【並選】

• ニンゲンを疑わぬ蜘蛛壁を往く

  ヒマラヤで平謝り

• 無農薬蜘蛛と一緒に三年目

  金子　田園　

• 思い出のコルクボードを踏む蜘蛛よ

  緑瀬 易義

• 比類なき蜘蛛の巣褒めて払いけり

  東京堕天使

• 水匂ふ朝陽を舐める蜘蛛ゆたか

  登りびと

• 壁当てで追いやる部室棟の蜘蛛

  ふるてい

• 独身の自宅療養蜘蛛の脚

  寺嶋杳杳

• 墓参り花に跳ぶ蜘蛛水に落ち

  石原しょう

• 表札の蜘蛛の巣掃ふ朝かな

  喜多丘一路

• 刑務所の消灯蜘蛛は鳴いてるか

  草臥れ男

• 安宿の電灯垂れて垂れる蜘蛛

  一の橋　世京

• 無意識の闇をさまよう夜の蜘蛛

  からすちゃん

• 終着まで相乗りし蜘蛛への未練

  川代つ傘

• 蜘蛛の囲の縮図の空を広げたり

  みつき　夏

• 断ち切りて顔上げし日の朝に蜘蛛

  白月　かなで

• 青空に焦がれて蜘蛛は傷を縫ふ

  村瀬っち

• オーバードーズ毒に捩れる蜘蛛を見る

  山田蚯蚓

• 花支柱一番乗りの蜘蛛の来る

  まりい@木ノ芽

• 蜘蛛の子等踊るごとくに涌きいづる

  坂土海夏

• 蜘蛛の囲のさても文様めく獲物

  酒井春棋

• 蜘蛛の巣や十二時半の通学路

  羽野あき

• 掃除婦の先ずは蜘蛛へと一礼す

  ぱぷりかまめ

• 怪しげな投資話や夜の蜘蛛

  山川腎茶

• 父も子も横綱となる蜘蛛探す

  鯛　風

• 大蜘蛛や徒党なき投資の孤独

  つくも果音

• 逃がそうと掴んだ蜘蛛の硬直す

  神山千世

• ちり紙で掴んだはずの蜘蛛の行方

  空流峰山

• カフェインを与えし蜘蛛は巣を乱す

  泥塗れのポスト

• 蜘蛛の囲の右下広く破れをり

  岸来夢

• 蜘蛛のいる飲み屋の椅子にアニメ好き

  小島神泉

• 節々が痛からうよと蜘蛛を見る

  花咲めだ香

• 見た目より几帳面です女郎蜘蛛

  かぬまっこ@木ノ芽

• 解説の一文字に蜘蛛作:ルドン

  安達りんだう

• 勝蜘蛛を掲げ凱旋男の子

  樹朋

• 蜘蛛はさびし糸吐きながら空のはて

  茫々

• あこがれの靴片方に蜘蛛のいる

  一条春枕

• 蜘蛛駆ける江戸川乱歩の青表紙

  富士桜花

• 子を散らし生きるよすがか通夜の蜘蛛

  高本蒼岑

• カムイ棲む錆びたSL蜘蛛乗せて

  北五帆

• 恙なく蜘蛛と共生父母の家

  田邉真舟

• 蜘蛛上へさらに上へと上りけり

  石垣　葉星

• 蜘蛛の子や一つだけ未来を選べ

  空木眠兎

• 窓に錆と光り指に糸と蜘蛛

  宇野翔月

• 吾が断を寿ぐやうに蜘蛛の跳ぶ

  白猫のあくび

• 蜘蛛の子のシンクの水に抗えり

  白薔薇

• 蜘蛛の巣微動ちょう新星爆発

  羅美都

• 鉛筆の埃や蜘蛛に導かれ

  海老海老

• 袋蜘蛛濃くなる雀卵斑の鬱

  美乎梛

• 蜘蛛の巣や巨大橋脚クレーン船

  よぶこどり

• 蜘蛛を食う蜘蛛や縁切り神社の帰路

  着流きるお

• 独り居の母を訪う小さき蜘蛛

  伊藤　柚良

• 一家で夜逃げ玄関に蜘蛛の巣

  石岡女依

• 蜘蛛見ても戦う闘志湧いて来ぬ

  丘るみこ

• 再稼働蜘蛛の太鼓があちこちに

  玉響海月

• 絵本置きぴょんぴょん蜘蛛を追う右手

  海老煎餅

• 十本の足丸めをり蜘蛛の死す

  淺野紫桜

• 真夜中の口笛らしき蜘蛛の声

  中村すじこ

• 部屋にただ咀嚼する蜘蛛命の音の

  山紗季茉悠海

• すんっとした被疑者バラバラの蜘蛛

  うめやえのきだけ

• 病む我と蜘蛛に優しき老母かな

  小島やよひ

• 蜘蛛の巣や二重三重裁判所

  どこにでもいる田中

• わづかに開けおく蜘蛛落ちし引出し

  靫草子

• 蜘蛛の巣をつつく子供のロックンロール

  星影りこ

• 映写機を横切る蜘蛛に慄いて

  紙威楓

• 蜘蛛の囲や昔廓の裏出口

  岡本　戎

• 夜の蜘蛛のするする降るる寺の居間

  八幡風花

• 蜘蛛飛べず泳げず無理に闘はず

  港のパン屋

• 神棚の邪気めくほこり蜘蛛の囲へ

  迫久鯨

• 復習に飽きた夜には蜘蛛出たり

  紅紫あやめ

• プロローグは一本の糸女郎蜘蛛

  渥美こぶこ

• 絡めたる糸屑めきし蜘蛛骸

  英子

• 蜘蛛の巣や朝のしじまの魔方陣

  立歩

• 病室の蜘蛛に花子と名付けし夜

  瀧川祥洞

• 叩かんで祖母ちゃんの家よるの蜘蛛

  野田遊水

• 蜘蛛の巣の絡まるスマホ依存症

  千田とまと

• 顔に這ふ蜘蛛を見てゐるウヱブ会議

  阿部八富利

• 民生委員蜘蛛の巣払ひ安否問ふ

  風の鳥

• 図書室の蜘蛛へと話しかけた午後

  さんざし

• 所在なくころがる蜘蛛の足一本

  斎藤さんけん

• 女羅漢と吾似の羅漢蜘蛛の糸

  夏目たんちゃん

• 牢名主めく蜘蛛よトイレボールよ

  ほしのあお

• 鎧戸に隠るる蜘蛛の長き脚

  もりたきみ

• 出張は三泊四日女郎蜘蛛

  よみちとせ

• 蜘蛛の囲の踏ん張つてゐる室外機

  杉尾芭蕉

• 寝違へて天井見上ぐ隅に蜘蛛

  紗羅ささら

• 長き腕テーブルにつき大き蜘蛛

  糸川ラッコ

• 聖めく伽藍の梁に下がる蜘蛛

  竹田むべ

• 蜘蛛五ミリ掌ほどの囲を張りて

  露崎一己句

• 蜘蛛の巣に囚われ月と金の星

  秋内　壱玖

• 老老介護郵便箱の蜘蛛囲い

  茉叶

• 熱く月語りし椅子へ蜘蛛着きぬ

  司啓

• 遊廓の蜘蛛は何色毒の色

  野原　華

• LPのジャズ掠れゆく夜の蜘蛛

  アロイジオ

• 家蜘蛛の逃げる方向当ててみる

  池　閑茶

• 休日や蜘蛛の背中に星二つ

  柿司 十六

• 未だ何も知らぬ蜘蛛の子風に散る

  木村となえーる

• 叩き潰したる蜘蛛ただぺつちやんこ

  宮村土々

• 走りだす蜘蛛八方に影を知り

  和泉明月子

• 大皿へ蜘蛛蜘蛛蜘蛛と垂れて来ぬ

  うた　歌妙

• 少し跳ぶ蠅虎のさらに跳ぶ

  菫久

• 管からの食事を見てる夜の蜘蛛

  仮名鶫

• 眩しくて朝は一人でゐたい蜘蛛

  海野青

• 壊されて巣のなき蜘蛛の慌てよう

  くみくまマフラー

• 蜘蛛の巣や反故にされたる覚書

  由づる

• 蜘蛛の糸垂れくる不条理な机上

  岬ぷるうと

• 手の平の蜘蛛としーんと語り合ふ

  らん丸

• ヘアカラーはロイヤルブラウン蜘蛛威嚇

  野山遊

• 打ち払えぬ蜘蛛の巣ドイツ製かよ

  謙久

• 蜘蛛ひとつ骸なりきる掌

  常盤あけび

• 蜘蛛が占領廃校後15年

  あっくん

• 張込みの刑事の如く蜘蛛は待つ

  中　兎波

• 地蜘蛛の巣を熱く集めし不思議の日々

  伊藤順女

• 蜘蛛の囲だんだん重くなる平和

  仁士

• 今日もまた断食ですか蜘蛛の糸

  浪速の蟹造

• 二冊目のスリラー夜の蜘蛛笑ふ

  芍薬@独逸

• 五限目は自習監督窓に蜘蛛

  東原桜空

• 校庭の応援歌医務室の蜘蛛

  玉野汐音

• 蜘蛛の句浮かばぬまま阿弥陀くじ

  川魚鮎

• 大蜘蛛の俄かに肩の火傷跡

  白玉みぞれ

• 蜘蛛の糸伸ばして星をつなぎみん

  石崎京子

• 蜘蛛の巣と雁字搦めのしきたりと

  リコピン

• 女郎蜘蛛製糸機械を腹に据え

  加和志真

• 蜘蛛袋破いてみたくなる衝動

  くろべぇ

• 片隅を蜘蛛の囲に貸す四畳半

  矢部重夫

• 蜘蛛の囲の闇に険しき乱れなく

  徳翁

• 玄関の蜘蛛を打ちやり蜘蛛と寝る

  葦屋蛙城

• 炉ばたやの蜘蛛おらぬやうおる上座

  しみず　茜湖

• 下宿屋の蜘蛛と格闘一時間

  鶴富士

• 透明の蜘蛛バツだらけのノート閉づ

