類想一覧(選外)
山眠るその中腹に登り窯
宮武濱女
足跡の鳥も獣も山眠る
水間澱凡
山眠る共に眠る子起きる子も
寺木 風宣
埋蔵金を懐にして山眠る
きゅうもん@木ノ芽
山眠る初期設定のスマホかな
明神おぼろ月
俗世の喧騒他所に山眠る
大阪駿馬
海底の火山噴火や山眠る
国東町子
右足の靴擦れの痕山眠る
鈴木久美子
時を超ゆ明日香の風や山眠る
野瀬藻石子
山眠る夕日も眠る肩よせて
風花美絵
山眠る地層の記憶置き去りに
青田奈央
ポツンと一軒家包み山眠る
みおつくし
九十九折の先は神祠や山眠る
淡海かこ
天鵞絨の帳降りたり山眠
美音
海底の噴火地上の山眠る
欅ノ栞
あれっ寝たの孫の寝息や山眠る
原 鳥小路
山眠るどこまでも静か山眠る
山田檸檬
山眠る猫眠る日は我も寝る
西谷 寿春
生みたての卵ほんわり山眠る
ほしの有紀
一つ家を懐深く山眠る
渡邉竹庵
暗い雲はるか向かいに眠る山
蓮風
星々を表舞台に山眠る
クロまま
村抱く八重垣となり山眠る
堀隼人
その一角を眠らせて山眠る
池 閑茶
幾重にも重なり合いて山眠る
森爺
業火めく窯元の火や山眠る
リカ
おくるみの睫毛の長し山眠る
果音
千年もひとときのごと山眠る
遊羽女
稜線もくっきり見えて山眠る
早坂 一周
母眠る墓淡々と山眠る
直心
山眠る犬の遠吠え響きをり
一富士リリー
せせらぎも小鳥も眠る山眠る
つるつるつるりん
へび、かえる抱きて山の眠りをり
無雅夢蟲
廃線の枕木の向こう山眠る
黄鶺鴒
山眠るお一人様の気楽さよ
氷室茉胡
懐に沢音包み山眠る
岡本 戎
渋滞の続くトンネル山眠る
もふ美
山眠る電光掲示の文字走る
也和
山眠るマグマを奈落に隠しつつ
羅蒐
今もなほ動かぬ甲斐の山眠る
田村利平
山眠るグラデーションの遠秩父
小田ビオラ
山眠る次の目覚めを疑わず
中島走吟
蹲踞の音も静かや山眠る
星影りこ
一周忌母の面影山眠る
みつみん
目覚めねばこれが本番山眠る
渕野陽鳥
山眠るパンドラの匣」抱きつつ
魚返みりん
故郷は海の底なる山眠る
はれまふよう
吾の母校山眠る湖の底のそこ
柊 しゅう子
山眠る村にかすかな子守唄
ゆみづき
山眠る足跡だけをのこしゆき
田中ようちゃん
ダムの底嘗て村あり山眠る
いつか
山眠る分厚き願書投函す
梨西瓜
海底に眠る山ある噴火かな
藤咲大地
やうやくに三合目まで山眠る
たま走哉
電線路抱へ今宵も山眠る
イエティ伊藤
懐にマグマ抱へて山眠る
余田酒梨
吐く息の霧に包まれ山眠る
蓮田やどかり
真夜中の高速道路山眠る
青木豊実
子を思ふ山眠る日の涙雨
ヴィッカリー趣乃
ふところにねむる愛犬山眠る
高内久子
開削の爪跡深く山眠る
知恵さん
地蔵さまの赤い前掛け山眠る
からすちゃん
大いなるものを抱きて山眠る
蓼科川奈
鉄塔を空へ突き立て山眠る
ひだ岩魚
国道を車列延々山眠る
岡塚 敬芳
鹿罠も墓も抱きて山眠る
北山 烏兎
鉄塔に腹貸したまま山眠る
鶴 木綿
山眠る二ホンカワウソ、オオカミは
かつたび
街騒は遠きにありて山眠る
虚実子
山眠るいのち育む木も草も
阿奇羅
まつすぐにあがる煙や山眠る
赤松諦現
高層のビル群はさみ山眠る
島陽広
父歩きしふるさとの道山眠る
三崎扁舟
山眠る嫁して四十余年なる
柚和
喧騒を眼下に預けて山眠る
和子
日が昇り雲目覚めども山眠る
宏峰
結界は女人禁制山眠る
吾亦紅
石炭を焼べる機関車山眠る
しんしん
