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中級者以上結果発表

2021年8月20日週の兼題

花野

【曜日ごとに結果を公開中】

秀作

  • はな野はな野ひつぎはほけん室のいろ

    高尾里甫

    選者コメント

    夏井いつき

     読んだ瞬間、胸が塞がれるような気持ちになりました。保健室だけが自分の居場所であった子どもたち。その悲痛な魂は、学校をとりかこむ花野の辺りを漂っているのでしょうか。辛い辛い作品です。
  • 大花野マンタの腹のやうな雲

    ギル

    選者コメント

    夏井いつき

     広い花野の雲を描いた句は山のようにありましたが、「マンタの腹」という表現がいいですね。空を海に見立てれば、花野は深海です。悠々と泳いでいくマンタの腹の質感まで見えてくるような作品。
  • 花野とは赤子を産み終へし躰

    ぐでたまご

    選者コメント

    夏井いつき

     自身ではなく、出産を終えた妻の「躰」を「花野」のような存在だと感嘆している、と読みました。静かに満ち足りたその表情。健気な躰が産み落とした赤子の元気な泣き声。人生の美しい瞬間です。
  • 溶岩を背骨に花野一万年

    古田秀

    選者コメント

    夏井いつき

     一万年前に噴火した溶岩が、背骨のように草原を貫いているのです。溶岩をとりかこむように広がる花野。シンプルな表現でこれだけの空間と時間を悠々と映像化するのですから、大したものです。
  • ゆれかはす花野の果てにひかるパオ

    にゃん

    選者コメント

    夏井いつき

     パオとは、遊牧民が暮らす組み立て式の家屋です。「ゆれかはす花野の果て」のその先にかすかに光るパオ。モンゴルの大平原に生きる人々の営みが、「パオ」の一語によって立ち上がってきます。
  • 干拓地当ても途方もなく花野

    あたなごっち

    選者コメント

    夏井いつき

     干拓地となったものの使う当てはなくて、しかも途方もなく広い花野。うっかり使うと散文的になりがちな中七を、詩の言葉として巧く機能させています。下五名詞止めの余韻も狙いどおりの効果。
  • 花野より旅団象ゐて獅子が来て

    古瀬まさあき

    選者コメント

    夏井いつき

     花野→サーカス、という連想の句はかなりありました。が、「花野より旅団」という措辞は魅惑的。「~ゐて~来て」は、檻に入っていない象や獅子を思わせて、ますます妖しく華やかな花野です。
  • 風・けもの・記憶花野を揺らすもの

    板柿せっか

    選者コメント

    夏井いつき

     中黒点を必要とする句もそんなに多くはありません。が、この句は明確な意図=花野を揺らすものを数え上げるかのような効果を狙って使っているのが分かります。下五「~もの」の余白も効果的。
  • 花野へと二人の手話が吹き渡る

    冬のおこじょ

    選者コメント

    夏井いつき

     「二人の手話」が世界の中心にあって、そこから風が動き出していくのです。音のない会話が風となって吹きわたっていくかのような感覚。上五「花野へと」という措辞の巧みを味わいたい作品です。
  • お構いなしのチワワ花野に突っ込む

    伊藤辰弥

    選者コメント

    夏井いつき

     連れてきたチワワはもう喜んじゃって、お構いなしに花野に突っ込んでいく。その様子に慌てる人物も見えます。自由律になっていますが、これも内容に見合った調べだと言うしかない愉快な一句。

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