類想一覧(選外)
下京区天使突抜小六月
伏見丹耶
そこかしこ猫が伸びする小春かな
虎八花乙
老犬の芝にころころ小春かな
姫川ひすい
DIY小春の庭は腕まくり
水間澱凡
小春日や一枚脱げる野良仕事
かずお
小春日や手を取り歩く老夫婦
犬散歩人
小春日の小犬眩しや小窓の陽
上北沢くつき
小春日の足湯のやさし旅の昼
青修
つがい鳩添うてまどろむ小春かな
夢雨似夜
鉛筆を握り転た寝小春かな
杉柳才
病室の窓開き小春吸い込む
萬代草舟
小春日や遠い国から着く小瓶
ねむり猫
小春日や長寿談議にあくび猫
千風もふ
行間の日差に寝落つ小春かな
豆窓子
小春日や山野にいのち妊りて
さとし
入場の行列につく小春かな
東太
小春日に御薄いただく四畳半
茶
背反らし母と見る雲小春かな
案山子@いつき組広ブロ俳句部
小春日よアンパンマンのほほちぎる
坊 いち坊
小春日に美味き蕎麦屋を探しをり
北村観楽
幼子に隠す欠伸の小春かな
岡田雅喜
小春日やすぅはぁ眠るハスキー犬
霜田あゆ美
連れ舞の鳥影高く小春かな
中島京子
不覚にもついうとうとと小春かな
一日一笑
荒天の人生束の間の小春
晴 aloha
床下の猫も出でたる小春哉
黒板 五郎三
ランドセル弾む小春の午後三時
諏訪ヤス子
在りし父笑顔の先の小春かな
島陽広
猫傍に声かけ応て小春の日
柴田雅由
小春日の水面を走る陽の光
増田 昴
縁側でついうたた寝の今小春
中村 自在
柴犬の細目に和む小春の日
キクスケ
孫の名にいただきたしあゝ小春
旺上林加
小春日や犬柔らかき腹を出し
dragon
南無大師遍照金剛旅小春
老人日記
小春日や何を捜してたんだつけ
中原柊ニ
小春みち手押し車をゆく老女
岡本のん
小春の日孫そっくりの曾孫抱く
みたせつよ
なにもせず午後のうたたね小春かな
哲山(山田 哲也)
タンクに猫ぺたり睡魔寄る小春
佐藤 啓蟄
袖まくり畑仕事をこはるかな
桜餅
縁側の小春日和の猫が寝る
吾輩は猫である
小春日に拍の雨降るスタジアム
やまちゅう
小春日の洗車のやる気二割増す
清水祥月
検診も再検良好小春かな
小林番茶
抹香の残り香縁側は小春日
蕨野木乃伊
駄菓子屋にあふるる子供小春かな
馬場紫龍
駄菓子屋の茶の間まる見ゑ小春なり
浪速の蟹造
ランチして笑うの久し小春かな
勉邪明
出掛ければ何か忘るる小春かな
灰田兵庫
小春日や店の行列長くなり
広瀬八重子
ピタパンに入れる小春の陽射しかな
土谷純
小春かな床屋の椅子に居眠りす
蒼
ガン告知失意の底の小春かな
塩風しーたん
母の背に寄り添ふごとき小春かな
中里蛙星
地震繁き列島包む小春風
冬とも
妻と寛ぐその時や吾が小春
野中泰風
カピバラの目の細りゆく小春かな
一富士リリー
縁側の猫おおあくび小春かな
北山 烏兎
小春日の百生くか問ふいじらしさ
果音
縁側のうたた寝誘う小春かな
ホリエチレン
これより小春居眠り運転注意
南風紫蘭@木ノ芽
母子ともに無事に出産小春風
玉井令子
堤防で猫の欠伸小春かな
近藤佳加
目を細め赤子見上ぐる空小春
蓼科川奈
サウナめく小春日和の会議室
松本恵
鳶にハンバーガー攫われし小春
sakura a.
名前まだおもひだせずにゐる小春
日出時計
猫の寝ているあの辺り小春満ち
宮田羊
小春日に久方遠出君と行く
MOJA
小春日に運転免許返納す
小塚蒼野
押ずまう子に負くる日の小春かな
ねぎみそ
穏やかな富士の裾野の小春かな
大村真仙
次回の兼題も
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選者コメント
夏井いつき選
◆「小春」は、「陰暦十月」を意味する時候の季語。
映像を持たない季語ですから、映像のあるものを取り合わせるという定石を押さえることは大切な配慮です。
ただ、そこから生まれる類想もかなりありました。初級コースでも同じ傾向があったようですが、まずはこんな感じ。
●類想パターン
■天気が良くて暖かいので
・ お出かけしたくなる
・ 歩く、走る、駆ける……
・ 洗濯する、布団を干す
・ 上着を脱ぐ、ちょっと汗ばむ
・ 野菜を干す
・ 土いじりをする、畑仕事をする
・ 眠くなる、忘れっぽくなる
■ 場所
・ 縁側、縁、窓 → 86句
・ 山 → 55句(山の字の入った単語も含む)
・ 海 → 43句
・ 道 → 43句
・ 庭、公園 → 34句
■ 多めのワード
・ 寝、眠 → 159句
※ついでに「欠伸、あくび」は25句
・ 猫 → 128句
・ 犬 → 53句
・ 母 → 76句
・ 父 → 42句
・ 老 → 41句
・ 光、ひかり → 65句
・ 影、陰、翳 → 46句
■ オノマトペは「うとうと」「きらきら」「ぬくぬく」など
つまり、小春の縁側で猫と、うとうと寝て、欠伸する、という句は、テッパンの類想だということです。
類想と一言でいっても、「小春」という季語に対しての類想もあれば、季語に関係なくよく出てくる類想もあります。類想を回避したいのであれば、二つの方向から類想を把握していくべきでしょう。
◆類句
重ね仕舞ふめをと茶碗や小六月 弘友於泥
小春日や夫婦茶碗を重ね置く 雨霧彦@木ノ芽
小春日や店の行列長くなり 広瀬八重子
ラーメンに行列つくる小春かな 小山晃
団子屋の行列続く小六月 安春
※「行列」の句はたくさんありましたが、並選・佳作などに頂いた句もあります。その小さな工夫を是非、参考にして下さい。
◆もう一つ気になったことがあります。
傍題「小春日」「小春日和」の場合は、やはり晴れた穏やかな日が浮かびます。「小春日の夜」とか「雨の小春日」という使い方には、違和感があります。
評価を迷った句の中に、「小春日に拍の雨降るスタジアム やまちゅう」もありました。「拍の雨」がある一定のリズムで降る雨なのか、拍手の雨を比喩しているのか、判断しにくい。ちょっとした工夫で、雨か拍手かを書き分けることは可能です。
◆また、類想ではないのですが、
仮名遣いが間違っているばっかりに、選に入れられないものもありました。投句する段階で、仮名遣いをしっかり確認しましょう。
※今回の兼題「小春」中級者以上投句欄へのご投句は、投句数3307句、投句人数1197人となりました。以下、類想句の一覧です。