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中級者以上結果発表

2023年10月20日週の兼題

【曜日ごとに結果を公開中】

【類想】

選者コメント

夏井いつき

◆季語そのものを、まずは確認


 今回の兼題「霜」には、以下のように傍題が沢山あります。

【霜の花 三の花 青女 はだれ霜 霜だたみ 霜夜 霜の声 霜晴 霜日和 霜凪 霜雫 大霜 深霜 濃霜 強霜 朝霜 夜霜】


 兼題として「霜」と出題されれば、まずは「霜」そのものに真正面から取り組んでみましょう。今回の投句の中には、音数を整えられないから「霜」ではなく「霜日和」の五音にしておこう……と思ったに違いないような、安易な傍題の使い方が目立ちました。


 傍題は、微妙なニュアンスを表現するために派生していった季語。そのニュアンスを無視して、音数調整代わりに使うのは、傍題に対しても失礼ですし、同時に季語「霜」の本意を理解してないことの証となります。


 さらに「霜柱」「初霜」などの句もありました。頁の少ない季寄せ等では、便宜上、同じ項目に入れているものもありはしますが、「初霜」の「初」の一字のニュアンス、「霜柱」の本意などを鑑みれば、それぞれ独立した季語だと考えます。


兼題「霜」(冬・天文)とは違う季語

・「霜月」 …… 時候

・「初霜」 …… 別立ての季語

・「霜柱」 …… 地理の季語

・「霜焼」 …… 人事

・「霜枯」 …… 植物


また、「霜降」は「しもふり」と読ませたいのかもしれませんが、上五が「霜降や」だと二十四節気の「霜降(そうこう)」と読めてしまいます。

 さらに、「冷蔵庫(冷凍庫)の霜」「霜降り肉」の霜は論外。「黒髪に霜」も、意味が違いますね。


 兼題に取り組む前には、必ず歳時記を開き、季語の本意を確認しましょう。その基本情報も学ぼうとせず、イチかバチか的なやり方は、俳句の学びとして建設的ではありません。

 俳句は筋トレです。少しずつ筋肉をつけていくことが、遠回りに見えて、確実な成長の道。初級に戻り、コツコツ取り組むことも視野にいれて下さい。


◆さて、中級の類想としては、毎回のことではありますが、

季語「霜」における類想もあれば、季語に関係なくよくでてくる類想もあります。類想の句をチェックすることは、基礎体力をつけることに繋がります。自分の句の成果のみに囚われず、効率的な学びを目指して下さい。


【類想パターン】

◆ イメージ

・ 凛と(空気や人の佇まい) 心身が引き締まる

・ (空気が澄んで)清らか 

・ 懐かしい 童心

・ 美しい 


◆ 霜が降りた様子

・ 一面の白 雪のよう

・ 光 輝く

・(フロントガラスや窓の霜が)レース ステンドグラス 万華鏡 など

・(草木や景色が)化粧をしたよう

・ 霜が葉を縁取る


・ 亡き犬の小屋に霜

・ 都会の霜 ビルの間の霜

・ 轍、足跡に霜


◆ 太陽や星や青空

・ 星、星の欠片が霜になる 星の息が霜になる

・ 星降る夜に霜も降る

・ 朝日に輝く 

・ 青空に映える


◆ 人は……

・ 滑る 転ぶ

・ (霜を踏んで)朝練へ 始発へ 

・ 踏む 蹴る   → 巨人や怪獣になった気分で踏む

・ 犬を連れて散歩 → 犬は霜を嗅ぐ 駆ける

・ 窓の霜に絵や字をかく

・ ワイパーで霜を掃う

・ サドルや手すりの霜を拭う

・ 頬や手が赤い 


◆ 霜が降りる日は寒いので

・ 鉢植えを室内に入れる

・(野菜や茶の木を保護するために)寒冷紗 プロペラ

・ エンジンがなかなかかからない

・ 起きるのがつらい

・ お湯で霜をとかす

・ 温かいものを食べる 飲む

・ 湯気いろいろ 

     → 馬 犬 少年 屋根 大地 など

     → 湯気の立つ食べ物、飲み物、窯との取り合せ


◆ オノマトペ

・ しんしん しんと

・ サクサク ザクザク ザクリ シャクシャク

・ きらきら


◆ その他

・ 霜が降りると野菜が甘くなる、旨味を増す

・ 農家に霜注意報

・ 霜を知らない今の子 (南国なので)霜を見たことがない

・ (温暖化で)霜を見なくなった

・ 晴れた夜なので明日の朝は霜が降りそう

・ 日陰の霜が残っている

  

