類想一覧(選外)
朝霜や通勤電車乗り遅れ
ぐりぐら京子
城山の羊歯に霜ふり白々と
かとしん
ざくざくと蹠沈めて霜の朝
みなみはな
霜踏んで朝刊配るバイク音
さいたま水夢
霜の朝坂ダッシュ10本排球部
おたまじゃくし
玄関戸開けて息のむ霜の庭
れんげ畑
炎熱の空の懐かし霜おりぬ
猪飼篤彦
霜踏んで幼き頃の吾になる
宮沢 韋駄天
靴下に穴を見つけて霜の朝
白鳥国男
星うたふ空から青女降り来たり
たむらせつこ
さりさりと奥の院まで霜の道
佐藤儒艮
霜おりて芝生に人と犬の跡
玉川徳兵衛
霜の花聖なる化粧はフライング
北代晋一
参道をサクサクと踏む霜の朝
おん ころころ
霜踏んで朝のあいさつ声きらら
沼宮内 かほる
ガラスの霜厚しワイパー最速
田村 宗貞
山里の藁葺き屋根に霜光る
加藤光弘
ドアミラー霜と今年の厄を拭く
はたやま こう
手を繋ぎ歩く園児が霜を踏む
茶太郎
広報車巡る村内霜注意
一日一笑
われ巨人となりて霜を踏み砕く
沙一
通勤のハンドルに霜サドルに霜
前田
キーンと冷え霜と青空しみ渡る
武知小雪
霜の間に葉の産毛立つ息づかい
睦月くらげ
霜浴びて白髪頭の木となりぬ
三好一彦
肩寄せるわらべ地蔵や夜半の霜
えいぎょ
霜の田の犬かけずりて霜壊す
葉月けゐ
老親と歩幅合はせる今朝の霜
角田 球
霜蹴散らして朝練のスパイク
大熊猫@四句八句
霜降りて遊びに行く予定消える
中村笙平
霜を踏む会話しているような音
まりい@木ノ芽
出勤の脇道に立つ霜見詰む
石垣ようせい
霜を嗅ぐ犬の鼻先荒い息
千曜 桜
姉いもと霜ふみ遊ぶさくさくと
かじま木犀
朝練や校門までの霜だたみ
たこぼうず
ワイパーON扇を残し霜は消ゆ
羽柳武助
霜の朝放置自転車輝けり
太之方もり子
愛し子の頬まっかっか霜の朝
三無季生
残された野菜縁取る朝の霜
横山くみこ
霜を踏む登校の子の目の光り
和泉明月子
スパイクの汗と涙と泥と霜
どゞこ
霜の朝柱状節理さもあらん
立歩
托鉢の声浪々と霜の朝
谷 牛歩
蛙石の大小二つ霜下りる
森野みつき
葉脈を縁取る霜の夢幻かな
松葉学而
朝霜や星空降らしちゃったかも
空流峰山
虹色のスワロフスキー窓の霜
かぬまっこ@木ノ芽
列車来る鉄路の霜を溶かしつつ
おのまい
霜ジャリッと踏んで家を出る
羅蒐
街の樹は霜をモールに縁取れり
岡崎佐紅
青女降り野菜は甘き香を放つ
のはらいちこ
一休みあぁ霜晴や一歩ゆく
玉野 素人
庭掃除の払ふ箒に霜の花
小林昇
霜の朝ゴム長靴が走り行く
卑弥呼
放たれた星は葉に付き霜と成る
星醒(泥塗れのポスト)
始発待つベンチの霜を払いつつ
杜乃しずか
学ランの背中見送り今朝の霜
縞ふみ
朝まだき霜の回廊ひかりさし
わたり 和
ボールはラフへグリーンは霜光る
ヒロヒです
強霜の木々は身震い朝日かな
余熱
霜降りて庭の草木の煌めけり
かんこ鳥
霜を踏み大怪獣を真似てをり
ちゃるこ
霜日和カピバラ集う露天風呂
青い小鳥
庭師来て庭ベールのごと朝の霜
広島しずか80歳
星々の姫ら降りきて霜日和
ことまと
霜の花通学班の列乱す
日向大海
倍速のワイパーの音霜の朝
竹原かよこ
霜の花踏んで奏でる足音よ
北五帆
白杖の硬き響きや橋の霜
もりたきみ
朝霜に震えるさいごの野葡萄よ
花とわこ
燧岳霜の木道輝けり
白薔薇
家族寝て霜夜ことさら更けにけり
銀 次郎
霜踏みて登校班を待つ五分
白子ポン酢
山道を霜を踏みしめ通ひけり
文月あつみ
霜の朝温度を上げる給湯器
竹内ユキ
茶畑の葉ごとに白き霜一面
松本厚史
野良に行く霜纏う葉に朝日差す
沢瀉みやこ
草花を霜の縁る硬さかな
春あおい
おろしたて汚れてもなお霜を踏む
松本 檜風
朝練の一・二・三・四霜を避け
安達りんだう
霜の朝ざくざくざくざくざっくざく
山次
目覚めをり霜見ゆ雪とたがう日も
樹魔瑠
