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中級者以上結果発表

2022年9月20日週の兼題

鰯雲

【曜日ごとに結果を公開中】

秀作

  • 生前墓候補地いわし雲きれい

    にゃん

    選者コメント

    夏井いつき

     終活を着々と進めているのですね。あれこれ探しつつ、訪れた「生前墓候補地」の頭上には、悠々たる「いわし雲」が広がっています。思わず呟いた「きれい」の一言が、決め手になりそうな予感。
  • 付箋紙の「山田シカトね」いわし雲

    いくたドロップ

    選者コメント

    夏井いつき

     教室の机から机へ、ひっそりと回ってきた付箋紙には、「山田シカトね」と書かれているのです。書いた生徒、書かれた生徒、その付箋を拾った先生。さまざまな立場で見上げる「いわし雲」です。
  • 鰯雲キーホルダーの先が無い

    世良日守

    選者コメント

    夏井いつき

     「キーホルダーの先」って、鍵の方?それとも飾り? 私は後者を思いました。自宅のか、自転車か。困りはしないけど、がっかりする感じが面白いね。ささやかな喪失感に「鰯雲」が似合います。
  • ペンギンの仰角は9°鰯雲

    あたなごっち

    選者コメント

    夏井いつき

     ペンギンたちが皆同じ角度で空を見上げています。「仰角は9°」という具体的な数詞が、そのまま映像となっています。「ペンギン」の白黒、「鰯雲」の白、空の青。それらの色彩もきっぱりと秋です。
  • 機械科はつぶしが効くと鰯雲

    戸部紅屑

    選者コメント

    夏井いつき

     「機械科」は技術を身につけているから「つぶしが効く」、と言われるのは分かるけど……と、複雑な思いを抱いているのは親でしょうか、教師でしょうか。「鰯雲」に託す生徒たちの将来よ、嗚呼。
  • 教室は眠たい孤島いわし雲

    広木登一

    選者コメント

    夏井いつき

     教室を比喩した「眠たい孤島」という中七は、作者の複雑な思いを的確に表現した詩語です。授業は退屈だし、心には孤独が巣くっているし。今日も上目遣いに眺める「いわし雲」が眩しいのです。
  • ツッパリのバイクふぁらりら鰯雲

    小だいふく

    選者コメント

    夏井いつき

     ツッパリたちが違法改造バイクを乗り回し、「ふぁらりら」とクラクションを鳴らしながら通り過ぎていくのです。あららと見送るその先には「鰯雲」。こんな可笑しみも受けとめてくれる季語です。
  • カヌーに立てば水面が広い鰯雲

    座敷わらしなつき

    選者コメント

    夏井いつき

     カヌーに座って漕いでいる時、目線に近い水面は迫ってくるかのようです。が、カヌーを降りようと立ち上がれば、なんと広い水面であるか。そこには、広い「鰯雲」が映り込んでいるのでしょう。
  • いわしぐも眠る子膝に荼毘を待つ

    石田将仁

    選者コメント

    夏井いつき

     死の意味がよく理解できない子どもは、飽きたり騒いだり泣いたりします。親たちは、疲れて眠ってしまった子を膝に抱き「荼毘を待つ」のです。「いわしぐも」が静かにその時間を刻んでいきます。
  • 鰯雲ゆたか夕日が酸いのだらう

    選者コメント

    夏井いつき

     夕暮れの鰯雲も美しいものです。「ゆたか」の一語が「鰯雲」の形状を描き、この類まれな豊かさは「夕日が酸い」からだろうかと発想できる。その感覚こそが詩であるよと感嘆し、堪能致しました。

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