じ「みどり」がないという賛歌のような一句。
  • 斎田のひかりを眼下野に遊ぶ

    にゃん

    選者コメント

    夏井いつき

     「斎田」とは、神に供える米を栽培する田。その特別な田の「ひかり」が眼下に広がっています。春の斎田は、田起こしが始まっているのでしょうか。大人目線の野遊びを悠々と詠んだ作品です。
  • その湿気た豚小屋を出よ野に遊べ

    トポル

    選者コメント

    夏井いつき

     「湿気た豚小屋」とは比喩です。社畜としての日常か、狭いワンルームで暮らしに押し潰されている己自身か。はたまた、「野に遊べ」とは、自分を解放するためのシュプレヒコールかもしれません。

次回の兼題も
皆さまふるって投句してください。
お待ちしています!

投句はこちら