  鬼殻

• 道路わき献花の枯れて蜘蛛一匹

  森　佳月

• ナンバーズ当たらぬ蜘蛛の巣は蹴散らす

  山本たか祥

• 蜘蛛だつて寂しがりやで人が好き

  杉柳才

• 手洗いの奥のブラシに蜘蛛の影

  那須のお漬物

• 登録し派遣し後は隣家の蜘蛛

  吉野川

• 朝の蜘蛛畳にそよぐまあるい死

  福良ちどり

• 本堂の闇の小銭と白き蜘蛛

  東田　一鮎＠金カル

• 捨てられぬ白黒写真蜘蛛の糸

  雨霧彦＠木ノ芽

• 異質だと懲らしめられる僕か蜘蛛

  正岡丹ん

• 親蜘蛛や鴨居の隅の白き巣に

  落人家楽人

• 蜘蛛の目ひかる剥落の宮柱

  春海のたり

• 大いなる食指や蜘蛛の飛んだ夜

  黒木水産

• 百点を取れた便所タオルに蜘蛛

  片岡六子

• 一匹の蜘蛛落ちてゆく寂光土

  月城龍二

• トイレの壁に蜘蛛がいる動かない

  ふくろう悠々

• 昨宵の蜘蛛の囲明けて橋となり

  沢胡桃

• 古本や幽霊蜘蛛の細き脚

  中岡秀次

• ごめんねごめんねごめんね蜘蛛はらう

  山香ばし

• 先生の鎖骨に蜘蛛や十五才

  水鏡新

• 祈息災御蜘蛛之主よあちらへと

  さく砂月

• 宿に解くスーツケースに家の蜘蛛

  向原てつ

• 蜘蛛の囲のまだ真つ新に朝まだき

  はれまふよう

• 『蜘蛛は良い虫蜘蛛は良い虫』落ち着け私

  笑姫天臼

• 足裏の蜘蛛の体液蒼白し

  梨西瓜

• 強震や白壁走る夜の蜘蛛

  高田杏

• 父の鍬鎮座す土間の女郎蜘蛛

  中井無心

• ゆらめいて蜘蛛の劇場メヌエット

  小川野棕櫚

• 川音を掻く欄干の小さき蜘蛛

  小豆白虎

• 廃城の狭き光や蜘蛛見ゆる

  赤尾実果

• 日曜の教会蜘蛛は最後尾

  大和田美信

• 蜘蛛の足物の形を確かむる

  如月ドロップ

• ほんたうの神と繋がり蜘蛛のあし

  白庵

• 人前の蜘蛛メンタルは強くない

  桃桃こ

• 蜘蛛見れば静止また見れば足掻く

  二重格子

• 蜘蛛の囲の隣家の屋根を繋ぎをり

  千茶

• 午後九時の柱に蜘蛛の今日もまた

  全速

• 女郎蜘蛛見上げつ昇る阿修羅像

  acari

• 美しき生贄の息蜘蛛の息

  アンサトウ

• 夜の蜘蛛口上のごと来たりけり

  おきいふ

• 蜘蛛の囲纏ひ入院となりにけり

  蘭丸結動

• 金物屋大鍋小鍋の間を蜘蛛

  植木彩由

• 音もなく香もなく蜘蛛の沈みけり

  文月あつみ

• それみたことか蜘蛛の子を殺すから

  渡辺桃蓮

• 朝のチャリ小さき蜘蛛旅させてやる

  ぉ村椅子（志村肇）

• 月明り玄関に足太の蜘蛛

  松山茜柑

• 蜘蛛の糸垂れて香煙かたむきぬ

  小川都

• 手のひらの蜘蛛に忌日の斜陽かな

  豆柴

• ピアノ教室先生を待つ間の蜘蛛

  悪七兵衛

• 錆びつきしシャッターのあひ蜘蛛這ひて

  永田千春

• 告知されずっと見つめる蜘蛛の糸

  椿カナ

• 病期を聞きたり蜘蛛の動くを見る

  華風ルナ

• 畳の目無視して蜘蛛の這う葬儀

  字坊人造

• 繭のごところんと蜘蛛の巣は窓に

  オキザリス

• 蜘蛛の囲や日暮れのフェリーターミナル

  陽光

• バス停の屋根の蜘蛛の子へ浜風

  野州てんまり

• 蜘蛛の囲に絡まれた僧蜘蛛の飢え

  哲山（山田哲也）

• 飛びつくや蜘蛛の大顎の静まる

  スマイリー

• 立てかけしギタア響孔出でし蜘蛛

  藤白月

• 昨日見ぬふりした蜘蛛と思ひけり

  嶋田奈緒

• 蜘蛛走る見えざる糸を引き摺りて

  佐野すずめ

• 今はいとおしい怖がっていた蜘蛛

  西村小市

• 雨音や蝿虎を飼ふをんな

  佐々木のはら

• 震度5の窓辺揺れる蜘蛛と獲物

  田中ミノル

• ひかりはく蜘蛛はきれいになりたくて

  千夏乃ありあり

• 悪口のバレた人から蜘蛛になる

  和泉次郎

• 旧道の木々の蜘蛛の巣ごとに蜘蛛

  ももたもも

• 女郎蜘蛛五右衛門風呂につかりけり

  田口大寒六

• 蜘蛛ゆるる崩れ始める祖母の家

  秋野茜

• 大蜘蛛のそろりと戻る選果小屋

  ゆすらご

• ビルマ琥珀の中や蜘蛛眠る

  野中泰風

• 蜘蛛の囲のせどわ抜ければ大漁旗

  鮫島しょうん

• 殺してはいけない蜘蛛を踏みにけり

  堀口盆堀

• 蜘蛛鳴くと云ふ夫のゐる日曜日

  夏の町子

• 教科書組み伏す蜘蛛の太鼓破る

  海星葛

• 蜘蛛走る引越の夜の四畳半

  泉晶子

• 蜘蛛の子の怒り鎮めよ地鎮祭

  金子泰山

• 蜘蛛の巣や夜逃げきれいながらんだう

  大山和水

• 蜘蛛ふまぬ今日の一善澄みゐたり

  長嶋佐渡

• 青き蜘蛛蔵王権現御開帳

  まぐのりあ@蚊帳のなか

• 蜘蛛のなき蜘蛛の巣実家解体す

  剛海

• 気がつけば蜘蛛の囲にいる出られない

  Nakahara結月

• 暗闇を右往左往や蜘蛛の糸

  高市青柘榴

• ふはふはときみはショパンのやうな蜘蛛

  渋谷晶

• やりかけの褪せしリリアン夜の蜘蛛

  沙那夏

• 蜘蛛を追う手でも目でもない何かで

  工藤雨読

• 読み止しの本渡りゆく蜘蛛独居

  つづきののんき

• 大蜘蛛は廻り縁より狙いをり

  伊予の大督寺

• 天井に棲む蜘蛛雨に追いやれず

  独星

• 蜘蛛の巣にとらわれてみる水しぶき

  西端真矢

• 蜘蛛の殻ひかり絡めて脱ぎにけり

  流流

• 蜘蛛登る空気の壁の険しくて

  田中勲

• 引き糸や夜な夜な蜘蛛のふぃらめんと

  島田あんず

• 蜘蛛住まう人体模型の心臓

  英ルナ

• 蜘蛛の囲の中に吾の影捕られけり

  小林昇

• 風雨負けぬ父船上の蜘蛛の巣

  西風　心鏡

• 動くもの蜘蛛だけとなる子供部屋

  陽乃姫

• 鳩時計蜘蛛わしわしと登りゆく

  森無田

• 蜘蛛が蜘蛛喰ひてなほ蜘蛛で在る宵

  縞ふみ

• 頻尿の夜やこの蜘蛛を友とする

  閑々鶏

• 袋蜘蛛見栄え悪いが造り堅し

  ぐりぐら京子

• 湯をかける離れの風呂の大蜘蛛に

  ぱせり

• 蜘蛛の囲や母の茶釜の伽藍洞

  主藤充子

• 暗記表ありし白壁小さき蜘蛛

  瀬央ありさ

• 張り終わり待ちて蜘蛛の巣壊す猫

  野原茉莉

• 巫の短き袴女郎蜘蛛

  土佐藩俳句百姓豊哲

• 朝の蜘蛛よ死ぬ夢をまた見たんだよ

  樋口滑瓢

• 諍ひの二人に夜蜘蛛垂れ下がり

  谷町百合乃

• 前髪はパッツン蜘蛛の糸ぷつん

  藍創千悠子

• 気力で起きる月曜の壁に蜘蛛

  南方日午

• 蜘蛛の巣の一辺長き夕まぐれ

  公木正

• 蜘蛛ぴょんぴょんペットボトルのフタでぽん

  しみずこころ

• 蜘蛛の糸漂ふ朝の自動ドア

  海峯企鵝

• もてなしの九谷の茶碗出せば蜘蛛

  おかだ卯月

• 結婚の条件蜘蛛をさわれるか

  梅井さきこ

• タワマンの開かぬ窓辺を飛べぬ蜘蛛

  田季たまき

• 八個目の蜘蛛の囲蜘蛛の留守なりき

  翡翠工房

• 寝室へ行かせてくれぬ蜘蛛がいる

  ゆみづき

• 義父逝きて鴨居の蜘蛛も消え去りぬ

  島田ポン吉

• 経の編む調べ妖しや蜘蛛の糸

  一久恵

• 日の透かす網溶けて蜘蛛空を這う

  佐藤 位相朗

• くもや蜘蛛お掃除ロボの腹の中

  たこぼうず

• 蜘蛛の巣を払ひて見入る創刊号

  桃香

• 永遠の指輪に嗤ふ女郎蜘蛛

  福花

• 踊る蜘蛛小指から中指へジルバ

  あかめちゃん

• 蜘蛛の巣に構うな進め秘湯へと

  細川鮪目

• 剥げ落つる瘡蓋のごと蜘蛛にほふ

  ⑦パパ＠いつき組広ブロ俳句部

• 蜘蛛の糸父は上から見ているか

