類想一覧(選外)
雲梯の一段飛ばし鰯雲
有田みかん
鰯雲崩れつ一匹群を去る
カオス
息をのむ空一面の鰯雲
髙見 艀舟
薄紅の夕空千のいわし雲
井上鈍句
天翔る龍の姿や鰯雲
蜩彰子
争の無い国境鰯雲
加和志真
あの嶺の彼方に故郷いわし雲
かつらたろう
爆音の幽かに聞こゆ鰯雲
田邉真舟
大飛球上がる歓声鰯雲
徳翁
鰯雲家から香る夕飯か
けんもてぃ顎也
鰯雲明日の天気予報中
りーこ
イワシ雲船のエンジン大量や
まっちゃ
バスを待ち波打つ空のいわし雲
世和氏
鰯雲引っ掻く猫は膝の上
夏風わかば
帰り道オレンジがかる鰯雲
腐った弁当
帰る家オレンジ映えるいわし雲
やさいサラダ定食
鱗雲天空泳ぐ魚たち
ゆぅあ
鰯雲泳ぎ疲れて羊雲
はなまるぴっぴ
わらわらと走る子どもや鰯雲
上村茶娘
空の海群れで泳ぐよ鰯雲
加藤秀彰
深呼吸狙うは黄組いわし雲
おたまじゃくし
リハビリの途中ひと息鰯雲
山本蓮子
大漁のみすゞ哀しや鰯雲
國本秀山
渦の目に群がる奴ら鰯雲
ボッチくん
青空や白が優勢いわし雲
KOMA
白球を追いて飛び込む鰯雲
島陽広
チャルメラの響く夕暮れ鰯雲
花純
鰯雲海を忘れて空の上
山口雀昭
鰯雲金子みすずの詩を思ふ
多木緑雨
畑作業ふと見上げれば鰯雲
早坂 一周
鰯雲孫手を伸ばす肩車
小田慶喜
水曜日うたたね誘う鰯雲
hinagiku
一尾だけ逆に泳ぐや鰯雲
小田和子
漁師町海へ海へと鰯雲
与志魚
鰯雲定置網なか同じ様
中島京子
鰯雲を切り裂く白球のはるか
剣翔寺亜太琉
ロープウエイ往き交ふ笑顔や鰯雲
増田 悠佑
スワンボート湖面に浮かぶ鰯雲
たかこ姫
大夜空明かりに映えて鰯雲
甘泉
鰯雲は飛行機雲と仲良し
田村美穂
いわし雲なぶらの上を通りけり
あねもねワンヲ
大漁に空摩り下ろす鰯雲
堀ゆうき
鰯雲東へ息子新幹線
どれみ
いわし雲スイミーは昨日の赤風船
reion
鰯雲空が海に変わってく
ライ麦
あそこから向こうは異国鰯雲
下條ちりり
紫の鰯雲焼き魚かな
宏峰
海上に黒群映す鰯雲
山川土時
空焦がす夕餉の支度鰯雲
勝瀬啓衛門
鰯雲大漁めざし舟を出す
蓮風
いわし雲ジャングルジムのてっぺんで
福田かな子
黄金色の棚田頭上に鰯雲
瞳子
きらめきて海からあがる鰯雲
よしだわさび
投網打つ湖の面に鰯雲
堀雅一
大空は巨大水槽鰯雲
四季鳥
ちっぽけでも鰯雲の様に何処までも
熊島助五郎
鰯雲瀬田から難波へ泳ぎける
綺楽よしじ
一天をカンバスにして鰯雲
渡嘉敷五福
ドローンの躍る訓練いわし雲
うに子
鰯雲訪いも帰りも残りけり
ぶうびい
鰯雲ついてゆきたきプチ家出
み藻砂
隅田川川面にツリー鰯雲
東 湘輝
青天の水槽見上ぐや鰯雲
東石川マーチン
前髪の気になる朝のいわし雲
立山穂高
鰯雲沖に色めく大漁旗
あいのるみ
たよりのせ途切れず泳げ鰯雲
木村美雨
馬穴に千匹釣果は鰯雲
林りんりん。
鰯雲山のあなたへ帰りけり
仙元山佐吉
旭日や朱鷺色に照るいわし雲
水城
どんじんりは小さな尾びれ鰯雲
宥光
魚信なく土手に大の字いわし雲
葛谷猫日和
鰯雲母は吾の名を忘れをり
かぬまっこ
なに狙う息殺す猫鰯雲
まつといのいち
産土を緋色に包む鰯雲
向日葵姐@いつき組広ブロ俳句部
まどろみの猫のゐる屋根いわし雲
村上優貴
古池を狭しと泳ぐ鰯雲
中島 穂華
孫の手を引いて散歩す鰯雲
鷲澤翠玉
鷺にやる釣果も無くて鰯雲
いもがらぼくと
鰯雲両手広げて一輪車
坊 いち坊
鰯雲波紋残して泳ぎをり
岡田論子
鰯雲かかつているよ竿の先
峰 乱里
白球は真白きままに鰯雲
伊予吟会 心嵐
味噌汁のもやもや湧きて鰯雲
花みずき
鰯雲さてと腰上げ庭仕事
はなだんな
原っぱを駆ける子供等鰯雲
田中ようちゃん
夕されば茜となりぬいわし雲
桑本栄太郎
ドローンもて目刺しにされをる鰯雲
秋桜コス太
蹴り出したスパイクの先鰯雲
大久保加州