青空に霜の花咲く朝の窓
樺山 鴻春
霜の朝豆腐の味噌汁舌やけど
伊勢乃幸牛
霜の朝気遣う深夜ラジオかな
藤源卿
始発車の窓のむこうに霜の朝
西脇美香月
ザクザクと未明の畑の霜を踏む
そぼろ
雨後の石に咲くかな霜の花
菊川寝ん猫
玻璃窓の霜を削りてアイラブユー
田邉真舟
さまざまな縁きは立ちて銀の霜
夕虹くすん
霜降りてマリーゴールドプラチナに
中野京美
霜踏んで配る朝刊夜が明ける
東 湘輝
しんしんと星降る大地霜夜かな
はぐれ雲
葉のふちの霜は昨夜の気のにじみ
石神湖畔
繋ぐ手の鼓動伝わる霜の道
山本マユミ
転倒の自戒を節に霜の道
天東あさじ
影伸びて木陰の霜も消えるらむ
羅美都
朝霜をひとまたぎする通学路
風間 燈華
とけ始む霜晴の渓ひかり満ち
西郡うり
霜凪や薪置き屋根に昇る湯気
赤尾双葉
青空や車の窓の霜の花
スモールちもこ
早番のフロントガラスこそぐ霜
田辺ふみ
キュルキュスン霜のベレG始動せず
秋月
草の葉を縁取る霜の角尖る
水きんくⅡ
十冊目孫の寝息と霜の声
山乃尾乃道之翁
ワクチンの接種に向ふ霜の道
大木典子
ジョギングの足音今日も霜の朝
西町彰子
失恋や霜のざくざく下校道
ナゾラブ
霜のサドル拭い朝練へ八キロ
妹のりこ
帰り来ぬ夫待つ卓の霜夜かな
みやかわけい子
愛犬の引っ張るリード霜の道
ゴーマ
反抗期の子のサドルは茶霜拭う
野井みこ
「あと十分」サドルの霜を払いのけ
高橋風香
睫毛に霜植村直己下山せず
諫鼓苔深
パジヤマから制服に変へ霜の朝
勘太郎
霜の朝登園の子のスキップす
高木音弥
朝の霜庭苔すべて閉じ込めて
吉川花ほっぺ
朝霜や掠れた赤の烏瓜
まつといのいち
霜の華白きミクロのフラクタル
秦 理露
竹刀手に稽古に向かう霜の朝
アントワネット@ノエル
朝取りのレタスに光る霜の花
せりよさ
歩をとめて霜の縁どる草見入る
田中ようちゃん
フロントガラスに咲く花霜の花
上村茶娘
どちやどちやと霜踏んで行きしやがむ犬
詠頃
霜おりて水菜豚肉うまくなる
Karino
霜多し丹精の芽に藁覆う
望月 円
朝霜や轍跡ゆく二人乗り
むねあかどり
満天の星の知らせや明日は霜
上津 嘉子
星落ちて散り散り霜になりにけり
遥風
ピロティをかけぬけ霜をふみにゆく
海老煎餅
霜嫌う茶畑五基のプロペラよ
京あられ
霜の朝運動靴の弾み行く
雨霧彦@木ノ芽
補助輪をはずした昨日霜の花
ぶうびい
朝練は霜運動靴と走る
久米穂風
戯るる雀の声に霜の花
桜 萬山
霜降りる薄化粧する草木かな
紋舞蘭
板の上滑るようん知つてるさ霜
犬井山羊
朝の霜ガラス細工と見ゆる草
髙見艀舟
星明かり霜踏み目指す始発駅
井口あきこ
六地蔵霜の衣を纏ふかな
広島あーやあーや
月明かり一直線の霜の道
りんごのほっぺ
朝霜や漆もみじの縁を描き
唯野音景楽
子の心えぐる戦争霜の声
荒磯魚々
膝に猫温もる庭の隅に霜
えふしー芭流砂
カーテンを開けて手先の霜の花
西川あきや
自転車のペダル重たき霜の朝
雨李
霜踏んでさくり学校への近道
殿さまペンギン
欠席の言い訳思案霜の声
さかえ八八六
朝霜や田畑うぶ毛に包まれり
砂楽梨
星々の欠片よ霜となりぬべし
秋白ネリネ
しんしんと霜生まれたる午前二時
緩木あんず
朝霜や湯気の立ちたる競走馬
ふみ
ミシミシと窓霜おりぬ朝六時
こきん
次回の兼題も
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選者コメント
夏井いつき選
◆季語そのものを、まずは確認
今回の兼題「霜」には、以下のように傍題が沢山あります。
【霜の花 三の花 青女 はだれ霜 霜だたみ 霜夜 霜の声 霜晴 霜日和 霜凪 霜雫 大霜 深霜 濃霜 強霜 朝霜 夜霜】
