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中級者以上結果発表

2023年1月20日週の兼題

鳥雲に入る

【曜日ごとに結果を公開中】

【類想】

選者コメント

夏井いつき

◆まずは、この季語について認識しましょう。

「鳥雲に入る」は、動物の季語です。ひょっとして、天文の季語あるいは時候の季語と勘違いしているのかも……と思われる句も散見されました。

動物のジャンルの季語である以上、帰っていく「鳥」の姿が内包されていると考えるものですから、真夜中の鳥雲に入るという句には、(うーむ、その光景が見えるのだろうか、との)違和感を覚えてしまいます。

また「鳥雲や」という使い方をしている句も幾つかありましたが、 「鳥雲に」の「に」という助詞は、季語の本意に対して重要な要素であろうと考えます。この「に」の意味をしっかりと捉えて作るべきではないのかと、思うのです。

                                                                  

◆今回の類想で多かったのは、

「鳥雲に入る」=人が亡くなる。

この発想でした。「人は死んだら星になる」の朝昼バージョンのような使い方が非常に多く、少々驚きました。

中には、「鳥雲に入る=人が死ぬ喩え」と受け止めているのかという句もあり、困惑もいたしました。

(例)三時二分鳥雲に入る弟よ

   また一人鳥雲に入る吾残し

  

◆さらに、以下のような類想例も多くみられました。

[心情を託す]

・ 亡くなった人を想う

・ 未来への希望と不安 → 入学 進学 転勤 転職 引越 結婚 帰郷 など

・ 平和 停戦への願い 祈り

・ 別れを想う


[雲に入る鳥の様子、それを見送る人の様子を詠む]

・ V字型

・ 一羽だけ遅れる 置いていかれる

・ 手を振る 見送る エールを送る

・ その一瞬を撮る


[鳥たちが去って]

・ 池や沼の水面が静か

・ また来年を待つ

・ 自分はここに残される

・ 置き去りの〇〇 おいてけぼりの〇〇


◆取合わせられがちな言葉は、以下のようなラインナップ。

・ 閉店 閉校

・ 廃校 廃屋

・ 退職 引退

・ 葬儀 墓碑 〇〇回忌


・ 地図 国境

・ 船 汽笛 列車

・ 畑仕事 農事 

・ 夕日


・ 卒業 学帽

・ 入学準備 ランドセル 制服(の裾を上げたり)


◆ありがちな場所としては

・ 海 岬

・ 峰  〇〇山を越えて

・ 子どもが去って空っぽの部屋

・ 屋上

・ 車窓 機窓 病窓

・ ロシア 北国 ウクライナ


◆季語そのものが七音なので、中七に入れればうまくいのでは! と考えた人もかなりいましたが、中七にこの季語が入ることで、意味が分断され、そこに失敗の原因があるケースもみられました。なかなか、難しかったですね、「鳥雲に入る」は……。


※今回の兼題「鳥雲に入る」中級者以上投句欄へのご投句は、投句数4012句、投句人数1564人となりました。以下、類想句の一覧です。


類想一覧(選外)

