【佳作】
野送りの過る四つ辻麦の秋
伊江かつじ
麦秋の鼻息太き輓曳馬
あまぶー
麦秋の本気の太陽とはこれか
イサク
サミットは海辺のホテル麦の秋
木染湧水
船長の墓標に帽子麦の秋
広瀬 康
麦秋や紙ストローの噛み心地
ギル
木の窓の病室をとふ麦の秋
磐田小
カミソリウオの潮流任せ麦の秋
絵夢衷子
❌❌❌刺繍は魔除け麦の秋
水須ぽっぽ
麦秋(むぎあき)や埴輪の犬は舌を出し
伊藤映雪
ブーニンのソナタ溢るる麦の秋
坂口いちお
ドアひらくたび麦秋のバス傾ぐ
ツナ好
麦の秋乳重さうに飲む赤子
城内幸江
納屋の戸を立てて麦秋暮れぬまま
向原てつ
麦秋の僧の脱輪現場かな
大黒とむとむ
土くれは男を創り麦の秋
西村青夏@金カル
砂金さらさら麦秋のせせらぎ
村瀬っち
麦の秋お迎えと云う死の仕方
松山松男
ひよこ鑑定士二年目麦の秋
千早安寿
6Bを円錐に削ぐ麦の秋
庭野環石
麦秋をドコドコ揺する単気筒
トポル
麦秋の身を金星と浴みせり
佐藤儒艮
踏切に牛の隊列麦の秋
木村隆夫
優しすぎてロボットみたい麦の秋
大小田忍
古墳とふ森の円周麦の秋
おかげでさんぽ
鉄塔を消失点に麦の秋
ほしのあお
友逝きて麦の秋なる風白し
ことまと
横軸の麦秋縦軸の二人
かん かんし
風を読む太陽の塔麦の秋
野瀬藻石子
いじわるなパン屋のむすこ麦の秋
さざなみ葉
麦の秋影を映して着陸す
ぐりえぶらん
おひさまは白かつたんだ麦の秋
剛海
我が犬の忌や麦秋をゆく気球
ぞんぬ
中老の歌昂ぶるや麦の秋
あねもねワンヲ
麦秋の濡れて陣痛めくひかり
じゃすみん
麦秋のコロッケ耐油紙がぬくい
阿部八富利
ぎようせん飴ぐりぐり麦の秋さわさわ
めいおう星
麦秋や鵞ペンの先の縹色
明惟久里
麦の秋柵なき鉄路西方へ
夏 六葉
麦の秋スーツケースにトルストイ
くま鶉
ジャイアンの土管奪還麦の秋
すずしろゆき
原寸の地図に身を置く麦の秋
松野昌玄
先生も父さん知らぬ麦の秋
植木彩由
麦秋の刑務所に作業着ゆれて
伊予素数
麦秋の夜の画の絵の具みな猛けて
南方日午
黒パンは固くすっぱく麦の秋
伊藤順女
夕暮れのチャイの香りや麦の秋
いたまきし
本土より医師運ぶ船麦の秋
和泉攷
麦秋のシチリアの海リュートの音
中岡秀次
人体模型の肺しづか麦の秋
吽田のう
麦の秋にほひは目には見えぬ色
太田栗青
断乳のあさ麦秋のオムレット
海月のあさ
麦秋や岬に海防藩士墓所
君島笑夢
鎖骨が好きよ麦秋の単気筒
西田月旦
麦秋や瞼は風を折りたたむ
大西どもは
麦の秋御神体なる古狼の尾
居並小
校庭にオルガン運び麦の秋
えりべり
鍛冶を待つ錆の匂ひや麦の秋
堀邦翔
麦秋の朝よ虹めく噴霧器よ
杜まお実
痩せゆくはケバブの円柱麦の秋
せり坊
麦の秋鳥の言葉は詩の言葉
桃園ユキチ
麦の秋鴉の黒はやさしき黒
可笑式
水道の匂ひ明るし麦の秋
大和田美信
颯爽と馬運車過る麦の秋
いつか
