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中級者以上結果発表

2021年10月20日週の兼題

小春

【曜日ごとに結果を公開中】

秀作

  • 本日の小春は楽譜にて残す

    酒井おかわり 

    選者コメント

    夏井いつき

     なんと心地よい「小春」なのでしょう。今日のこれを何かで表現するとすれば、「(私は)楽譜にて残す」と言い切ります。一体どんな楽曲になったのだろうと、読み手の想像が動き始めます。音楽の側から、俳句の側から「小春」の本意を探る楽しさ。
  • 積読のやうな小春のバスタオル

    藤田ゆきまち

    選者コメント

    夏井いつき

     他の季節のバスタオルではなく、「小春」という季節がそのように感じさせるのだよという把握に独自性があります。「小春」の太陽にほんわりと乾いたバスタオルは、いつでも読める積読の本のような、心地よい安心感なのかもしれませんね。
  • こはるびをたまどめのない糸のごと

    句楽岡徨詩

    選者コメント

    夏井いつき

     「たまどめ」とは、裁縫で、縫い終わりの糸の端を布にとめる結び方です。家庭科の授業で練習しましたね。「たまどめのない糸」のように「こはるび」の日々を過ごしているという句意になります。平仮名表記も内容に見合ってますね。
  • 踊り場のやうな小春の一日かな

    佐々木のはら

    選者コメント

    夏井いつき

     季節は今、「踊り場」のような位置にいるのだなと感じ取っているのです。比喩に使われているので、具体的映像はないのですが、脳裏に、踊り場の高窓から入っている日差しが浮かんできました。こんな「小春」の受け止め方もあるのだなあと。
  • 猫の鈴ちりり小春の静電気

    富佐野ほろよい

    選者コメント

    夏井いつき

     「猫の鈴」が「ちりり」と鳴り、「小春の静電気」も「ちりり」と発生しているのでしょう。オノマトペを、中七のこの位置に入れる効果を狙っての一句ですが、成功しましたね。寒くなってからの静電気とは違う、小春の気分が表現できました。
  • ぶすな犬に尻を嗅がれている小春

    ツナ好

    選者コメント

    夏井いつき

     愛犬を「ぶすな犬」と呼んでいるのか、野良犬を軽く罵っているのか。どちらにしても、その犬に「尻を嗅がれている」という状況がユーモラス。「小春」という季語のもつあたたかさが、愛犬も野良犬も、尻を嗅がれている作者自身をも包んでくれます。
  • あの先の金糸雀色が小春です

    亀の

    選者コメント

    夏井いつき

     「あの先」がどんな先なのかも分かりませんし、何が「金糸雀色」なのかも書かれていません。でも、指さされた「あの先」にあるのが「小春」という季節なのだよと言われると、読者も共に、小春という季節の色をほのぼのと味わうことができます。
  • からつぽの小春のツシマヤマネコ舎

    横縞

    選者コメント

    夏井いつき

     「からつぽの」は「小春」という時候にもかかり、「ツシマヤマネコ舎」にもかかっていく、というのがこの句の企み。ツシマヤマネコは人工繁殖などの努力もなされている絶滅危惧種。低い角度の太陽が、空っぽの獣舎に差し込みます。
  • 小春日や墓碑銘信士ドミンゴその他

    きゅうもん@木ノ芽

    選者コメント

    夏井いつき

     「信士」とは、仏教の戒名に用いられる称号。「ドミンゴ」は、日本にキリスト教を伝えようした伝道師の名でしょうか、「その他」と括られているのはどんな人々なのでしょう。様々な想像が交錯します。そんな「墓碑銘」をあたたかく包む「小春日」です。
  • 生き方が怠い小春の砂利痛い

    すいよう

    選者コメント

    夏井いつき

     自分の生き方を「怠い」と言いつつ、そこから抜け出せない自分を持て余しているのでしょう。靴の裏に感じる「砂利」を「痛い」と呟きつつ、歩くしかない人生。「小春」という季語は、ささやかな慰めでしょうか、気怠い諦めでしょうか。

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