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中級者以上結果発表

2021年7月20日週の兼題

流れ星

【曜日ごとに結果を公開中】

特選

  • 11号炉に丸焼けの父ほしはとぶ

    いかちゃん

    選者コメント

    夏井いつき

     上五中七のフレーズに胸を打たれました。特に「丸焼けの父」は、非情な措辞に受けとめられるかもしれませんが、この句の背後にある作者の複雑な心情が、読者である私の心になだれ込んできました。衝撃を受けました。

     父を荼毘する夜です。「11号炉」は、父の柩が入れられた火葬炉。ボタンを押すとゴーーっと炎が走る音がします。あの炉の中には父がいる。そして、丸焼けになっていくのだと。非道な父だったのか。家族を顧みない父だったのか。あるいは、お互いに心を開き合えないままの親子だったのか。「丸焼けの父」という残酷な言葉の裏に、確執を抱えた親子の年月が見え隠れします。

     それらの惨い状況を救ってくれるのが、「ほしはとぶ」という下五です。この季語の優しさが、作者の心の救いであり、読者である私たちの祈りでもあります。

     同時投句「上履きは便器にあった流れ星」も、学校現場のイジメを切り取った切実な作品でした。やはり力がありますね、いかちゃん。

  • 心臓が右にある王流れ星

    世良日守

    選者コメント

    夏井いつき

     「心臓が右」にあるなんて、そんな馬鹿な……と思うかもしれませんが、実際に内臓が左右反転している人はいます。と、いうか、そういう人物に会ったことがあります。俳句仲間である博多句会リーダー理酔くんが、まさにその人で、「わしゃ心臓が右にある」と言われた時も、酒飲みの戯れ言だと聞き流してました。が、事実なんだそうですよ。吃驚です。

     が、その事実を知ると「心臓が右にある王」のリアリティが増してきます。この王は、自分の心臓が右にあるのは選ばれし者の証拠だと思い込んでいたのではないか。どんな卑劣な手を使っても、極悪非道な政をしても、神の罰を受けることはないと妄信していたに違いない、と。その王の野心や、その国の栄枯盛衰の物語を、下五「流れ星」が予言するかのよう。壮大なファンタジーを読ませてもらったかのような読後感。感服いたしました。

  • 流星や夜空の凹と丘の凸

    さくさく作物

    選者コメント

    夏井いつき

     上五「流星や」と詠嘆した後に、「夜空」と続く中七。「流星」は夜のイメージですから、定石でしたら「夜空」という情報は不要なのです。が、この句の良さは中七と下五の展開。頭上に広がる夜空は、巨大な半円ドームの凹。そして丘はささやかな突起としての凸。この凹と凸によってカタチづくられる時空を、流星は、はろばろと飛び、ほろほろと燃え尽きていくのです。

     上五「~や」の切れ字がしっかりと利いているので、中七下五の単純化された映像が強い魅力を持ち得ました。立体的な作品だと感じとる人もいれば、美しい切り絵のような光景を思い浮かべる人もいるかと思います。季語の魅力を、悠々と表現した作品です。 

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