あゝ猫のうなじ淋しい麦の秋
RUSTY=HISOKA
猫の目の金色麦の秋さわさわ
ピアニシモ@金カル
リヤカーは日本のことば麦の秋
椋本望生
麦秋や窓開け放つ牧夫寮
大庭慈温
ピザ窯に宿りし神や麦の秋
空木花風
列車は麦の秋の波動を漕いで
本村なつみ
麦の秋荷台に二個の大薬缶
吉武茂る
黙読のこゑの反響麦の秋
木野桂樹
麦秋や海にめり込むバルク船
平良嘉列乙
麦秋や実験室のみづを飲む
水鏡新
装蹄の焦げつくにほひ麦の秋
螺原トモ
全集の表紙はゴッホ麦の秋
渋谷晶
麦の秋楽器工房まで2㎞
朱鷺9条湯八
鶏小屋のはだか電球麦の秋
予州西条藩 蔵原 貢
チオビタごくごく麦秋のダンサー
松本笑月
さんざめく島の酒蔵麦の秋
平本魚水
つなぐ手の麦の秋から口語体
酒井おかわり
ブラームス不協和音の麦秋に
片平仙花
窯焼けて麦秋の火を降りかぶる
古瀬まさあき
麦の秋十勝の史誌に祖先の名
佐藤烏有
麦秋のカルボナーラの粘度かな
コンフィ
たこ焼きは地球のかたち麦の秋
三重野とりとり
麦秋や普請場にイタリアの旗
主藤充子
口笛はいつか寮歌に麦の秋
あつちやん
麦の秋丘の途中の醸造所
大久保加州
麦秋へきゆぽんと愛のコルク飛ぶ
麦のパパ
人死なば三瓩の粉や麦の秋
さとうゆうき
二百年の干拓地なる麦の秋
久留里61
銭湯のマジョリカタイル麦の秋
もりたきみ
麦秋どっとバームクーヘンへ喝采
一斤染乃
ほろほろと麦秋のさみしきスコン
剣橋こじ
残地とは故なき痛み麦の秋
このみ杏仁
バイソンの肩隆々と麦の秋
井納蒼求
喉刺すは禾か麦秋のウヰスキー
あたしは斜楽
山と雲母だけいない麦の秋
藤永桂月
麦の秋トゥクトゥクやつと登りきる
広木登一
麦の秋荷台はかぜの一等席
古賀
黒革の撓みし聖書麦の秋
閑々鶏
麦の秋たばこのにほふあかんばう
板柿せっか
彼の鳥の名を知りたくて麦の秋
さく砂月
バタンコのラジオ賛美歌麦の秋
妹のりこ
訛りある防災無線麦の秋
抹茶子
麦秋のひかりへ翳をなすサイロ
にゃん
よそほひはしろ麦秋を汚したか
冬のおこじょ
青銅の酒器の神獣麦の秋
玉響雷子
思慮浅いなりの転職麦の秋
青海也緒
夜明くれば持鈴の響く麦の秋
桜井教人@金カル
麦の秋バステト神の硝子の眼
三月兎
抑揚の豊か麦秋の嘶き
さとけん
ハモニカは涙腺の鍵麦の秋
山本先生
豊かなる鶏冠の震へ麦の秋
夏椿咲く
コインロッカー閉め麦秋の父祖の地へ
春海のたり
麦秋を遺骨さがしてゐるのです
緑の手
麦秋の風や鉛筆削る音
大津美
音割れの畦のラジオや麦の秋
てるきち
琴電のふみきりの音麦の秋
じゅんこ
麦秋の宿や海辺のカフカ読む
いくたドロップ
また風に懐かれちやつて麦の秋
比良田トルコ石
オルガンを手回し麦秋のポルカ
嶋村らぴ
鴉躍り出る麦秋の銃声
長谷機械児
斎場へ大きな夕日麦の秋
富山の露玉
麦秋の迂回路ピザの旗見え来
いさな歌鈴
枕木の積まれしままの麦の秋