  卓司

• 足縮め死にゆく蜘蛛の小さき腹

  吉川花ほっぺ

• 微かなる熱の気配や女郎蜘蛛

  大熊猫@四句八句

• 気配だけ感じてはゐる蜘蛛よゆけ

  中島穂華

• 土砂降りの始発いつもの窓に蜘蛛

  井田みち

• 荒天の監視カメラを袋蜘蛛

  秋月

• 本棚に蜘蛛の囲蜘蛛は書生めく

  源さなえ

• 蜘蛛静か眠りは途切れまた途切れ

  豆くじら

• 囲の真中蜘蛛は逃げ道あるだろか

  クロまま

• 蜘蛛の仔が溺れる雨が今日も又

  だけわらび

• 窓拭きや蜘蛛の滑らかなる歩み

  季切少楽＠いつき組広ブロ俳句部

• 蜘蛛の網しかと繕ふ蜑の指

  君島笑夢

• 蜘蛛はいつ瞬きするか巣に雫

  モリコリゴリ

• 家にも会社にも居酒屋にも蜘蛛

  森中ことり

• ガラポンの当りのティッシュ朝の蜘蛛

  吟　　梵

• 蜘蛛の囲へ日照雨しづかに蜘蛛はゐず

  卯月紫乃

• 蜘蛛の子や銃口の追うデモの民

  吉田竹織

• 蜘蛛の囲やけふの獲物は雲と星

  久保田Ａ

• 君知るや蜘蛛暗黙知形式知

  ＨＮＫＡＧＡ

• 蜘蛛こわいこどもと蜘蛛へ子守唄

  三浦にゃじろう

• 朝の蜘蛛放し一条銀の糸

  淡湖千優

• 蜘蛛の囲や日々のあれこれひっかかる

  竹村マイ@蚊帳のなか

• 蜘蛛掬ふビーカーに闇の質量

  白プロキオン

• 掲示板にモンタージュの目と土蜘蛛と

  砂山恵子

• 蜘蛛の囲に囚はれし蜘蛛女郎蜘蛛

  市橋正俊

• 蜘蛛の急降下糸の分かつ生死

  野瀬藻石子

• 下りてくる蜘蛛ひとり居の訪問者

  志古女

• 既に蜘蛛が居てハウスクリーニング

  ヤヒロ

• 蜘蛛の巣や三日続かぬ朝散歩

  山くじら

• 蜘蛛の囲は揺れぬ廃校にオルガン

  慢鱚

• 朝帰り置き配蜘蛛の囲の蔭に

  旺上林加

• 蜘蛛の糸咲くや小雨の防犯灯

  松本裕子

• 鬼蜘蛛に軒貸して母独り住む

  知恵さん

• 辻風に巻かるる蜘蛛の骸かな

  稲畑とりこ

• 市役所の記入机にて果てし蜘蛛

  一型

• 朝蜘蛛や農機具小屋の戸は黄色

  大久保加州

• 大蜘蛛に出くわす廊下夜勤巡視

  マタネ

• 踏んづけて蜘蛛の呪ひの怖気かな

  松本笑月

• 蜘蛛と吾れ手足ばかりが多い部屋

  戸井島はな

• 放りたる蜘蛛の糸吐きなほすがる

  はまゆう

• よくもまああのてこのてとくものくる

  月石　幸

• 鼻先に蜘蛛の囲のぞく囲碁クラブ

  剣橋こじ

• 解像度細める目玉蜘蛛の糸

  星夢　光風

• 見逃してやろうソファーの下へ蜘蛛

  ひでやん

• 火が消えて窯出しを待つ蜘蛛も待つ

  哲庵

• チョコ味と聞けば摘まめそうではあるが蜘蛛

  さるぼぼ@チーム天地夢遥

• 読みさしの辞書にごろんと夜の蜘蛛

  天東あさじ

• 埃てふ蜘蛛に怒りの拳なく

  青木りんどう

• 蜘蛛の囲の光まみれやさびる蜘蛛

  佐川碧

• 蜘蛛餌を襲ふ乗換駅の通路

  よかわもりお

• にげよにげよ蜘蛛はにげよと息ふうふう

  雨野理多

• 蜘蛛の囲をくぐりわが家の匂ひかな

  空木花風

• 復活の蜘蛛の囲一打出勤す

  海猫

• 伏線を回収されて蜘蛛は巣を

  岡根今日HEY

• 築山へ蜘蛛曙の色をはく

  三島ひめばしょう

• 蜘蛛の糸縦横枠糸繋留糸

  かんこ鳥

• 叩きたる耳より落ちて家の蜘蛛

  田夫

• ひさかたの古書の初項に走る蜘蛛

  宥光

• 廃校の前のバス停蜘蛛走る

  釋愚拙

• 蜘蛛じつと洗濯槽のなかにをり

  駒村タクト

• 野辺に佇ち遠きふるさと蜘蛛の飛ぶ

  青藍蒼

• 定まらぬ視点ひたひた蜘蛛が来る

  青海也緒

• 蜘蛛の囲やLINEに並ぶ君の嘘

  新山晶花

• 大蜘蛛のいつも変わらぬ場所に座す

  田畑せーたん

• 姑の焚く五右衛門風呂の闇に蜘蛛

  小倉あんこ

• 部屋履きの影落ち蜘蛛の横っ跳び

  堀邦翔

• 仏間這う大蜘蛛母の化身とし

  塩風しーたん

• 月の影降りくる蜘蛛の顔の先

  奥田早苗

• ホップステップジャンプ朝の蜘蛛消えた

  宮武桜子

• しろがねの蜘蛛の囲透きて白き月

  たけぐち遊子

• 朱の灯る腹誇るらん女郎蜘蛛

  紫水晶

• 逃げる蜘蛛むげに平手で抑へけり

  kikuti-aya

• 襖絵に住まふごと蜘蛛在る仏間

  ひなた和佳

• 逃げまはる方へ逃げくる夜の蜘蛛

  華胥醒子

• まるで鬼の手ドアノブに巨大蜘蛛

  鷹星

• 蜘蛛ゆがむラベルレスのペットボトル

  清水千種

• 群像劇の相関図めく蜘蛛の糸

  俳句ファイヤー立志

• 蜘蛛の眼のみな虚ろなる飢ゑの色

  林山千港

• 家運良し蜘蛛の巣張れる大庇

  森一平

• 工場の灯りに揺れる蜘蛛の糸

  アントワネット@ノエル

• 蜘蛛の囲の一度は捨てし故郷かな

  清川鮎太

• かさこそと部屋の大きさ知る蜘蛛よ

  千原　十吾

• 蜘蛛は巣を張るや幾何学解けぬ我

  竹内ユキ

• 朝蜘蛛や真水のような夫でした

  薫夏

• 悲しみを食ろうて蜘蛛の囲に光

  河本詠兎

• こいつは蜘蛛こいつはドームの瓶の蜘蛛

  あいだほ

• 机上跳ねる蜘蛛よファイルもて窓へ

  津島野イリス

• 逃ぐる蜘蛛追はずたたかず父の通夜

  ぎんやんま

• 蜘蛛の囲に骸鐘なき鐘楼堂

  丹下京子

• 丸椅子や店主の所在蜘蛛に問う

  佐野明世

• 蜘蛛の巣に見とれて箒振り下ろす

  武知小雪

• 其処な蜘蛛あはずにすめばよきものを

  三重丸

• 団らんの壁を大蜘蛛過ぎりけり

  露草うづら

• 蜘蛛の囲に囚はれ揺れて恍惚と

  山野麓

• 山水の落ちる穴底巨大蜘蛛

  ふくびきけん

• 曼陀羅堂鬼蜘蛛は今食事中

  那夫子

• 規制線解かれぬ闇に蜘蛛震ふ

  パンの木

• 降り止みの蜘蛛の囲干して繕はず

  おぼろ月

• 門燈の蜘蛛は太るは戸は軋むは

  竜胆

• 生乾きのシャツの袖より蜘蛛のそり

  くま鶉

• 蜘蛛逃がす画廊の扉ギギと鳴る

  霜田あゆ美

• 魔術師の呪文の綴り蜘蛛の糸

  だがし菓子

• 古社神はいずれに女郎蜘蛛

  花屋英利

• 在住の蜘蛛掻き分けて奥の院

  花蜜伊ゆ

• 蜘蛛の囲や練乳買ひたがる母と

  空　ひろ

• 蜘蛛の囲の殊にくはしき雨後の朝

  羽奈あかり

• 戸立蜘蛛ハッチを開けよ風入れよ

  寺尾当卯

• 糸細し小さき羽虫と小さき蜘蛛

  キッカワテツヤ

• 夢に来る蜘蛛の脚ゆく地下の街

  林省造

• 看護師の朝蜘蛛そっと逃がしけり

  ほんちゃん

• 出勤に蜘蛛訪ね来る忌引あけ

  千葉睦女

• 横縞の蜘蛛追い出した午前二時

  えりいも

• 轆轤座を横一文字蜘蛛つつつ

  せいしゅう

• 共喰いの蜘蛛の双方こちら向く

  野点さわ

• 文芸部の部室に蜘蛛は居座って

  小藤たみよ

• 蜘蛛の巣に残されし虫朽ちた梁

  平野純平

• 蜘蛛の囲の歓迎受けて母見舞う

  阿部立

• 故郷や親指ほどの蜘蛛の腹

  山姥和

• 横溝が好きか古本守る蜘蛛

  田辺ふみ

• 蜘蛛をなげ神の模倣をしています

  高遠見上

• 居残りの書道教室蜘蛛がゐる

  キートスばんじょうし

• 蜘蛛の囲をぬけて相続人来たる

  西田月旦

• 舞うように角を曲って蜘蛛陰へ

  在在空空

• 蜘蛛の囲にかかる夕日や波の音

  岩本夏柿

• 亡き人と交わした言葉蜘蛛の糸

  ときめき人

• お水に漂う逆さの蜘蛛の腹

  ともかわすてむ

• 龍神に蜘蛛あらわるる欄間かな

