類想一覧(選外)
バリウムの喉に張り付く薄暑かな
GONZA
制服でマックのポテト待つ薄暑
紫月歪丸
溶けそうで溶けないチョコレート薄暑
夏目あかり
軒先に触れる枝あり庭薄暑
つばき
薄暑嗅ぐ食後の散歩ダイエット
円谷琢人
喉ごしのよい麺所望する薄暑
房総とらママ
二の腕の白さ際立つ薄暑かな
ゆみづき
薄暑にヘアカット襟元にふわり風
小春風 幸
ボランティアTシャツ湿る薄暑かな
田村美穂
坂の町ペダルのびやか夕薄暑
宮井そら
花苗の鉢を日陰へ薄暑光
山口朝子
バス待ちの風ここち良き薄暑かな
於大純
山路行青と緑の薄暑かな
岡崎佐紅
ぶらうすの光の眩し薄暑かな
水木合歓
風通る木陰探して薄暑かな
風花
上着脱ぎ着直す3度薄暑かな
あらいゆう
クルーズの客皆薄着薄暑かな
鳳凰美蓮
街中は薄暑たのしき買物す
紋舞蘭
腕ふるう君首タオル薄暑かな
坂 とき
緩慢な野良猫欠伸する薄暑
清水明美
生足にフレアスカート薄暑かな
西町彰子
髪型をショートカットにして薄暑
大西秋桜
木漏れ日の山道登る薄暑かな
北山 烏兔
ガラス鉢まよって出して盛る薄暑
晴菜ひろ
稽古中一枚脱いで薄暑来る
北の星
薄暑光出窓に猫の大欠伸
ちゃこ
頬かぶり外野を刈り込む薄暑の日
藤 れい
ボタンRぐっと一息飲む薄暑
テラゴン
ハットからメッシュキャップへ薄暑のラン
山下とらぺけ
寝苦しくこっそり移動薄暑かな
春夏秋冬
スニーカー新しくして薄暑かな
鈴木由花子
病室の母のベッドへ薄暑光
音羽凜
薄目開け猫の寝てゐる路地薄暑
せいち
菜園で一日過ごす薄暑かな
まりい木ノ芽
水色のストール巻いて薄暑かな
青海 波
庭の草気になっている薄暑かな
はるく
父の手を引いて薄暑の九段坂
小圷冬扇
飼猫を薄暑庇の上に置く
玉野汐音
回覧板陰に置きたる薄暑かな
京あられたけむら
甲高い声駆け抜ける夕薄暑
彩桜里
黄昏の焼肉匂う薄暑かな
中野風鈴
川岸に集ふ若人夕薄暑
紅 珊瑚
フレアスカートに風吹け今薄暑
藤鷹圓哉
歩く会木陰に一服薄暑かな
東 湘輝
薄暑の夜残高合はぬ会計簿
花はな
今日もまた窓開けたまま薄暑かな
ゆかりん
薄暑光新し靴の白清か
松永恕淳
垂直な生徒の挙手や薄暑の日
風来坊健丸
草寄せて庭師いっぷく薄暑かな
kikuti-aya
子らが上着脱ぎ捨て駆ける薄暑かな
出水ゆみ
亡き犬と遊びし広場夕薄暑
村上継鳥
旧友のまた逝く悔いぞ薄暑光
國本秀山
陽に染まる瀬戸内の島夕薄暑
竹内ユキ
坂の上タワー見上る薄暑かな
夢雨似夜
豆腐屋のラッパの遠き薄暑かな
満る
薄暑の夜脱いだジャケットすぐ羽織る
羽光
昼休みビジネスマンの街薄暑
茶
園児等の歌声揺らぐ薄暑かな
夏目たんちゃん
旅衣脱ぎて我が家の薄暑かな
聞岳
制服のズボン短し薄暑かな
香田 野分
薄暑光猫のあくびに釣られけり
たいらんど風人
グランドの歓声空へ夕薄暑
風の旅人
上着手にゴルフスウィング駅薄暑
雅屋少将
上着持ちひねもす歩む薄暑かな
杉山駄芭
街中は薄暑待ちわびそぞろ足
海燕
水切りし河原は薄暑吾子の声
林 和寿
焼肉ともんじゃを迷ふ薄暑かな
伊藤なおじい
酔いしれてコンサート帰りの薄暑
細木さちこ
薄暑光ペダル漕ぎ影踏み進む
天照昭光
半袖か長袖かなそれが薄暑
地球人
芽を出せば水を欲しがり薄暑光
ららら句らら
つなぐ君の手にじわる薄暑の湿度
正念亭若知古
好天をかろき薄暑のペダルかな
ももたもも