也和
うたごえは風を生むもの麦の秋
あなぐまはる
コクコクと霊水を汲む麦の秋
谷川ふみ
お日様は大きな迷子麦の秋
玉庭正章
太陽風吹荒れ麦の秋しずか
あなうさぎ
麦の秋吸ってアルルの陽を浴びる
地球人
麦秋の国より麦秋の国へ
理酔
麦秋や小さき太陽打つ鍛冶屋
浦野紗知
麦秋の夕や感嘆符は無音
八日きりん
見えてない星もゆれます麦の秋
島田あんず
絶版の揃ふ図書室麦の秋
亘航希
麦秋や進めきれいなビートルと
うた 歌妙
模試終えて麦の秋なる焦げ臭さ
山内彩月
盗掘の墓はその下麦の秋
衣笠 野波
ゆる抜きのみづ生臭し麦の秋
あずお玲子
チェロは機上北へ北へと麦の秋
新子熊耳
麦秋や金糸雀の餌買いに出る
東京堕天使
原発が雀の寝座麦の秋
ふじかつたび
鳥になるヒジャブの少女麦の秋
杏乃みずな
麦の秋空はたましひ蒸留所
ちゃうりん
ウフィツィの分厚き図録麦の秋
周防の兎
麦秋や象の墓場のごと重機
樫の木
麦秋や犠尊に酒のなみなみと
西川由野
麦秋の鼓膜や月の音たぷん
とまや
漂泊の人でありたし麦の秋
看做しみず
てんと鐫美濃石に罅麦の秋
丁鼻トゥエルブ
出棺の鳩白し麦秋眩し
紫小寿々
麦秋や化石に貝の不揃いに
門田なぎさ@金カル
麦秋の波動ざらざらざら胎児
千夏乃ありあり
東京に居場所はのうて麦の秋
楽花生
麦秋の川はひかりの芯を生む
常幸龍BCAD
麦の秋十二神將腹が減る
まんぷく
亡き弟の車引き取る麦の秋
世良日守
自転車を白衣離島の麦の秋
ぐでたまご
麦の秋たらふく肺を光らせむ
錆田水遊
音のなき戦禍のニュース麦の秋
竜胆
応援旗ぱあんと開く麦の秋
あまぐり
麦秋の門扉に墜ちる禽の羽根
内藤羊皐
石灰をけがす跳躍麦の秋
加座みつほ
信楽の大壺洗ふ麦の秋
谷本均
太陽の肋骨あたり麦の秋
まこちふる
口笛はルパン三世麦の秋
きのえのき
麦の秋太陽丘に不治の胼胝
播磨陽子
空という雲の浴槽麦の秋
二重格子
うちぬきの水の勢ひ麦の秋
あみま
ビーバーのダムは水の香麦の秋
さくさく作物
発酵の兆す夜赫し麦の秋
柚木みゆき
転職の履歴書麦秋へ放つ
倉木はじめ
麦秋やピザ屋の朝は薪を選る
いかちゃん
空といふはるかな器麦の秋
登りびと
真昼間の月の薄目も麦の秋
ぐ
古墳への閂軋み麦の秋
石田将仁
鳥だけをただただ描いて麦の秋
橘鶫
麦秋や牛舎に回る換気扇
祐
麦の秋泡を吐く藻の影は濃し
石塚碧葉
麦秋や牛乳瓶の口厚し
栗田すずさん
最果ての赴任地麦の秋ならば
さかえ八八六
広く敷く真白き卓布麦の秋
亀田荒太
蛇の死を妊婦が跨ぐ麦の秋
ふもふも
麦秋や平らとはいえない平地
たーとるQ
麦の秋埴輪の歌いだしそうな
綾竹あんどれ
レイチェル・カーソン集売つて来し夕麦の秋
椿 佳香
次回の兼題も
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