  也和

• 夜の蜘蛛誰か呼びたる救急車

  松田てぃ

• ホースの先に逃げまどう蜘蛛の子ら

  花はな

• 蜘蛛がスルスル離婚届にハンコ

  青野遊飛＠蚊帳のなか

• 時計脇まだ居る蜘蛛と点滴と

  杼　けいこ

• 這う蜘蛛や壁の隙間に入りて失せ

  佐藤甘平

• 掃除機の先を蜘蛛の子寄りて見ゆ

  麻の葉

• ロープウェイ乗り場に架かる蜘蛛の糸

  山水

• 風を聴く蜘蛛の巣がきのほころびて

  桔梗

• 蜘蛛の囲やズーズー弁が分からない

  高橋寅次

• 空っぽのシンクを滑る蜘蛛弱く

  新城典午

• 阿修羅より二本手多い蜘蛛きれい

  弘友於泥

• 蜘蛛揺れる風の欠片となるやうに

  楽花生

• 家系図に知らぬ子ゐたる蜘蛛の糸

  川内佳代

• たたら踏む爪先一寸家蜘蛛ぞ

  亜桜みかり＠金カル

• 缶蹴りの蜘蛛の巣被る鬼の膝

  みうら朱音

• 秘密基地まであといくつ蜘蛛の罠

  水蜜桃

• 革靴の蜘蛛の巣や鳴らない電話

  夜音 友

• エルメスの馬車の看板より朝蜘蛛

  ひねもす

• 蜘蛛の囲や携帯履歴夜ごと消し

  Early Bird

• トマトのヘタのごと死んだふりの蜘蛛

  風ヒカル

• 髪の毛と埃と蜘蛛は吸はぬやう

  山内順子

• 新築の車庫に蜘蛛の巣堂々と

  清水祥月

• 蜘蛛の囲や二坪酒場心地よし

  柳絮

• 一日の光くぐらす蜘蛛の糸

  小荒真こひのむ

• 新しい朝が来た蜘蛛の巣は空

  渡海灯子

• 人の世は地獄天井裏の蜘蛛

  砂楽梨

• 不器用な蜘蛛のゐるらし巣を眺む

  大岩摩利

• 何を喰ひ何に喰はれて蜘蛛の脚

  一歩亭六案

• 蜘蛛紛れ進む秒読みフェアリング

  黒澤墨青

• 蜘蛛の巣や絡まるイヤフォンコード解く

  月待 小石

• 蜘蛛の子を掃除機止めて逃す朝

  鶴岡木の葉

• つうと蜘蛛降りきて空へ駆け上がる

  もりさわ

• フラスコの撹拌羽根や真夜の蜘蛛

  青木豊実

• 浴槽の底這う蜘蛛や湯を張れず

  渡部　あつし

• 水を抜く五右衛門風呂の底に蜘蛛

  黄鶺鴒

• 徘徊する蜘蛛を見届け本閉じる

  仁山かえる

• 蜘蛛の囲の喪服の袖に付きしまま

  和泉攷

• 薄緑ビー玉転げ蜘蛛走る

  あおのめ

• 何やら咥え夜の蜘蛛のダンス

  理酔

• 赤信号脚よりほぐるる窓の蜘蛛

  常磐はぜ

• 蜘蛛死すや守るものあるかに丸く

  木ぼこやしき

• 三日目もテレビの横に出でて蜘蛛

  宮武濱女

• 蜘蛛の囲や定期預金の満期日来

  若井柳児

• 蜘蛛の囲や月の光のほろんほろん

  苫野とまや

• 礼する妣窓より放つ朝の蜘蛛

  乙華散

• 夜の蜘蛛脚に毛のあり首痒し

  片桐　洋

• 蜘蛛逃すパリの路地裏陽は翳り

  優花千絵心

• 教科書のつくる死角や蜘蛛の影

  丹波らる

• 叩かれしあの夜の蜘蛛今朝頓死

  葉子@金カル

• 蜘蛛歩く生まれ変わりはありますか

  富山の露玉

• 外に遣る蜘蛛は月下を走りけり

  みやかわけい子

• 友は蜘蛛のみの外出禁止令

  田中紺青

• ほろほろとほつるる裾へ朝の蜘蛛

  椿　佳香

• 蜘蛛の囲やがんじがらめの身の置き場

  小夏

• 日の暮るる真中に蜘蛛や交はへり

  野地垂木

• 豆球を垂れ来る蜘蛛の下宿部屋

  はぐれ杤餅

• 板塀の蠅取り蜘蛛はコマ送り

  畑山六十二

• ほんたうのことを話さう夜の蜘蛛

  檜鼻ことは

• 閉切つたはずの部屋から蜘蛛二匹

  陽花天

• 蜘蛛の囲や軒端を飾る透かし彫

  田丸匡女

• 黄みを帯びた雲のごとく女郎蜘蛛

  吽田のう

• ウインドウにしがみつく蜘蛛連れ通院

  あまぐり

• 極楽寺蜘蛛の子親を捨つるかな

  立ち漕ぎブランコじゅん

• 発禁のちびくろサンボ蜘蛛走る

  板柿せっか

• 文豪の執筆の宿蜘蛛はへり

  むったん@狐狸山会

• 親子蜘蛛歩き疲れて広告紙

  細川小春

• 蜘蛛の巣や三段峡の滝の赤

  28ひろきち

• 累々と廃車置き場の蜘蛛の糸

  谷川ふみ

• 森茉莉の最後の頁に赤い蜘蛛

  蘂六

• 団居たる蜘蛛の子散らすざわりかな

  飛来　英

• 欄間の蜘蛛窺う伯父の鉋かな

  はくたい

• 虫口に入れるや戻る蜘蛛の足

  巳智みちる

• 床へ戸へ鉢へ葉へ野へ風へ蜘蛛

  ろまねす子

• 蜘蛛は囲を漁師は投網打ちにけり

  夜ノ森ムーミン

• 結界の蜘蛛を許して合掌す

  山吹なお

• 知らせよか前行く人の肩の蜘蛛

  横山くみこ

• 蒼然の大句碑観るは蜘蛛ばかり

  津軽わさお

• 蜘蛛の囲や右にわづかな突破口

  永想

• 蜘蛛はたき地獄の風を浴びてみる

  竹春エリザベス

• 大蜘蛛や足影太く障子裏

  周防の兎

• 蜘蛛ぶちん午前０時の『罪と罰』

  嶋村らぴ

• 蜘蛛の巣や勝手知ったる他人の家

  りんごのほっぺ

• 大蜘蛛を屠り母より女の香

  伊藤映雪

• 蜘蛛遅々として放課後の磨りガラス

  川澄栞大

• 病棟の蜘蛛コップはプラスティック

  立石神流

• 蜘蛛散るや毛槍のごとき大束子

  風間　燈華

• 出迎えの婆の足もと小蜘蛛跳ぶ

  周防の鼠

• 下がり蜘蛛ホーロー看板の昆ちゃん

  小川さゆみ

• この法話いつ終わるんや女郎蜘蛛

  巴里乃嬬

• じょんがらを叩く返しで捌く蜘蛛

  津軽ちゃう

• 鬼蜘蛛や釈迦の一息夕に消へ

  片平仙花

• 蜘蛛は待つ世界に平和来る日待つ

  戌の箸置

• 蜘蛛逃す予鈴はとうに知らん振り

  高山　夕灯

• 振り向きし蜘蛛が糸踏む音の方

  小林一平

• 校舎裏子らの礫に揺れる蜘蛛

  OMI

• 防犯のカメラに映る女郎蜘蛛

  北山　烏兔

• 蜘蛛の巣を丸めてみたし二年生

  松風花純

• 蜘蛛の囲の忘れられたる町工場

  中田邦光

• 三幅対真中の虎に止まる蜘蛛

  八光地蔵

• 家蜘蛛の俺の気配を猫チクる

  伊沢華純

• 朝の蜘蛛今日の試合は勝つかしら

  でんだ浜千鳥

• 蟻蜘蛛を追へば糸吐く独りの夜

  星埜黴円

• 卓上の紙コップ飼はれたる蜘蛛

  秋白ネリネ

• 蜘蛛の囲の歪む愛より逃げられぬ

  快晴ノセカイ

• ステレオや蜘蛛の太鼓の震えおり

  外鴨南菊

• 蜘蛛といふひかりの雨をためる匣

  坐花酔月

• 夢に行きし国の御菓子のやうな蜘蛛

  山本先生

• 蜘蛛の囲へ水の呼吸のをとこの子

  羊似妃

• 退屈か夢中か蜘蛛の無口かな

  遠藤綾人

• いちゃもんは付けず真っ直ぐ下る蜘蛛

  野々原ラピ

• 父母いない家蜘蛛は密やかにいる

  白石美月

• 路地裏のラップバトルを蜘蛛廻る

  広瀬　康

• 蜘蛛下がりくる祭壇の真正面

  可笑式

• 蜘蛛の子の最後に一匹だけ遺る

  遥風

• 蜘蛛は這う神の手板に操られ

  河野灰土

• 傾きし牛乳箱に蜘蛛潜む

  太之方もり子

• 蜘蛛の子散る八本づつの脚で散る

  村木年子

• DSにひびわれみたいなクモおった

  深町宏

• 姪っ子の手洗い蜘蛛は濡らさずに

  ぜのふるうと

• 猫の手を威嚇す蜘蛛の足二本

  渡辺香野

• たましひを捕らふごと掌に蜘蛛

  栗の坊楚材

• 蜘蛛の囲や老母の視野にある死角

  ノセミコ

• 蜘蛛の囲の吊橋めくや風の朝

  じょいふるとしちゃん

• 密かごと語る頭上へそつと蜘蛛

  笑松

• 空の厨子御前立には蜘蛛鎮座

  諫鼓苔深

• 定時まであと三分の壁に蜘蛛

  西村　棗

• 木を跨ぐ巣を持つ蜘蛛の日々肥えて