 類想を土台として、佳句に仕上がっている作品も多々あります。佳作以上の作品は、次へのヒント。丁寧に読んで、自分の肥しとして下さい。


※今回の兼題「霜」中級者以上投句欄へのご投句は、投句数3732句、投句人数1542人となりました。以下、類想句の一覧です。

類想一覧(選外)

  • ざくざくと蹠沈めて霜の朝

    みなみはな

  • 城山の羊歯に霜ふり白々と

    かとしん

  • 霜の朝坂ダッシュ10本排球部

    おたまじゃくし

  • 玄関戸開けて息のむ霜の庭

    れんげ畑

  • 霜踏んで朝刊配るバイク音

    さいたま水夢

  • 炎熱の空の懐かし霜おりぬ

    猪飼篤彦

  • 朝霜や通勤電車乗り遅れ

    ぐりぐら京子

  • 靴下に穴を見つけて霜の朝

    白鳥国男

  • 霜踏んで幼き頃の吾になる

    宮沢 韋駄天

  • さりさりと奥の院まで霜の道

    佐藤儒艮

  • 霜おりて芝生に人と犬の跡

    玉川徳兵衛

  • 星うたふ空から青女降り来たり

    たむらせつこ

  • 霜の花聖なる化粧はフライング

    北代晋一

  • 参道をサクサクと踏む霜の朝

    おん ころころ

  • ドアミラー霜と今年の厄を拭く

    はたやま こう

  • 山里の藁葺き屋根に霜光る

    加藤光弘

  • ガラスの霜厚しワイパー最速

    田村 宗貞

  • 通勤のハンドルに霜サドルに霜

    前田

  • 手を繋ぎ歩く園児が霜を踏む

    茶太郎

  • 霜踏んで朝のあいさつ声きらら

    沼宮内 かほる

  • 広報車巡る村内霜注意

    一日一笑

  • われ巨人となりて霜を踏み砕く

    沙一

  • 霜の田の犬かけずりて霜壊す

    葉月けゐ

  • 霜浴びて白髪頭の木となりぬ

    三好一彦

  • 肩寄せるわらべ地蔵や夜半の霜

    えいぎょ

  • キーンと冷え霜と青空しみ渡る

    武知小雪

  • 霜降りて遊びに行く予定消える

    中村笙平

  • 老親と歩幅合はせる今朝の霜

    角田 球

  • 霜を踏む会話しているような音

    まりい@木ノ芽

  • 出勤の脇道に立つ霜見詰む

    石垣ようせい

  • 霜蹴散らして朝練のスパイク

    大熊猫@四句八句

  • 姉いもと霜ふみ遊ぶさくさくと

    かじま木犀

  • 霜の間に葉の産毛立つ息づかい

    睦月くらげ

  • 朝練や校門までの霜だたみ

    たこぼうず

  • 霜の朝放置自転車輝けり

    太之方もり子

  • 愛し子の頬まっかっか霜の朝

    三無季生

  • ワイパーON扇を残し霜は消ゆ

    羽柳武助

  • 霜を嗅ぐ犬の鼻先荒い息

    千曜 桜

  • 残された野菜縁取る朝の霜

    横山くみこ

  • 霜を踏む登校の子の目の光り

    和泉明月子

  • 托鉢の声浪々と霜の朝

    谷 牛歩

  • 霜の朝柱状節理さもあらん

    立歩

  • 葉脈を縁取る霜の夢幻かな

    松葉学而

  • スパイクの汗と涙と泥と霜

    どゞこ

  • 蛙石の大小二つ霜下りる

    森野みつき

  • 霜ジャリッと踏んで家を出る

    羅蒐

  • 朝霜や星空降らしちゃったかも

    空流峰山

  • 虹色のスワロフスキー窓の霜

    かぬまっこ@木ノ芽

  • 青女降り野菜は甘き香を放つ

    のはらいちこ

  • 街の樹は霜をモールに縁取れり

    岡崎佐紅

  • 列車来る鉄路の霜を溶かしつつ

    おのまい

  • 放たれた星は葉に付き霜と成る

    星醒(泥塗れのポスト)

