類想一覧(選外)
塩むすびほろりくづれて麦の秋
ウロ
麦の秋じっと眺める雀おり
朝ぼらけ
焼きたてパンの香り飛ぶ麦の秋
島陽広
杖つきて通うリハビリ麦の秋
かなこ
バス降りて我が故郷麦の秋
宮沢 韋駄天
こだはりの麺の産地や麦の秋
春よ来い
竹竿の布団ふかふか麦の秋
スマイリー
マスクとれ会話も弾む麦の秋
福島 昇天
麦秋や豆柴添ってランニング
望月 円
訳も無く駆け出す吾子よ麦の秋
知恵さん
麦の秋真っ新が良い白Tシャツ
上田ASH
マッサンとリタの余市よ麦の秋
里山疎水
軍用車列なす国も麦の秋
たていし 隆松
麦秋や肩に喰ひ込むおんぶ紐
卯月紫乃
麦の秋焦がれどもナウシカは来ぬ
三無季生
万歩計前へまえへと麦の秋
牛歩
麦の秋次来るバスは四時間後
諫鼓苔深
杖取りて歩いてみれば麦の秋
しみずこころ
ペダル漕ぎ母のおつかい麦の秋
ちはやふる
乾杯の一口旨し麦の秋
はなだんな
麦秋や烏群れ飛びゴッホの絵
マタネ
むかふから亡父来さうな麦の秋
月影 重郎
考に似た後ろ姿や麦の秋
宗平 圭司
放課後の進路面談麦の秋
東原桜空
ランドセル吾子の手を振る麦の秋
野田遊水
握り飯両手に喰らふ麦の秋
中田邦光
麦の秋畑耕し大ジョッキ
桃月あかり
皆すぐにかくれんぼする麦の秋
三崎扁舟
帽子の子あぜ道かけて麦の秋
かすみ草
戦争を知らざるままに麦の秋
宍戸もくれん
手作りの窯で焼くピザ麦の秋
余田酒梨
ランドセル放りて一人麦の秋
酔蚊眼
越前の一両車行く麦の秋
奥田早苗
麦の秋水車ゆっくり動き出す
飛翔
ランドセル走る畑は麦の秋
駄々
愚図る子が眠ればずつしり麦の秋
林りんりん。
どこまでも真つ直ぐなみち麦の秋
國本秀山
吾子の靴小さくなりし麦の秋
魚里ユウリ
麦秋を行くタクシーや軽井沢
魔星蟲ダークネスライザー1世
麦の秋ナウシカが見た地平線
河本詠兎
耳も鼻もくすぐったいよ麦の秋
立川茜
麦の秋今描いたよなゴッホの絵
野州てんまり
麦の秋ふと降りてみる知らぬ駅
おのまい
麦秋に音聞こえ来るヘリコプター
須磨子
麦の秋サイクリングの君見惚れ
柴桜子
撮り鉄の並ぶ畦道麦の秋
さぶり
麦秋や泡立ちのぼり琥珀酒
やっせん坊 池上
麦秋のセスナ大きく旋回す
鈴木麗門
にっくきカラスを追ったら麦の秋
羅蒐
マッサンの声の響きや麦の秋
上津 力
麦の秋「ちゃん」とかはもう恥ずかしい
藤岡美波
麦の秋烏の群れの遊び飛び
羅美都
青を着て犬と闊歩す麦の秋
鳥羽ししまる
麦の秋盆に山盛り塩握り
太之方もり子
麦秋や王蟲現れそうな碧
高岡 春雪
去る者は追わず真っ直ぐ麦の秋
田辺ふみ
夕陽浴び帰る畦道麦の風
東 湘輝
踏まれ耐え大地の歓喜麦の秋
内田高雲
ナウシカの降り立つを待つ麦の秋
気のまま風
麦の秋ひょっこり現す犬の顔
石崎京子
チャリ押して歩幅合わせて麦の秋
江良 中
立ち漕ぎの少年ふたり麦の秋
タリタ クミ
麦秋や終の住処を此処と決め
中 兎波
久々の母の温もり麦の秋
坂 とき
フリスビー飛び跳ねる仔の麦の秋
永井春蘭
ポニーテールをなびくに任せ麦の秋
白猫のあくび
麦秋を行く人の手にあるマスク
坂本梨帆
蒲生野をザワザワ揺らす麦の秋
とき坊
下校する子どもの声や麦の秋
紋舞蘭
大風に騒めく音や麦の秋
髙見艀舟
麦の秋記憶を辿り母の味
山本 マユミ
来た道も行く道もまた麦の秋
