【佳作】
叱る気も失せて蜜柑の筋まつしろ
朝月沙都子
蜜柑とふみづにもつとも近き肉
ギル
倉庫部屋箱の蜜柑に灯油の香
美津うつわ
仮病決め連絡までの間を蜜柑
木ぼこやしき
子規よりも健なり蜜柑十一個
森一平
雲水の黙きよらかに佐渡蜜柑
丹波らる
親ガチャはまあまあ当たり蜜柑むく
植木彩由
実家売れず斜陽の山に酸い蜜柑
くさ
蜜柑山鶏小屋は二階建て
いなほせどり
競馬誌の予想横目に剥く蜜柑
ちょくる
スランプの机に置いてやる蜜柑
かねつき走流
手に柔き蜜柑をけふのみかんとす
おかげでさんぽ
蜜柑だけは食い放題の実家かな
川越羽流
爆音機はげし猿らの食ふ蜜柑
ほしの有紀
ねえ蜜柑剥いてよ渋滞二十キロ
健央介
太陽のカタチあやふや蜜柑もぐ
アンサトウ
蜜柑生る丘の上なる教護院
津島野イリス
蜜柑剥くレッサーパンダのヨシヒコ
いくたドロップ
給食の蜜柑届いた仮病の日
澪那本気子
病休はや五日つるりと剥く蜜柑
佐藤儒艮
親権はとれたのかしら蜜柑剥く
主藤充子
太陽丘にぴたり臍合ふ蜜柑なり
元野おぺら
紅組の優勢六個目の蜜柑
淺野紫桜
PKの外れて蜜柑持つたまま
向原てつ
千点棒おいて蜜柑の皮を揉む
一寸雄町
みかん畑は太陽の眠る場所
睦月くらげ
蜜柑だけ呼吸してゐる事務机
湯屋ゆうや
無防備な蜜柑の尻を明るうす
みづちみわ
棺桶の蜜柑いとこの生きた道
seki@いつき組広ブロ俳句部
民放は二つ蜜柑の皮毟る
片岡六子
蜜柑食ぶ先ごろ買ひし墓思ふ
伊藤順女
ミサイルは通過蜜柑の筋を取る
仁和田永
ババ引きしチラと蜜柑へ伏目がち
高岡春幸
蜜柑捥ぐラジオは昼の憩いかな
上津 力
犯人は来週みかん揉み回す
ぞんぬ
蜜柑剥く五芒星てふ形の皮
伊藤 柚良
「簡潔に言うと」で蜜柑三個目じゃん
さとけん
吾が妹へ蜜柑曲がって転がりき
相沢薫
剥きかけの蜜柑と罹災証明書
にゃん
蜜柑食ぶゴシップ記事にへたれし皮
白プロキオン
病窓に余命の数の蜜柑置く
篠原雨子
垂乳根の太陽の産む蜜柑かな
布村 柚子
味気ない病室に蜜柑が灯る
at花結い
たれからもひとしくとほきみかんかな
西浦 貴浩
妹の別居のはなし蜜柑盛る
松坂 コウ
蜜柑置く造船場のパイプ椅子
月石 幸
配膳の蜜柑は元気振り撒いて
青野遊飛@蚊帳のなか
鈴なりの蜜柑そこいらじゅう哀歌
歯科衛生子
みかん蜜柑あなたは猫のたまごなの
満る
いい人に擬態していた日の蜜柑
比良田トルコ石
このくらいの指輪欲しいと蜜柑乗せ
福花
銀行へ行くか蜜柑の三個目か
雪だるま
給食の蜜柑で天下獲りにいく
小川テル子
病床に蜜柑の飛沫降るを見ゆ
OMI
病棟に蜜柑の灯る配膳車
蒼空蒼子
しりとりの終ひは蜜柑剥きながら
あさのとびら
停戦はまだか蜜柑の筋を取る
三月兎
山積みの蜜柑明るき入籍日
前田いろは
店頭に蜜柑家族を欲したり
青木りんどう
蜜柑当てなんて幸せさうな鼻
関津祐花
新しき遺影みかんの減らぬ居間
深山むらさき
父の何受け継ぎたるやみかん剥く
吉永那夫子
対岸は伊方原発蜜柑捥ぐ
涼月橋
点滴スタンド右手に蜜柑左手に
アロイジオ
太陽の老いの匂ひや蜜柑山
世良日守
面談の校長室は蜜柑の香
たまのねこ
蜜柑食ぶ豊かな涙袋して
さるぼぼ@チーム天地夢遥
相続の長き話や蜜柑剥く
きなこもち
にちじやうへもどり愛媛の蜜柑二個
板柿せっか
みな終えし漠と蜜柑を剥く喪服
陽乃姫
全摘や柔きみかんを捨てる夜
仁山かえる
頬杖や蜜柑ひとつを灯す卓
石上あまね
噴きさうな水の重さの蜜柑摘む
トポル
お焚上げからつつき出す焼蜜柑
亜桜みかり@金カル
蜜柑さへ剥かぬ父ではありました
はれまふよう
蜜柑剥く音くしゃくしゃの原稿へ
小豆白虎
失言はあらかた本音蜜柑剥く
ふもふも
県庁の入口に売る蜜柑かな
内藤羊皐
どん底の腐っていないだけの蜜柑
北里有李
納骨先どうする四つ目のみかん
常幸龍BCAD
握る手に蜜柑のあわき湿度あり
さおきち
決裁の山を片寄せ置く蜜柑
碧西里
記念日や蜜柑きれいに剥くきみと
稲畑とりこ