  • 庭掃除の払ふ箒に霜の花

    小林昇

  • 霜の朝ゴム長靴が走り行く

    卑弥呼

  • 一休みあぁ霜晴や一歩ゆく

    玉野 素人

  • 始発待つベンチの霜を払いつつ

    杜乃しずか

  • 朝まだき霜の回廊ひかりさし

    わたり 和

  • ボールはラフへグリーンは霜光る

    ヒロヒです

  • 霜降りて庭の草木の煌めけり

    かんこ鳥

  • 霜を踏み大怪獣を真似てをり

    ちゃるこ

  • 霜の花通学班の列乱す

    日向大海

  • 強霜の木々は身震い朝日かな

    余熱

  • 霜日和カピバラ集う露天風呂

    青い小鳥

  • 星々の姫ら降りきて霜日和

    ことまと

  • 学ランの背中見送り今朝の霜

    縞ふみ

  • 庭師来て庭ベールのごと朝の霜

    広島しずか80歳

  • 霜の花踏んで奏でる足音よ

    北五帆

  • 倍速のワイパーの音霜の朝

    竹原かよこ

  • 朝霜に震えるさいごの野葡萄よ

    花とわこ

  • 燧岳霜の木道輝けり

    白薔薇

  • 白杖の硬き響きや橋の霜

    もりたきみ

  • 家族寝て霜夜ことさら更けにけり

     銀 次郎

  • 霜踏みて登校班を待つ五分

    白子ポン酢

  • 山道を霜を踏みしめ通ひけり

    文月あつみ

  • おろしたて汚れてもなお霜を踏む

    松本 檜風

  • 草花を霜の縁る硬さかな

    春あおい

  • 野良に行く霜纏う葉に朝日差す

    沢瀉みやこ

  • 茶畑の葉ごとに白き霜一面

    松本厚史

  • 朝練の一・二・三・四霜を避け

    安達りんだう

  • 霜の朝温度を上げる給湯器

    竹内ユキ

  • 霜の朝豆腐の味噌汁舌やけど

    伊勢乃幸牛

  • 青空に霜の花咲く朝の窓

    樺山 鴻春

  • 目覚めをり霜見ゆ雪とたがう日も

    樹魔瑠

  • 雨後の石に咲くかな霜の花

    菊川寝ん猫

  • 霜の朝ざくざくざくざくざっくざく

    山次

  • ザクザクと未明の畑の霜を踏む

    そぼろ

  • 始発車の窓のむこうに霜の朝

    西脇美香月

  • さまざまな縁きは立ちて銀の霜

    夕虹くすん

  • 玻璃窓の霜を削りてアイラブユー

    田邉真舟

  • 霜の朝気遣う深夜ラジオかな

    藤源卿

  • しんしんと星降る大地霜夜かな

    はぐれ雲

  • 霜踏んで配る朝刊夜が明ける

    東 湘輝

  • 葉のふちの霜は昨夜の気のにじみ

    石神湖畔

  • 霜降りてマリーゴールドプラチナに

    中野京美

  • 影伸びて木陰の霜も消えるらむ

    羅美都

  • 繋ぐ手の鼓動伝わる霜の道

    山本マユミ

  • 転倒の自戒を節に霜の道

    天東あさじ

  • 朝霜をひとまたぎする通学路

    風間 燈華

  • 霜凪や薪置き屋根に昇る湯気

    赤尾双葉

  • とけ始む霜晴の渓ひかり満ち

    西郡うり

  • 青空や車の窓の霜の花

    スモールちもこ

  • 十冊目孫の寝息と霜の声

    山乃尾乃道之翁

  • 早番のフロントガラスこそぐ霜

    田辺ふみ

  • ワクチンの接種に向ふ霜の道

    大木典子