兼題として「霜」と出題されれば、まずは「霜」そのものに真正面から取り組んでみましょう。今回の投句の中には、音数を整えられないから「霜」ではなく「霜日和」の五音にしておこう……と思ったに違いないような、安易な傍題の使い方が目立ちました。
傍題は、微妙なニュアンスを表現するために派生していった季語。そのニュアンスを無視して、音数調整代わりに使うのは、傍題に対しても失礼ですし、同時に季語「霜」の本意を理解してないことの証となります。
さらに「霜柱」「初霜」などの句もありました。頁の少ない季寄せ等では、便宜上、同じ項目に入れているものもありはしますが、「初霜」の「初」の一字のニュアンス、「霜柱」の本意などを鑑みれば、それぞれ独立した季語だと考えます。
兼題「霜」(冬・天文)とは違う季語
・「霜月」 …… 時候
・「初霜」 …… 別立ての季語
・「霜柱」 …… 地理の季語
・「霜焼」 …… 人事
・「霜枯」 …… 植物
また、「霜降」は「しもふり」と読ませたいのかもしれませんが、上五が「霜降や」だと二十四節気の「霜降(そうこう)」と読めてしまいます。
さらに、「冷蔵庫(冷凍庫)の霜」「霜降り肉」の霜は論外。「黒髪に霜」も、意味が違いますね。
兼題に取り組む前には、必ず歳時記を開き、季語の本意を確認しましょう。その基本情報も学ぼうとせず、イチかバチか的なやり方は、俳句の学びとして建設的ではありません。
俳句は筋トレです。少しずつ筋肉をつけていくことが、遠回りに見えて、確実な成長の道。初級に戻り、コツコツ取り組むことも視野にいれて下さい。
◆さて、中級の類想としては、毎回のことではありますが、
季語「霜」における類想もあれば、季語に関係なくよくでてくる類想もあります。類想の句をチェックすることは、基礎体力をつけることに繋がります。自分の句の成果のみに囚われず、効率的な学びを目指して下さい。
【類想パターン】
◆ イメージ
・ 凛と(空気や人の佇まい) 心身が引き締まる
・ (空気が澄んで)清らか
・ 懐かしい 童心
・ 美しい
◆ 霜が降りた様子
・ 一面の白 雪のよう
・ 光 輝く
・(フロントガラスや窓の霜が)レース ステンドグラス 万華鏡 など
・(草木や景色が)化粧をしたよう
・ 霜が葉を縁取る
・ 亡き犬の小屋に霜
・ 都会の霜 ビルの間の霜
・ 轍、足跡に霜
◆ 太陽や星や青空
・ 星、星の欠片が霜になる 星の息が霜になる
・ 星降る夜に霜も降る
・ 朝日に輝く
・ 青空に映える
◆ 人は……
・ 滑る 転ぶ
・ (霜を踏んで)朝練へ 始発へ
・ 踏む 蹴る → 巨人や怪獣になった気分で踏む
・ 犬を連れて散歩 → 犬は霜を嗅ぐ 駆ける
・ 窓の霜に絵や字をかく
・ ワイパーで霜を掃う
・ サドルや手すりの霜を拭う
・ 頬や手が赤い
◆ 霜が降りる日は寒いので
・ 鉢植えを室内に入れる
・(野菜や茶の木を保護するために)寒冷紗 プロペラ
・ エンジンがなかなかかからない
・ 起きるのがつらい
・ お湯で霜をとかす
・ 温かいものを食べる 飲む
・ 湯気いろいろ
→ 馬 犬 少年 屋根 大地 など
→ 湯気の立つ食べ物、飲み物、窯との取り合せ
◆ オノマトペ
・ しんしん しんと
・ サクサク ザクザク ザクリ シャクシャク
・ きらきら
◆ その他
・ 霜が降りると野菜が甘くなる、旨味を増す
・ 農家に霜注意報
・ 霜を知らない今の子 (南国なので)霜を見たことがない
・ (温暖化で)霜を見なくなった
・ 晴れた夜なので明日の朝は霜が降りそう
・ 日陰の霜が残っている
類想を土台として、佳句に仕上がっている作品も多々あります。佳作以上の作品は、次へのヒント。丁寧に読んで、自分の肥しとして下さい。
※今回の兼題「霜」中級者以上投句欄へのご投句は、投句数3732句、投句人数1542人となりました。以下、類想句の一覧です。