• 薔薇切れば棘先にみづあふれ出す

  じゃすみん

  選者コメント

  

  夏井いつき選

  　読んだとたん、かつて経験したことのある瞬間が、鮮やかに再生されました。薔薇を切ったとたん、棘の先に「みづ」がふくらんでくる、植物の命の不思議にハッと息をのみました。薔薇を切る句は多数寄せられましたが、ここまでありありと映像を描写している作品は他にありませんでした。美しい水が育んだ。新鮮な薔薇です。
• かみさまのこどもひかりも薔薇も吾も

  渋谷晶

  選者コメント

  

  夏井いつき選

  　神とは創造主。「かみさまのこども」とは、この世に在る全てのものを指すのでしょう。薔薇の花も、薔薇にさす光も、薔薇を愛でる私も、全てが神によって創られた「こども」なのだよ、と。助詞「も」で並べられた三つの単語。創造主の祝福と愛を受けて生まれたものとして、季語「薔薇」は動かしがたく一句を統べています。
• 絵売れき絵売れき薔薇開きけり

  ひねもす

  選者コメント

  

  夏井いつき選

  　「売れき」の「き」は過去の助動詞。自分が体験した過去を意味します。「売れき」のリフレインは、絵が売れた日の喜びを強調し、「開きけり」は、今日開いていることに気づいた詠嘆を表します。「薔薇」を見るたびに、若き画家の日々が思い出されるのでしょう。やっと売れた絵は、薔薇を描いたものだったのかもしれませんね。

次回の兼題も
皆さまふるって投句してください。
お待ちしています！