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中級者以上結果発表

2023年5月20日週の兼題

蜘蛛

【曜日ごとに結果を公開中】

【類想】

選者コメント

夏井いつき

兼題:蜘蛛 三夏/動物

【傍題】蜘蛛の巣 蜘蛛の囲 女郎蜘蛛 蜘蛛の子 袋蜘蛛 蜘蛛の太鼓


まずは、ご注意から。

これは毎回多かれ少なかれあることですが、変換ミスに気づかずにそのまま送信してしまうケース。例えば、

「雲の囲を抜け天空へ吾が大志」

どう考えても「蜘蛛」の変換ミスだとは思うのですが、こちらで好意的に直すことはやっておりません。投句の際の確認を習慣づけることも、俳筋力の一つだと意識して下さい。


今回の傍題に「蜘蛛の子」があったものですから、「蜘蛛の子を散らす」という慣用句をそのまま使っているものが散見しました。蜘蛛ではなく、明らかに人間の子供のことを詠んでいるもの等です。

これは季語にはなりませんし、蜘蛛や蜘蛛の巣の柄、模様なども、季語としては機能しません。

 

「じんっと来て蜘蛛の子散らし成らぬ足」→ 仙遊という茶事(裏千家の場合)は茶点て・花入れ・香焚きを客が回り持ちで行い、総礼の後一斉に元の席に戻るのを蜘蛛の子散らしと言います(作者コメント)


こういう言葉があることを、私は今回初めて知りましたが、これも季語とは言い難いものです。本サイトでは、基本的に季語を兼題として出題していることを、まず念頭に置いて下さい。



【類想例】

◆ 縁起が良い 悪い(多数!)

・ 朝の蜘蛛は縁起が良い(から殺してはいけない) 

  → 朝蜘蛛を見たからいいことがある 今日は晴れ!

・ 夜の蜘蛛は不吉

  ※ が、夜や宵の蜘蛛が縁起がいいという説もあり

  ※ 蜘蛛自体、縁起がいい動物だという説もあり



◆ イメージ、あるいは自分(人)におきかえて詠んでいるもの

□ 神話 小説などへの連想

・ カンダタ 『蜘蛛の糸』 芥川 龍之介

 → 直接詠んでいなくても、これを踏まえていると思われる句も多数

・ 谷崎の『刺青』

・ 土蜘蛛(能、歌舞伎の演目)

・ アラクネ(ギリシャ神話)

・ 『蜘蛛女のキス』(小説、映画)


□ イメージ

・ 不気味 恐ろしい

・ 孤独

・ 妖しい 艶めかしい(女郎蜘蛛からの連想?)


□ 蜘蛛に自分や誰かを重ねる

・ じっと耐えて待つ

・ 自分も孤独

・ 悪役 敵役

・ 故人の生まれ変わりと思う



◆ 蜘蛛と人間の関わり

□ 蜘蛛と人間

・ 蜘蛛の巣をはらいながら進む 藪漕ぎ

・ 蜘蛛の巣が顔や髪にべったり

・ 蜘蛛の巣をはらうとき「ごめん」と謝る

・ はらってもはらっても蜘蛛の巣 はらっても次の日にまた蜘蛛の巣


・ うっかり掃除機で吸い込んでしまう

・ 蜘蛛を踏んでしまう 潰してしまう

・ ティッシュ(ちり紙)でつまんで捨てる


・ 何かしているところを蜘蛛に見られている 睨まれる

・ (人が)ぶら下がっている蜘蛛を見ている

・ 蜘蛛と目が合う 


・ 蜘蛛と蜘蛛を戦わせる(蜘蛛合戦)

・ 蜘蛛の糸を捕虫網代わり


・ 蜘蛛を見て悲鳴をあげる 逃げる 殺す(嫌い派 苦手派)

・ 蜘蛛に話しかける 蜘蛛に名前をつける(蜘蛛はともだち派)


□ 人間の生活、行動の背景的な蜘蛛(の巣)

・ 主のいない場所 部屋に巣くう蜘蛛

・ しばらく使っていないもの(自転車とか杖とか)に蜘蛛の巣

・ 廃屋 空き家を守る 主となる

・ 自販機に蜘蛛

・ 蜘蛛が門番のよう

・ よくいる場所

  → 部屋の隅 何かの裏 古いトイレや浴室 車のドアミラー 

  → 墓 仏壇(生まれ変わりかも……の発想も)

  → パソコンの画面を這う マウスポインタを追う

  → 車のサイドミラー 物干し竿 



◆ 現実の蜘蛛 あるいは蜘蛛の巣などを詠んでいるもの

□ 蜘蛛の生態 様子を詠む

・ だるまさんがころんだ(ちょっと動いては止まる)

