類想一覧(選外)
夕されば黄泉の戸口や大花野
リカ
父の声聞こえたような花野かな
ゆぃ
花野原人ふみ入れず風の音
小塚蒼野
風わたる花野をかける雲の影
欣也
花野うすれゆく富士山の夕暮れ
北山 烏兎
アルプスの花野を渡る牛の鈴
キョンちゃん
母の忌は花野に抱かれ吾と犬
野の花 誉茂子
昼過ぎて山陰となる花野かな
文月あつみ
主なき門の先の花野かな
河鹿屋欣吾
花野広しボールを探す手は小さ
進藤忠仁
パーキングエリアから十歩歩けばもう花野
れんげ畑
夕づきて花野に母子の汽車ごっこ
吟 梵
捨てられしペットボトルの花野かな
中里蛙星
黄泉にも花野はあるか問うてみて
猫雪すあま
喧噪の屍を埋みて花野
河野灰土
大花野風はゆたかな色をして
美馬ひとみ
フリスビー追う犬と子の花野かな
緒方朋子
風吹きて波ごと揺れる花野かな
和泉与六
夕花野振り向く夫へ頷いて
妹のりこ
音楽を消して一服花野道
ダンサーU-KI
雲連れてゆっくり歩く花野かな
ミセウ愛
花野行くすべての花に名前あり
白井百合子
大花野心の憂さを捨ててこう
きべし
大花野タイムカプセル何処かしら
長谷川小春
塾かばん放り投げたき花野かな
真名女
かくれんぼ寂しくなりて花野かな
犬散歩人
テント張りコーヒー沸かす花野かな
紅紫あやめ
遥々とまわり道して花野かな
阿々田幸汰
雲上の花野を巡る車椅子
清水とし子
君のこと下の名前で呼ぶ花野
石神涼汰
城跡の花野夕日にそまりけり
姫川ひすい
人知れずうらは花野や父母の墓
糺の森柊
名を知らぬ花のちらほらある花野
あみま
風に乗り風を見ている花野かな
松茶 巴
自撮りする独り花野に千の風
豆窓子
夕暮れの花野気づけば一人かな
北村観楽
オカリナのとぎれとぎれに花野かな
いたまきし
木道の雲まで続く花野かな
かぬまっこ@木ノ芽
夕花野遠きに聞くは母のこゑ
寿貢
大花野駆け抜けて行く又三郎
有田みかん
ボール追う犬の軌跡や花野かな
宮坂変哲
花野来し花摘む吾子の髪飾り
大野喬
妻亡くば花野はただの草の原
老人日記
亡き父の囁き頬に花野かな
林 和寿
隧道の闇突き抜けて花野かな
露口全速
花の名を尋ぬれど花野にひとり
篝
ペーターやハイジに逢ひに花野ゆく
藤倉密子
木道の花野に曇の影走る
国東町子
来年にビルが建つてふ花野原
伊藤映雪
イーゼルを立てて花野を切り取りぬ
くみくまマフラー
手が効かぬ母に手折りて花野かな
細川小春
嫁ぐ子と歩幅の揃ふ花野かな
ぎんやんま
乙女らの恋話聞こゆ花野かな
香栄
木道でけんけん子らの花野かな
余熱
願わくば花野に消えてしまいたき
遊泉
長旅の車窓をはやし花野かな
ひぐちいちおう(一応)
イーゼルの置場に迷ふ大花野
大谷如水
暮れかかる花野去りゆく子らの声
陽光樹
分岐点右か左か花野道
一日一笑
みぎ花野ひだりも花野岐路の風
クロまま
顔のない野仏つつむ花野かな
太之方もり子
蝦夷の砂州オホーツクへと大花野
俳菜ひろこ
群れて咲き左見右見する花野かな
長操(おさみさを)
とつおいつ花の名しらべつつ花野
愛燦燦
ランナーの駆け抜く風の花野かな
葉るみ
花野行くバイク朝刊配る人
中村 自在
花野ただどこまでも花ただ花野
フージー
鉱山鉄道の朽ちて花野となりにけり
灰色狼
知る花は図鑑の如し花野ゆく
小山晃
雲走る花野の果てへドッグラン
谷本正行
花野より黒猫現るる真昼
もりたきみ
木道の影を踏み踏み大花野
宮澤 俊郎
終戦のあの地も今は花野原
花純広場
わが魂を黄泉へ誘う花野かな
小澤ほのか
花野にて手折りし草を瓶(かめ)に挿す
中嶋敏子
薄闇に風の震へる大花野
秋とも子
雲割れて日の当たりたる花野かな
大紀直家
ヨーソロー昔は海だった花野
磯田省吾
オカリナの音を運びたる花野かな
さとう菓子
オホーツクを列車一両大花野
竜胆
父と共耕せし地はここ花野
丹羽寒国
木道は空へと伸びて花野かな
釜眞手打ち蕎麦
花野ゆく戻れるならばあの頃へ
片栗子
いにしへのいくさの跡の花野かな
まにあ
湖畔宿朝の散歩の花野かな
美音
五十路すぎ花野に歌うラブソング
みのる
隧道を抜けて花野の人となる
虚実子
花野ゆく重き図鑑を携えて
しゅういずみ
老いた手の車椅子押す花野かな
佐藤志祐
夕風や山蔭となる大花野
とんぼ
茜雲あすの約束花野かな
あいのるみ
新しきイーゼル並ぶ花野みち
安春
終はりなき花野に亡父見たやうな
芍薬
想ひ出の色褪せてゆく花野かな
宗本智之
サービスエリア後ろしづかな大花野
与志魚
花アプリかざして知る名花野道
