類想一覧(選外)
ワイドショー流れ蜜柑の皮高く
リコピン
荷を解かば転び出でたり初蜜柑
ひろ志
子等帰る居間には我と蜜柑三つ
えふしー芭流砂
キヨスクで蜜柑を買ひて一人旅
カトウ多作
しまなみや蜜柑づくし旅となり
宏楽
母の捥ぎし不揃いな酸っぱい蜜柑
水越千里
蜜柑積み無人販売揺れる旗
向日葵姐@いつき組広ブロ俳句部
恋バナを聴きつつ五つ目の蜜柑
ひと粒の種
蜜柑色に親指染めて歯抜けの子
諧 真無子
瀬戸内の夕日を浴ぶる蜜柑かな
竹内ユキ
食べ放題詰め放題の蜜柑畑
村上継鳥
海渡る特急列車蜜柑の香
ナオコ タイラー
蔕を下にすると長持ちする蜜柑
Nakahara結月
蜜柑むくほっこり掌黄色かな
滝美音
仏壇の手前に蜜柑ひとつだけ
吉乃紫享
故郷と母の便りの蜜柑箱
KOMA
恒例の友の蜜柑が未だ着かず
角田 球
トンネルや蜜柑色した風抜けて
菫久
リビングの転がる蜜柑見てる猫
小島神泉
炙り出す文字に仄かな蜜柑の香
山川腎茶
蜜柑つむ鋏の音の響きけり
村上薫
団欒の真ん中座る蜜柑かな
ときめき人
泣く孫に蜜柑握らせ笑う祖母
大野美波
みかんむくゆびにしろいのきいろいの
豆柴
捨てないで蜜柑の皮で窓掃除
金子日歩美
海の香りで美味くなる蜜柑かな
野中泰風
黄味色へどや顔染めし蜜柑好き
山田季聴
蜜柑喰うささくれ指へ沁みる色
み藻砂
蜜柑箱周りの三個黴の浮く
どこにでもいる田中
日暮れまで家族総出の蜜柑とり
からすちゃん
「蜜柑あるで」しわしわのばあちゃんの手
Dr.でぶ@いつき組広ブロ俳句部
平穏な平凡の日々みかんの日
藤源卿
集まりて山盛り蜜柑賑やかし
坂 とき
親指の爪を黄色にまた蜜柑
おのまい
手に蜜柑笑顔の子満つ地球たれ
山海動静
薄闇の小さき火のやう蜜柑分く
菅井香永
リハビリの父の指先みかんの香
清水祥月
あぶりだしの文字に隠れし蜜柑かな
太之方もり子
潮騒をまとひみかんの届きけり
ななかまど
目描きて口につこりの蜜柑おく
栗田虎女
親指を中心に立て剥く蜜柑
かぬまっこ@木ノ芽
輪切りのみかん菊の御紋や卓の花
夜ノ森ムーミン
差し出す手蜜柑ひとつの仲直り
風花まゆみ
ひとり寝の微熱のでこに蜜柑当て
秋星子
採りたての蜜柑の香るバスの旅
有田みかん
青空にたわわな蜜柑だれのもの
わたり 和
剥きくれし人の温みや蜜柑食む
黒蜜かりんとう
指の皮厚き祖父剥く焼き蜜柑
駒村タクト
転がして蜜柑地球と瓜二つ
あらいゆう
訳ありの蜜柑も人も味深し
横山くみこ
食べ過ぎて黄色くなったみかん好き
猪飼篤彦
銭入れと蜜柑の並ぶ無人店
上津 嘉子
老木に腐った蜜柑挿す狭庭
是空
蜜柑むく親指だけの香のネイル
哲山(山田哲也)
蜜柑もて分数教ふ風呂上がり
もりたきみ
大地震負けてなるかと蜜柑剝く
だけわらび
好物の蜜柑棺の中に入れ
杉柳才
黄疸と見紛うほどに喰う蜜柑
石岡女依
えいやつと親指みかんの急所突く
どすこい早川
島から島へ嫁ぐ花嫁蜜柑山
ふじかつとび
家族ぶん顔描かれてゐる蜜柑
孔明
蜜柑の皮世界地図を創造する
高橋雅
食卓にテレビとみかん祖母の愚痴
平としまる
テレビ消し籠の蜜柑に手を伸ばし
太平楽太郎
剥きあとに性格知れる蜜柑かな
渥美 謝蕗牛
尖った気持ち和らぐ甘き蜜柑かな
かつたろー。
ポケットに欠席の子のみかんかな
アントワネット@ノエル