・ バルーニング(風に乗って遠くへ移動する)

・ 蝉を喰う 蝶を喰う

・ 巣の真ん中にいる


・ 巣を作らない蜘蛛もいる

・ 実は益虫

・ 蜘蛛の抜け殻

・ 交尾の後 雌が雄を喰うことがある


・ 脚が取れている蜘蛛 七本だったり五本だったり


・ 忍者のよう

・ 蜘蛛が「笑う(嗤う)」


・(蜘蛛がぶらさがる様子を)振り子 バンジージャンプ ぶらんこ

・ 蜘蛛の巣の向こうに青空

・ 幾何学模様 曼荼羅模様 迷路 あみだクジ

・ ちょっと歪 


類想例を上げれば限りがありませんが、初級でも中級でもとにかく多かったのが、これです。

「蜘蛛の巣」→「朝露や雨滴がきらめく 雨上がりの蜘蛛の糸」→「真珠や宝石 レース ビーズ 数珠など」を詠んだ句。

この様子を詠みたい気持は分かりますが、一物仕立てとしてこれを成功させるためには、かなりの俳筋力が必要。類想を抜け出すための唯一の方策は、黙々と筋トレを続けるしかありません。長く続けていけば、誰でも筋肉は身に付きます。ご一緒に鍛錬してまいりましょう。

(※『NHK俳句』第一週にて「凡人からの脱出」方法を解説しています。特に、八月第一週は「一物仕立て」についても解説していますので、是非参考にして下さい。)



※今回の兼題「蜘蛛」中級者以上投句欄へのご投句は、投句数3732句、投句人数1567人となりました。以下、類想句の一覧です。


類想一覧(選外)