  永井春蘭

• 蜘蛛走る蔵の床下防空壕

  西町花冠

• 小さき蜘蛛逃がす晴れ日の余裕かな

  三休

• 縦糸を歩きなさいと蜘蛛の母

  八田昌代

• 大蜘蛛の怖くないけど二匹ゐる

  大塚迷路

• 壁の蜘蛛叩かないから蝿喰らえ

  殿さまペンギン

• 蜘蛛の囲は斜め星雲さぐるため

  秋津穂　実

• 蜘蛛の巣はショパンを聴いたからきれい

  綱川羽音

• 蜘蛛の囲の雫遠き山を数多

  無弦奏

• 蜘蛛の巣や病窓よりの空青く

  里山疎水

• 蜘蛛の囲やまだ生レバー食える店

  多喰身・デラックス

• 蜘蛛の巣へ急ブレーキの縄電車

  千歳みち乃

• 廃線の駅舎の主人女郎蜘蛛

  原島ちび助

• 蜘蛛を見てしづかに閉める勝手口

  太平楽太郎

• 共食いは嫌かと蜘蛛に問うてみる

  佐藤香珠

• 壁を這ふ脚高蜘蛛や火の如く

  水須ぽっぽ

• 五日ぶりの運転ワイパーに蜘蛛

  田村　宗貞

• 蜘蛛見つけ祖母の留守電繰り返す

  藁しべ長者

• 死角なき闇の鼓動や女郎蜘蛛

  仲 操

• 蜘蛛の巣の営みに揺れ風に揺れ

  洒落神戸

• 蜘蛛走る廊下の先に風雨の夜

  富山湾

• 雨の日の蜘蛛の巣大目に見てやろう

  はなぶさあきら

• 蜘蛛ばかり声なき声を聞きゐたり

  片山蒼心

• 蜘蛛の眼の四つ目は火星をも睨む

  丁鼻トゥエルブ

• 蜘蛛の囲や青き痛みとして夜明け

  沖原イヲ

• 蜘蛛の囲のいつもの小径待ち伏せる

  はぐれ雲

• 大蜘蛛の逃げ込む先はお仏壇

  中村笙平

• 賞状の掛かる長押を朝の蜘蛛

  みづちみわ

• 夜の蜘蛛わが利き腕の他人めく

  天風月日

• 蜘蛛下がるパントマイムの中心線

  楽和音

• 闇へ消ゆ畳にひとつ蜘蛛の脚

  戸口のふっこ

• 五限目の蜘蛛分度器で追い出しぬ

  和山しなもん

• 蜘蛛の巣の雨に六角形の過去

  くさ

• 約束の停車場赤き蜘蛛のいた

  くろけん

• 天井の蜘蛛今日もまた午後十時

  達坊

• 蜘蛛の囲の窓に仲居の募集ビラ

  森爺

• 山荘の脱衣籠より遁ぐる蜘蛛

  内藤羊皐

• 蜘蛛の囲や崩れかけている風景

  野口真砂輝

• 蜘蛛も吾も間合いのうちに暮らしおり

  桜月夜

• 母の間の鏡のなかに蜘蛛をりぬ

  龍田山門

• 蜘蛛の囲や軸のぶれたる換気扇

  石上あまね

• 蜘蛛の糸四万キロの旅真中

  紫小寿々

• 頬杖やＥｎｔｅｒキーを登る蜘蛛

  武井　超凡

• ネタ合わせぼそぼそ部屋の角に蜘蛛

  平良嘉列乙

• 蜘蛛の囲や富士の裾野の朝ぼらけ

  とんぼ

• 仕上げ前に蜘蛛登り来るなまこ壁

  鳥不驚

• 折り紙で蜘蛛に逃げ道教えけり

  叶田屋

• 蜘蛛を殺る計画蜘蛛に聞かれしか

  小川野雪兎

• 夜の窓に降り来る蜘蛛や父のこゑ

  小池令香

• 駐車して窓より蜘蛛の出でにけり

  ぶうびい

• 風評に捻くれもせず蜘蛛は蜘蛛

  あたなごっち

• 蜘蛛這ふや頭痛のわれの枕元

  音羽凜

• 蜘蛛死して如来と共に結跏趺坐

  田川泥舟

• 蜘蛛の巣のはりあぐねてか靴の中

  つまりの

• 本棚の片付け遅々として蜘蛛や

  駒野繭

• 蜘蛛の囲や川へ水路の閉ぢてをり

  磐田小

• 支払いは偶月半ば蜘蛛の糸

  長田写々

• 日が溶けて雨の爪先小さき蜘蛛

  鈴木裕公仁

• ドアミラーの蜘蛛と糸また連れ帰り

  雑魚寝

• 此の使者を捕らへよ蜘蛛の目の歪

  碧西里

• 蜘蛛の巣や手繰り払ひて一の森

  広島　しずか80歳

• 蜘蛛登る古民家カフェの珪藻土

  巣守たまご

• 蜘蛛の巣や都合の悪い場所が好き

  衣笠　野波

• 壁を這う蜘蛛を見やりて飯を食ふ

  田村美穂

• 蜘蛛の巣を蹴散らしブリキのアトム飛ぶ

  聞岳

• 錆びついた金庫空っぽ蜘蛛の糸

  みなみはな

• すぐさまに飛び出す蜘蛛の逃げ所

  上津　力

• 廃業の貼紙に蜘蛛こんちくしょう

  星田羽沖

• 朝蜘蛛を優しき息で追払ふ

  花南天anne

• 垂れている蜘蛛の数だけ不安あり

  奈良の真

• 就中聖地に蜘蛛の巣を張らむ

  チームニシキゴイ　太刀盗人

• 銀を布く橋名板も蜘蛛の囲も

  帝釈鴫

• 蜘蛛が蜘蛛食ふをつくづく眺め無心

  雪井苑生

• 麻酔さめ幻視の中に蜘蛛の群れ

  木村木霊

• ぼくよりも蜘蛛に優しき父の手は

  みやま千樹

• 蜘蛛よ蜘蛛よそこに糸を垂らしても

  花紋

• 蜘蛛の巣に掛かりしバッタ薄緑

  真林

• 本堂の蜘蛛は説法誦じる

  水間澱凡

• 一瞥の蜘蛛の生き様ひとり飯

  白井　佐登志

• 蜘蛛の巣を避けて次なる蜘蛛の巣へ

  梅鶏

• 蜘蛛の巣や上棟の字はもう読めぬ

  吉乃紫享

• 露天湯へ蜘蛛の待つ音星の音

  ぬくみ

• 水沫のメレダイヤめき蜘蛛の巣よ

  風花まゆみ

• 蜘蛛の囲や友との秘密みな聞きぬ

  草間八千代

• 呼鈴の居座る蜘蛛や風を待つ

  ざうこ

• 大蜘蛛の小さき骸チョコを割る

  熊谷 温古

• 仏前でウソ泣きの母蜘蛛の脚

  丸山隆子

• ハノン弾くごと蜘蛛は死を与へけり

  比良田トルコ石

• 蜘蛛の夢飛び起きて私がいない

  里山子

• ９階の窓より蜘蛛のテイクオフ

  万葉剣

• 暮方の産科待合室を蜘蛛

  うからうから

• 蜘蛛や蜘蛛四十に惑う職選び

  望月朔

• 蜘蛛の囲やここがわがやであるしるし

  湯屋ゆうや

• 白壁の傷みや蜘蛛を嫌ふ姉

  朱鷺9条湯八

• 塩辛いラーメン床に蜘蛛一匹

  うどまじゅ

• 午前２時書き置きの端休む蜘蛛

  暇禍

• 命捕らへて蜘蛛の囲のやや撓む

  四季春茶子

• 洗面台の鏡の奥の蜘蛛迅し

  京野さち

• 蜘蛛の巣をチョンと弾いた小さき指

  西野桃果

• 蜘蛛降りて来る月光を弾くやうに

  新右衛門

• 掌に蜘蛛の軽さや外は雨

  あなうさぎ

• 新聞を丸めはしたが夜の蜘蛛

  美年

• 蜘蛛を追ふ便所のくらき眼のふたつ

  高尾里甫

• 蜘蛛の囲の綿菓子のごと巻き取らる

  中里　凜

• 夜の蜘蛛の良く働いて風呂場かな

  清水　三雲

• 蜘蛛の糸切れそで切れぬ人の縁

  かとしん

• 捕食する蜘蛛見入る子の痩せた首

  濃紫えみ

• 蜘蛛の囲やいつもの場所で朝七時

  コウ

• 蜘蛛の囲の隣にそつと投函す

  鷹見沢　幸

• 死んだふりまんまる蜘蛛の消えてをり

  びんごおもて

• 横一文字ひたい断ち切る蜘蛛の糸

  しゃれこうべの妻

• 蜘蛛の糸救いの残滓吐くごとく

  濃厚エッグタルト

• 青空を抱える蜘蛛も悪くない

  倉たけ

• 金運を紡いでひかるてふ蜘蛛よ

  喜多輝女

• 家蜘蛛の走り抜けたる大座敷

  久森ぎんう

• 埃かと寄れば飛びゆけり朝蜘蛛

  吉武茂る

• 五重塔引っ張り上げる女郎蜘蛛

  直心

• 蜘蛛の囲よ老いては清き独り居よ

  杏乃みずな

• キーボードは迷路エンターキーへ蜘蛛

  石本コアラ

• 蜘蛛の巣よ明るき格子戸にまたか

  山中　揚

• ざぢざぢと畳引っ掻く宵の蜘蛛

  糺ノ森柊

• 老子読む無為会得せる梁の蜘蛛

  落句言

• 後輩を蜘蛛から守る副部長

  いくたドロップ

• 光捕らう蜘蛛の投網の上手かな

  正念亭若知古

• 霊と蜘蛛の棲み着く賽銭箱

  M・李子

• 蜘蛛の巣を払うや夜のかくれんぼ

  北大路京介

• 媚びし愛人(ラマン)肩越しに飛ぶ蜘蛛の呵呵

  北爪いく葉

• 雨上がる淵縫ふ蜘蛛の糸白し

