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中級者以上結果発表

2021年12月20日週の兼題

山眠る

【曜日ごとに結果を公開中】

秀作

  • 翅も骨もほろほろほぐる山眠る

    仁和田 永

    選者コメント

    夏井いつき

     一年の命が尽きた「翅」もあれば、何年か何十年かの命を終えた「骨」もまた、全ては「ほろほろ」と崩れていきます。地に戻っていくものたちを抱き、冬山は静かに黒々と深い眠りの中にあります。
  • 龍角散さらさらさびし山眠る

    RUSTY=HISOKA

    選者コメント

    夏井いつき

     「龍角散」の粉の「さらさら」は、あの独特の匂いを感じさせつつ「さびし」という感情語に繋がります。眠り続ける冬山もまた「さびし」くて、龍角散の匂いを静かに放っているようでもあります。
  • 木霊なほ風に傷みて山眠る

    内藤羊皐

    選者コメント

    夏井いつき

     「木霊」と「山眠る」を取合わせた句もありましたが、中七の描写に工夫があります。切れ切れとなる木霊は、山の風に傷んでいるのだという感知そのものが詩ですね。「なほ」の一語も効果的です。
  • ひかり降るは産卵のごと山眠る

    樫の木

    選者コメント

    夏井いつき

     冬のあえかな「ひかり」が眠り続ける山に降りそそぎます。その光の印象を、まるで産卵のようだと比喩。私は、珊瑚の産卵を思い浮かべました。美しく神聖な時間が降り積もっていくかのようです。
  • ドラム缶へ焼べる切符よ山眠る

    七瀬ゆきこ

    選者コメント

    夏井いつき

     焚火に何かを焼べる句はいくらでもありますが、「ドラム缶」であり、焼べるのが「切符」である点に興味を惹かれます。なんの切符なのか、なぜ燃やすのか。冬山は答えぬまま眠り続けています。
  • ワセリンはくじらの匂い山眠る

    冬のおこじょ

    選者コメント

    夏井いつき

     「ワセリン」は乾燥肌を守る保湿剤。指先に掬い取ったワセリンを「くじらの匂い」だと感じた点に独自性と真実味があります。白色のワセリンと「山眠る」の無彩色のイメージも響き合います。
  • 囚はれてゐるやうにバス山眠る

    古瀬まさあき

    選者コメント

    夏井いつき

     冬山がバスや電車を懐に抱くという類想を一つ進めると、このような発想にたどり着けるのですね。走っても走っても眠る山に囚われているような感覚が、季語「山眠る」の奥行も表現しています。
  • 鉄滓は神の瘡蓋山眠る

    広木登一

    選者コメント

    夏井いつき

     「鉄滓」は「てっし」「てっさい」と読みますが、この場合は後者。鉄を製錬する際に出る不純物です。この「神」は創造者か、山そのものが神か。解釈によって、一句の世界は多様に広がります。
  • 山眠る自己破産宣告の朝

    西田月旦

    選者コメント

    夏井いつき

     自然や生き物ではなく、現実との取合わせもあっていいですね。長い単語「自己破産宣告」と季語とを繋ぐ「~の朝」の働きがさり気なく巧い一句。清々しい冷気に眠る山を見上げる再出発の朝です。
  • 山眠り絵本の鳥は賑やかな

    絵十

    選者コメント

    夏井いつき

     山も鳥も眠ってという句が多かった中、鮮やかな色合いの「絵本の鳥」を取合わせたのが楽しい一句。絵本の中で「賑やか」に囀る鳥たちと、無彩色に眠り続ける山との対比も味わえる作品でした。

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