くつしたもはけるみかんだってむける
ぐでたまご
巫女たちの膝を崩して蜜柑食ぶ
九萬太郎
蜜柑山ひかりは島のこゑである
広木登一
叔母からの蜜柑の清ら叔母の通夜
中島 真珠
妻と子の蜜柑の筋も取つてやる
稲畑とりこ
蜜柑剥き小姑離婚するらしい
栗花落カナヲ
青空へ蜜柑三個のジャグリング
いこん
剥ききつて蜜柑は瑞々しき砂漠
眩む凡
移動スーパー目指す蜜柑の谷の家
さゆり@金カル
僻んだり蜜柑を三つ重ねたり
あいだほ
焼き蜜柑甘し腫瘍の生臭し
松井くろ
山積みの蜜柑や漁協購買部
武井 超凡
正座して賢者の猿が蜜柑剥く
コモドドラゴン
東京や蜜柑を今日の灯とす
小池令香
蜜柑熟る十房の孤独持て余し
七瀬ゆきこ
拗ねてゐるこゆび蜜柑を剥くおやゆび
RUSTY=HISOKA
蜜柑捥ぐ目に太陽の死骸かな
まこちふる
鍵かけた生徒会室蜜柑剥く
細川鮪目
食うけどさ母から蜜柑三箱目
丸山隆子
親指で蜜柑の底を刺す暇日
さくさく作物
ささくれと深夜ラジオや蜜柑剥く
みらんだぶぅ
蜜柑呑みこんで起こしてみるからだ
青井えのこ
交代のチャートテーブル蜜柑置く
黒木水産
十個入り甘い蜜柑のハズレ喰む
石原しょう
蜜柑むく師は病窓の海をみつ
桜鯛みわ
モロッコよ蜜柑のなかは黒きゆふやけ
ぐ
蜜柑剥く病名知らぬふりのまま
加座みつほ
蜜柑酸し父の呼吸に死の気配
平本魚水
おじ達のロシア論争みかん越し
清松藍
蜜柑剥きやさしいひとになりかける
たけろー
海なぎて周防の蜜柑の甘酸っぱ
kikuti-aya
みかん剥くこゝろはみづでできてゐる
げばげば
熟れすぎた蜜柑返された履歴書
かん かんし
さみしき手つつめば温みゆく蜜柑
あまぶー
蜜柑剥く部屋の時間の進み方
すりいぴい
胎動の微動みかんのみづみづし
きのえのき
蜜柑でいい今日はじめての次女の声
津々うらら
二人して小津映画また蜜柑剥く
高山佳風
教室の蜜柑の香のせい田村のせい
空流峰山
餌台の真ん中皮だけの蜜柑
空豆魚
阿彌陀籤廊下に蜜柑取りに行く
佐藤レアレア
蜜柑揉む漫画雑誌の紙粗し
寺尾当卯
一等は詰め放題の蜜柑かな
清瀬朱磨
蜜柑熟る古墳時代の処刑場
伊予吟会 宵嵐
蜜柑むく妻の手止まる大一番
ひだ岩魚
蜜柑の筋重なり紅白のトリ
亘航希
腰ラジオ少雨のニュース蜜柑摘む
紫水晶
死にたいのに蜜柑食べたら泣いちゃった
松本独り
残業や生きる重しとして蜜柑
磐田小
平和なり爪を立てられ死ぬ蜜柑
あなぐまはる
内定をもらえぬ吾子へ蜜柑置く
伊藤てまり
麻痺残る右手みかんの皮うすし
伊藤恵美
映像は昭和事件史剥く蜜柑
くずもち鹿之助
手のひらの蜜柑小さな熔鉱炉
あおのめ
箱買ひの蜜柑韓流ドラマ漬け
小川しめじ
クサラナイと決めたり蜜柑に朝日
窪田ゆふ
避難所の蜜柑五百個こゑゆたか
ぎんやんま
蜜柑剥くマンダラートに空のマス
さく砂月
蜜柑もみもみ人を正しく愛す、とは
嶋村らぴ
屠る手と蜜柑むく手とあやす手と
はぐれ杤餅
東京にひとり蜜柑はやさしい
ピアニシモ@金カル
蜜柑ひんやり夜勤の休憩室
やまさきゆみ
折々のうたに蜜柑を置並べ
満生あをね
みかんみかんみかんまだ終わらない祖父の話
光峯霏々
避難所の知らぬ子と剥く蜜柑かな
中村一烏
んでおわるちょっとすっぱいみかんです
冬のおこじょ
ひんやりと蜜柑ぐうるりと胎動
白子ポン酢
七並べのハートが伸びて伸びて蜜柑
いかちゃん
履歴書不通過蜜柑に種おほし
笹野夕
町会の資料に蜜柑ひとつづつ
小川都
蜜柑むく癌と知らない父の側
えいぎょ
蜜柑みかん公民館の先の海
さざなみ葉
蜜柑割る手のひらに夜の体温
阿部油
蜜柑剥けば母に清しき笑み戻る
伊奈川富真乃
蜜柑吸ふ束の間でしたが母でした
武田ラーラ
リモコンに使はぬボタン蜜柑むく
たこぼうず
父さんてふやさしきことば蜜柑むく
井納蒼求
次回の兼題も
皆さまふるって投句してください。
お待ちしています!
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