  • ジョギングの足音今日も霜の朝

    西町彰子

  • 失恋や霜のざくざく下校道

    ナゾラブ

  • キュルキュスン霜のベレG始動せず

    秋月

  • 草の葉を縁取る霜の角尖る

    水きんくⅡ

  • 帰り来ぬ夫待つ卓の霜夜かな

    みやかわけい子

  • 「あと十分」サドルの霜を払いのけ

    高橋風香

  • 反抗期の子のサドルは茶霜拭う

    野井みこ

  • 愛犬の引っ張るリード霜の道

    ゴーマ

  • 睫毛に霜植村直己下山せず

    諫鼓苔深

  • 霜の華白きミクロのフラクタル

    秦 理露

  • 竹刀手に稽古に向かう霜の朝

    アントワネット@ノエル

  • パジヤマから制服に変へ霜の朝

    勘太郎

  • 朝取りのレタスに光る霜の花

    せりよさ

  • 朝の霜庭苔すべて閉じ込めて

    吉川花ほっぺ

  • 霜の朝登園の子のスキップす

    高木音弥

  • 歩をとめて霜の縁どる草見入る

    田中ようちゃん

  • フロントガラスに咲く花霜の花

    上村茶娘

  • 霜のサドル拭い朝練へ八キロ

    妹のりこ

  • 朝霜や掠れた赤の烏瓜

    まつといのいち

  • 霜おりて水菜豚肉うまくなる

    Karino

  • 朝霜や轍跡ゆく二人乗り

    むねあかどり

  • 霜多し丹精の芽に藁覆う

    望月 円

  • 補助輪をはずした昨日霜の花

    ぶうびい

  • どちやどちやと霜踏んで行きしやがむ犬

    詠頃

  • ピロティをかけぬけ霜をふみにゆく

    海老煎餅

  • 星落ちて散り散り霜になりにけり

    遥風

  • 霜嫌う茶畑五基のプロペラよ

    京あられ

  • 朝練は霜運動靴と走る

    久米穂風

  • 六地蔵霜の衣を纏ふかな

    広島あーやあーや

  • 霜降りる薄化粧する草木かな

    紋舞蘭

  • 朝の霜ガラス細工と見ゆる草

    髙見艀舟

  • 月明かり一直線の霜の道

    りんごのほっぺ

  • 朝霜や漆もみじの縁を描き

    唯野音景楽

  • 戯るる雀の声に霜の花

    桜 萬山

  • 霜の朝運動靴の弾み行く

    雨霧彦@木ノ芽

  • 満天の星の知らせや明日は霜

    上津 嘉子 

  • 板の上滑るようん知つてるさ霜

    犬井山羊

  • 膝に猫温もる庭の隅に霜

    えふしー芭流砂

  • 星明かり霜踏み目指す始発駅

    井口あきこ

  • 自転車のペダル重たき霜の朝

    雨李

  • 子の心えぐる戦争霜の声

    荒磯魚々

  • カーテンを開けて手先の霜の花

    西川あきや

  • 星々の欠片よ霜となりぬべし

    秋白ネリネ

  • 欠席の言い訳思案霜の声

    さかえ八八六

  • 霜踏んでさくり学校への近道

    殿さまペンギン

  • 朝霜や湯気の立ちたる競走馬

    ふみ

  • ミシミシと窓霜おりぬ朝六時

    こきん

  • 朝霜や田畑うぶ毛に包まれり

    砂楽梨

  • しんしんと霜生まれたる午前二時

    緩木あんず

次回の兼題も
皆さまふるって投句してください。
お待ちしています!

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