ノーサイド見上げた空に鰯雲
だけわらび
駆け抜けてテープを切るや鰯雲
コウ
遠のくビル群車窓にいわし雲
藤田康子
いわしぐも空キャンパスの点描画
ほんちゃん
涙目にただ千万の鰯雲
kikuti-aya
野天の湯大の字で見る鰯雲
希布
鰯雲一網打尽投網打つ
中村 自在
朝焼けの大海原に鰯雲
寺木 風宣
鰯雲泳ぎ続けて羊雲
チャ御チュール
くれないに染まり帰る子鱗雲
福島 昇天
朝イチのショット振り切り鰯雲
増田 幸司
鰯雲水面に波紋アタリあり
暇禍
鰯雲や地上は今もマスク群
茂平次
鰯雲明日への空に流れてく
さくらんぼ
イワシの日天空染める鰯雲
宮沢 韋駄天
たんまりと海に浸りて鰯雲
山河穂香
猫光るいわし雲喰う夢
羅蒐
鰯雲弱き魚も空を飛ぶ
瑞鬼羅
夕暮れの大海原に鰯雲
海龍
女王の棺砲車へ鰯雲
土佐藩俳句百姓豊哲
雲梯を渡る子の手や鰯雲
峰泉しょうこほ
ぼろぼろと吾子泣き崩れ鰯曇
橋本彩雅
次回の兼題も
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選者コメント
夏井いつき選
類想をさまざまな観点でまとめてみると、
◇その形状から
・ (鰯、魚が)空を泳ぐ
・ どっちが頭でどっちが尾?(あるいはどちらが背か腹か)
・ 覆う、隠す → 空、太陽や月、街、盆地など
・ 鱗が剥がれてゆく
・ 龍のよう
◇「鰯」なので
・ 金子みすゞの詩の「大漁」、スイミー
・ 大漁旗、豊漁
・ なぶら立つ(釣り用語)
・ 夕餉(の支度)、夕食の献立が決まった
・ 晩ご飯は魚にしよう! → 七輪で魚を焼く煙
◇場所
・ 窓 → 車窓、病窓、自宅の窓、職場や学校の窓
・ ビルの隙間、摩天楼の間
・ 土手や河原から仰ぐ
・ 水面(池や水たまり)に映った鰯雲
・ 瞳のなかの鰯雲(人の眼、犬や猫や鳥の眼など)
・ 帰り道に見る → 病院、葬儀、学校、夜勤明け
◇やがて鰯雲は……
・ どこへゆく(故郷、異国、地平線の果て、海の果て、戦禍の国へ、明日へ未来へ)
・ 山に吸われる
・ 夕陽に染まる、焦げている
・ 二三匹、はぐれるのもいる
◇科学的? な視点で
・ 味噌汁(鰯雲ができる理屈)、ベルーナ対流
・ 天気が下り坂、雨が近づいている(低気圧や前線が近づいている時に現れやすい)
◇鰯雲のもとで人は
・ 仰ぐ、見上げる、深呼吸する
・ 子供ははしゃぐ、歓声を上げる
・ 運動会 → 紅白の帽子、徒競走、号砲、玉入れ
・ 逆上がり、蹴上がり(ついでに鰯雲も蹴る)、雲梯
・ 布団を干す、洗濯物を干す
・ (草むしりや畑仕事をしていて)腰を伸ばす
・ 野球やゴルフ → 白球は鰯雲へと
・ 逆さに見る鰯雲(鉄棒や股覗きや逆立ちや)
・ 鰯雲の数を数える
・ 散歩する
◇淋しさ、哀しみ
・ 鰯雲と死の対比(葬儀、故人を偲ぶ、国葬、遺品、愛犬や愛猫の死など)
・ 戦争
・ 別れ(恋、死、子供が遠くへ行くなど)
・ 孤独、一人ぼっち
・ 涙
◇鰯雲のほかに
・ くじら雲や羊雲
・ 鰯雲を飛行機雲がよぎる
・ 機影が裂く
◇その他多かった発想
・ 空も渋滞、道も渋滞
・ 鰯雲と一緒に歩く、鰯雲がついてくる
・ おにぎり
・ (魚からの連想で?)猫 → 食べたそうに鰯雲を見ている、欠伸する、寝ている
・ 〇〇(地名)から〇〇まで鰯雲、〇〇から生まれた鰯雲
自分と同じ発想の句で、並選以上に選ばれているものをチェックしてみましょう。俳句はたった十七音しかないので、ほんの一単語の工夫が、成否を分けます。それを丁寧に調べていくことは、自分自身の中に類想データを積み重ねることでもあります。
俳句修行という名の筋トレは、日々コツコツ積み上げることに他なりません。
※今回の兼題「鰯雲」中級者以上投句欄へのご投句は、投句数4010句、投句人数1500人となりました。以下、類想句の一覧です。