  はまお

• 巣を払ふ箒に移る蜘蛛のをり

  大木典子

• 蜘蛛の囲の虫殻今も恩師宅

  古乃池糸歩

• 壁の蜘蛛潰して君を抱くホテル

  小川テル子

• 蜘蛛逃げるピアノ速弾きするやうに

  仙川チュン

• 古民家は廃材となる女郎蜘蛛

  カバ先生

• くしやくしやの蜘蛛の死無機質な夕陽

  染井つぐみ

• 蜘蛛の囲の大雑把なり歪なり

  小池博美

• 柿木と榊を結ぶ女郎蜘蛛

  清仁

• 蜘蛛の囲の剪るべき枝に張られたり

  愚老

• 地下劇場の壁のサインを嗅げよ蜘蛛

  緒方朋子

• 蜘蛛の囲や焦らず弛まず怠らず

  灰田兵庫

• 日課とは掃除洗濯蜘蛛捕らう

  紀友梨

• ガンプラの現世の敵や大き蜘蛛

  塩の司厨長

• 突つかかる蝿とり蜘蛛やシャープペン

  黒麹　糀

• ジュースに落ちた蜘蛛の狼狽見ない振り

  七瀬ゆきこ

• 蜘蛛の囲を零るる光旅の空

  野口日記

• 縄張りは楚楚とめぐらせ女郎蜘蛛

  うに子

• フローリングを鳴らして蜘蛛は歩きけり

  坪山紘士

• 御詠歌や重たき風を結ぶ蜘蛛

  加座みつほ

• 蜘蛛住まう刺繍の如き青空の端

  瀬戸ゆらり

• 蜘蛛の巣のスロープ往診の女医来

  星月彩也華

• 蜘蛛とふたり締切の深夜のデスク

  美織

• 手の甲の静脈青し蜘蛛清し

  夕虹くすん

• 薄暗き辺に蜘蛛の座す拝礼所

  山内彩月

• 蜘蛛の糸良く吐きさうな腹揺らす

  詠頃

• 台湾に死す巨大蜘蛛黒黒と

  坂本宙海

• 蜘蛛の脚ひかり爪弾くやうに透く

  飯村祐知子

• うつかりと蜘蛛のタロウを流しけり

  虎八花乙

• 蜘蛛の糸昔話の呪文かな

  杉山駄芭

• きのふ腹つぶしし蜘蛛が梁にをる

  葉村直

• 幾年や蜘蛛の巣纏う仁王像

  オアズマン

• 蜘蛛の巣の顔の高さぞ熊野古道

  立山穂高

• 姑はＢ型せかせかせかと蜘蛛

  古都　鈴

• 封筒や蜘蛛動きだす東屋に

  山城道霞

• 命名「ルパン」外科病棟の蜘蛛よ

  大小田忍

• 巣作りの下手な蜘蛛です修行中

  花咲明日香

• 目薬の流るる喉よ這う蜘蛛よ

  鳥羽南良

• おい蜘蛛よ今夜もまた眠れねえ

  森　日美香

• 蜘蛛の巣を跨ぎ地階の占い店

  ユ綺

• 余命半年まくらに蜘蛛がよじ登る

  夏立也

• 豪邸に蜘蛛の巣一つ売られてる

  世良日守

• SFの街めくモデム太き蜘蛛

  森脩平

• 磔刑の形に蜘蛛の自由なる

  真井とうか

• 蜘蛛の眼のありありとする痛みかな

  螺原トモ

• 乾びゆく真白き翅や蜘蛛の空

  看做しみず

• 浴室に蜘蛛の太鼓や当り前

  こはぎ

• 蜘蛛の子へ墨の淡きの滲みゆく

  みつれしづく

• 二次元に潜みて蜘蛛の糸の張り

  髙田祥聖

• 掃除機のとどかぬ先や蜘蛛の糧

  池弘庵翁

• 蜘蛛の囲の仕上がるまでの茜雲

  小川若葉

• 別荘の門扉開くと知らず蜘蛛

  石田将仁

• 今朝の蜘蛛の居りしところに知らぬ蜘蛛

  干しのいも子

• 借景の遠近新た蜘蛛の糸

  ナタデココ

• 蜘蛛ひとつ御身窶して尊しや

  北代晋一

• 月光に濡れて仕上がる蜘蛛の網

  黒蜜かりんとう

• 爪ほどの害なき蜘蛛や書棚奥

  山川土時

• わが先を蜘蛛の子走る夜の廊下

  藤井赤童子

• 空腹や蜘蛛は子のため時を待つ

  高岡春雪

• 地震の夜しづかに蜘蛛の闇を押す

  風慈音

• 蜘蛛掬ふ姉のスリッパから救ふ

  長谷機械児

• 緊急事態宣言さっきの蜘蛛がいない

  卓鐘

• 八畳を全世界とし蜘蛛這へり

  沙一

• 発熱に暗き天井蜘蛛の糸

  亀田荒太

• 蜘蛛の囲に蜘蛛や磔とはこんな

  黒子

• 身ほとりの蜘蛛に夕日の交りたる

  きのえのき

• 梵字めく蜘蛛這ひ上がり鬼子母神

  綾竹あんどれ

• 水撒きは蜘蛛の卵嚢すれすれに

  服部勝枝

• 大小の蜘蛛逃がす軽やかな朝

  山羊座の千賀子

• 安酒を啜り今宵も女郎蜘蛛

  花和音

• 蜘蛛戻る速攻の球追ふごとく

  梵庸子

• 蜘蛛の棲むサイドミラーをたたみけり

  秋野しら露

• 土星の環見てきた蜘蛛の作った巣

  澤田　紫

• 物干を占めて健やかなる大蜘蛛

  だいやま

• 休校や信号機のボタンの蜘蛛

  剣翔寺亜太琉

• 蜘蛛の巣も思いも払う家仕舞い

  猫楽

• 家蜘蛛の見て見ぬふりの限界値

  葉月庵郁斗

• 母蜘蛛の背に乗る子蜘蛛目が光る

  白山一花

• 蜘蛛の囲や獅子除けの仕掛けは隠す

  東太

• 女郎蜘蛛警告色の長い脚

  菊池克己

• 蜘蛛の巣の午後の一死を揺らしをり

  富田健朗

• 蜘蛛の巣に残骸いくつ青い空

  余熱

• 蜘蛛の囲に餌投げつける当番さん

  老人日記

• 掃除機へ恍惚の貌させ蜘蛛は

  そまり

• ことごとく遣る瀬無き身と嘆く蜘蛛

  上津　嘉子　

• 蜘蛛といふ錘。日輪ゆきわたる

  石浜西夏

• 星を撮る魚眼レンズの先に蜘蛛

  元喜@木ノ芽

• 挨拶はせぬしいらぬし夜の蜘蛛

  あらかわすすむ

• 雨後の夜半壇に蜘蛛じっと動かず

  粋庵仁空

• お大師さんの埃の脚絆登る蜘蛛

  久留里61

• 仮設区役所設置のビラに蜘蛛の糸

  樹海ソース

• 蜘蛛の囲や名刀工の腕確か

  垣岡凡才

• けふの雨知りけむ軒の女郎蜘蛛

  中原柊ニ

• 昼の蜘蛛また嫌われて強くなる

  福田かな子

• 日暮まで巣を張る蜘蛛を見る病臥

  　宗平圭司

• とことこと蜘蛛やわが家の間取り知る

  佐藤さらこ

• 蜘蛛の囲や長押に祖父母曾祖父母

  川越羽流

• 朝まだき礼拝堂の蜘蛛はらふ

  神山やすこ

• 蜘蛛散らし黄泉より戻す痰の管

  榊裕江子

• 蜘蛛つまむ太き指先君恋ふる

  河村静葩

• ヘリコプタ旨そう蜘蛛の独り言

  帝菜

• 勢力を塗り潰しゆく窓の蜘蛛

  灰頭徨鴉

• 蜘蛛の巣や古城の床のアラベスク

  さくら悠日

• 足音に手水柄杓を走る蜘蛛

  馬門宗太

• しづかなる蜘蛛をしづかなる野外へ

  とんぶりっこ

• 桐の薬箱には蜘蛛とシロップ

  はるく

• 杖当てて手洗ひ遠く蜘蛛の番

  福田みやき

• 休日の独居に蜘蛛のゐてくれる

  芦幸

• 蜘蛛下るグリム童話の深き闇

  ふもふも

• 蜘蛛の囲に引つ掛かりをり一番星

  せいち

• 女性は甲高し蜘蛛の射影など

  久下　真一

• 色のなき雨をくぐりて蜘蛛よぎる

  蘇子

• 蜘蛛の囲の小雨の中のただ静か

  カオス

• 午後二時を知らす時計や蜘蛛つつつ

  勘太郎

• 曼荼羅の奥のまた奥蜘蛛の部屋

  さかえ八八六

• 竹箒構へて蜘蛛を驚かす

  文月

• 吾は文系蜘蛛はおそらく理数系

  織部なつめ

• 夜深しフランス窓に蜘蛛咲けリ

  月見柑

• 蜘蛛の糸切れた詫びねばならぬかも

  伊江かつじ

• コーヒーを入れて一息蜘蛛ゆれる

  前川一雄

• 流されし蜘蛛やシンクをまた上る

  野ばら

• 潰さずに蜘蛛逃したし百箇日

  としなり

• 糸くづのやうに蜘蛛の死のひとつ

  浦野紗知

• 腕の上ちいさな蜘蛛を遊ばしむ

  麻生四里

• 他人事のやうな顔して蜘蛛潰す

  香依蒼

• 蜘蛛垂るる高天井の無人駅

  木村ひむか

• お辞儀して通る巨木の穴に蜘蛛

  吉　や　

• 抗癌剤の効き目足元を蜘蛛

  蓮花麻耶

• モース硬度10の光を蜘蛛の糸

  石塚彩楓

• きらきらと空を流るる糸に蜘蛛

  余田酒梨