七色のペディキュアのゆく薄暑かな
直井照男
喪服脱ぎ一息入れし夕薄暑
虹岡思惟造
夕薄暑上着突っ込むランドセル
飛来 英
ストレッチ今日から薄暑窓開ける
金子あゆか
薄暑光川辺の風も雑草も
三島ひめばしょう
歯科医院まであと5分薄暑かな
菅原ゆう
猫落ちの座敷転がる夕薄暑
つぶ金
草刈りののちに風ゆく薄暑かな
上田白雅
下山して地べたに腰を夕薄暑
りんごのほっぺ
薄暑光母を見舞いに登り坂
椿カナ(木の芽)
薄着する薄暑の街の日差し受け
猪飼篤彦
高瀬川水面に揺れる薄暑光
大薮薫子
ポニーテールの赤きスカート街薄暑
阿曽 遊有
ざる蕎麦と即座に答えし薄暑かな
滝美音
若者の半袖眩し薄暑かな
雨森 茂喜
足早に薄暑の街行く営業マン
田中ようちゃん
薄暑光棚の手前へ硝子皿
坂めぐみ
白きものますます白し薄暑光
和泉攷
牛すじのカレーかき込む薄暑かな
詩
飲み干せしグラスの泡の薄暑かな
田中一升
川沿いにマルシェ賑わう薄暑かな
春あおい
膏薬の隅より剥がる薄暑かな
一歩亭六案
路地裏の階段上る薄暑かな
阿比留サト子
自転車を朝日に向かい漕ぐ薄暑
坂本宙海(そおら)
上着脱ぎ小走りに行く町薄暑
かとしん
ビルの陰1駅歩き薄暑なる
丘るみこ
薄暑はや小陰を探す散歩道
ニッシャン
袖捲り腕のやや白薄暑かな
渥美 謝蕗牛
東雲の風ぬるくなり薄暑かな
中村 自在
薄暑光雨上りたる茶の畑
ひろ志
小走りの半襟にある薄暑かな
とりゆふ
前髪をざくりとはさみ薄暑光
陽乃姫
御朱印を社務所の影で待つ薄暑
藤井 春
この坂が急になりたる薄暑かな
うみのひつじ
ふる里へ続くレールに薄暑光
ひと粒の種
子ら巣立ち妻と外食する薄暑
はなだんな
丸まった背に感ずる薄暑かな
高橋 基人
街薄暑ナン焼きあがるキッチンカー
いこん
君がまたチョコを嫌いになる薄暑
つまりの
水割りの氷が踊る薄暑かな
道楽人生
薄暑光きらきら肩に露天の湯
ゴーマ
青春の炎まだあり薄暑光
一雁低空
板の間に猫のよこたふ薄暑かな
かぬまっこ木ノ芽
なまぬるき風も良きかな夕薄暑
霜川このみ
巡礼の額にひかる薄暑かな
祐 紀杏里
パシパシとシャツ一枚を干す薄暑
黄鶺鴒
薄暑なり日陰で仕上げ写生会
橋野虎空
自転車をこぐひたいにも薄暑かな
竹の子
ワンピース風吹き抜けて街薄暑
空心菜
靴下のまつはりつくや夕薄暑
しおやま句吟子
木も草も人も元気になる薄暑
れんげ畑
にはたづみ木々を映して薄暑光
こうだ 知沙
人混みを少しよけてる薄暑かな
いごぼうら
薄暑の子駆けて戻ってまた駆ける
香羊
たつぷりと鉢替えの葉へ薄暑光
わおち
ぬるま湯にざぶんと浸かる薄暑かな
ほりかわとみ
受け取りし検査結果や薄暑光
田辺ふみ
カンバスへみどり百色薄暑光
岡田道一
薄暑はやドリンク求め長き列
春よ来い
小走りに駅へと急ぐ朝薄暑
季々諧々
ハンカチをタオルに替えて薄暑かな
早坂 一周
路地裏で冷や燗悩む薄暑かな
香取扇公
半袖に長袖混じる街薄暑
山田健蘭
母の手は小さくなりけり夕薄暑
ナタデココ
澄まし聴く水琴窟の音や薄暑
せいしゅう
薄暑はや遊び疲れの子を背中に
加和志真
雑草に負けを認めている薄暑
伊都
ポストまで百メートルほどの薄暑
みなみはな
薄暑の遊歩道病気自慢を一万歩
兵頭紫峰
赤鳥居続く親子旅の薄暑
須山牧風
百度石行きつ戻りつ夕薄暑
そめやまさみ
妻と我速足で行く街薄暑
山川凛
白球の行方息のむ薄暑かな
野田遊水
