【佳作】
ぬめぬめの無く朝霜の御冥福
酒井おかわり
強霜や真つ赤な声の鴉立つ
津々うらら
ゆつくりと朝日へ霜の転車台
はぐれ杤餅
霜晴のバス見えて列縮み出す
ふもふも
霜の花しづかに草の盾となる
そら
霜は綺羅愛しつづける勇気欲る
あまぶー
あれ埋めしあたりの霜の殊に濃し
可笑式
駐車券なくて霜の音なほ増して
帝菜
立枯れの脚が生きむと霜を吸ふ
沼野大統領
ハーレーを跨げば夜空霜匂ふ
山田蹴人
産声や明るき霜の降りた日に
おかだ卯月
霜晴や事務所に沸かす大やかん
林常住
強霜の上野朝マックの塩気
西野誓光
縁ひとつ切りたり霜の綺羅の馬鹿
おきいふ
指先の痛みしづかに窓の霜
haru_sumomo
霜びつしり私のこころ見せやうか
青海也緒
長編の余韻のやうな霜のこゑ
中山月波
歯ブラシ置いて帰ってやった霜夜
花紋
鎮火せる畳屋に霜明け初める
火炎幸彦
霜割ってずんずん歩きだす無職
伊藤映雪
捕虫葉ぽかんと霜にまみれけり
ぞんぬ
霜晴や聖書を開くホテルの灯
ぎんやんま
ひだるきか霜の藪より出で来猿
らん丸
朝霜や屋上で炊く土瀝青
鈴木裕公仁
永訣の朝へとつゞく霜夜かな
めいおう星
巡回の霜夜まぶたは痙攣す
みづちみわ
痩せし父よ今朝は横浜にも霜ぞ
麦のパパ
畑を踏む賢治の聞きし霜の声
加藤多作
朝の霜もう野良犬のをらぬ町
平本魚水
猛きもの押し通るごと霜を踏む
市橋正俊
鳥たちの蹴る霜の枝霜の棘
にゃん
強霜や農機支払い日の朝
戸部紅屑
敷石も霜も銀座や坪単価
帝釈鴫
人質の数告げる霜夜のラヂオ
朶美子(えみこ)
不可逆の難聴朝霜は真白
斉藤百女
まだ泣けぬまま朝霜の斎場へ
水須ぽっぽ
引き出されし腸に噛み付く霜二尺
山香ばし
天下取らんとローソンの夜霜踏む
樹海ソース
後悔は鉄扉のにほひ霜のこゑ
げばげば
校門の霜を積分すれば水
コンフィ
惑星の草原に似て郷の霜
野中泰風
この村の墓地は赤土霜ひそと
星詩乃すぴか
霜晴れや空の漬物樽並べ
加和志真
霜仰ぐトラック仮眠三時間
居並小
風熄みて深霜の翳濃紫
巴里乃嬬
膵臓にさびしき凝り青女来る
七瀬ゆきこ
霜の声墓地は岬に届きさう
彼方ひらく
よこたはるけものの起伏朝の霜
板柿せっか
S棟の裏の金魚の墓の霜
播磨陽子
あんパンと牛乳はある霜の夜
大黒とむとむ
草原の霜踏む山羊の欠けた爪
どこにでもいる田中
薔薇線に錆色の霜検問所
西村小市
朝日撥ぬ装甲板の霜の花
たていし 隆松
バス降りて霜の本日よりひとり
新蕎麦句会・凪太
駿馬放てば霜一色の原へ
橘 春香子
霜だたみ日の出の遅き町を捨て
このみ杏仁
中指で印して霜の百度石
桜井教人@金カル
甲板の解けたる縄に霜の花
清水明美
霜晴や地磁気は赤錆の匂い
栞虫かじり
月曜の霜解け土木員の紫煙
松山松男
灯台めく霜夜のナースステーション
天陽ゆう
霜が降る明け方の夢ただ清く
あおのめ
歓声を聞く霜晴の保健室
林省造
柿の葉の霜や両手に可燃ごみ
山姥和
霜凪や起伏も影も夜を飽き
楽花生
霜の花石炭のごとばん馬燃ゆ
はせがわ水素
触れてみて霜はさみしき棘と知る
かねつき走流
サイドミラーの霜見て少し眠ろうか
伊藤辰弥
生身供御廟へ清き霜だたみ
はなぶさあきら
強霜や満載の豚送り出す
幸田梓弓
霜ばさばさはらひ横断旗を示し
TAKO焼子
霜降りるラジオから余計なお世話
野口真砂輝
コルチャック先生と踏む霜の道
GONZA
本畳むごと会社を畳む霜の朝
あなぐまはる
霜野行く子山羊しつぽをぴんと立て
うはのそら
赤錆びた不法投棄のバスの霜
at花結い
子を産みて窓は霜晴朝ごはん
かゐみすず
霜しばし潰えるまでのパレスかな
ウロ
強霜をおどろかしたる猫の舌
ひねもす
霜の花折り目の付かぬ空ばかり
シュリ
野犬その剥き出しの腸に霜
石井一草
死のはなし読んで小窓の霜溶かす
松本独り
通夜明けて喫煙所まで霜を踏む
芦幸
カラットに和訳をつけるとしたら霜
沢胡桃
霜晴や逃げしインコのきれいな死
深山むらさき
霜の朝鋼の弦を巻く力
中岡秀次
霜の朝ビスクの底の薄き殻
細川鮪目
刃物みな刃先を下に霜降る夜
えむさい
神だけを通し参道覆う霜
笑松
伊吹まで霜晴れていく往診日
まんぷく
シマウマの糞みりみりと霜日和
ぐでたまご
一夜にして兵舎を包囲したる霜
広瀬 康
霜の葉の間の霜の葉の間
二重格子
朝霜に万年筆の蒼を刺す
理酔蓮
祝福のごと朝霜のひかりの野
樫の木
しくと咲く霜や筆談するやうに
ぐ
ベランダのカメムシの骸にも霜
豆闌
学校こわい霜のひかりが息苦しい
あいだほ
生きてゐるだけの身体へ霜熱く
真井とうか
霜降りてゆふべ轢かれた烏だらう
髙田祥聖
行間を裂く霜のこゑ抑留記
佐藤烏有
霜の生れ始めてをりぬシャベルの柄
音羽凜
ライブカメラに霜車両基地の灯
橋本こはく
栄転や定礎の定の丶に霜
濃厚エッグタルト
薄明や仮設トイレは霜の匣
いかちゃん
家畜車に残る糞尿霜の駅
ふわり子
ホームドア開く霜振り落としつつ
さくさく作物
次回の兼題も
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