蜜柑剥く指に果汁のいろ宿る
原神かたな
ごろ寝の一日つい五個目の蜜柑
大
タブレット打つ指先に蜜柑の香
カバ先生
子も我も欲を詰め込む蜜柑狩り
でんだ浜千鳥
皮の山また手を伸ばしまた蜜柑
水間澱凡
丘は今蜜柑たわわの山と化す
卑弥呼
一列にならべて蜜柑みな破顔
風花美絵
相槌を打ちつつゆるり剥く蜜柑
老人日記
縁側にみかんと猫と八十路の身
いごぼうら
荒海や千両箱になる蜜柑
菊池克己
無言なる二人をつなぐ蜜柑かな
加賀くちこ
腰落とし蜜柑もぐ手や青き空
さくら悠日
おずおずと有田むきする蜜柑かな
バンブー
倒壊の画に蜜柑剥く手も止まり
林 和寿
蜜柑箱並ぶ玄関日の光
森の真林
手に余る蜜柑もぐ児の得意顔
妄児
手土産は実家の庭の酸い蜜柑
栗の坊楚材
蜜柑山直滑降のモノラック
佐藤浩章
蜜柑筋取る子取らぬ子幼から
雅由
南国に育ちし祖母に蜜柑供ふ
倉持くらもん
頭からですか蜜柑を尻から派
星田羽沖
お蜜柑の双子の房を吾子の手へ
ペトロア
道中の甘い蜜柑や峠越え
一雁低空
蜜柑食べ友と語らう未来かな
鈴木由花子
祖父のなき居間に蜜柑の乾びける
ユ綺
蜜柑さえ酸いも甘いも食めばこそ
藤村やなぎ
手に蜜柑未完の俳句もう三月
秋谷 忍
夜間外来熱のおでこに置く蜜柑
蘂六
頬張るもお喋り止まぬ蜜柑談
みゆむうしば
蜜柑狩り食べながらもぐ欲惚けて
亀亀子
投ぐ蜜柑ソファーで受けし吾子の呵呵
北爪いく葉
蜜柑剥く指に力のありにけり
だっく
紀州路の里はあの山みかん山
あさぬま雅王
蜜柑にも当たり外れがあるけれど
Karino
蜜柑穫り頬染めて紅マドンナよ
上山凡仁
介護せし寮母の指に蜜柑の香
風来坊健丸
ポケットに蜜柑を一個丸善へ
ふゆの都々逸
山を成す蜜柑の皮や団欒す
山乃尾乃道之翁
皺枯れた手に持つみかんの艶まぶし
すずらんオチイコ
四葉ごとまあるき蜜柑有田むき
坂本雪桃
蜜柑むき去し年月振り返り
松本 探句トップ
焼き蜜柑焦げごと齧るこの甘さ
寺木 風宣
老夫婦見上ぐる蜜柑たわわなり
増田 昴
山肌を黄金に染めてみかん成る
中村 自在
蜜柑の丘海広がるや父想う
りんごのほっぺ
甘さ濃く三浦のみかん見直せり
玉川 徳兵衛
鈍行や蜜柑の香り国訛り
うめやえのきだけ
二つ目につい手を伸ばす蜜柑かな
かとしん
あんちやんのぽっけに蜜柑ふたつある
ちびつぶぶどう
うまいぞと父の育てし蜜柑かな
もふ美
黄に染めて時も止まりて蜜柑むく
浪速の蟹造
可愛い手でもぎとりくれる蜜柑かな
荘司彩舟
園児の足音や蜜柑コロコロ
橋本有太津
マドンナのお肌滑々蜜柑剥く
加藤たさく
蜜柑剥き紀の国びとの顔となる
坂口いちお
一服の甘き匂いや焼蜜柑
清瀬ハイジ
皮薄き蜜柑剝きつつ語らひぬ
河野灰土
孫せがむ蜜柑四個のジャグリング
秋月
皮むけば性格わかる剥き方よ
春風
喉救う蜜柑の丸く美美しけり
鈴木 浮浮
喧嘩あと蜜柑ひとつを分けあひて
星影りこ
子のためにむきしみかんは筋もなし
山次
陽の満つる蜜柑を分けあふ幸なり
樅ノ木・ライラック
蜜柑の香まといし背中頬寄せて
兵頭紫峰
次回の兼題も
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選者コメント
夏井いつき選
◆今回、目に付いたのは「蜜柑」という漢字は入っているけれど、季語としては別物であるケースです。