夕薄暑チャリ漕ぐカルチャースクールへ
かずポン
こんぴらさんの石段や薄暑光
春乃花柊
薄暑越え町屋の陰を歩くかな
蒼き鷹
雲よりも白きTシャツ薄暑かな
親睦
登校の列間延びして薄暑かな
とはち李音
足首にまだ冷え残る薄暑かな
増本空ふね
次回の兼題も
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選者コメント
夏井いつき選
◆まずは、季語の本意を確認しておきましょう。
「薄暑」とは、初夏の時候の季語。歩いたりするとほのかに汗ばむ頃。歳時記の解説の「汗ばむ」を早とちりして、単純な「暑さ」と捉えたと思われる句がちらほらありました。「薄暑」とは、一年の中では最も過ごしやすい気持ちのよい五月あたりの気候だということを押さえておきましょう。
◆「薄暑」は三音の季語ですから、下五に置く場合「薄暑かな」と、ついつい詠嘆したくなります。が、この場合の注意事項が一つ。
中七が、終止形が切れてからの、下五「薄暑かな」は、調べが滞ってしまいます。この辺りの工夫は、秀作・特選などを参考にして下さい。
【類 想】
■ イメージは
・ 明るい まばゆい
・ 気持ち良い すがすがしい
・ 軽やか 活動的
・ 色なら白や緑 青(蒼)
■ 気温が高くなるので
・ 半袖になる 腕まくりをする 薄着になる
・ 上着を脱ぐ 脱いだり着たり
・ 足元は サンダル スニーカー
・ 冷たい飲み物(ビールや炭酸系)
・ 自販機の飲み物が変わる(温から冷へ)
・ 夏らしい涼やかな食べ物(素麺など) → 逆にスパイシーなカレーなども人気
・ 大変 坂道 階段
・ 重い 背中の子 荷物
・ お風呂をぬるめにする
・ 窓を開けて風を入れる
■ 活動的になる
・ 散歩 外出 お出かけ 旅行
・ 仕事帰りについつい寄り道(で一杯……)
・ 軽やかに自転車を漕ぐ サドルは高く
・ 子供ははしゃぐ 川や海辺で遊ぶ
・ 庭の手入れ 草むしり
・ 畑仕事
■ 日差し
・ 日陰 木陰を選ぶ
・ 日傘をさすようになる
・ 洗濯物は風にひるがえる よく乾く
■ この時期は
・ 草木の緑が美しい 〇〇の芽が出る など(季重なり注意)
・ 学校や職場に慣れてきた頃
・ 二の腕がまだ白い(日焼けしてない)
・ 着るものに悩む
・ そろそろ夏支度 → 衣替え ガラスの器 髪を短くする
■ 負のイメージも
・ 亡き人を偲ぶ 身内 友人
・ 葬儀 通夜 墓参り
・ 病気 怪我など
■ その他
・ 地下街を出れば薄暑 トンネルを抜けて薄暑
・ 坂が急 道が遠い
・ 薄暑の街の賑わい
・ 〇〇が匂う
→ 体臭や髪の香 風の香 木々の香 街の香 食べ物の香 などなど
・ 〇〇(服や風など)が絡みつく 纏いつく 張り付く
・ スカートの裾やスカーフなどが風にひるがえる
◆類想として意外だったのは、「猫」ネタと、「爪を切る」ネタが多かったこと。「薄暑」からどういう発想で「猫」や「爪」に辿り着くのだろうと、少々首を傾げました(笑)。
そして、いつもお伝えしていることですが、類想句の中には、この兼題ならではの類想もあれば、どんな兼題でも出てくる類想もあります。
毎回、類想句を丁寧に読んでみることも、ご自分の中の類想データを増やしていく糧になります。来月もご健吟下さい。
※今回の兼題「薄暑」中級者以上投句欄へのご投句は、投句数4604句、投句人数1683人となりました。以下、類想句の一覧です。