• 或る星に八肢を与へ蜘蛛とする

  小川朱棕

• 大蜘蛛にゆるがぬ母の遺影かな

  時まる

• 浅築の高層階に蜘蛛あなや

  瀬戸ティーダ

• 朝帰り上がり框ににらむ蜘蛛

  石塚碧葉

• 珈琲の湯を注ぎつつ蜘蛛の留守

  青き銀椀

• 壁沿いに急いで蜘蛛は元の位置

  一日一笑

• 道きはの小さき花や蜘蛛の糸

  清水明美

• 窓の桟蜘蛛の骸の丸み美し

  空豆魚

• 蜘蛛の囲にかかるブラックホールの駅

  竹村　半掃

• 朝上がり風を窺ふ蜘蛛飛ぶ日

  祥林

• 八脚に遊ぶ脚なし蜘蛛の狩

  峰　乱里

• 足高く上げて蜘蛛来る遍路宿

  卯年のふみ

• 一時間おきに目覚めた朝を蜘蛛

  坂本梨帆

• クモを喰ふ蜘蛛の眼の奥の濁り

  村上甘雨

• 揺れる糸定め静かに進む蜘蛛

  おこそとの

• 蜘蛛にだけ聞こえるような愚痴少し

  京あられ

• この蜘蛛は亡母の靴を家とする

  染野まさこ

• 痩身のあばらの如き脚や蜘蛛

  加山シンゴ

• 物干の蜘蛛の囲掃う朝仕事

  小川しめじ

• 柵付きの介護ベッドや壁の蜘蛛

  不二自然

• 蜘蛛の脚全八本の外接円

  始の子

• 穏便に蜘蛛を逃して良き夢を

  とき坊

• 玻璃奥のあんもないとの口を蜘蛛

  緑の手

• 蜘蛛放り込む弟のゐる便所

  佐藤レアレア

• 蜘蛛爛々花屋に移り棲むと云ふ

  木野桂樹

• 蜘蛛の糸なびくひとすじの水脈

  なか　かよ

• 戸袋へ蜘蛛は家移り父帰る

  なしむらなしん

• 髪の毛に蜘蛛の巣飾る庭師かな

  沼宮内　かほる

• 猛犬を避けて裏みち蜘蛛の径

  原　水仙

• 朝蜘蛛に出会ふ厠の薄明り

  比良山

• 掃き出した蜘蛛は慌てて戻り来る

  円美々

• Wi-Fiが届かぬ蜘蛛の囲のせいか

  桜鯛みわ

• 久方の空を狙ひて蜘蛛の待つ

  岡崎佐紅

• 蜘蛛の這うエクレア金の包み紙

  橋本有太津

• 天井に無数の子蜘蛛子蜘蛛上下

  香様

• 雨戸開けしずかに蜘蛛の透ける朝

  香羊

• 四畳半飛び跳ね蜘蛛の向ひ来る

  一港

• 大蜘蛛をアレキサンダと母名付け

  きべし

• 近在の配達まだ肥えるか蜘蛛

  竹八郎

• 夫の居しいつもの場所や朝の蜘蛛

  たむらせつこ

• 空を抱き抱へて蜘蛛の死にゆけり

  ふじかつとび

• 柔らかき獲物朽ちゆく蜘蛛の囲に

  ふくじん

• 天窓を曇らす蜘蛛の二十年

  清水縞午

• シャッターの下りている町蜘蛛の網

  そうり

• 蜘蛛笑うタワーマンション最上階

  浜 友輔

• 蜘蛛の子の明るい方へ飛び出せり

  後藤三梅

• 静かなる蜘蛛の寝息や四畳半

  伊予吟会心嵐

• 朝蜘蛛や夭逝の報咳三つ

  砂　芽里

• 蜘蛛の囲の風をたくみに逃しけり

  銀　次郎

• 夢殿を住処に蜘蛛の肝つ玉

  コーノ凡士

• クイックルワイパーに蜘蛛からみ捨て

  睦月くらげ

• 蜘蛛の囲や四十年の住心地

  登盛満

• 蜘蛛の胎息衝く色の朱肉かな

  長操

• 蜘蛛の子の触れてうぶ毛がこそばゆい

  髙橋弓女

• 夕まぐれ人待ち顔の女郎蜘蛛

  acorn

• 蜘蛛の子や花かんむりにふよふよと

  杜まお実

• 雨宿り先客は土色の蜘蛛

  相沢薫

• 遮断機をくぐる自転車揺れる蜘蛛

  村橋　桂

• 瓦屋根替える相談蜘蛛の糸

  土井あくび

• 大蜘蛛や振り子時計の箱の奥

  清瀬朱磨

• 病床の祖母さす蜘蛛の死骸かな

  オクシー

• 太き蜘蛛楳図かずおの下にをり

  虎穴虎児

• 蜘蛛の巣のバザール朝の並木道

  小山　晃

• 農小屋のさびさび鎌や女郎蜘蛛

  いなほせどり

• 皇帝の我城の蜘蛛ぞ独りぼち

  メレンゲたこ焼き

• 蜘蛛よここは防空壕だつた室（むろ）

  夏雨ちや

• 白日夢蜘蛛の骸と姉の声

  ちゃるこ

• 考蜘蛛を遣ふか印多き家

  作作

• 蜘蛛の囲へ墜ちて震えて泣き叫ぶ

  百瀬はな

• 定休日の蕎麦屋暖簾受けに蜘蛛

  Dr.でぶ@いつき組広ブロ俳句部

• 独り居や蜘蛛を使ひと思ふ朝

  空想婆

• 書のにほひ深みに蜘蛛の待ち受けし

  鈴木来穂

• 掃かれて丸まりて生命抱く蜘蛛

  清松藍

• 蜘蛛が背に暫し遊ばす愉悦かな

  つくばみらい亭

• 蜘蛛の囲が今朝もダンクを決められる

  ま猿

• 商談の動物商の肩を蜘蛛

  東山すいか

• 蝿取蜘蛛の眼の八個中二個つぶら

  越智空子

• 蜘蛛の囲はぼろぼろのまま蝶の翅

  山路碧水

• 物干しのピンチに小さき蜘蛛の棲む

  玉響雷子

• 蜘蛛の囲の片一方に夜が生まる

  まんぷく

• 蜘蛛の巣やもうじき兄の三回忌

  荘司彩舟

• 蜘蛛の囲や志望大学ひとつだけ

  まるにの子

• 蜘蛛の囲をつけて寝ているシャベルカー

  山　ゆり

• 蜘蛛の囲や富士の夕日を閉じ込めり

  とも子

• とんからりぷぷうと逃がす小さき蜘蛛

  鈴木　浮浮

• 黒鍵を跳ねても無音蜘蛛よ蜘蛛よ

  フィビキ　Ｉ

• 考かしら墓石に白き蜘蛛伝ふ

  林　和寿

• 天井を蜘蛛の方向定まらず

  唯果

• 真青なる大空の下蜘蛛逃がす

  木寺　仙游

• エディットの恍惚女郎蜘蛛の牙

  狩谷わぐう

• 掲示板物件よりも蜘蛛の糸

  井上美月

• 蜘蛛の糸棟から梁へ囲を講ふ

  茶

• 蜘蛛の来て手柄を威張ることもなし

  まこ＠いつき組広ブロ俳句部

• 蜘蛛死せりバリアフリーの１ＤＫ

  谷本均

• 蜘蛛の囲や朝月食へぬものにそろ

  堀口　房水

• 翔ぶための電荷捕らへる蜘蛛の糸

  渥美　謝蕗牛

• 今生は六角の空蜘蛛の空

  Ａ・アメリ

• 幾何学の未完狂ほし蜘蛛の翳

  蜥蜴の尻尾

• 蜘蛛の囲や発見された日が命日

  立部笑子

• 唐突の防犯ライト蜘蛛と影

  酔下弦

• 蜘蛛の巣に始まる吾子の大冒険

  伏見丹耶

• 大蜘蛛の向こうに鬼の塾講師

  千風もふ

• 見えざるをはらひはらひて蜘蛛の糸

  高山佳風

• 蜘蛛の囲や遺影の見やるがらんどう

  平としまる

• 糸張りの蜘蛛見て過ぐる小半時

  中村　自在

• 真夜中を蜘蛛の降り来てカップ麵

  栗田すずさん

• 蜘蛛の家壊す掃除の名のもとに

  伊藤なおじい

• 睥睨す太古の使ひアシダカグモ

  増田　昴

• 丑三のサーバー室に生るる蜘蛛

  たま走哉

• ネバーランドめざす蜘蛛の子風にのる

  さとう夢虫

• 直帰します電話切るまで蜘蛛見遣り

  三水低オサム

• ここまでの蜘蛛の巣になる筈はない

  城内幸江

• 車椅子嫌がる祖母の肩に蜘蛛

  なつめモコ

• 蜘蛛の糸高層ビルの窓掃除

  角田　球

• （パート募集）窓に貼り紙くもの糸

  さいたま水夢

• ソナチネやピアノの縁を蜘蛛の脚

  さざなみ葉

• 蜘蛛這うや深い所に無い答え

  時小町

• 風に待たされ風を待つ蜘蛛である

  小木さん

• あどけなき生き餌の蜘蛛を溺愛す

  西村青夏@金カル

• 命日や墓碑の窪みの袋蜘蛛

  美津うつわ

• 蜘蛛の囲や空き家庭込み五千円

  草夕感じ

• 己が身を解いて蜘蛛巣編みにけり

  みゆむうしば

• 花蜘蛛はみどりのしづく朝の風

  やまさきゆみ

• 蜘蛛の囲や道玄坂のラブホテル

  あたしは斜楽

• 荒屋の綻び埋める蜘蛛の糸

  刈屋まさを

• せめて色もてよ空五倍子色の蜘蛛

  あまぶー

• 朝帰りそっと玄関開けて蜘蛛

  つきのひと

• 蜘蛛の囲や朝一の揉め事もなく

  林真紗湖