山眠るペラペラめくる単語帳
オルフ
懐の海鎮まりて山眠る
晴 aloha
粛々と過去問解くや山眠る
河村静葩
温泉の湯けむり浴びて山眠る
ゆぃ
トンネルの中は産道山眠る
一日一笑
山眠るおろち起こさぬようにして
写俳亭みの
山間の蒼き湖山眠る
川島欣也
星に呼ぶ亡き犬の名よ山眠る
みのる
山眠る光眩しき吾子の顔
星 きく丸
山眠る地滑りの傷癒えぬまま
若井柳児
助手席の妻のいびきに山眠る
ひーたん@いつき組広ブロ俳句部
ソロキャンプ珈琲一口に山眠る
鶴屋桃福
明日へと一歩進んで山眠る
橋本彩雅
鳥獣を里に遊ばせ山眠る
今治八十八
しやうるいのこゑみなすひてやまねむる
かゐみすず
天空の星々夢に山眠る
宮澤韋駄天
登り窯熱き火柱山眠る
中野風鈴
旅人の独り訪れ山眠る
石崎京子
駅伝の号砲響き山眠る
ゆかりん
山眠る父の墓前へセブンスター
一井蝸牛
古代史はロマン異国の山眠る
野口真砂輝
山眠る青年団の火の用心
春雪
年老いた町を抱きて山眠る
尾木 李然
御巣鷹の碑を抱きつづけ山眠る
美年
山小屋の錠前しかと山眠る
夏目タンチャン
岩肌に存す仏や山眠る
らくさい
曙の雲を被りて山眠る
緒方朋子
時の鐘音色ふっくら山眠る
那須のお漬物
山眠る新幹線の通過待ち
はまお
棄てられた老婆と共に山眠る
藍雅凛
三番の校歌まばらむ山眠る
ペトロア
チロロンと響く手水舎山眠る
ミセウ愛
大岩の海の化石や山眠る
砂糖ふさこ
一村を沈めてダム湖山眠る
山吹なお
山眠る幾星霜の胎動
青矢 真紘
夕暮れに染まりて静か山眠る
数哩
乗り鉄の山眠る窓カップ酒
晴鍬旅人
山眠る川の流れを辿る日々
はっしー
万物の色を隠して山眠る
卯夏野心
トロトロとバイク一台山眠る
千原 十吾
噴石も骨も抱きて山眠る
太之方もり子
さよならと口が動いて山眠る
森 佳月
星々の声聴きながら山眠る
あみま
山眠る恩師の逝去告ぐ葉書
東原桜空
山眠る坂登りゆく郵便夫
木寺 仙游
警策の肩を打つ音山眠る
石垣 葉星
野良猫の亡骸抱いて山眠る
睦月くらげ
龍叫ぶ如きSL山眠る
山内 負乗
崩落の跡を曝して山眠る
一生のふさく
アートなるトンネル抱き山眠る
うみのひつじ
縄文の血はめんめんと山眠る
老人日記
竃の火を塗り込めたまま山眠る
対馬清波
憂悶の古根朽ち果て山眠る
卯月紫乃
山眠る故郷の空星ひとつ
広瀬八重子
明日への蕾を抱いて山眠る
藤田希布
山眠り鶏一つ卵産み
中山白蘭
酒樽のしづかな呼吸山眠る
夢雨似夜
迷い込む客人抱き山眠る
鶴岡木の葉
静脈のごと枝ひろげ山眠る
西川あきや
山眠る時空を醸すウヰスキー
大庭慈温
山眠る木の精霊にまもられて
工藤遊子
山眠る数多のこだま閉じ込めて
さぶり
捕らわれし獣の咆哮山眠る
嘉門生造
明けてゆく朝日を抱きて山眠る
林 和寿
ユトリロの白き教会山眠る
愛燦燦
SLの煙を裾に山眠る
宮川武久
山眠る休業中の観覧車
香栄
母として決して譲らず山眠る
早川 杏ちゃん
国後や近くて遠き山眠る
伏見丹耶
山眠る頂きに座す三角点
暇禍
東雲や車窓に眠る山の裾
黒子
親牛の揺るる乳房山眠る
俳菜ひろこ
山眠る空き家となりし生家かな
そまり
白髭を蓄へ眠る比良の山
比良山
山眠り猫は丸まり夢を見る
上村茶娘
縁側に夕日の残滓山眠る
村瀬っち
炭焼に懐を貸し山眠る
大谷如水
赤く燃ゆマグマは地下に山眠る
枯木 花
山眠る離婚届に判はまだ
優純bow