  • 雲に入る鳥は尾羽を上下せり

    片桐 洋

  • 辞表届出し鳥雲に入るかな

    鳥田政宗

  • 鳥雲に入る二ヶ月後の入寮

    チームニシキゴイ 太刀盗人

  • 大空の只一隅を鳥雲に

    石川順天

  • 鳥雲に入りて幽かに「新世界」

    ひいらぎ

  • 鳥雲に入るその先の空の色

    字坊人造

  • 鳥雲に入るやセピアのポートレイト

    KOMA

  • 鳥雲に入る戦争は続いてる

    立石神流

  • 先頭を追い越して鳥雲に入る

    竹内ユキ

  • 国境のこの字も知らず鳥雲に

    豊岡重翁

  • クレーンはお辞儀の角度鳥雲に

    高永 摺墨

  • 鳥雲に入られぬ国の戦禍かな

    またね

  • 鳥雲に入りて短き三回忌

    あたなごっち

  • 故郷へ帰る青年鳥雲に

    ひだ岩魚

  • 鳥雲に入りてあとには村ばかり

    戸井島はな

  • 鳥雲に見送るだけの六十年

    中村笙平

  • 鳥雲にせめて戦火の地を避けよ

    田口大寒六

  • 定年後帰郷する友鳥雲に

    かとしん

  • 恋人は消えたよ鳥雲に入るよ

    魔星蟲ダークネスライザー1世

  • 息子の名わすれし母よ鳥雲に

    里山疎水

  • ヒマラヤ越えんとして鳥雲に入る

    大阪駿馬

  • 寅さんが残した帽子鳥雲に

    とき坊

  • 親孝行出来ぬ間に鳥雲に入る

    りんごのほっぺ

  • 鳥雲に入る次の帰省はお盆

    相沢薫

  • 鳥雲に入る吾は次のステージへ

    山本蓮子

  • ミサイルを遣りすごし鳥雲に入る

    さとう夢虫

  • 風に揺るる「閉店」のビラ鳥雲に

    田中紺青

  • ミサイルの飛び交ふ空や鳥雲に

    愛燦燦

  • 鳥雲に入る故郷は水の底

    壱太

  • 鳥雲に入る新しき靴おろす

    川口雅裕

  • 鳥雲に入るパスポート持たぬまま

    柚和

  • 五兄弟ついに一人に鳥雲に

    宗平圭司

  • 鳥雲にこまちは山裾に消ゆる

    よみちとせ

  • 逝くこゑも産声もあり鳥雲に

    いこん

  • 姉逝きて鳥雲に入る何処かな

    前川一雄

  • 鳥雲に入るが一羽遅れる子

    SEWASI

  • 島国に島一万余鳥雲に

    里すみか

  • 見えねども空に王道鳥雲に入る

    ふじかつとび

  • Uターンの第二新卒鳥雲に

    春空えぬ

  • 靄めきし湯の高窓を鳥雲に

    青鷹

  • 鳥雲にセピアの写真焼く煙

    みゆむうしば

  • 鳥雲に入りて合格発表よ

    小林三太

  • 鳥雲に入る異動は最北の地

    鳳凰美蓮

  • 人生のタイトルは「未定」鳥雲に

    かめのべ

  • 雨繁く鳥雲に入りロシア路へ

    岡塚 敬芳

  • 惑ひなく鳥雲に入る嘴刺して

    灰頭徨鴉

  • 鳥雲に翼に風をたくわえて

    渋谷ヨモシ

  • 瞬くに鳥雲に入り空と化す

    仲 操

  • 戦火絶へ楽しげに鳥雲に入る

    だけわらび

  • 鳥雲に入りて荒ぶる北国へ

    宝塚御殿子

  • 鳥雲に入るや見送る剣山

    野中泰風

  • 今年また鳥雲入り兵士逝く

    森嶋 理子

  • 鳥雲に入る先はキーウかモスクワか

    鶴屋桃福

  • 鳥雲に入るしんがりはまだ不安定

    泥塗れのポスト

  • そのひとは鳥雲に入る日に逝かむ

    白月かなで

  • 鳥雲に入る制服の裾を上げ

    白崎華芳

  • 鳥雲に入るごとく母西へ旅立つ

    谷口 徳泉

  • 金ボタン鳥雲に入るいざさらば

    ストロガノフ

  • 鳥雲にがき大将は実業家

    髙橋弓女

  • 鳥雲に入りて忽ち黄昏るる

    まにあ

  • 叡山遠く掠め鳥雲に入る

    山川土時

  • 鳥雲に父待つ星に母逝きぬ

    秋内 壱玖

  • 荷作りのぶちぷちは鳥雲に入る

    さんざし

  • 鳥雲にサッと腰上げ鍬を持つ

    宮沢 韋駄天

  • 鳥雲に入り三年経て子部屋を出る

    葛飾シトロン

  • 網を打つ漁師のかなた鳥雲に

    あっくん

  • 祈るかな戦争知らぬ鳥雲に

    庭球人生

  • ロシア向き雲に入る鳥見失い

    松本 探句トップ

  • 現役を終えて定住鳥雲に

    おがたま

  • 子の新居は1DK鳥雲に入る

    はなだんな

  • 次々とみな逝きたまふ鳥雲に

    蓼蟲

  • 鳥雲に入るや吾娘また外つ国へ

    晴好 雨独

  • 亡き友の誕生日鳥雲に入る

    えりいも

  • 鳥雲に日がな点滴数えおり

    河村静葩

  • 友の顔鳥雲に入り星眺む

    紀杏里

  • 鳥雲に入るクレーン車の彼方へ

    角野角子

  • 鳥雲に入るランチ待つ最後尾

    もりたきみ

  • 別離の白煙鳥雲に入る

    粋庵仁空

  • 中立の願い消ゆる日鳥雲に