• 蜘蛛の巣やテナント募集三年目

  ピアニシモ＠金カル

• 夜の蜘蛛我残酷な人となる

  鈴木古舟

• 小さき蜘蛛みどり色なら触れてみる

  絵十

• 六本木見下ろす蜘蛛の長き脚

  香田ちり

• 怪物の囁く夜は月に蜘蛛

  平野水麦

• 玄関に並ぶ馬小屋蜘蛛に貸す

  岡田雅喜

• 縦糸は生横糸は死へと蜘蛛

  名前のあるネコ

• クイックルワイパー逃れ逃れし朝の蜘蛛

  小笹いのり

• 壺へ蜘蛛にげていつたのだが底は

  藤田ゆきまち

• 家主搬送蜘蛛は無人の食卓へ

  鈴白菜実

• ついついと朝日の針や蜘蛛の糸

  与志魚

• 劇薬の瓶の後方蜘蛛の影

  瑞陽庵

• 朝蜘蛛め阪神敗れキンチョール

  粋田化石

• 雨音のリズムにつむぐ蜘蛛孤独

  神谷たくみ

• 電柵の蜘蛛水田を守るべく

  渡辺十把　

• 道端の小さき祠に蜘蛛こそり

  秋雪

• アンケートと配布ティッシュや蜘蛛の網

  さ乙女龍チヨ

• 蜘蛛の囲や朝刊届く音かすか

  風の木原

• 頑固店主と蜘蛛のいるあの古本屋

  清白真冬

• コテージの夜を支配せりタイの蜘蛛

  麦のパパ

• 蜘蛛の巣や手抜き掃除がすぐ分かる

  中島京子

• 家蜘蛛の闇を見つめて動かざる

  酔蚊眼

• 神棚に円らな蜘蛛の骸かな

  横山雑煮

• 蜘蛛の囲を切るや揺れたるかずら橋

  岡山小鞠

• 溺れてた蜘蛛を助けたタイル池

  青柳修平

• 満腹や眠たき蜘蛛はふぇいと鳴く

  津々うらら

• 蜘蛛仕留め損ね深夜のワンルーム

  大黒とむとむ

• 月光にピアノ線めく蜘蛛の糸

  ふじこ

• 女郎蜘蛛ひねもす禅の不動かな

  多々良海月

• ヒーローやティッシュ二枚の中に蜘蛛

  ノアノア

• 海匂ふ横浜駅や蜘蛛走る

  藤白真語

• 蜘蛛の巣を透かして見上ぐ観覧車

  虎堂吟雅

• 網の間の空を塞いだ蜘蛛の餌

  三無季生

• 読みかけの汀女句集や蜘蛛の網

  姫川ひすい

• 蜘蛛の囲の向うはみんないぢめつ子

  足立智美

• ワイパーに挟まり大蜘蛛橋わたる

  苺井千恵

• 蜘蛛の座する左手前の引戸かな

  恋瀬川三緒

• 入院や窓を斜めに蜘蛛の腹

  伊予素数

• ずり這いの父の徘徊真夜の蜘蛛

  松井くろ

• 蜘蛛走る父の間に軍隊手帳

  新濃　健

• 縁切寺に巣を張りたるや女郎蜘蛛

  なかの花梨

• 廃屋の鬼蜘蛛さらに太りけり

  六花

• 畑の小屋蜘蛛の太鼓は長靴に

  池田 　凜

• 朝蜘蛛に今日を託して野良仕事

  ひすい風香

• 三面鏡蜘蛛を二つに映しをり

  関津祐花

• 蜘蛛の糸たとえ話に気を付けて

  小林番茶

• 唐門の麒麟捕らえし蜘蛛の糸

  夏草はむ

• 蜘蛛殺ると決めたる妻をなだめけり

  久保田凡

• 蜘蛛の囲のかかる深紅のロスフラワー

  海乃一夏

• 沖めざす小船よ蜘蛛は糸を張る

  水木合歓

• 血の色のルージュ女郎蜘蛛の腹や

  大高和正

• 蜘蛛の巣や出口の多き大手町

  野澤真澄

• 蜘蛛の子が散る総崩れの大軍

  希布

• さみどりの蜘蛛に吹く風草の色

  木村隆夫

• 潰せずに隅へと蜘蛛を走らせる

  佐々木ヨウジ

• 蜘蛛の子のさみどりになる朝日かな

  芋　二郎

• 蜘蛛の囲の真中の蜘蛛に愛を問う

  ねむり猫

• 生前葬のピアノ蜘蛛は軽やか

  晴田そわか

• 蜘蛛の囲の真中を払ふ決意かな

  さぶり

• 青空の隙間に蜘蛛の足の先

  壱太

• 女郎蜘蛛光と影を占領す

  望月　円

• 床下のぼうけん蜘蛛の巣は不味い

  沼野大統領

• くものゐを突かばふるるとあらがへり

  斉藤百女

• 十二時の振子時計や蜘蛛上る

  ふのんへん宗悟

• あの蜘蛛の支配下にある便座かな

  火炎幸彦

• 掃除機の口より長き脚の蜘蛛

  風蘭智子

• 厠戸の大きな蜘蛛に悪気なし

  ツユマメ@いつき組広ブロ俳句部

• 水流れ去る蜘蛛の囲のすぐ下を

  赤松諦現

• 鎌の刃を飛び越え逃げし小さき蜘蛛

  庭野環石

• 記憶の蜘蛛は手のひらより大きく

  三隅　涙

• 夜の蜘蛛右往左往のだふ屋かな

  コーヒー博士

• 好ましやずぼらな蜘蛛のいびつな巣

  虹岡思惟造

• 蜘蛛の子の風の具合を見てをりぬ

  蒼鳩　薫

• 逆光に腹のふくれた女郎蜘蛛

  内田こと

• 継ぐと決め蜘蛛の巣を取る農具小屋

  荒一葉

• 窓際に虫除けの蜘蛛飼っておく

  どいつ薔芭

• 廃校へ抜け道を這う女郎蜘蛛

  堀ゆうき

• ステージの上に蜘蛛ゐしクラブ久美

  佐藤茂之

• 住み着きし蜘蛛と分け合ふ朝の風

  河崎弘美

• 袋蜘蛛もくもくとカフェ準備中

  まめばと

• 礼節を持つて蜘蛛の囲払いけり

  中山月波

• ぱらしゅーと右のまぶたに降りる蜘蛛

  星野はいかい

• 蜘蛛落とし潰す留守番のひとり

  中島　真珠

• 蜘蛛の子の蜘蛛の形で散りにけり

  だっく

• 大蜘蛛や回転ドアのタイムラグ

  夏　六葉

• 先住の蜘蛛階段に堂々と

  伊ナイトあさか

• 蜘蛛眠る糸の一本足りぬまま

  居並小

• 蜘蛛の巣を髪に少年探検隊

  うみのすな

• 蜘蛛肥へて透ける翅だけ残りけり

  亀田かつおぶし

• 巣をつくる蜘蛛あさかぜに足掛けて

  北藤詩旦

• 裏返し蜘蛛八脚の在りどころ

  沢拓庵＠いつき組カーリング部

• 山小屋の蜘蛛と七泊八日する

  山口絢子

• 蜘蛛の囲や静かにほぐす地蔵尊

  林常住

• 蜘蛛の子がさすらふ留守の子供部屋

  Kかれん

• 高原に立ち寄る蜘蛛の深呼吸

  真喜王

• スリッパに韋駄天走り夜の蜘蛛

  対馬清波

• 翅もたぬ蜘蛛の哀しみ糸に揺れ

  杜乃しずか

• 猛毒持つカフカの虫は蜘蛛食らふ

  水越千里

• 星空の雨どい平蜘蛛つつつ

  明惟久里

• しのび逢いメンヘラ女の指に蜘蛛

  羅蒐

• 西窓に蜘蛛の子ぢつとすきとほる

  鶴小なみ

• 積ん読の谷跳びわたる蜘蛛の影

  石川聡

• 4Kの白馬山脈横切る蜘蛛

  山尾政弘

• 天井の蜘蛛見て測る視力かな

  千曜　桜

• 壁走る蜘蛛に息かけ翔びにけり

  洋々

• ぴょんぴょんと蜘蛛の子ジグザグにルンバ

  くぅ

• ゆび先に殺めし蜘蛛と地獄篇

  haruwo

• 湯あがりに蜘蛛の眼と合うまずタオル

  青鷹

• 蜘蛛とゐて放課後の星読み係

  菅井香永

• リアガラス裸のやうな蜘蛛の腹

  久米穂風

• 地下室を蜘蛛の足音五倍増

  千鳥城@いつき組広ブロ俳句部カナダ支部

• 蜘蛛の囲は揺れて震えて静まりぬ

  栞虫かじり

• 積読の頂き目指し夜の蜘蛛

  樹魔瑠

• 青空の角を探している蜘蛛

  りんたろう

• 横手から蜘蛛の這い出す雨催い

  亀山酔田

• 植え込みの蜘蛛の囲平ら斜に光る

  緩木あんず

• 供花出て仏間まよえる孕蜘蛛

  辻野 花

• 廬舎那仏てのひらの蜘蛛はい上がる

  アリマノミコ

• 便座に蜘蛛睨む攻防五分間

  羽光

• 夕間暮れひだるき蜘蛛の罠作り

  石川順天

• 蜘蛛の囲や伏線多きミステリー

  陽光樹

• 新畳蜘蛛うそうそと縁の上

  山河穂香

• 寄せばその風のかたちに蜘蛛の糸

  遊羽女

• 蜘蛛殺す女と飯を食っている

  猫ふぐ

• 蜘蛛の囲を払えば祖父の肖像画

  田畑　整

• 優しい風です笑顔の蜘蛛です

  伊藤辰弥

• 母なりし五十五年や壁に蜘蛛

  和季

次回の兼題も
皆さまふるって投句してください。
お待ちしています！