一望のダム湖の蒼さ山眠る
東太
猪の一家を抱いて山眠る
野原めぐみ
アルプスを越えて眼下に山眠る
秦 理露
炭竈の煙途絶へてやま眠る
綺楽よしじ
勢いの萎えし日の矢や山眠る
加和志真
連峰の富士は真ん中山眠る
安寿
山眠る雑木覗く星の黙
桔梗
後戻りできぬ人生山眠る
森一平
幾千万星の黙に山眠る
み藻砂
山眠る寝息の中に鳥獣
冬野とも子
山眠るもののけ深き息づかひ
さいたま水夢
夕泥む窓の借景山眠る
安曇野まりえ
ナカムラの名はアフガンに山眠る
後藤三梅
夜は更けて月明かり見て山眠る
芥川光正
現への稜なだらかに山眠る
酔下弦
白い綿すっぽり被り山眠る
風花あつこっとん
山眠る白紙の続く日記帳
黄昏文鎮@いつき組広ブロ俳句部
山眠る犬の寝息に耳すます
なつめモコ
噴火あり地滑もあり山眠る
齋藤夜明鳥
村落の沈みしダム湖山眠る
三水
次回の兼題も
皆さまふるって投句してください。
お待ちしています!
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選者コメント
夏井いつき選
季語「山眠る」は冬の山を擬人化している季語です。山が眠っているから、さらに色んなものも「眠る」という発想の句は、永遠の定番です。例えば、
・山も私も獣も鳥も川も眠る。
・〇〇は眠らない、眠れない
・夢をみる 寝息や鼾(山の獣の夫の……)
・〇〇を枕に眠る
やたらめったら何もかも眠っているだけでは、独自性が足りないということになります。
・たまに薄目を開ける
「眠る→薄目を開ける→起きる→笑う」と、春の季語「山笑う」につなげていく発想は、案外あるのです。
山が色んなものを「抱く」「懐」「眠らせる」という句も沢山ありました。
・〇〇を抱いて
・〇〇を懐に
・〇〇を眠らせる
獣や自分や屍や骸や命やダムや村や町……いろいろなものを懐に抱いて、眠らせている。
これらの発想がダメというのではありませんが、残りの部分の独自性や真実味を工夫する必要があるでしょう。
季語「山眠る」には静けさのイメージもあるので、聴覚情報を加えるという考え方もあります。が、そこにも類想の落とし穴があるのです。
旅先のラジオからジャズ山眠る 村瀬っち
ラジオからジャズのリズムや山眠る 犬散歩人
これらの句が独自性を手に入れる方法としては、
・「ラジオからジャズ」+残りの音数で季語「山眠る」を描写する。
・どんなジャズなのか、具体的に書く。
このあたりから取りかかるのも一つの工夫です。
類想類句からの脱出は、「一単語の工夫」から。小さな独自性、ささやかな真実味は、単語一つの工夫から生まれます。
◆類句例
ど演歌のこぶしころがし山眠る せいしゅう
引き売りの演歌高らか山眠る いつか
ど演歌の移動スーパー山眠る でんでん琴女
ふところにダム湖を抱き山眠る さいたま水夢
湖の蒼を抱いて山眠る 髙橋弓女
こだまする銃声二発山眠る なおじい
猟銃音一発こだまし山眠る カオス
山眠る海底プレートにゴジラ 佐藤啓蟄
海底のゴジラ冠する山眠る 鯛風
暁のドップラー効果山眠る 湊吾子
特急のドプラー効果山眠る 独星
兄逝きし煙上がるや山眠る りんごのほっぺ
父恋し荼毘の煙や山眠る 哲庵
火葬場の祖母の煙や山眠る 江藤真治
※今回の兼題「山眠る」中級者以上投句欄へのご投句は、投句数3510句、投句人数1272人となりました。以下、類想句の一覧です。