俳句ポスト365 ロゴ

中級者以上結果発表

2022年4月20日週の兼題

薔薇

【曜日ごとに結果を公開中】

秀作

  • 乳吸わぬ夜の薔薇はきつと苦い

    ぽんぽこぴーな

    選者コメント

    夏井いつき

     赤ん坊は泣き喚いています。が、一向におっぱいを吸ってくれない吾が子。若い母親の困惑と焦燥と疲れ。赤ん坊の甘酸っぱい汗の匂いと、薔薇の香りが入り混じる夜。苦い思いに苛まれる夜です。
  • 薔薇剪つて風のきれいな子規の街

    桜井教人@金カル

    選者コメント

    夏井いつき

     薔薇を切っていると、軽やかな風が吹いてきます。薔薇の香りがさっとひろがります。「六月を奇麗な風の吹くことよ」と六月を愛でた正岡子規。俳句の都松山への軽やかなご挨拶句、ありがとう。
  • 石像の勇者に絡みつく薔薇よ

    鈴村朝人

    選者コメント

    夏井いつき

     石像の勇者は、剣を掲げているのでしょうか。その勇者に「絡みつく」とは何? と思わせておいての「薔薇よ」という詠嘆。企み通りの効果を実現させた語順。色の対比もさりげなく利いています。
  • 薔薇園や悦びにいくつものドア

    さとけん

    選者コメント

    夏井いつき

     「薔薇園や」という詠嘆から、抽象的な表現へ。悦びのドアの一つが、薔薇園の扉であることは間違いないのですが、さて他に……と考えると、読者は自らの心の迷路を彷徨い歩くことになります。
  • 清らかに薔薇立ち退きを拒む家

    海野碧

    選者コメント

    夏井いつき

     立ち退いてくれたら道路が広くなるのに、区画整理が進むのに。これだけの「薔薇」を育ててきた住人の思いも分かりはするが……。「清らかに」に込められた言葉の棘も感じさせて、巧みな一句。
  • 薔薇の庭海は明るし日は高し

    あなうさぎ

    選者コメント

    夏井いつき

     「薔薇の庭」と場面を描いた後で、「海は明るし」と光景を広げ、さらに「日は高し」と時間を提示しました。明るい海と太陽。薔薇の香りがぐんと濃くなる時間帯です。「~し」のリズムも軽やか。
  • 薔薇は売り切れまたアンドレが持てるだけ

    あいだほ

    選者コメント

    夏井いつき

     薔薇を買いに行ったけど、またアンドレが買い占めていったらしいよ。薔薇を携えてのアンドレの求愛は、空振りし続けているのか、はたまた蜜月の日々を送っているか。短編小説のような一句です。
  • この薔薇がきれいね濁りきつてゐて

    古瀬まさあき

    選者コメント

    夏井いつき

     薔薇の色、特に赤に「濁り」を発見する句は他にもありましたが、密やかな呟きとして書かれた詩句に魅力があります。「きれい」と「濁りきつてゐる」がイコールで結ばれる意外性とリアリティ。
  • 剪りし薔薇手に薔薇の輪をくぐりけり

    平良嘉列乙

    選者コメント

    夏井いつき

     剪った薔薇を手に、薔薇園のアーチをくぐっているのでしょう。手の薔薇も、薔薇の輪もそれぞれが香り立つかのよう。下五「けり」は、薔薇に囲まれている自分にハッと気づくささやかな詠嘆です。
  • 死はきれい薔薇に吸はれてゐる水も

    ほろろ。

    選者コメント

    夏井いつき

     「薔薇」「死」の取り合わせながら、季語が形骸化していません。「死」も「水」も「きれい」としつつ、美しい「薔薇」はゆっくりと死んでいく。その途中にある満開という時間を人々は愛でるのです。

次回の兼題も
皆さまふるって投句してください。
お待ちしています!

投句はこちら