  • 朝の蜘蛛武士の情けの安堵感

    気のまま風

  • 蜘蛛にさへ狎るる虚ろなわが生家

    松葉学而

  • 軒下に蜘蛛を見つけて巣を払う

    松浦照葉

  • 藪山や顔に連続蜘蛛の糸

    やまだ童子

  • AIの思考回路や蜘蛛の糸

    関椿

  • 女郎蜘蛛こと終え男も食らう由

    坂島魁文

  • あるじなく蜘蛛の囲のはためける午後

    江良 中

  • 竹の輪の蜘蛛の巣付けてさあ山へ

    パッキンマン

  • 蜘蛛の棲む鏡の裏の小暗がり

    くずもち鹿之助

  • 蜘蛛泳ぎ来たりてふわりふわり吹く

    haru_sumomo

  • 昼の蜘蛛に覗かれている情事かな

    まるちゃんにいさん

  • 蜘蛛の巣のバリア決壊秘密基地

    ヒロヒです

  • 蜘蛛糸の風に乗る先定めなき

    たていし 隆松

  • よく晴れて目覚め良き日や朝の蜘蛛

    みらんだぶぅ

  • 小枝をくるくる蜘蛛の囲の綿菓子

    ViVi杏梨

  • 糸引いて地獄へ降るる天の蜘蛛

    山内 負乗

  • 家の中神出鬼没蜘蛛走る

    午 勢至

  • 風来たる命綱断ち蜘蛛空へ

    満嶋ハト

  • 父の名の表札残り蜘蛛の糸

    ふゆの都々逸

  • 獲物待ち今日も日暮れて女郎蜘蛛

    大阪駿馬

  • 蜘蛛の囲に抗う蝶に蜘蛛出でり

    於大純

  • 軒下のいつもの場所の蜘蛛は居り

    望月ぽん

  • 閉農の納屋に居座る蜘蛛巣がき

    妄児

  • 大物を夢見る蜘蛛の待ちぼうけ

    月影 重郎

  • やはらかなティッシュにくるむ小さき蜘蛛

    一富士リリー

  • 蜘蛛の糸縋る亡者よ犍陀多よ

    しのはらまさし

  • 吾子が泣く畳の上の跳ねる蜘蛛

    坂 とき

  • 巣にこもる蜘蛛の孤独や吾もまた

    そうま純香

  • 蜘蛛よまだそこにゐたのか風呂上がり

    吉川拓真

  • 欲望の蠢く女郎蜘蛛の縞

    満る

  • 失恋し泣いたわたしをクモ笑う

    大野美波

  • 夜の蜘蛛猫からパクリ放つ外

    まつといのいち

  • 蜘蛛の巣の立ち塞がりて庭掃除

    パーネ・メローネ

  • 名作を閉じて見上ぐる蜘蛛の糸

    渡邉 花

  • カンタダや地獄に仏蜘蛛の糸

    東 湘輝

  • 蜘蛛の囲の繕い忙し風吹けば

    熊本与志朗

  • 蜘蛛の囲や空の真下の万華鏡

    西浦 貴浩

  • 蜘蛛の糸雨の残骸光る朝

    秋沙雨

  • 蜘蛛の糸細くて長い命綱

    鈴木由花子

  • 蜘蛛囲いカンダタ捜す文学論

    やっせん坊 池上

  • 蜘蛛の囲の銀や葉陰に虹と揺れ

    さいとう歌月

  • 蜘蛛の糸吐いて夜空を跳んでゆく

    八尾の正吉

  • 隈取りの茶色恐ろし女郎蜘蛛

    さゐあけみ

  • 深更の厠電燈女郎蜘蛛

    たつき

  • 野菜畑顔にかかりし蜘蛛の罠

    たなべ早梅

  • 蜘蛛の囲を両手で払い門口へ

    三水

  • ポインター?パソコン画面わたる蜘蛛

    尚茶

  • 蜘蛛の巣の蜘蛛のかからぬ不思議かな

    夢堂

  • 蜘蛛の糸よ吾を天国へ連れてゆけ

    亀亀子

  • 細足を残しなお行く蜘蛛清か

    雪だるま

  • 殺そうか生かしておくか蜘蛛見詰む

    多摩川風子

  • 蜘蛛の巣に雨の雫のシャンデリア

    きょんちゃん

  • 蜘蛛二匹糸の電話で会話中

    上田ASH

  • 蜘蛛の囲の厠おそろし寝小便

    びぼん

  • 指で追う敷居の蜘蛛や朝の縁

    川端こうせゐ

  • 蜘蛛は益虫穏やかに共存す

    砂月みれい

  • 雨粒のビーズ刺繍や蜘蛛の糸

    近藤承穂

  • 猫の視線の先に天井の蜘蛛

    藤 えま

  • 蜘蛛の囲や払ひてもまた払ひても

    ひろ

  • 蜘蛛の囲や影も見事なシンメトリー

    高木音弥

  • 独り居の壁をいつもの蜘蛛よぎる

    新多

  • またいたと蜘蛛を眺める厠かな

    眠 睡花

  • 白壁の蜘蛛と目の合う一刹那

    千早安寿

  • 動けぬやトイレの中を這いし蜘蛛

    橋野虎空

  • 玉の如き雨垂れキラリ蜘蛛の巣に

    淡谷高尾

  • 水を遣る植木に今朝も蜘蛛の巣が

    甘泉

  • 曼陀羅を編みし廃寺の女郎蜘蛛

    紫鋼

  • 大奥へ忍びし忍者女郎蜘蛛

    篠田ピンク

  • 蜘蛛の囲の虹色光る木陰かな

    増山 銀桜

  • 蜘蛛の糸垂らし給えと仰ぐ天

    麗し

  • 蜘蛛なれば待つだけの日も風静か

    紅小雀

  • 蜘蛛うごく雨粒うけて店じまい

    島陽広

  • 交はらば食はるるとかや蜘蛛の恋

    山もと あき坊

  • 脱衣場の蜘蛛と目が合い母を呼ぶ

    むねあかどり

  • 寺巡り蜘蛛の囲揺るる六地蔵

    六地蔵と狛犬

  • 蜘蛛逃げるクライミングの技超えて

    山法師彰子

  • 草丈や頬につきたる蜘蛛の糸

    ゆうじい