例えば「夏蜜柑」「青蜜柑」「蜜柑の花・蜜柑咲く」が、いつの季節の季語なのか、歳時記をきちんと引いてみましょう。手元に一冊、歳時記は必ず置いて、繰り返し引くことを習慣としましょう。
◆もう一つは、「蜜柑」という言葉は入っているけれど、それを季語とするのはキビシイのではないか、というケースです。
例えば、
・駅などで売られる冷凍蜜柑
・みかんパフェ みかんゼリーなど
・みかんジュース
・みかん鰤
・蜜柑色
内容によって判断はしましたが、兼題「蜜柑」とあれば、まずは冬の植物の季語であることを念頭に句作をするのが定石です。
◆以下、類想の種類も列挙しておきます。
【類想例】
〇 イメージ
・ 懐かしい ほのぼの
・ 明るい あたたかい
・ 昭和 母 祖父母 幼馴染
・ 初恋
〇 色や形
・ 太陽の色 灯りの色
・ 太陽のかたち 地球のかたち
〇 味
・ 甘酸っぱい 酸っぱい
・ 蜜柑は恋の味
・ 小粒のほうが甘くて美味い
・ 当たり外れがある
・ 最近のは酸っぱさが足りない
・ 揉むと甘くなる
〇 香
・ (食べた後)部屋や車内に香りが残っている
・ 指に蜜柑の香
・ 〇〇(人)にほのかな蜜柑の香
・ 太陽の香
〇 剥き方、食べ方
・ 花の形 星の形 地図の形などに皮を剥く
・ 白い筋(アルベド)を取るか取らないかで揉める
・ 蜜柑剥きながら 蜜柑を食べながら あるいは蜜柑の筋を取りながら
→ 愚痴 恋話 思い出 噂話。テレビ 駅伝 ドラマなど。
・ (思いがけないニュースなどに)蜜柑を剥く手が止まる
・ 剥き方に性格が出る
・ 焼き蜜柑が美味い
・ ついつい食べ過ぎちゃう
・ 食べ過ぎて手が黄色! 黄疸のよう
〇 場所
・ 炬燵で蜜柑(季重なり)
・ テレワークの画面の外に蜜柑
・ 海の見える蜜柑山 潮風と太陽 海光
・ 旅の車窓に置く蜜柑 車窓に見える蜜柑山
・ 故郷の蜜柑
・ 伊予 愛媛 瀬戸 紀州 和歌山 静岡 有田 熊本 湘南
〇 人
・ 亡き父母 祖父母 友人 を想う
・ お墓 仏壇 へ供える
・ 病む人へ蜜柑 熱の額や手に蜜柑
・ 蜜柑を剥く手の皺 小さな手 細い指
・ 団欒の中の蜜柑 ←→ 独りで食べる蜜柑
・ 親や友から蜜柑が届く
・ 仲直りの蜜柑
〇 こんな利用法も
・ 皮を干してお風呂に 実をまるごと蜜柑風呂に
・ 皮を刻んで料理に使う
・ ジャムにする
・ 庭先の枝にさして小鳥を待つ
・ 蜜柑の汁であぶり出し
・ 蜜柑でお手玉
・ 蜜柑で(子供に)足し算や引き算を教える
〇 箱の蜜柑
・ 下の方が腐って黴てしまう
・ かつては箱買いした(今は家族が減ったのでできない)
・ まず箱をひっくり返して底から先に取り出す
〇 その他
・ メモや伝言の上に蜜柑を置く
・ 応援 励ましの気持ちで渡す 投げる 放物線
・ ふるさと納税で蜜柑
・ 新しい品種が次々と
・ 上棟の時に餅と一緒に蜜柑を撒く
・ 蜜柑に目鼻を描く
・ 蜜柑の汁が沁みる
これらの類想を土台として巧く使っている作品も沢山あります。自分の句の評価に一喜一憂することなく丁寧にゆっくりと学んでまいりましょう。
※今回の兼題「蜜柑」中級者以上投句欄へのご投句は、投句数3861句、投句人数1606人となりました。以下、類想句の一覧です。