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中級者以上結果発表

2021年10月20日週の兼題

小春

【曜日ごとに結果を公開中】

特選

  • へたくそにモビール揺れて小春の陽

    ぞんぬ

    選者コメント

    夏井いつき

     モビールが揺れるのは当たり前ですが、「へたくそに~揺れて」という措辞にユーモアがあります。さらに、映像としてもその揺れ具合がありありと想像できるのも巧い点です。
     「小春」は、立冬を過ぎてから春のような日和が続く時期。春の日差しの中では、バランスよく揺れていたように感じていたモビールが、小春の日差しの中では「へたくそ」に見えるよという気づきが、優しい詩となりました。
  • パッカー車行ってすっぱい小春かな

    夏風かをる

    選者コメント

    夏井いつき

      「パッカー車」とは、ゴミ収集車です。冬とはいえ、春のように暖かい今朝、ゴミ収集車が周りの空気をかき混ぜるように遠ざかっていきます。そこには、排気ガスに混じって、生ゴミの腐ったような「すっぱい」匂いも混じっていたのでしょう。
     嗅覚でもって、「小春」という時候の季語を表現しようというチャレンジ。「パッカー」「すっぱい」という韻の踏み方にも工夫があって、楽しませてもらった作品です。
  • 貝ひらく小春の角度知るやうに

    選者コメント

    夏井いつき

     「小春」は、陰暦十月の異称。初冬の時候の季語です。この句の工夫は、時候の季語らしさをどう表現するかという点にあります。
     冬になってくると、太陽の角度は低くなります。部屋の深い位置まで日が入ってくる。その「小春の角度」を知っているかのように、貝は今、口を開いているのだなと、感知しているのです。
     さらに、浅蜊・蜆・蛤などの二枚貝の類いは春の季語ですから、「貝ひらく」「小春」は、めぐってくる春という季節を僅かに匂わせていて、実にニクい配慮です。

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