  • 嵐あとリノベ精出す蜘蛛のいて

    後藤方丈

  • まどい後のバルーミングかな女郎蜘蛛

    雅蔵

  • 蜘蛛の巣の守る叔母亡き廃屋よ

    ちょうさん

  • 蜘蛛の巣や間借りキラキラ雨の粒

    花空木

  • 顔に糸蜘蛛何処にや朝の庭

    はなだんな

  • 茶柱も立ち吉兆の朝の蜘蛛

    加賀くちこ

  • 丁寧も歪もあれど蜘蛛の個性

    みうらけんじ

  • 太古より蜘蛛は逆立ちして生きる

    小野山郵呆

  • 真っすぐに蜘蛛目の前のお味噌汁

    小田ビオラ

  • 逆さまの世を見る蜘蛛や餌を待つ

    はごろも856

  • 蜘蛛の巣やがんじがらめの虫ひとつ

    山本蓮子

  • 縦糸を風に委ねし女郎蜘蛛

    玲風

  • 蜘蛛の糸迷路の如く見えにけり

    紋舞蘭

  • 退治さる蜘蛛は囲を張り生きる者

    佐藤のぶ子

  • ほろ酔いの顔に蜘蛛の囲午前様

    雨李

  • 蜘蛛一度叩く必要ないと母

    だてまき

  • 大蜘蛛の網にからまる私かな

    音 超子

  • 蜘蛛の囲の捕らえし雨を光らせる

    秋星子

  • あの夜の蜘蛛の見てゐた一部始終

    あみま

  • 嗅ぐ蕾蜘蛛まで光る雨上がり

    柴口裕香里

  • 蜘蛛の囲をにんげんどもが亦壊す

    佐藤綉綉

  • 目の前の蜘蛛の殺生問ふOL

    毛利尚人

  • お太鼓をしょって待ち伏せハナグモよ

    菜々の花畑

  • 犬小屋が空いて蜘蛛の巣二十年

    恵勇

  • はえとり蜘蛛猫と遊ぶや同居人

  • 仏壇に一筋の糸くも垂るる

    冬野とも

  • 雨後の庭水玉光る蜘蛛の糸

    髙見艀舟

  • 母施設無人の実家蜘蛛主役

    森嶋 理子

  • 蜘蛛の巣の主の居ぬ間に掃いけり

    永井旅人

  • 風渡る主消えたる蜘蛛の城

    じゅんこ

  • おばあんち怖き厠の黒い蜘蛛

    矢沢どんぐり美佳

  • 少年の秘め事蜘蛛は知っている

    高橋風香

  • 蜘蛛の囲の蜘蛛はどこやら隠れゐて

    渡嘉敷五福

  • 蜘蛛の囲を編むを見てゐて日暮れけり

    桑本栄太郎

  • 傘で突く玄関先の蜘蛛の網

    こきん

  • 網棚に蜘蛛下がりおり塾帰り

    てつなお

  • 落し紙鼻先に蜘蛛降り来る

    ほうじ茶

  • だるまさんがころんだ蜘蛛には勝てん

    未茂李座

  • 蜘蛛の囲にかかりて光る雨滴かな

    塩野谷慎吾

  • 獲物待つ蜘蛛の孤独や軒の下

    二丁目

  • 雨上がり蜘蛛と目が合う藪の中

    れんげ畑

  • 未完成なる蜘蛛の囲のあちこちに

    吉田わさび

  • 朝の蜘蛛逃がし御利益待つてみる

    葉月けゐ

  • クモの巣に雫連なり首飾り

    内田高雲

  • 子等騒ぐ厠に太き女郎蜘蛛

    有田みかん

  • 蜘蛛生きる人去りし家の隅の隅

    水城

  • 糸つむぐ孤独のありや女郎蜘蛛

    愛燦燦

  • 鬱陶し頭にからむ蜘蛛の糸

    玉川 徳兵衛

  • 教室の窓から下がる蜘蛛見てる

    Karino

  • くもの糸ひとすじ降ろすシャカの手よ

    田絵

  • おはようと蜘蛛に挨拶就活へ

    宮沢 韋駄天

  • 蜘蛛の糸垂れてくれるか私には

    竹浦はさ

  • 蜘蛛の巣に玉なる雨の数珠つなぎ

    大谷如水

  • 空也吐く阿弥陀仏や蜘蛛の糸

    野々村澄夫

  • 蜘蛛の巣の向こうには黎明の空

    憩 真七桜

  • 糸もなく自由にはねる跳び蜘蛛よ

    寺木 風宣

  • 網張らば只堪へ待つは蜘蛛の性

    弥勒夕陽

  • 女郎蜘蛛一日動かず吾もまた

    いこん

  • 朝蜘蛛をおろおろそろと新聞へ

    岡田瑛琳

  • ごみ屋敷ルームメイトは女郎蜘蛛

    澪那本気子

  • 隈取りの背なで見栄切る女郎蜘蛛

    はれみちる

  • 定位置と決めているのか蜘蛛の囲よ

    もふ美

  • 蜘蛛の糸たどりて先に光あり

    朝ぼらけ

  • 雨あがり蜘蛛の巣透けて見ゆる空

    斧 的部

  • 除くとも又も糸吐く蜘蛛の居り

    卑弥呼

  • 一本の足とれた蜘蛛繕う巣

    細木さちこ

  • 不確かなよすがに縋る蜘蛛の糸

    リカ

  • 古民家に蜘蛛の巣もよう天井や

    中野風鈴

  • 露天湯の木枝に揺るる女郎蜘蛛

    ひと粒の種

  • 門柱に蜘蛛の巣キラリ多角形

    ゆぃ

  • 廃屋や雨粒抱く蜘蛛の糸

    眞熊

  • 縁ある玄関蜘蛛の巣の出迎え

    藤鷹圓哉

  • 蜘蛛とゐて縁起をかつぐ阿呆らしさ

    いなだはまち

  • 何処より現れ馴染む風呂の蜘蛛

    松元転石

  • 台所占領したり巨大蜘蛛

    篁 橙花

  • 下駄箱に棲みつく蜘蛛の威圧感

    国東町子

次回の兼題も
皆さまふるって投句してください。
お待ちしています!

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