葛谷猫日和
天候と平和を祈る麦の秋
かとしん
爆音の遠くに聞こえ麦の秋
森 佳月
木洩れ日やみどり児眠る麦の秋
だけわらび
休憩にそれぞれのお茶麦の秋
不二自然
夕空へ直線の道麦の秋
かぬまっこ@木ノ芽
麦の秋熱々の湯気うどん汁
まつといのいち
次回の兼題も
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選者コメント
夏井いつき選
兼題 麦の秋:初夏/時候
【傍題】麦秋(むぎあき) 麦秋(ばくしゅう)
今回の兼題「麦の秋」を実作する時のポイントは、これが時候の季語であることです。
本来、時候の季語は映像を持たないものがほとんどです。例えば、「初夏」「夏来る」などの時候の季語は、季節の感触はありますが具体的な映像はありません。
が、「麦の秋」は、熟れた麦畑の映像を内包している点において、時候の季語としては珍しい種類のものです。
今回の投句には、時候ではなく、植物の「麦」あるいは「麦畑」として詠んでいると思われる句が沢山ありました。そのような句は、残念ながら、選句の篩から落とさざるを得ません。
解釈によっては、時候の季語として許容される場合もあり、なかなか時間のかかる選句となりました。(例えば、「麦秋のまんなかに〇〇」等は、「麦秋という季節のなかで」的に読めばOKか、という類いです。)
そんな「麦の秋」に関しての類想、こんな感じです。
【類想パターン】
◇想い
・ 郷愁 ふるさと
・ 戦禍の麦秋 平和を祈る
・ 故人を想う
◇五感
・ 黄金色 金色 金糸雀色 黄色 → 風や声も金色
・ 空の青と金色の対比 → ウクライナの国旗への連想
・ 明るい → 景色だけでなく声や匂いや心も
・ 香ばしい
・ 熱を帯びているような
・ 痒い ちくちくする
・ 乾いている
◇麦の様子?
・ 空へまっすぐ伸びる 空を向く
・ 禾 芒
◇連想しがちな作品
・ 風の谷のナウシカ → その者青き衣をまといて金色の野に……
・ ゴッホの絵 ミレーの絵
・ 小津映画の『麦秋』
・ サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』
◇景色 時候ではなく「植物の麦」の景色を詠んでいる感じのものも……
・ 一面の麦の秋 車窓に見る麦の秋
・ パッチワーク モザイク
・ 自転車(立漕ぎしたり疾走したり) 通学の子供たち
・ 子供がかくれんぼ 子供が駆ける
・ 犬と散歩 犬が吠える
・ 手を振る 名を呼ぶ
・ 雀や鴉などの鳥
・ 夕日に染まる景色 落暉
・ 列車 ローカル線 単線 バス 旅の途中 車窓
・ 軽トラが走る
・ まっすぐな道 一本道
◇収穫後は……
・ パン → バター 人気のパン屋さん
・ うどん 製麺 讃岐
・ ビール → 乾杯 飲み干す 咽喉越し
◇オノマトペ
・ ざわざわ ざわわ さわさわ
・ ちくちく
・ ゆらゆら ゆらら ゆらり
◇その他
・ 踏まれても〇〇 踏んで〇〇(麦踏みが背景にある?)
・ 美瑛 十勝 近江 明日香 讃岐
佳作・秀作・特選の作品は、これらの類想を「共感の土台」として生かし、独自性や真実味を加えたものが並んでいます。さらに、季語「麦の秋」の本意については、特選&秀作の選評にて触れております。参考にしていただけたらと思います。