    あなうさぎ

  • 鳥雲にもとの自分に戻る旅

    藤倉密子

  • 鳥雲に入る吾はこの世にしがらむ

    野瀬藻石子

  • 親友も帰郷とや鳥雲に入る

    大谷如水

  • 鳥雲に入るはビルのまた向こう

    森無田

  • 鳥雲に入る父の十三回忌

    卓司

  • はぐれ鳥行きつ戻りつ雲に入る

    鶴岡木の葉

  • 医者もなき郷よ鳥さへ雲に入る

    片山蒼心

  • 鳥雲に入る遺影の君の笑顔

    縁穐律

  • 迷わずに光ある地へ鳥雲に入る

    葉るみ

  • 鳥雲に入る生家跡には他人の家

    露崎一己句

  • クレーン車を残して鳥は雲に入る

    下條ちりり

  • また一人墓石に名前鳥雲に

    ちょうさん

  • 鳥雲に入りゆく東京スカイツリー

    帝釈鴫

  • しんがりをふりむきもせず鳥雲に

    池田  凜

  • 鳥雲に入るこの人は側にいる

    田中勲

  • 青信号に変わりて鳥雲に入る

    尚茶

  • 鳥雲に空の彼方へ手をかざす

    ゆかりん

  • 鳥雲に入る長旅の荷とて無く

    小川若葉

  • 来る鳥に追はるる鳥や鳥雲に

    余田酒梨

  • 斎場の薄きけむりや鳥雲に

    瞳子

  • 幾年もこの今も鳥雲に入る

    佐藤 位相朗

  • 鳥雲に入る友空に還りけり

    開一

  • 里心鳥雲に入る群れなして

    雅由

  • 戦友荼毘に付され鳥雲に入る

    太之方もり子

  • 鳥雲に入り吾職を辞す時を知る

    平野孤舟

  • カバン軽く退職の日や鳥雲に

    一歩亭六案

  • 鳥雲に今年は何処へ帰るらむ

    羅美都

  • 鳥雲に入り揃えるは文房具

    佳葉

  • 子の荷物ダンボールに詰め鳥雲に

    音のあ子

  • 鳥雲に入る別れを告げるシルエット

    野原 華

  • 波静か鳥雲に入る龍飛崎

    れんげ畑

  • 鳥雲に入るや円周率の果て

    ちゃあき

  • 墓参り鳥雲に入る父笑顔

    松山トラチャン

  • 右に土佐左に伊予雲に鳥

    いごぼうら

  • 鳥雲へロシアの空に願ふ使者

    ふみ

  • かすみゆく帰国船鳥雲に入る

    秦 理露

  • 了えてまた単身赴任鳥雲に

    篠田ピンク

  • きつぱりと昨日を捨てて鳥雲に

    与志魚

  • 鳥雲に入る離れていても家族

    たかみたかみ@いつき組広ブロ俳句部

  • 鳥雲に入る飛んでいけ昨日の私

    葉月ことり

  • 鳥雲に入る跡濁さずに退職す

    望月朔

  • 鳥雲に入りて独りの部屋眺む

    榊 夏葉

  • 鳥雲に吾は家路を急ぐなり

    喜多輝女

  • 九分九厘単身赴任鳥雲に

    あみま

  • 鳥雲に単身赴任あと幾夜

    きゅうせき

  • 鳥雲に入り娘は上京す

    紋舞蘭

  • 子育てに惑ふ日々あり鳥雲に

    澤田捨楽

  • 鳥雲にクラーク像は未来指す

    水無月 

  • しんがりのおくれ気味なる鳥雲に

    金太郎

  • 鳥雲に入れどベッドを出でぬ犬

    えらいぞ、はるかちゃん!

  • 鳥雲に入る夫見送る日課かな

    ぐりぐら京子

  • 殿の鳥雲に入る日暮れかな

    一純。

  • 鳥雲に入る初めての孫の岐路

    一茶お

  • 鳥雲に入るなほ人生は続く

    永想

  • 鳥雲に入る父はシベリアに果て

    岡井風紋

  • 一切の荷つくり終え鳥雲に入る

    楽和音

  • 振り向かず鳥雲に入る西の空

    割り箸

  • 茜空先急ぐ鳥雲に入る

    宏峰

  • 音もなく鳥雲に入る一周忌

    広瀬八重子

  • 群れにゐて一人と思ふ鳥雲に

    香壺

  • 鳥雲に早期退職早や二年

    佐久凡太郎

  • 鳥雲に入るや自在に編隊す

    佐藤のぶ子

  • 紛争の地を目指すのか鳥雲に

    山くじら

  • 異動内示は秋田鳥雲に入る

    山吹なお

  • 無国籍鳥雲に入る北の国

    勝瀬啓衛門

  • 鳥雲にこの恋ここに捨ててゆく

    小池博美

  • 留鳥の烏に追はれ鳥雲に

    達坊

  • 鳥雲に入ると共に姉もゆく

    桃まんじゅう

  • 鳥雲に入る消ゆるものすべて美し

    風の鳥

  • 同窓会「またね」の次は鳥雲に

    風間 燈華

  • 年下の友逝きて鳥雲に入る

    嵐菜

  • 鳥雲に影となりゆく日本海

    涼月橋

  • 鳥雲に入る友達のままでいる

    澪那本気子

  • 鳥雲に単身赴任解かれたる

    海猫

  • 鳥雲に入る山の端や吾はここに

    逢來応來

  • 亡き夫の納骨やつと鳥雲に

    オリーブ ミーコ

次回の兼題も
皆さまふるって投句してください。
お待ちしています!

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