村中 ひよこ草
武蔵野の風の香りの花野かな
あんみつ姫
最寄駅徒歩10分の花野かな
藤かつたび
遠き日の夫の声あり大花野
たけぐち遊子
どちらからともなく手をつなぐ花野
てまり
石鎚山の峰より続く花野かな
ミユキ
イーゼルを立てる花野の始まりに
さくさく作物
身を退いて花野にひとり思ひ遣る
秋吉孝治
横たわり地球感じる花野かな
野中泰風
木道のきしみあと追ふ花野かな
斎藤むく
花野ゆく夕暮れをゆく風乾く
ゆかりん
秋の月どこか淋しい花野なり
京子
朽ちゆける茶屋を抱きて花野原
蓼科川奈
火葬場の煙まっすぐ大花野
竹田むべ
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選者コメント
夏井いつき選
◆初級コースでも同じような例があったようですが、
人が花を植えたものや庭を、季語「花野」とするのは無理があるかと思います。比喩で使っている場合もありましたが、そのような場合は基本的には「花圃」「花壇」「花園」などの季語として表現されるべきでしょう。
◆俳句に句読点を打った句が、二十一句ありました。
表現のテクニックとして使うことはやぶさかではありませんが、それが全く必要ではないケースがほとんど。安易に使うのはやめましょう。
◆「一マス空ける」も、技法としてありはしますが、語順などのすべき工夫をせずに安易に使っているものがほとんどです。
◆ 類想
◇ (俳句において)花野とは
・だいたい風が吹いてます → 風は香ります その香を纏ったりします
・雨もよく降り、雲の影が過ぎ、夕陽が沈みます
・名を知らぬ花、名もなき花が咲いてます → 名を調べるための図鑑やスマホ持参
・どこまでも果てしない、あるいは意外に小さい
・峰(富士山など)から花野へ、花野から峰へ続く
◇ ふと……
・切なくなる 淋しくなる
・誰かに呼ばれたような気がする
・花野へ逃避したくなる
・亡くなった人を偲ぶ 幼い頃を回想する
・ここで死にたくなる
◇ 花野にて
・いろいろ遊んだり飛んだり現れたり → 子供、犬猫から妖精や小鬼、天使や龍
・別れます → 子供の他愛ない「明日またね」から大人の恋、死別まで
・犬を散歩させる、走らせる
・歌う ハモニカを吹く
・友や子や恋人や夫(妻)と歩く、笑う、手をつなぐ
・何かを埋める、捨てる 死体とか思い出とか愚痴とか
・骸、死体、骨……などがある
・ハンググライダーやパラグライダーが着地する
◇ 花野に似合う?
・紫色(紫の風、紫の花野) → 額田王の歌からの発想?
・珈琲の香、おにぎり
・オカリナの音、ハモニカの音
・木道(尾瀬のイメージ?)
◇ かつて
・戦場だった
・被災地だった
・民家だった
・田んぼ、畑だった
・サーカスが来た
※ 逆に花野が宅地になったり工場になったりという発想も多し
◇ 花野を抜けて
・川へ 河へ 海へ 山へ 麓へ 崖へ
・地獄へ 黄泉へ あの世へ
・空へ 雲へ
※ バスは日に三本くらいで鉄路は錆びていたりする
※ 右に行くか左に行くか迷ったりする
◇ 場所
・蝦夷 オホーツク
・明日香路 大和路
・武蔵野
・阿蘇
◇ そのほか
・花野へ行って帰らない〇〇(人、犬や猫)
・花野になにか忘れる → 物だったり記憶だったり
・右も花野、左も花野、どこまで行っても花野
・今、戦場である花野 少年兵、銃、玉砕……
・花野から地球や地球儀への連想
・一輪摘んで供える、活ける
・〇〇の眼下に花野
◆類想の分析はあくまでもデータです。これらの句材を使ってはいけないのではなく、ここに3音~5音分のオリジナリティあるいはリアリティを加えれば、俳句は充分新しくなれるのです。毎月述べていることですが、しつこく毎月書きます。
◆類句例
それぞれの風の中なる花野かな
中山月波
それぞれに吹く風ありて大花野
中島走吟
飛行機の影の過ぎ行く花野かな
亀田かつおぶし
飛行機の何度過ぎ行く花野かな
大黒とむとむ
花野より生まれ花野へ還りたし
剣橋こじ
花野から生まれ花野へ還りゆく
くみくまマフラー
花野行くあの世とこの世つなぐごと
市橋正俊
現し世と来世を架ける花野かな
水無月
現世と常世を繋ぐ花野かな
山川腎茶
類句とは、そのまま自句として発表するのはちょっと難しいね、というデータです。では、ここから自句をどうブラッシュアップするのか。それが、作者に戻される宿題です。
※今回の兼題「花野」中級者以上投句欄へのご投句は、投句数3339句、投句人数1181人となりました。以下、類想句の一覧です。